DNDDNA   作:桃より林檎

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 あなたは 
 あなたは 
 あなたは 

 あなたは赤い部屋が 好きですか?





赤い部屋じゃんよ

 

 

「えっうわ何?!」

 

 

 突然世界が切り替わった。

 

 茜色と藍色の暮方の空は、丸い電球のついた薄汚れた天井に。

 沈みかけの暖かな西陽に照らされた神社境内の開放的な風景は冷たく薄暗い光に照らされた閉鎖的な室内に。

 いつの間にか全てが変わっていた。急な変化に視界が追いつかず、景色が青緑色でぐちゃぐちゃとしている。

 

 「どこだよここ、病院?オカルン達は?!」

 

 だんだんと視界が落ち着いてきた。しかし家族や友人も見当たらず、一切未知の場所であることに変わりはない。

 とはいえ、手術室などが記されている黄ばみ古ぼけた院内地図により、ここは病院だと知ることができる。

 今いる部屋は子供の待機場のようだ。プラスチック製のブロック、木製の青い鳥のパズル、小さなラックには『よく分かる!水辺の生き物』や『ろうそくのか学』などといった子供向けの本が立て掛けられている。

 

「うわ開かねえ!」

 

 濁った水面のように茶ばんだ大きなガラス戸を挟んで真っ赤な空と草原が見える。力いっぱいドアを叩いたり、椅子を投げ当てて割れないか試しているがビクともしない。

 

 普通だったらとっくに割れているというのに。

 

「おーい!オカルーン、婆ちゃーん、ターボババアー!」

 

 あのガラス窓から外に出るのは一旦諦め、他の仲間を探しに病院内を探索することにした。

 この間宇宙人に襲われた場所である奈木病院ほど寂れてはいない。しかし壁や床には大小様々な切られたような傷がついており事件性を感じさせ、蛍光灯はチカチカと不規則に点いており、窓の外には赤い夕暮れが映り続け、奈木病院とはまた違う気味の悪さと怖さがある。

 看護師や医者、患者のような人の気配もせず、静寂の中で呼び声が響くのみ。

 

 そう長くないが不気味さの詰まった廊下を歩き、大きめの両開きのドアにたどり着く。院内地図によればちょっとした広間になっていたはずだ。

 

ガン ギン

 

「うん?」

 

 ドアノブに手をかけ、はたと気づく。広間の中、何か物音がする。金属と金属がぶつかり合っているような硬い音だ。

 廊下の壁や床についた切り傷は中にいる何かがやったのかもしれないと思いつく。警戒しつつもゆっくり音をたてないよう小さく扉を開いて覗き込んでみる。

 

「ふっ!」

「……」

 

「はっ?!婆ちゃん!と誰だアイツ…。」

 

 彼女の祖母、綾瀬星子が謎の人物と戦っている。

 その人物は頭から地面まで大きな赤い布を被り、顔に白の仮面をつけている。また、布の隙間からのぞく手は鉈を携え青い手袋をしており、奇妙極まりない姿だ。

 

 星子は投げられる何か銀色の物をバットで叩き落し、自身に振られるノコギリを避け、蹴りを入れている。だが、あまり効いている様子はない。まさにのれんに腕押しのようである。

 

「うおらああ!!獲ったどー!!」

 

「!、モモ!!」

「……」

 

 扉を強く蹴り開け、超能力で謎の人物を掴み上げる。

 

「はあ?!やっぱコイツ妖怪?!」

 

 まるで体がないかのように布がぺちゃんこになっている。

 にも関わらず平然と仮面はモモの方を向いた。その異貌に違わず、人ではないようだ。しかし超能力でがっしりと拘束され身動きは取れていない。

 

「まぁいいわ、婆ちゃん!捕まえたよ!」

「気をつけろ!!そいつは、」

 

「美しさは」

 

「内面にある」

 

 ズズ

 

 全身の布の下から…いや、布そのものから無数に刃物が飛び出してきた。メスや包丁が超能力の手に刺さり貫く。

 

「痛!」

「大丈夫か!よくもワシの孫に手え出しやがったな。」

 

 超能力の手は破壊され、モモの手にも鋭い痛みが奔る。

 赤い妖怪は拘束から解放され、飛び出た刃物をしまっていく。白く微笑んだその仮面はモモを見つめ、布を引きずりながら近づいている。星子には目もくれていない。

 

「ふん!」

 

