お控えなすってオイラは一夏君のご近所の甘味親分 泥水栗夢にござんす 作:ある日そこに居たであろうクマさん
甘酸っぱい夏の思い出。
彼女にとってのそれは...
その始まりは...
「大丈夫かい?ガキンチョ」
一人の
IS 正式名称:インフィニット・ストラトス それは現在のこの世界において最も大きなものであり、最も世界を変えたものである。
日本という極東の島国において生まれた天才ならぬ天災 篠ノ之束。今より10年ほど前に彼女が宇宙進出を目的に作り上げたマルチフォームスーツ。それが本来のISだった。
だが、とある事件。後に白騎士事件と呼ばれるそれを発端とし、ISはその性能を示すとともにどの様な兵器よりも強力なパワードスーツとしての側面でしか見られなくなり、様々な国がISの兵器運用を検討、そして開始。
製作者である篠ノ之束はその頭脳と実績故に追われる身分となり、家族も重要保護プログラムという保護とは名ばかりの政府の監視下に置かれる羽目になった。
そして一番重要なのはISというソレは
これが最も世界を変えたという所以。ISという現在の世界で最も優れた『兵器』は軍事的なものだけに飽き足らず。
男女のパワーバランスを書き換えたのだ。
そしてこれはある人物のISとその母たる彼女に関しての言葉なのだが...
ISは『兵器』ではない。
それは...彼女の...
それはとある春の日。
涼しくも暖かい春風を浴びたピンクの花弁が宙を舞い、眩しい陽の光が辺り一面を照し、その場の生きとし生けるもの全てに世の実感を齎す。
そんな日のこと。
とあるファミレスにて...
「おい、ちょっと店員さんよお注文を良いかい?」
「あっはーい!かしこ...ヒッ!すいません!直ちに承ります!」
その中の一席に座る客人。その人物に呼ばれたウェイトレスの一人が返事をし振り返った途端。顔を青ざめさせた。
それもその筈。何せ...
「おいおい、そんなに急ぐこたぁねえよ。それともオイラの顔はそんなに怖かったかい?」
「いっいえ、その様な事は...ただ、
その容姿と持ち物。先ず店員は指摘しなかったがその人物は赤と黒の着物に顔の上から天笠を被り着席しており、腰には今の時代には見ることのない刀を所有しており、本来なら警察に願わなければならないのではないのかと思わされる。
だが...
「あ?ああ、コイツの事かい?それなら気にしなくていいぜ。こんなとこで刀振り回すほど俺ァ野蛮じゃあねえよ」
「そっそうですか...」
(そう言われても刀って...やっぱり警察に電話を)
振り回す、振り回さないという次元では無い。その人物の言葉と共に安心感などが来よう筈も無く。店員は即座に警察などへの通報を悩んだ。
すると...
「ちょっと君何してんの!親分さんの注文聞いてあげなきゃ!」
「てっ店長!そっそれに親分!?」
「おっ店長!久しぶりだな!ちっと腹を空かせて近くに寄ったモンだからよ。食いに来たぜ。後、『元親分』だからな」
「ハッハッハ!私は元気そのものですよ『次郎長親分』。それより今日は何をお食べになります」
店の奥からこの店の店長である男性が現れ、ウェイトレスを叱りつつ眼前の不審者じみた格好の人物を親分と呼びながら親しげな様子で話しかけていく。それを見た彼女は改めてその人物を何者なのかと思っていた。
一方。その人物は店長の返事を聞くと同時に彼から注文を気かけれたのでメニュー表から幾つかの食品名を見て注文を行っていく。
「人の話聞けっての.....じゃあ、今日はデラックスオムバーグセットを一つとロイヤルチョコレートパフェ5つ。それとバニラアイスを10個くれ」
「かしこまりました。少しお時間をください。それと、君も手が空いたなら手伝って!」
「わっ分かりました!」
そして注文を取り終えると共に二人は厨房へと走り去っていくのだが...
