「それは心配無用ですよ。……我々エーテル財団はポケモンの保護もそうですが、別のプランも考えておりますから」
ルザミーネは足を組み替えて、
「いずれにせよ、あなたたちはこの世界をどうしようとしているのか。それについてお考えをお聞きしたい」
「……世界をどうするか? 簡単なことだよ。空のポケモンを手始めに手に入れること。そうして、我々は空を管轄する。ポケモンのためでもあり、人のためでもあるのだよ」
「……ぬるい」
ルザミーネは低く声を出した。
それをソウジュは聞き逃さなかった。
「何だと?」
「手ぬるい、と言っているのですよ、それでは。あなたはいったい何を考えてそれを口にしているのですか? この世界は、様々なポケモンを保護する必要があり、そして、そのためにはあるポケモン……と言えばいいのかしらね。あるいは、違う存在かもしれないけれど。いずれにせよ、それを呼び出す必要があるのですよ」
「……あるポケモン、ですか。それは興味深いですね。私もこれでも学徒ですから。そのような情報は是非仕入れておきたいものですからね」
「ウルトラビースト」
端的に。
或いは単純に。
ルザミーネはその名前を口にした。
「ほう……。聞いたことがありませんね、そのポケモンかどうかも解らない存在は、いったいどういう存在なのでしょうか?」
「さあ? そこまではエーテル財団にも解りません。解っている情報とすれば、ウルトラビーストが居る場所……ウルトラスペースには何らかの手段を用いないと入ることが出来ない。そして、そのウルトラスペースに入ることで何らかの副作用をもたらす。……噂によれば、別の時系列の、別の世界に繋がっているとも言われているのですよ。そして、私がホウエンにやってきた理由はたった一つ。あるポケモンを捕獲するため。すべては、ウルトラビーストのために」
そこまで聞いて、ソウジュはどこか彼女の考えが恐ろしく感じてきた。聞いてきた内容は純粋無垢な少女が夢を語っているように軽やかな口調で語られるものではない。しかしながら、今のルザミーネはまさにそれだった。
純粋無垢な少女の夢。
ルザミーネが語ったそれは、そのような口調で語られていた。
「……して、そのポケモンとは? 我々もあなたに資金を提供していただいておりますから、ある程度の協力は出来るかと思いますが」
「フーパ」
ルザミーネはまたも端的に告げた。
「別世界との空間を簡単に作り出すことの出来る、フーパと呼ばれるポケモンを探しています。それを使うことで、もしかしたらウルトラスペースへと行くことが出来るかもしれない。いや、或いはウルトラビーストがこの世界にやってくる出入り口となるかもしれない……。私は、そう考えているのです」