鍛冶師志望のTS幼狐 作:黒幼狐
数日後━━ある程度傷が癒えた僕は、神様の部屋でステイタスの更新を行なっていた。
「━━更新するぞ、じっとしておれ」
神様の指先が背中に触れると、肌が熱を帯びる感覚が走った。
しばらくして、書き写されたステイタスを僕は息を呑みながら確認していた。
「……ッ! レベルが……2に……!?」
胸がどくんと高鳴った。あの小竜との死闘、そしてギリギリの勝利が、確かに僕を押し上げていたのだ。
神様は顎に手を当て、僕の後ろから文字を読み上げていく。
「ふむ……ステイタスは大きく伸びたな。それから発展アビリティが一つ……『鍛冶』、か」
「……!」
━━思わず目を見開いた。
「ついに僕……! 鍛冶の発展アビリティを手に入れたんですね!」
「うむ、炉に向かって槌を振るい続けた甲斐もあったのだろう。お主の本分に相応しい力だ」
嬉しさで思わず飛び跳ね、くるりと一回転してしまう。
今だけはこの喜びを全身で表現したい!
「やったぁ! これでもっと凄い武器が作れるよ!」
子供みたいに裸足で床を駆け回り、ステイタスの写しを何度も何度も確かめる。
ランクアップ前では実現できなかったいくつものアイデアがどんどん頭に浮かんでくる。
どんな武器を打とうかと、童心に返った様にワクワクしてしまっていた。
そんな僕の様子を、神様は微笑ましそうにして黙って眺めている。
だがしばらくして、神様は小さく咳払いをした。
「……お主、少しは恥じらいを持て。お前は女の子なんだぞ」
「えっ……」
跳ね回っていた自分の格好を見下ろせば、開かれた着物が腰の辺りではためいている。ステイタス更新をしていたため当然だが、上半身には何も身につけていなかった。
「……あっ」
男だった頃の感覚のままで、自分の身体が女の子のそれであることをすっかり忘れて、はしゃぎまわってしまっていたのだ。
顔が一気に赤く染まる感覚がある。顔から火が出そうだ。
別に神様に裸を見られる事くらい気にはしないが、小さな子供に対する様な注意をされてしまった自分が恥ずかしい。僕は慌てて胸を押さえた。
またスミカさんに叱られちゃう……! まぁほとんど隠す意味も無いような胸なのだが━━
「せめて神の前ではお淑やかにしておけ」
神様は苦笑しながらも、その声はあくまで厳格に響いた。
「は、はい……ごめんなさい、神様……」
「まったく……またスミカに小言を言われるぞ?」
「うぅ……」
服を掴んで慌てて羽織り、身なりを整える。
また子供っぽい行動をしてしまったと、僕は自省する。
でも、それでも頬は緩んだままだった。
だって、この瞬間をどれだけ夢見てきた事だろうか……!
━━その夜、炉の前に立った僕は傷だらけの脇差しを見つめていた。
「……子狐丸……僕はこれからも、君と一緒に強くなりたい」
普通であればもう使えない様な状態の子狐丸。そこらの冒険者であれば、新しい武器に更新しているだろう。
しかし僕は、この子と一緒に冒険を続けたかったのだ。
ならば鍛冶師として、僕が取る手段など決まっている。
助けた冒険者たちが拾ってくれていた小竜の素材、そして大きな魔石。
それらを手に取り、炉の中へと滑り込ませる。
赤く燃え上がる炎が魔力を取り込み、鉄と素材を溶かし混んでいく━━打ち直しの時だ。
「よし、やるぞ……!」
槌を振り下ろせば、打金の響きが工房内にこだまする。
手に伝わる感覚は、以前よりもずっと鮮明になっていた。
鉄の温度、素材の癖、力の流れ……まるで自分の身体が鍛冶場そのものと繋がっているみたいだ。
━━これが、発展アビリティ『鍛冶』の力……!
何度も何度も打ち込む内に、赤熱した刃は少しずつ新しい姿へ生まれ変わっていく。一打ごとに刀身へと、魔炎の力が注ぎ込まれる。
━━そして焼き入れ後、僅かに赤みがかった子狐丸の刀身が姿を現した。
「……できた」
炉の炎を映す子狐丸は、以前よりも強く、美しく、そして何より━━頼もしく思えた。
「━━銘は、変えんのか?」
背後から神様の声が響いた。
僕は静かに首を振る。
「はい、僕にとってはずっと“子狐丸”ですから」
神様は満足げに頷き、頭を撫でてくれた。
その温もりが、猛っていた心が落ち着かせてくれる。
しかし焼き入れをされた刃の様に、僕の心はより強固になっていく。
僕は子狐丸を胸に抱き、強く誓った。
「僕は……もっと強くなる。子狐丸と一緒に……!」
━━小さな狐人の冒険譚は、新たな段階へと進むのだった。
カナデ
Lv.1 → Lv.2
力 C683 → I0
耐久 C641 → I0
器用 B754 → I0
敏捷 S912 → I0
魔力 I0 → I0
《魔法》
《スキル》
【
・自作武具装備中に自動発動
・効果中、その武器の扱い及び全能力に対して高補正
ランクアップです。
ここぞとばかりに忘れられてそうなTS要素をぶち込みました。