デルタへといたる道   作:natsuki

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第十八話

「そう思うんはしゃーない。だけん、休んだほうがよかっち思うんちゃ」

 

 それだけを言って女性は消えていった。

 ラニュイはまだ、海の向こうにあるホウエン地方を眺めるだけ。

 

「ユウキ……」

 

 ラニュイはそう言って、再び海を眺めるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「助けてくれた相手を……もう一度助ける、か。成る程、確かに君らしい考えではあるかな。けれども、実際の話はまだ難しいよ。僕の推測が正しければ……きっと彼らは、もうこの世界には居ないだろうから」

 

 ユウキの言葉にそう答えたのはダイゴだった。

 それを聞いてユウキはダイゴを一瞥する。

 

「……ダイゴさん、なぜそんなことがいえるのですか」

「なぜ言えるのか、簡単なことだよ。僕の予想が正しければ……、彼らはもうこの世界にはいない」

「どういうことだ? それってつまり……」

「彼らは別の世界からやってきた人間だと思うよ。それに、『彼ら』と言ったのはレックウザを呼び出したヒガナ……あの流星の民も、ね」

 

 それを聞いたユウキは、ダイゴが何を言っているのかさっぱり理解できなかった。ダイゴが言った言葉、それは即ち、彼の探している人間はこの世界には居なくて、物理的に探すことが出来ない――ということを意味していた。

 結局のところ――ユウキもそれを理解していた。理解していたからこそ、それを否定したかった。

 

「……まあ、とにかく君たちに出会えて良かった。正直なところ、君の力を借りたかったんだよ、ユウキくん」

 

 ダイゴは溜息を吐いて、そう言った。

 それを聞いたユウキは首を傾げ、

 

「いったいどういうことですか?」

「それはつまり――」

 

 ダイゴがそう言った、ちょうどその時だった。

 ゴゴゴゴゴ、という地響きが聞こえた。

 いや、正確にはそれは地響きでは無かった。空に巨大な建造物が蠢いているような、そんな音だった。

 

「何の音だ――!」

「君はいつホウエンに戻ってきたのか解らないが、秘密裡に暗躍している組織があった。マグマ団が陸、アクア団が海ならば、第三の領域である空を支配する組織があると言えるだろう。そして、その組織の名前は――」

 

 ダイゴはポケットから緑色のピンバッジを取り出した。

 それはレックウザを象ったような竜の形をしたピンバッジだった。

 

「――『スカイ団』。レックウザの力を使って空を統べようとする組織のことだ。そして彼らは、また別の目的を持っているらしい。そして頭上に蠢く建造物こそ、スカイ団のアジトである城塞『スカイ・キャッスル』だ」

 

 ユウキの頭上に、巨大な建造物が姿を現した。

 


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