推奨bgm 艦隊集結
https://youtu.be/VV_pGOoGk5E?si=TapMp8WA4A6rit-O
戦闘が終わり、〈いずも〉を中心とした第1護衛隊群に安堵の空気が広がりつつあった時だった。
CICの薄暗い管制室に響く、緊張を孕んだ声。
「水平線上に中国海軍艦隊、五隻を探知!」
電測員の報告に、空気が一瞬で張り詰めた。
「識別――056A型フリゲート二、052D型駆逐艦三!」
次いで、追い打ちをかけるように声が重なる。
「射撃レーダーの照射、ありません!」
艦内にわずかな安堵が広がる。しかしすぐに、〈まや〉からの無線が届いた。
「こちらイージス艦〈まや〉。各艦の主砲旋回確認されず。敵意示唆の行動なし」
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CICの判断
コンソールに肘を置いた山口鈴花・海将補は、モニターに映る艦影を睨みつける。
「……さっきまで水平線の向こうにいたのに、わざわざ姿を見せた。ということは――」
横にいた艦隊幕僚・神谷隆信一佐が小声で応じる。
「“見ていたぞ”というアピールでしょうね。日本の新しい戦い方を、余さず観測していた……そのことを、隠すつもりはない、と」
鈴花は短く息を吐き
「中南海は、どう出るのかしら?」
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刀使たちの反応
その報を聞いた刀使たちは、艦内で休んでいた体を起こし、甲板へと向かった。
甲板に出ると、そこには悠然と進む中国艦隊のシルエットが見える。
夕暮れの海を裂く灰色の船体。五隻が横一列に広がり、明らかに存在を誇示していた。
「……わざと見せつけてきてる」姫和が唇を結ぶ。
舞衣は双眼鏡を借り、遠くを覗き込みながら不安げに呟いた。
「私たちのことも……見られてるのかな」
可奈美は強がるように笑った。「見られて困ることなんてないよ! だって勝ったんだから!」
しかし、その言葉には自らを奮い立たせる響きがあった。
薫は煙草をくわえたような顔で「国際問題にでもなりゃ、ますます面倒だぜ」とぼやき、エレンは「ヘイ、映画のワンシーンみたいデス!」と肩をすくめてみせた。
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見る者・見られる者
一方、水平線の向こう。中国艦隊の旗艦〈西安〉の艦橋。
司令官の張少将は双眼鏡を手にし、遠く〈いずも〉の甲板を凝視していた。
そこに立つのは、明らかに制服を着た少女たち。彼女らが刀を背負い、ヘリから降下していく姿は既に無人機映像で確認済みだった。だが今こうして肉眼で見ると、その非現実感はいっそう強烈だった。
「……あれが、“刀使”か」
副官が隣で頷く。
「はい。警察組織に属しているとされる。だが今は、正規艦隊の甲板に立っている。日本は国際法を巧妙にかわしつつ、新たな戦力を誇示しているのです」
参謀の一人は吐き捨てるように言った。
「未成年の少女を戦場に立たせるとは……狂気だ」
だが別の参謀は眉をひそめ、静かに答えた。
「狂気か、先進か……どちらにせよ、あの怪物を討ったのは彼女たちだ。」
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見られていると気づく
甲板の刀使たちは、向こうからの視線に気づき始めていた。
沙耶香はわずかに肩を震わせ、姫和は無言で背筋を伸ばした。
エレンはわざと手を振って「ヤッホー!」と冗談めかしたが、その仕草すらも挑発に映る危うさを孕んでいた。
舞衣は不安げに「……私たち、本当に見られてるんだね」と呟き、可奈美は「だったら胸を張ってればいいよ!」と励ますように笑った。
その姿を遠くで見ていた張司令官は、双眼鏡を下ろし、呟いた。
「……血は争えぬ。山口多聞の孫娘が艦隊を指揮し、少女たちが怪物を斃す。日本は……また歴史を刻んだ」
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山口鈴花の声
その頃、〈いずも〉のCIC。鈴花は静かに告げた。
「各艦、警戒態勢を維持。彼らが望むのは威嚇か観測だ。こちらからは矛を取らぬ。だが……一線を越えたなら容赦はしない」
その声は冷徹でありながらも、艦内に安心をもたらした。
刀使たちはその声を甲板で聞き取り、改めて自分たちが守られていることを実感した。
水平線を隔てて向き合う二つの艦隊。
交わされるのは砲火ではなく、無言の視線。
しかしその静かな対峙は、嵐の前触れのように重く、全員の胸を締めつけてやまなかった。