ユウキの話は続く。
「メガシンカというのは、確かに、科学者にとっては素晴らしいものだ。ポケモントレーナーにとってもそれは等しいものかもしれないな。実際問題、それによってバトルの幅は大きく広がるのだから。それがたとえ、『ポケモンと絆を深めた者』しか与えられない特権であったとしても」
「……済まない。さっきから何を言っているのか、さっぱりわからないのだが」
今度こそ。
今度こそ、男はユウキに反論をする。
「だが――もう時間も遅い。もう、隠し通せる時間も無くなってしまった。このままいけば、あと半年もすればカロス地方の研究者が『メガシンカ』を発表する。だから、もう隠すことをしなくてもいい、ということだ。問題として、ホウエンのポケモン協会が危惧していることも凡て無碍になるということなのだから」
そして。
ユウキは真実を告げる。
「この紙に描かれているのは『フーパ』というポケモンでね、このポケモンには特殊な力がある。――曰く、『このポケモンには時間と空間を超える力を持つ』って」
「時間と空間……?」
「そう。特殊なリングだよ。この輪を使って、時間と空間を超えることが出来るらしい。それは、フーパの力だからこそできる、特殊な力だ」
ユウキの言葉を聞いても、男は何を言いたいのか解らなかった。
「あなたは、正義感の強い人間だ。だから、きっと今回も何らかの事件に巻き込まれたのだろう――。そして、あなたはこの時間、この世界へと足を踏み入れた。『記憶喪失』だと思いこまされた状態でね」
「ちょっと待ってくれ。記憶喪失だと思いこまされている? ……つまり、この記憶は」
「偽りだよ。ムウマージというポケモンを知っているかな?」
言って、ユウキはモンスターボールからムウマージを繰り出す。
「呪文で相手を苦しめる効果を持つものも扱うことが出来る……図鑑にはそう書いてある。そして、オカルトマニアの話によれば、強い催眠術を行使することも、レベルを高めれば可能である――そう言っていたよ」
そしてムウマージはゆっくりと男に近付いていく。
「やめろ……何をするつもりだ」
「簡単なこと。あなたにかかっている催眠術を解く。強い催眠術ではあるが、解けないはずはない。だから、こうやって――ムウマージ『さいみんじゅつ』!」
そして、ムウマージは目を瞑って――強く念じた。
強い光が、男を包み込む――。
光が収束し、男は目を開ける。
「……ぬお!? 私は確かフレア団の調査をしていたはずなのに、どうしてこんな場所に……!」
「どうやら、記憶を取り戻したようだね」
「ぬ? ……おお、ありがとう、少年! 名前も知らないのに、よく助けてくれたよ! 恩に着る!」
「そうだね。まあ、僕は知っていたけれど。君の名前は国際警察に所属している……ええと、確か、コードネームはハンサム……だったかな?」
それを聞いて目を丸くするハンサム。
「……どこかで会ったことがあったかな?」
「いいや、ただ遠くの地方のチャンピオンからあなたの話は聞いていてね。もしかしたら……と思ったものだから」
「遠くの地方……ほうほう、成る程。解った! 彼を知っているのならば、私も君に同意だ」
「未だ何をして欲しいか話していないのだが」
「解る! 解るぞ! きっと、とんでもない事件があるのだろう! 起きるのだろう! その事件、国際警察のハンサムが解決してみせようではないか!」
それを聞いてユウキは溜息を吐く。ひとまず目的は達成できたからいいのだが、彼にとってハンサムという存在は、彼が事前に仕入れていた情報以上に熱い人間なのだと思い知らされたからであった。
「ところで、君の名前を教えてくれないか?」
「僕か。僕の名前は……ユウキ。一応、ホウエン地方のチャンピオンを務めている。よろしく」
右手を差し出すユウキ。
それを見てハンサムも右手を差し出し、二人は固い握手を交わした。