 背後へ迫りバットを振るう。

 

バン

 

 と、音を立てて頭の仮面にクリーンヒットした。よろけて膝をついているようだ。膝があるのか分からないが。

 

「婆ちゃん!」

「モモ!一旦逃げんぞ!」

 

 

 広間の適当な扉を開け、廊下を駆け抜ける二人。背後から追ってきている。距離があるため投げられた刃物は届かないが、相手は布を引きずっているというのに走りより少し速い。このまま走っているだけでは追いつかれてしまう。

 

「なんなのあの赤マント!」

「いいから走れ!階段登るぞ!」

 

 右手の階段を駆け上がる。窓から見える赤い空が焦りを増させる。二階を通り過ぎ、三階へと上がった。そして階段の側にあった部屋に逃げ込む。何一つ物がないまっさらな部屋だ。外から布を引きずる音は聞こえない。

 

「はあっはあっ、ふぅー疲れた…。」

「ふーっ。このくらいでへばんじゃねえぜ。」

 

 一旦の安全地帯に逃げ込むことができた。どっ、と安心感があふれていく。心音が煩わしいほどに鳴り、脳を揺らしている。

 

「婆ちゃん結局なんなのアレ…。」

「ワシに依頼しに来たヤツいたろ。」

「えっまさか赤マントあの不審者!?」

 

 神社にやって来た怪しすぎる不審者。あの呼び鈴といい、話を聞いたほぼ直後にこの病院にやって来たことといい、どうみたって黒幕に見える。

 

「いや。」

「違うんかい。」

 

 違った

 

「あいつを呪ってた悪霊だな。たぶん。」

「たぶん?」

 

 霊媒師として歴のある星子にしては珍しく曖昧な言い方をする。

 

「少し腑に落ちねえとこがあんだよ。」

 

「腑に落ちない…?婆ちゃんの知ってるその悪霊ってどんな奴?」

 

 「あいつを呪ってた悪霊はたぶん

 

 赤い部屋 だ」

 

 

「何その10秒で考えました、みたいなそのまんますぎる名前の悪霊。もう場所の名前じゃん。」

 

「まぁ実際そのまんまだからな。

 狙った人間を出血多量で殺す悪霊だ。殺す前に何らかの方法で"赤い部屋が好きか"尋ねてくるのと、結果的に被害者のいた部屋が血で真っ赤になるからそんな名前がついた。」

 

「怖っ。」

 

「ただ元々は()()()()()()()地縛霊だ。わざわざ存在しない記憶を見せて誘導したり、テリトリーに連れ去ることはしねぇはず…なんだがなぁ。」

 

「あー…確かに腑に落ちないわ。」

 

「今回の奴、なんかあるぜ。」

 

 霊媒師という仕事にイレギュラーはつきものだが、いくらなんでも異常が多すぎる。同じ行動に縛られている地縛霊が臨機応変さを求められる"誘導"をすることはほとんどない、というのに自分達を巻き込むようにあの依頼人を動かしていた。

 しかし、赤い部屋であることは間違いないのではないかとも思っている。

 ここに連れ去られる直前に星子は見た、受話器が外れた電話を。

 星子は聞いた、受話器から発されるあの言葉を。

 あの依頼人の話からも赤い部屋が関わっていることは確実であるように聞こえる。

 

 故に不可解なのである。これほどのイレギュラーが。

 

「てか地縛霊ってテリトリー内だと最強なんでしょ?ウチら超ヤバいじゃん。」

「ああ超ヤベェぜ。まともにやり合うならここから出なきゃならん。」

「どうやってここから脱出すんの?」

「分からん。」

「聞かなきゃよかった。」

「とりあえず他のやつらも見つけんぞ。特にターボババアならなんか分かるかもしれねぇ。」

 

 赤い部屋に見つからないよう、他に連れ去られたであろう仲間を探すことにした。特に同じ霊的存在のターボババアならこの状況の打破に繋がる情報を持っているかもしれない。

 

 体をドアから出し安全確認をする。目で見える範囲にはおらず、ずりずりとした音もしない。ここに赤い部屋はいないようだ。しかし、仮に見つかった場合、次も逃げきれるか分からない。

 

「近くにはいねぇみてえだ。静かにいくぞ。」

「うん。」

 

 ドキドキスニーキングミッションの始まりである。

 

 






ちょっと遅れました、すいません。
イメージを文章にするのってやっぱり難しい。
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