「3000年前の最終戦争はキーとなった。トリガーとなった。我々の世界にメガシンカという概念が生まれたのもこのためだといえよう。最終戦争によって得られた結果は人間やポケモンに変化を与えたと言ってもいい」
「……確かにそうです。ですが、それがどうかいたしましたか。それはAzothの報告書に上がっている内容です。それ以上でもそれ以下でもありませんが」
「そうだ。だが、最近その伝承に間違いが見られた。遠いカロスという地方でもメガシンカが確認されたのは知っているな?」
「ええ……。確かプラターヌという博士が発表した論文にありましたね。シンオウのナナカマドという学者がポケモンの九割は進化するなんてことを言っていましたが、それが現実味を帯びてきたとも言えるでしょう」
ホムラの言葉は正しかった。
だからこそホムラは何故このような常識めいたことを訊ねられているのか、解らなかった。
「そうだ。だからこそ我々は進化の可能性を考えた。そしてゲンシカイキをすることができる存在……『グラードン』に目をつけた」
グラードンは大地を支配するポケモンだ。かつてカイオーガと戦ったとされるポケモンで、ともにゲンシカイキをして戦った。
「……グラードンはゲンシカイキの力を手にすることによって、昔の、超古代ポケモンのバトルの時の戦闘をするであろう。それによって世界はハジマリへと戻される……。我々はそれを考えていた。違うか?」
マツブサの言葉にホムラは頷く。
「我々は間違っていたのかもしれない。そして舐めていた。超古代ポケモンの力を。ゲンシカイキの力を」
「今更……それをどうこう言う必要もありませんよ」
ホムラはいった。
「私たちが壊してしまったものは、私たちが直していくしかありません。幾ら時間がかかろうとも」
「……ホムラ、お前ならそう言ってくれると思っていた。ありがとう」
それを聞いてホムラは驚いた。なぜならマツブサはそう簡単に感謝の意を伝えない人間だ。伝えたとしてもそれは言葉だけ。上辺のものに過ぎない。だからこういうほんとうに気持ちをこめたものを、聞くことは無かった。
だからホムラは一瞬意識が会話から抜けていた。当然かもしれない。今までそんなことが無かったのだから。
「さて、話は変わるがホムラ。……カガリはどこへ消えた?」
それを聞いてホムラは現実へと回帰させられる。
今アジトにカガリの姿はない。単独行動をとっているためだ。しかしそれをどうにかホムラが呼び止めようと画策しているため、マツブサへは言っていなかったのだ。
冷や汗が顔を伝う。
「……リーダーマツブサ、実はカガリ……単独行動を取っておりまして……」
もう、言うしかない。凡てをマツブサに発言するほかない。
ホムラはそう思った。