デルタへといたる道   作:natsuki

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最終話

 

「代表、お待ちしておりました」

 

 女性はルザミーネたちエーテル財団の人間を出迎えてそう言った。

 

「ピッケ。早かったわね」

 

「いえいえ、代表がそろそろことを終わらせると思っておりましたから」

 

「終わった……ね。正確に言えば終わってはいないわ。ただ、候補を潰しただけ、かしら」

 

「それでは、まだあのポケモンは姿を見せない……ということですか。非常に残念ですね」

 

「ええ、ほんとうに……」

 

「待て、そこのお前たち!」

 

 ピッケとルザミーネの会話に強引に介入したのは、ハンサムだった。

 

 ハンサムを見て、ルザミーネは首を傾げる。

 

「あら、あなたは?」

 

「私は国際警察のハンサムだ! なにゆえスカイ団のアジトに居るのか、事情を聞かせてもらうぞ!」

 

「ピッケ。邪魔者は排除しておいて、と言ったわよね?」

 

 ルザミーネの言葉に首を垂れるピッケ。

 

「申し訳ございません。まさか、我々の侵入を見ていた人間が居たとは……」

 

「まあ、いいでしょう。グラジオ、やっておしまい」

 

「……解りました、代表」

 

 そうして、グラジオは再びタイプ:ヌルを繰り出した。

 

「むむむ、行け! グレッグル!」

 

 そして、ハンサムとグラジオの戦いが幕を開けた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 戦いは一瞬で決まった。タイプ:ヌルの繰り出したダブルアタックが急所に当たり、グレッグルはそのまま倒れこんでしまった。

 

「……あら、国際警察といった割には弱いのね。まあ、いいわ。グラジオ、とどめを刺しなさい」

 

「……でも、」

 

「でも、ではありませんよ。グラジオ。あなたは今、誰に口答えをしているのですか?」

 

 グラジオは動揺していたが――直ぐに気持ちを切り替えた。

 

 そして、グラジオはタイプ:ヌルに命令を出す。

 

「タイプ:ヌル……、そのグレッグルの息の根を……止めろ」

 

 タイプ:ヌルはグラジオを見たが、グラジオはただ突き刺さるような視線をタイプ:ヌルに送るだけだった。

 

 一瞬悲しそうな表情を見せたタイプ:ヌルだったが、グラジオの命令に従って――タイプ:ヌルはその鋭い爪をグレッグルの首に突き立てる。

 

「やめろ」

 

 ハンサムは一言、ぽつりと呟いていた。それは無意識にそう呟いていたのかもしれない。いずれにせよ、普段の彼からはあまり考えられないような、言葉だった。

 

 しかし、ルザミーネはそんな懇願の言葉を聞いてもなお、笑みを浮かべるだけだった。

 

「あなたは、我々を追いかけるべきでは無かったのですよ。それを後悔して、目の前であなたのポケモンの死を見つめなさい」

 

 そうして、タイプ:ヌルは――一思いに、グレッグルの首を掻っ切った。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ユウキたちが到着したときは、すでにグレッグルの首から溢れるほどの血がしたたり落ちていた。トレンチコートは真っ赤に染まっていて、男の目からは涙が溢れていた。

 

「……遅かったか……!」

 

 シガナは小さく舌打ちする。

 

 そして、それを聞いてハンサムはそちらを向いた。

 

「……何をしに来た」

 

「あなたと同じようにあの組織……エーテル財団を止めようとしていたのですよ。しかしながら、もう遅かったようですが」

 

「エーテル財団……。ふむ、聞いたことがある。ポケモンの保護を目的とした団体だと。まさか、あのような裏の顔を持ち合わせていたとはな」

 

 ハンサムはグレッグルを持ったまま、ゆっくりと立ち上がる。

 

「そのグレッグル……、かなりひどい怪我をしていますね。今ならポケモンセンターに連れていけば未だ……」

 

「いいや、もう無理だ」

 

 シガナの言葉を、ハンサムは明確に否定した。

 

 ハンサムは見つめていた。それは、グレッグルが優しげな表情を浮かべて目を瞑っている姿だった。

 

「もう――死んでいるよ」

 

「ねえ……。このタイミングで発言するのはどうかと思うのだけれど」

 

 ヒガナの言葉を聞いて、シガナはそちらを向く。

 

 首を傾げたシガナを見つめてヒガナは言った。

 

「アクロマとフーパ……スカイ・キャッスルに入ってから姿を見ていないのだけれど……、いったいどこに消えてしまったのかしら?」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「代表。こちらに近づいてくる影を確認しました」

 

 ピッケの言葉に、ルザミーネは首を傾げる。

 

「あのハンサムとやらは心を叩き潰したように見えたけれど……、それにあのポケモンは命が潰えたはず。まさか、自らの『正義』を貫くために、戦うポケモンが居ないのに……という話だとすれば、とんでもなく愚かな話だけれど」

 

「どうも。はじめまして……のほうがよろしいでしょうか。エーテル財団代表、ルザミーネさん」

 

 気付くと、船の上にジバコイルが浮いていた。

 

 ジバコイルの上には一人の科学者――アクロマが立っていた。

 

「あら、あなたは……。確か、アクロマだったかしら? かつて、プラズマ団を導いたと言われる」

 

「それは昔の話です。今はただのしがない科学者ですよ」

 

「そう……。それで? どうしてあなたが私の船に?」

 

「そう。それなのですよ」

 

 そう言って、アクロマはにっこりと笑みを浮かべて、あるボールを差し出した。

 

 黒を基調としたボールだった。それに触れるだけで黒いオーラが移ってきそうな、そんな雰囲気すら感じさせる。

 

「……このボールは?」

 

「ああ、触れても害はありませんよ。ご心配なく。この名前は……しいて言えばその特徴から『DPボール』とでも名付ければいいでしょうか。遠い地方で開発されたボールでしてね、ダーク・ポケモンを作り出す技術をこのモンスターボールに封じ込めた、と言われています。何せ試作品ですから、個数も少ないですが。いやあ、いいタイミングで頂けましたよ。たまには知り合いの縁を頼ってみるものですね」

 

「……それで、そのボールと私、どのような関係があるのでしょうか」

 

「このボールにはフーパといわれるポケモンが入っています。……とでも言えば、解りますでしょうか」

 

 それを聞いて、ルザミーネの表情が瞬間にして変わった。

 

 アクロマの話は続く。

 

「交換条件と行きませんか。正確に言えば協力関係を築きましょう。私はこのフーパ入りDPボールを差し出す。あなたはその対価としてエーテル財団の施設を利用する許可を私に差し出す。……どうですか、とても有意義な取引とは思いませんか?」

 

「あなた、いったい何を……。いや、いいでしょう。きっとそれはあなたにも私にも有意義な取引になるでしょうから。それにあなたは組織を裏切らない。それはプラズマ団のころからそうだったのでしょう。部下の一人がかつてイッシュ地方に居ましたから、それくらい知っていますのよ」

 

 科学者と財団の取引は成立。

 

 そうしてそれは、さらに別の物語へと紡がれていく。

 

 しかし、それを語るには――まだ時間がかかることになるだろう。

 

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