生きとし生けるポケモンの生命エネルギー……だって?
そんなこと聞いたことないし、有り得なかった。だってそんなエネルギー、俺の住んでいたホウエン地方には無かったからだ。
もう一つ、気になることがある。
それはヒガナが言った、三千年前の『最終戦争』。
戦争というキーワードは、聞いただけでぞわりと悪寒がする。当然だ、戦うのだから。新年を抱いた相手同士が、互いの信念をぶつけ合うのだから。
「最終戦争で使われた兵器。それは生命を生み出すエネルギーであり、生命を破壊するエネルギーであった。それを使った王は後悔し、その副作用で得られた不老不死の命を使っていると聞いたが……。まあ、それはあくまでも昔話の類だ。だから、エネルギーはあくまでもエネルギーに過ぎない」
ダイゴさんはそう言って、解らなかった俺に対し補足した。
しかし、ヒガナはまだ笑みを浮かべていた。
「それでも、∞エナジーがポケモンの生命エネルギーを使っていることは紛れもない事実。そうして人間の命、世界を救うのもまた……事実なのかな?」
「何が言いたい。君はさっきから。突然現れて持論をただ述べているだけじゃないか。根拠は無いのかい?」
「無いよ。唯一あるものといえば、」
ヒガナは自らの目を指差した。
「私のこの目で見てきた光景……くらいかな」
「巫山戯てる」
ダイゴさんはそう言って溜息を吐いた。
「エネルギーが増大するとそれによりブラックホールが形成される……それがあなたたちの考えるプランだったかな。そのプランで、ブラックホールの出口がどこに形成されるかは考えていないの?」
「……何?」
「だから」
ヒガナは一歩前に近づく。
「この世界とは少しだけ違う世界にその隕石が落ちてしまう可能性だって考えられるんじゃないか、って話。……例えばそう、メガシンカがない世界。三千年前の最終戦争が怒らなかった世界、とか」
「おい、それってもしかして……!」
俺はある仮説を立てた。それは考えたくない、嫌な仮説だった。
もしかして俺は……。
「うん? どうかしたかい、ユウキ。いや、今はチャンピオンとでも言えばいいだろうか。君は何かアイデアが無いかい? こんなくだらない大人たちよりも、何かいいアイデアを」
「おい、流石に僕も黙ってはいられないぞ」
ダイゴさんも一歩前に進む。
ちょうどお互い二人共睨みつけるような感じになった。
「結局誰も考えつかないわけだ」
ヒガナは言った。
歩いて、モニターを眺める。
「別の世界に隕石が落ちる可能性を、このブラックホールを使う手段の時に誰も考えなかったのだとしたら、それは……想像力が足りないよ」
首を振って、ヒガナはそう言った。
その瞳はとても悲しそうにも見えた。諦観、というよりも悲観。そっちのほうが近いかもしれない。