刀使ノ巫女 護国の御刀   作:山さん

12 / 13
示威行動

 

推奨bgm 艦隊集結

https://youtu.be/VV_pGOoGk5E?si=TapMp8WA4A6rit-O

 

 

戦闘が終わり、〈いずも〉を中心とした第1護衛隊群に安堵の空気が広がりつつあった時だった。

 CICの薄暗い管制室に響く、緊張を孕んだ声。

 

 「水平線上に中国海軍艦隊、五隻を探知!」

 電測員の報告に、空気が一瞬で張り詰めた。

 「識別――056A型フリゲート二、052D型駆逐艦三!」

 次いで、追い打ちをかけるように声が重なる。

 「射撃レーダーの照射、ありません!」

 

 艦内にわずかな安堵が広がる。しかしすぐに、〈まや〉からの無線が届いた。

 「こちらイージス艦〈まや〉。各艦の主砲旋回確認されず。敵意示唆の行動なし」

 

 

---

 

CICの判断

 

 コンソールに肘を置いた山口鈴花・海将補は、モニターに映る艦影を睨みつける。

 「……さっきまで水平線の向こうにいたのに、わざわざ姿を見せた。ということは――」

 

 横にいた艦隊幕僚・神谷隆信一佐が小声で応じる。

 「“見ていたぞ”というアピールでしょうね。日本の新しい戦い方を、余さず観測していた……そのことを、隠すつもりはない、と」

 

 鈴花は短く息を吐き

「中南海は、どう出るのかしら?」

 

---

 

刀使たちの反応

 

 その報を聞いた刀使たちは、艦内で休んでいた体を起こし、甲板へと向かった。

 甲板に出ると、そこには悠然と進む中国艦隊のシルエットが見える。

 夕暮れの海を裂く灰色の船体。五隻が横一列に広がり、明らかに存在を誇示していた。

 

 「……わざと見せつけてきてる」姫和が唇を結ぶ。

 舞衣は双眼鏡を借り、遠くを覗き込みながら不安げに呟いた。

 「私たちのことも……見られてるのかな」

 可奈美は強がるように笑った。「見られて困ることなんてないよ! だって勝ったんだから!」

 しかし、その言葉には自らを奮い立たせる響きがあった。

 薫は煙草をくわえたような顔で「国際問題にでもなりゃ、ますます面倒だぜ」とぼやき、エレンは「ヘイ、映画のワンシーンみたいデス!」と肩をすくめてみせた。

 

 

---

 

見る者・見られる者

 

 一方、水平線の向こう。中国艦隊の旗艦〈西安〉の艦橋。

 司令官の張少将は双眼鏡を手にし、遠く〈いずも〉の甲板を凝視していた。

 そこに立つのは、明らかに制服を着た少女たち。彼女らが刀を背負い、ヘリから降下していく姿は既に無人機映像で確認済みだった。だが今こうして肉眼で見ると、その非現実感はいっそう強烈だった。

 

 「……あれが、“刀使”か」

 副官が隣で頷く。

 「はい。警察組織に属しているとされる。だが今は、正規艦隊の甲板に立っている。日本は国際法を巧妙にかわしつつ、新たな戦力を誇示しているのです」

 

 参謀の一人は吐き捨てるように言った。

 「未成年の少女を戦場に立たせるとは……狂気だ」

 だが別の参謀は眉をひそめ、静かに答えた。

 「狂気か、先進か……どちらにせよ、あの怪物を討ったのは彼女たちだ。」

 

 

---

 

見られていると気づく

 

 甲板の刀使たちは、向こうからの視線に気づき始めていた。

 沙耶香はわずかに肩を震わせ、姫和は無言で背筋を伸ばした。

 エレンはわざと手を振って「ヤッホー!」と冗談めかしたが、その仕草すらも挑発に映る危うさを孕んでいた。

 舞衣は不安げに「……私たち、本当に見られてるんだね」と呟き、可奈美は「だったら胸を張ってればいいよ!」と励ますように笑った。

 

 その姿を遠くで見ていた張司令官は、双眼鏡を下ろし、呟いた。

 「……血は争えぬ。山口多聞の孫娘が艦隊を指揮し、少女たちが怪物を斃す。日本は……また歴史を刻んだ」

 

 

---

 

山口鈴花の声

 

 その頃、〈いずも〉のCIC。鈴花は静かに告げた。

 「各艦、警戒態勢を維持。彼らが望むのは威嚇か観測だ。こちらからは矛を取らぬ。だが……一線を越えたなら容赦はしない」

 

 その声は冷徹でありながらも、艦内に安心をもたらした。

 刀使たちはその声を甲板で聞き取り、改めて自分たちが守られていることを実感した。

 

 水平線を隔てて向き合う二つの艦隊。

 交わされるのは砲火ではなく、無言の視線。

 しかしその静かな対峙は、嵐の前触れのように重く、全員の胸を締めつけてやまなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。