バトルリゾート。
この世界にもともと存在していたユウキは、ある場所へと向かっていた。その情報をもとに向かっているので、実際に居るかどうか危うかった。
「……あなたが、海岸に投げ出されていた記憶喪失者、ですか?」
「いかにも。と言っても、そう胸を張ることも出来ないがね」
海を眺めていた、コートを着た男は、ユウキの言葉を聞いて踵を返す。
凛々しい眉の男は、かつて国際警察という場所に勤務している男だった。
だが、今はその記憶すら持っていない。ただの男となり下がってしまっている。
「……かつては、何か重大な任務についていたのかもしれない。だが、今の私にはなにもできない。なぜなら何も覚えていないからだ。私はなんの力も無い男だ……」
「果たして、そうでしょうか?」
ユウキはその男にあるものを見せた。
それは紙切れだった。その紙切れにはあるものが描かれていた。
「……それは?」
「ここにはあるポケモンが描かれている。そのポケモンを、きっと見たことがあると思う。なぜならば、おそらくあなたもまた、このポケモンの被害者なのだから」
知ったような口調で、ユウキは言った。
「あなたは……いったい何を知っている? 私の知らない私を知っているというのか?」
「ああ、知っているよ。チャンピオンというのは独自のネットワークで繋がっていてね。各地方のチャンピオンがそれぞれ繋がっている。ただ――一つだけ伝えてはならないことがある。だから、記憶を消去しているのだとすれば?」
「何だと……?」
「メガシンカ。それはポケモンの進化の可能性。まあ、勿論『あなたの住んでいる地方』には存在するはずもないのだが」
「どういうことだ?」
「当初はオダマキ博士もメガシンカという概念を見つけてすぐに全世界に公表しようとしたらしい。人間とポケモンの絆が織りなす新たな進化の可能性。それだけで大発見だ。……だが、発表はしなかった。そして、ネットワークによればカロスではメガシンカの研究を進めている科学者が居るらしい。恐らく彼が発表することになるだろう。遠く離れた地方まで、彼らの影響が及ぼされることはないだろうから」
「……いったい何が言いたいんだ。頭が混乱してきたぞ」
男は頭を抱える。
それを見てユウキは首を振る。
「まあ、気にする必要は無い。けれど、これは可能性の問題だ。間違っているかもしれない。もしかしたら、というだけのことだ。今、ホウエン地方に何が起きているか知っているか?」
「いいや、まったく解らん」
「エネルギーの飽和現象だ」
「……は?」
今度こそ。
今度こそコートを着ていた男は何も言えなかった。
「カイオーガとグラードンがメガシンカした。二匹のポケモンは封印に成功したが……二匹がため込んでいた莫大なエネルギーが飽和状態にある、ということだ」
「……まったくもって、何が言いたいのかさっぱりわからないのだが」
「エネルギーの飽和によって、ホウエンの気候が大きく変化することとなった。具体的に言えば、他地方のポケモンが住むようになった。それによって、得られたものも大きかったが……それと同時に恐れるようになった」
「何を、だ?」
男は訊ねる。
ユウキはその質問に大きく頷いて、答えた。
「メガシンカというものの、可能性に……だ」