デルタへといたる道   作:natsuki

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第二十四話

 

 さらに、シガナの話は続いた。

 

「……あなたがポケモンの言葉を聞くことが出来たのは、嬉しい誤算でしたよ、ヒガナ。まあ、直ぐにそれは私の声しか聞こえないということに気付いたのですが」

 

「それは……私にも解らなかったけれど、」

 

 ヒガナは俯きながらも、ただそう答えることしかできなかった。

 

「そして、あなたを何とかしてフーパに連れて行った。フーパはもしかしたら最初からこうさせようと思っていたのかもしれません。だから、あなたはこのホウエン地方に……メガシンカの存在する世界にやってきた。私とヒガナ、そしてあなたはこの世界に蔓延る悪を……、隕石衝突の危機を回避した、というわけですよ」

 

「ふむ……。それでは、あなたがすべて情報を知っているのは、その『じくうのさけび』が影響していると?」

 

 アクロマの言葉にゆっくりと頷いたシガナ。

 

「ええ、その通りですよ。……もっとも、フーパがこの世界に一緒にやってきたのは、フーパ自身の意志によるものだと思いますがね」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ユウキやハンサムたちはスカイ・キャッスルから脱出していた。

 

「……あのまま墜落すれば、きっとスカイ団は助からないだろう。あとは地上に居る警察に任せよう。僕たちが出る幕では無い。ユウキくんも、疲れているようだからね」

 

 ユウキは久しぶりに動いたからか、どこか疲れているようだった。体力が落ちていたのかもしれない。

 

 それを見たハンサムが敬礼をして、

 

「では、私はここで失礼する。地上で、残党が居るやもしれないからな!」

 

 そう言ってハンサムを載せたムクバードは地上へと降りていった。

 

「ユウキくん」

 

 ハルカの言葉を聞いて、ユウキはそちらを向いた。

 

「すべて、すべて終わったんだよ。……あとは、ゆっくり休もう? それくらい、今のあなたには必要なことだよ……」

 

 その言葉に、ユウキは頷くことしかできなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 すでに残骸となったスカイ・キャッスルが海に浮かんでいた。生憎海の上に落ちたためか、地上の被害は少ないようだった。

 

「それにしても、これは酷いな……」

 

 ハンサムは空からその景色を眺めていた。

 

「うむ……? あれはいったい……」

 

 ハンサムは遠くから高速船がやってくるのが目に入った。

 

 それは白を基調とした船だった。船体には金であしらわれたその団体のロゴのようなものが描かれている。

 

 そしてその船はスカイ・キャッスルの残骸にぴったりとくっつけて泊まった。

 

 船の中から出てきたのは、一人の女性だった。

 

 女性は躊躇うことなく、その残骸へと足を踏み入れていった。

 

(いったい何を企んでいるんだ……? このような残骸に躊躇うことなく入っていくとは……。はっきり言って、怪しすぎる)

 

「ムクバード、まずはあそこへ向かうぞ!」

 

 ハンサムのムクバードは彼の指示に従って、そちらへ向かうことにした。

 

 そして、その船を見かけたのは彼だけではない。

 

「……見つけた……!」

 

 窓からその景色を眺めていたシガナは目の色を変えて、アクロマに近づく。

 

「アクロマさん……でしたね! 急いで、あの船へと向かってください! きっと、今ならまだ間に合う!」

 

「ええ」

 

 よどみなく答えるアクロマ。

 

 意味が解らないユウキたちはそれについて質問しようとしたが――それよりも早く、ミニプラズマフリゲート号は急速なスピードで下降を開始したため、どこかに捕まることを早急に考えることしかできなくなったのだった。

 




次回、最終回。

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