「てっ店長!あの人はお知り合いなんですか?明らかに一般のお客様では」
「ああ、『彼女』は日本一巨大なヤクザの
「やっやヤクザのボス!?とんでもない人じゃないですか!大丈夫なんです、そんな人入れちゃって!?」
店長と共に厨房に入ったウェイトレスの女性。彼女が店長から聞いたのは先程の人物が日本一のヤクザの親分...
正確には...
「ダイジョウブ、ダイジョウブ。彼女はもう何年もこの店の常連だし、それに本人も言ってたけど元親分だからさ...それに彼女が来てくれる事で得られる恩恵もあるんだよ」
「おっ恩恵...ですか?」
『元親分』だと言う事。
そして...
「そう...この地区って強盗被害とか多いでしょ。でもこの店には強盗が入ってくる事ってそうそう無いし、入ってきてもすぐに警察のお縄になっちゃうんだよねー」
「それって...まさか」
その時だった!
「キャアアアァァァァッッッ!!」
「!?」
「おっ始まったかな?」
突如として厨房の外側から女性の悲鳴が聞こえ、更に他の場所からは銃声が聞こえてきた。そしてそれを聞いたウェイトレスは急いでその場を駆け出し、店長は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせてその場を飛び出していく。
そして駆け出した二人の前に広がったのは...
「おい動くな!大人しく金を出せ!」
「さもねえと客も従業員もぶっ殺すぞ!!」
そこに居たのは明らかに堅気ではない二人の男達。顔の上からマスクを被り、黒ずくめの服装にそれぞれが拳銃を所持し、その内の一人が近くの女性ウェイトレスを人質に取るように頭に銃を押し当てている。
「キタキタアァァァァ!!これを待ってたんだ!」
「店長!?何を喜んでるんですか!アレ内のスタッフ!3年目の川崎さんですよ!?」
「えっうちの職場3年目なのにあんな悲鳴あげてんの?褒めるべきか、辞めさせるべきか」
「今日初めてだったけど、この店頭おかしくありませんか!?少なくとも店長は絶対おかしい!」
「おい、てめえら!動くなっつってんだろうが!」
その強盗であろう二人組と人質に取られている川嶋という従業員を見て目を輝かせつつ、その彼女をクビにするか褒め称えるかどうかを考え店長とその店長の様子を見て今日から始めたこの店のバイトを辞めてやろうかと思う女性ウェイトレス。そしてその二人の姿を確認した強盗達も二人に銃を向けるが...
「おい...」
「あ?なんだテメ「終いだよ、クソガキ」あ?何言って、やが...る?ま...」
「ん?どうした!なんでしゃべ...おい、なんでだよ?なんで、お前」
「嘘...!!」
「ほら言っただろう!恩恵があるって!それにしてもカッコいいなぁ〜〜〜!!!!」
強盗達は圧倒的に『遅かった』としか言いようがなかった。もしくは間違えたとも...彼等は数ヶ月前から犯罪に手を染めた者達であり、この地区での活動は初めてのものだった。今までも強盗紛いの犯罪を幾つか犯してきたものの、それでも普通の警察では彼等を捕まえる事は出来なかったのだ。そしてその結果、彼等はある噂を聞いた。
どんな犯罪者でも犯罪を犯すことの出来ない場所が存在すると...二人はそれを聞きつけるや否や、即刻その場で...この店で強盗を行った訳だが...
その結果が
無論それは...
「おい、おめえさん。言ってたよなァ?」
「ヒィィィッッ!?」
「動くな?大人しくしろ?おもしれー事抜かすガキだな。これから動かなくなるのは...」
「いっいやだァァァァッッッ!!!!」
「!」
もう一方も同じ。
彼等はあまりにも無謀だった。彼等の行為は獰猛な獣の前に全裸の状態で飛び込む行為と同じ。海の王者の前で生身の人間が水中戦を挑む事と同じ。
この世で人を最も殺すものがある。
それは人自身の圧倒的な罪...
「おめえも一緒だろ?」
「あァァァァァァァッッッ!!......」
「凄い...!!」
「そうさ、彼女の強さを...その圧倒的な姿を見るために僕はこの店を持っている!」
この世で一番人を殺し得るのは『未知』である。
人はあらゆる面で『死』を回避しようとするが、それは『死』に繋がる方法を知っていれば回避出来る事も可能となる。正確にはソレを知っているだけでその生存率は格段に上がるだろう。
だが、今回の彼等は知らなかった。この地区に、この街に、この店に、この国に...
