ようこそうろ覚えな世界の教室へ   作:無名の誰かさん

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初投稿です。不慣れですがよろしくお願いします


とうに賽は投げられた

 輪廻転生、というものに対しては、「あったとして自分に関係ないだろ」というのが個人的な感想だった。

 

 俺は前世の自分の事など知らない。当然前世のその前も、それを遡り続け、俺の起源になったモノは何なのか。はたまた俺自身がその起源なのか。それを証明出来るものは無く、証明出来ずとも己自身にその確信となる物があるわけでも無い。「前世の記憶を持った人」自体はそれを主張する人物がネットの海にいくらでもいるだろうが、結局はどこまでいっても世間ではオカルト扱い。

 

 ともすれば、仮に輪廻転生というとものがあったとしても、来世の「俺」は俺であった事など綺麗さっぱり忘れ、俺の培った経験や教訓など知らん顔でーーいや、前世の感性が来世に影響しないとも言い切れないが、ともかくとして、自分とかけ離れた生を送るであろう来世の自分は、果たして同じ人物と言えるのか。

 

 俺は別人だと思った。他人事になるのなら、前世来世のあるなしなど「今の自分」にはどうでもいい。

 

 

 「どうでもいい、はずだったんだけどなぁ」

 

 記憶を保ったままの輪廻転生なんてものをこの身で体感したとあっては、さすがに考えを改める他なかった。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 先程の供述を一部訂正しよう。俺は前世の自分を知っている。

 

 といっても、生まれながらに全ての記憶を持っていたわけではない。恐らく始まりは読み書きを教わり始めた頃。

 両親から文字通り手取り足取り教えを請いながら、妙なモヤモヤーー今にして思えば既視感に似たものであろうそれをーー抱えていた。

 

 そんなある日、両親と共に、当時入院中の祖母のお見舞いに病室を訪れた際に強烈な既視感と共に激しい頭痛に襲われた。後から両親に聞いた話ではひどい発熱もあったらしい。

 

 不幸中の幸いにも、そこが病院だったこともあって迅速に対応が行われ、再び目が覚めた時、そこから明確に前世の記憶を持った「俺」の人生が始まった。

 

 病室における強烈な既視感は恐らく、前世における最期の時を過ごしていた為だろうか。社会人になってからストレスの発散先をアルコールに求め続けたことが祟ったという情けない物ではあったが、それが今の状況を作る最大の鍵になるとは分からないものだ。

 

 悔いのない人生だったかと言われるとそうでもないが、だからといって一からやり直したい、と思えるほど苦悩にまみれていた訳でもなかったのでどうしようかと悩んだが、人生二週目に興味ないからと、ボーッと過ごすのもさすがに今の両親に失礼かと思い、ひとまず真っ当な子どもらしく真面目に過ごすことにした。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 幸運だった点としては、前回と同じく日本生まれかつ、生まれた年が前回とほとんど変わらなかった事か。全く同じ年ではないが、同世代と言っていい程度の誤差の範囲。

 輪廻転生というものは過去への出生にも適用されるのかという疑問が過ぎったが、そもそも輪廻転生の原理が分からん以上考えても答えが出るはずもないのでそういうものだと受け入れた。

 

 勉強や運動を習慣化する重要性。コミュニケーション経験の価値は“前回”で嫌というほど痛感したので、必要以上に疎かにする事は出来ない。

 問題としては、それらのモチベーションの維持。ーーもちろん俺の意志力も重要になるが、それ以上にーー肉体に引っ張られている、とでも表現すればいいのか、ともかく精神面のコントロールに難儀した。

 

 幼少期はちょっとした迷い、不安の感情があるとそれが膨れ上がる事を抑えきれず、泣き出してしまうこともしょっちゅうだった。子どもとしては当然とはいえ今の自分の状況だと正直堪えた。

 こういった事もあり、小学生に上がってからも、プラス面マイナス面問わず些細な事でもテンションが乱高下していき、ようやくある程度のコントロールが出来始めたのは中学に上がってからだった。

 

 ただ、ここで過去への出生というものが効いていた。周囲がゲームや漫画などに目を輝かせている中、俺は目新しさではなく懐かしさで動けたこともあり、娯楽による誘惑をほどほどに受け流すことに成功した。

 その甲斐あって、勉強、運動両面において優秀だと胸を張れる人間にはなれた。少なくとも、平均より多少勉強が出来る程度のモヤシだった前回とは比べるまでもなく。

 

 

 

 そして月日は流れ、高校入学の春。

 

 中学までの成功体験の積み重ねにより早い話が調子に乗っていた俺は、「学費の事は気にしなくてもいい」との両親の言葉に甘え、前回の俺では受験しようとも思わなかったであろう難関学校の挑戦を行い、東京にある「高度育成高等学校」への進学を果たした。

 

 国の未来を支える優秀な人材を育成すべく設立された進学校であり、進学率、就職率共に100%を謳っている。

 

 こんな壮大な学校。前世にあれば名前くらい聞いたこともありそうだが、それこそこの学校を設立する教育政策をとった内閣総理大臣の名前を初め、前世とは明らかに違う部分はこの十年でちらほら見えたが、特殊な技術が流通しているとか、実は魔法があります、なんて事はなく、世界の大本の部分に変化はない。前世の記憶を持ったままの輪廻転生、なんて物に比べればどれもこれも些細な変化にすぎない。

 

 それより目下の問題はこれからの学校生活だ。「未来を支える優秀な人材の育成」なんて壮大なコンセプト。そこに入学を許された同級生達のレベルも計り知れない。

 正直、勉学面における知識の貯金は中学二年の後半辺りで尽きた。運動面においても、確かに優秀であるという自信はあるが、地元の中学でも俺より運動能力が上の同級生は何人もいた。悪く言えば何か飛び抜けた物が無いのも確かだ。

 

 不安も、緊張もある。だが、「せめて両親を困らせないように」というボンヤリとした理由で始めた人生も、今は「自分がどれだけやれるか試したい」というモチベーションに変わっている。

 前世の経験がこれから先あまり優位にならないからこそ精一杯頑張ろう。この三年間を糧にして、俺の「実力」を───

 

 

 

 

 

 

 

 

創作物(ラノベ)の世界じゃねぇかここ……!」

 

 拝啓、両親へ。初日からどデカい壁にぶつかりました。泣きそうです




・主人公

転生者。前世、今世共に男性。

学生時代はゲーム、アニメ、ラノベなど色々楽しんでいたオタクだったが、社会人になってからは年が経つほどに酒の量が増え、徐々にそれらから離れていく。最終的にはその生活習慣の影響で早逝。

よう実はそんな学生時代に読んでいたラノベの一つでしかなかった為、よう実の世界が現代学園物であった事もあって、高育のシステムを聞いてようやく今世の世界の正体を知る。本人の感覚では数十年前の物であり、しっかり最後まで追っていたわけでもなかったので、最早にわか知識程度しか持ち合わせていない。

所属はBクラス

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