「そう思うんはしゃーない。だけん、休んだほうがよかっち思うんちゃ」
それだけを言って女性は消えていった。
ラニュイはまだ、海の向こうにあるホウエン地方を眺めるだけ。
「ユウキ……」
ラニュイはそう言って、再び海を眺めるのだった。
◇◇◇
「助けてくれた相手を……もう一度助ける、か。成る程、確かに君らしい考えではあるかな。けれども、実際の話はまだ難しいよ。僕の推測が正しければ……きっと彼らは、もうこの世界には居ないだろうから」
ユウキの言葉にそう答えたのはダイゴだった。
それを聞いてユウキはダイゴを一瞥する。
「……ダイゴさん、なぜそんなことがいえるのですか」
「なぜ言えるのか、簡単なことだよ。僕の予想が正しければ……、彼らはもうこの世界にはいない」
「どういうことだ? それってつまり……」
「彼らは別の世界からやってきた人間だと思うよ。それに、『彼ら』と言ったのはレックウザを呼び出したヒガナ……あの流星の民も、ね」
それを聞いたユウキは、ダイゴが何を言っているのかさっぱり理解できなかった。ダイゴが言った言葉、それは即ち、彼の探している人間はこの世界には居なくて、物理的に探すことが出来ない――ということを意味していた。
結局のところ――ユウキもそれを理解していた。理解していたからこそ、それを否定したかった。
「……まあ、とにかく君たちに出会えて良かった。正直なところ、君の力を借りたかったんだよ、ユウキくん」
ダイゴは溜息を吐いて、そう言った。
それを聞いたユウキは首を傾げ、
「いったいどういうことですか?」
「それはつまり――」
ダイゴがそう言った、ちょうどその時だった。
ゴゴゴゴゴ、という地響きが聞こえた。
いや、正確にはそれは地響きでは無かった。空に巨大な建造物が蠢いているような、そんな音だった。
「何の音だ――!」
「君はいつホウエンに戻ってきたのか解らないが、秘密裡に暗躍している組織があった。マグマ団が陸、アクア団が海ならば、第三の領域である空を支配する組織があると言えるだろう。そして、その組織の名前は――」
ダイゴはポケットから緑色のピンバッジを取り出した。
それはレックウザを象ったような竜の形をしたピンバッジだった。
「――『スカイ団』。レックウザの力を使って空を統べようとする組織のことだ。そして彼らは、また別の目的を持っているらしい。そして頭上に蠢く建造物こそ、スカイ団のアジトである城塞『スカイ・キャッスル』だ」
ユウキの頭上に、巨大な建造物が姿を現した。