「……スカイ・キャッスルで何か起きたのかもしれない。もしかしたら、内紛とか」
そう言ったのはヒガナだった。ヒガナはこの時でも冷静であった。しかしながらそれは彼らにとってとても救いであったこともまた、紛れもない事実だった。
そして、アクロマはユウキに向けて微笑む。
「何が起きているかは解りませんが……、このまま向かう形で問題ありませんね?」
「何を今さら。どうなるかってことは、最初から解っている。たとえこの身がどうなろうとも……」
そうしてユウキたちを載せたミニプラズマフリゲート号は、スカイ・キャッスルへと向かうのだった。
◇◇◇
ところ変わって、この世界のユウキたちは一足早くスカイ・キャッスルへと足を踏み入れていた。
「これが……スカイ・キャッスル……」
スカイ・キャッスルの中は迷路のように入り組んでいて、簡単に進めるような状況では無かった。
「注意したほうがいいよ、ユウキ。ここはもう敵の本拠地だ。いつ敵が襲ってくるか解ったものじゃない」
「それくらい知っていますよ、ダイゴさん。しかし……あまりにも静かすぎる」
ダイゴもそれを知っていた。
だからこそ、違和感を抱いていた。
静か――というよりも、生命が居る気配を感じない。
まるでもともと誰かが居たのに、排除させられたかのように。
「ううむ……。これはいったいどういうことなのか」
そう言ったのはハンサムだった。ハンサムは所々あたりを見渡しているように見えた。
しかしながら、それでも異変を感じることは無い。
今の彼らには、ただ前に進むしかなかった。
◇◇◇
「――弱い」
ルザミーネはボロボロになってしまったソウジュたちスカイ団のポケモンを見て、そう言葉を吐き捨てた。
踵を返し、ソウジュたちに背を向ける。
「やはり――、ポケモンはあなたたちに相応しいものでは無かった、ということですね。わたしのコレクションに追加したい、と思うポケモンも居ませんでしたから。ほんとうに、ほんとうに残念ね」
「代表。どうすれば?」
グラジオと呼ばれた少年は、ルザミーネに問いかける。
ルザミーネは怪しげな笑みを浮かべたのち、再びソウジュたちのほうを向いた。
「ここには用はないわ。……完膚なきまでに叩きつぶしてしまいましょう。フーパが居ないのは、ほんとうに残念だったけれど」
そこから始まったのは、残虐と殺戮だった。
◇◇◇
スカイ・キャッスルが大きく揺れ始める。
それは、外に居たミニプラズマフリゲート号ですらも解るくらいだった。
「不味いですね……。あの様子を見ていると、どうもあのまま墜落してしまいそうだ」
冷静に分析するアクロマを見て、苛立ちを隠せないユウキは舌打ちを一つして、
「じゃあ、どうすればいいんだ。なあ、シガナとやら。あそこに居るスカイ団を倒さないと何にもならないんだよな?!」
「ええ……。正確に言えば、そのスカイ団と取引をしている組織、ですが」
「そいつは初耳だな」
ユウキはシガナに目線を合わせる。
「ねえ、シガナ。どうしてあなたはそこまで知っているの?」
そう質問をしたのは、ヒガナだった。
普通に考えれば、ヒガナがそう質問をするのも当然のことだった。ヒガナとシガナは長年の仲であり、そのようなことはヒガナも知らなかった。ヒガナが知らなかったことをシガナが知っているから、ヒガナは疑問を抱いているのだ。
「……タイミングもいいことですし、話してもいいかもしれませんね」
シガナはそう溜息を吐いて、告げる。
「――私はシガナ。国際警察の一員にして、『ウルトラビースト』の謎を追うためにフーパを利用して世界を行き来している存在ですよ。国際警察のナンバーに則れば……No.457とでも言えばいいでしょうか」