この様な『
思わなかったのだ。
そして...
「さあて...大丈夫かい、お嬢さん?」
「はっはい!ありがとうございました!」
「そうかい。無事でなによりだ...それと店長。オイラの剣に魅入るのは結構だが、ちゃんとお嬢さんの事も心配してやんな」
「ああ、すまないね。君の刀捌きを見るとやはり興奮を抑えられないんだ」
短くも長い様な強盗事件があっという間に終わりを告げたのだが...
「さて、改めて品を料理を待たせてもらうかね」
「ああ、もうすぐ出来るから後少し待っておいてくれ」
「店長...すまねえ。やっぱりさっきの注文無しで良いか?」
「うん?別に構わないが...どうかしたのかね?そこにいる強盗犯達の事なら警察には誤魔化しておくが...」
その時、一度席に戻ったその人物が天笠の中で冷や汗を流し、その声から何か異変を感じた店長が『彼女』の言葉に違和感を感じつつも返事を返す。そしてその中で今日から働き始めたウェイトレスの女性はある事に気づいた...否、気づいてしまった。
「あっあの...店長。何か外が騒がしいというか...」
「なんだと?それは「
「ああ。実は最近勧誘という名の巻き込み事故を狙ってやがってな」
店の外側から響き渡る大音量での呼びかけ。それはあまりにも大きく、あまりにも広く、あまりにも喧しかった。
だが、『彼女』はその知名度故にどれだけ喧しかろうが人を集めてしまう。むしろ彼女がこんなところで人の名を呼んだという時点で人は集まってしまう。
そう、彼女の名は...
「嘘ッ!店長!織斑千冬さんですよ!世界最強のIS操縦者で
織斑千冬。ISの産みの親である篠ノ之束の友人であり、世界最強の称号を持つ女。現在は彼女達の前に座っていたその人物を追いかけるハンターである。
「じゃあ急で悪いがオイラは逃げさせてもらうぜ!」
「もしよければ裏口を使ってくれ!その方が目立たなくて済むだろう?」
「ああ、すまねえな店長!」
「問題ないさ、君にはお世話になってるからね。また食べに来ておくれよ」
「おう!それじゃあな。お嬢さん達もお気をつけてなすって!」
「「はっはい!ありがとうございました!」」
そしてそんな彼女の姿を見た『彼女』脱兎の如くその場を後にしていく。それは追いかけられているからなのか?はたまた相手が相手だからなのか?それは誰にも分からない。
ただ、分かる事があるとしたら...
「クリーーーイムッッッ!!貴様ァァァァ!!」
「たくっしつこい女は嫌われるぜ。ちーちゃん」
「誰がちーちゃんだ!?お前も束と同じ様な事を言うな!!それより今回こそはIS学園に入ってもらう!」
「なんでオイラがそんなとこに行かなきゃいけねえんだよ?」
「お前が野に放たれているとIS委員会や政府からの苦情が絶えんのだ!一般人への暴行に国の管理するISの破壊!挙げ句の果てに束と二人でテレビカメラを前に一般レストランで食事。これだけやっておいてまだ理由が無いと言うのか!?」
「いや、分からん」
「貴様ァァァァッッッ!!!!」
分かるとしたなら、それは彼女がどこまでも『自由』であり、『窮屈』を嫌う事。
これはとある事情からISの世界で二人の幼馴染達と愉快な日々を送る事になったヤクザ者...ではなく甘味好きの侍の物語。
仁義と甘味。二つの言葉を胸に今日もその一刀を振るう!
その者の名は...
「お控えなすって」
「あっしは生まれも言えず、育ちも言えず、親の名も口にする事すら出来ぬ未熟者。ただ、先達から預かったモンと
「名を...」
「
「どうか、皆様方。末永くお付き合いのほどを...」
「何卒、よろしくお願いしやす」
泥水栗夢。それが彼女の名であり...
この物語の主役の名である。