鍛冶師志望のTS幼狐   作:黒幼狐

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4話 死の影

 

 

冷たい空気が、肌を刺した。

いつものはずの石壁が、今日はやけに重く迫ってくるように思える。

 

「……僕は、もっと強くならなくちゃいけないんだ」

 

小さく呟いて、自分にそう言い聞かせる。

 

神様に鍛えられ、初めて納得のいく武器を打ち上げた。

その武器を携えて初めて挑んだダンジョンでは、血を流しながらもなんとか生き延びた。

 

あれから何度も潜り、少しずつ経験を重ねてきた。

だから今日は、一歩先へ進む覚悟を決めてここにいる。

 

握るのは、僕自身が打ち上げた脇差━━子狐丸。

ひんやりとした柄が、掌にこもった熱を吸い取ってくれていた。

 

 

足音を殺しながら歩を進めていた、その時。

背後の空気が僅かに震える。

 

「……ッ!?」

 

振り返るより早く、黒い影が飛びかかってきた。

咄嗟に横へと跳ねたが、鋭い爪が頬を掠め、焼けるような痛みが走る。

視界に赤が滲んだ。

 

目の前に立っていたのは痩せ細った黒影━━ウォーシャドウ。その異名が脳裏に浮かぶ。

 

“新米殺し”

 

心臓が跳ね上がり、息が詰まる。脚が竦みそうになる。

 

「くそっ!」

 

振るった子狐丸は空を切った。

影は暗がりに溶け込み、間合いが掴めない。逆に外から爪が突き出され、肩を裂く。

 

血の匂いが強く漂い、呼吸が荒くなる。

 

(駄目だ……このままじゃ死ぬ……!)

 

頭の中に鐘が鳴るような焦燥が響き、脚が震えた。

死の恐怖が、体を縛る。

 

そのとき、視界の端に子狐丸が映った。

初めて炉に向かった日のことが蘇る。

熱、火花、槌の音。

痩せ細った腕で、それでも必死に叩き、ようやく打ち上げた一振り。

 

「……まだだ」

 

僕は鍛冶師だ。

自分が打ったこの刀に、誇れるように立たなくちゃいけない。

 

そう心に言い聞かせた瞬間、胸の奥で何かが燃え上がる。

 

━━スキル【鍛魂一如】

 

武器と自分が溶け合うような感覚が、全身を駆け巡った。

 

迫る影。

振り下ろされる爪。

 

身体は自然に低く沈んだ。そのまま子狐丸を斜に構えて受け流す。

 

━━キィン!

 

火花と共に爪は逸らされ、石壁へ突き刺さる。

そこへ渾身の突きを突き出した。

 

「はぁっ!」

 

刃が影の中心を貫き、悲鳴が空気を裂いた。

次の瞬間、黒影は粒子となって霧散した。

 

 

 

 

 

残心を解いた瞬間、全身から汗が噴き出し呼吸が乱れる。

僕は壁に背を預け座り込む。指先から滴る血の音だけがやけに大きく響いた。

 

「……は、ははっ。生きてる……僕、生きてる……!」

 

震え声と血の熱が、僕に生を実感させた。

本当に怖かった。命を奪われるかもしれない、その恐怖に。

 

━━でも、僕はまだ立っている。子狐丸と一緒に……!

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

地上に戻ると、神様が腕を組んで待っていた。

その厳しい眼差しに、思わず息を呑む。

 

「お主……無茶をしたな」

 

低い声が胸を突き、言葉が詰まった。

叱られるのが怖くて、目を逸らしてしまう。

 

だが次の瞬間、大きな掌が乱暴に僕の頭を撫でた。

硬い指先が、その包み込んでくれる様な大きさが、僕を落ち着かせた。

 

胸の奥が温かくなる。

 

「……よく帰ってきた。忘れるな、生きて帰ることこそが冒険者の第一の務めだ」

「……はい!」

 

涙が滲み、子狐丸を強く握りしめる。

 

 

まだ終わらない。

僕はこの刀と共に、もっと強くなるのだと、そう心に誓ったのだ━━

 

 

 




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前に書いていた小説で返信を考えるのに疲れて更新をしなくなった経験があるので……。へっぽこですみません。
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