デルタへといたる道   作:natsuki

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第二十三話

 

「簡単に説明しましょうか」

 

 シガナの話は続く。

 

 それはヒガナやユウキたちが、そのことをほんとうに理解しているかどうかを確認する間もなく。

 

「国際警察は早くからウルトラビーストの存在に目をつけていました。ウルトラホールを見つけ、ウルトラビーストの存在を証明した論文を執筆した、モーン博士と早期に接触したのも我々です」

 

「ウルトラビーストが発見されたのは、いつ頃……なんだ?」

 

 ユウキはシガナに問いかける。

 

「十年前です」

 

 シガナはユウキの質問に、よどみなく答えた。

 

「十年前、その論文はポケモン学会では噴飯物であると言われていました。ポケモン以外の存在が居るなんてことは有り得ない、と。しかし我々はあるポケモンに目をつけて、ウルトラビーストの存在を証明しようと考えたわけです」

 

「そのポケモンが……フーパだったわけか」

 

 ユウキの言葉に頷くシガナ。

 

 シガナは自らの掌を見つめ、

 

「私がウルトラビースト対策課に入ったのもちょうどその頃でした。フーパを追い求め、旅を進めるうちに、やがてある一族のもとへ辿り着きました。フーパこそ居ないものの、伝承を信じている一族でした。私は彼らに近づくべく、潜入したのです」

 

「まさか……」

 

 いち早く反応したのは、ヒガナだった。

 

 ユウキもヒガナの反応を見て――ゆっくりと頷いた。

 

「それが、竜の民だった、と」

 

「ええ。彼らはレックウザを崇敬し、レックウザによって救われると信じていました。しかしながら、私はそこで見つけたのです。……異世界へと通ずる扉を管理するポケモンが祀られているのを」

 

「……シガナ、そんなものが、あの里に?」

 

「私は、あなたの前任者でした。そういえば、解りますね? 私は正式な後継者として信頼されて、その祠へと足を踏み入れることが出来たのですよ。まあ、そのあとはどうなったか語るに落ちるのですが」

 

「……何があったんだよ、教えてくれよ。俺は知らないんだぞ」

 

「まあ、いいでしょう。簡単に説明してあげましょう。異世界へと通ずる扉を管理するポケモン……お察しの通り、そのポケモンはフーパです。フーパによって私はポケモンだらけの世界に飛ばされました。私自身もポケモンのゴニョニョに姿を変えて……。今思えば、それはフーパの『いたずら』だったのですよ。フーパはいたずら好きのポケモンだということを最初から理解していればある程度こちらだって考えていたのですが……」

 

「ダメだ。話がさっぱり見えてこない。どういうことだ……?」

 

「そこで私は『じくうのさけび』という力を手に入れました」

 

 シガナは悩むユウキを無視して、話を続ける。

 

「自分でタイミングこそ選べませんでしたが、未来を見ることの出来る力はとても有難いことでした。しかしながら、直ぐに元の世界へ戻ることは出来ず……、いろいろな寄り道をしてしまいました。元に戻っても、私の身体がもとに戻ることはありませんでした。フーパは私の目をじっと見つめて……まるで何かを託しているかのようでした。そして、ヒガナ、あなたとポケモンになってしまった私が出会ったのも、ちょうどその時だったのですよ」

 


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