書きたいものをつめこんだバンドリ小説   作:古井戸の少年

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2話

現在、紅真(こうま)は燐子と一緒に燐子の自宅に向かって歩いていた。お互いにただいまおかえりを言った後、会ったのはいいもののその後のことを考えていなかった。なので一度蒼輝(そうき)に連絡を入れるかと考えていたところ、燐子が家へ来ないかと誘われ、今に至る。

 

おそらく色々と聞きたいことがあるだろうなと思った紅真(こうま)は燐子の家に招待させてもらうことにした。

 

「一応確認だけど、急にお邪魔していいの?」

「うん。多分……お母さんもいいよって、言ってくれると思う……」

 

そう言ってニコッと笑う燐子。かわいい。

 

「ところで……」

 

そしてふと思ったことが一つ、紅真(こうま)はそれを聞くことにした。

 

「よく一目で僕だって分かったよね。なんで分かったの?」

 

おそらく、ただ偶然公園にいる青年を見つけそれが偶然紅真(こうま)だったという感じだとは思う。が、彼の見た目は昔よりだいぶ変わっており、幼少期は短髪でよく走る明るい雰囲気な子供だったが現在は髪は肩より少し低い位置まで伸びていて顔の半分が埋まっていてまとっている雰囲気も暗く近寄るなオーラ全開という幼少期と姿が真反対なのだ。

 

「えっと……なんとなく、かな」

「なんとなく」

 

まさかとは思ったがなんとなく紅真(こうま)本人だと認識したようだ。まあ彼は彼で過去の記憶を基にした結果似ていると判断したので似たようなものだが。

 

「……ねえコウくん」

「ん?」

「私ね……すごく、寂しかったんだよ……?9年と半年、かな?コウくんがいなくなってから、ずっと」

「……」

 

紅真(こうま)は燐子の話を黙って聞いていた。とゆうか黙って聞かざるを得なかった、罪悪感がすごいのだ。

 

事情があったとはいえ人見知りが強かった彼女は近所に住んでいて尚且つ赤ん坊の頃から面識がある彼に懐いていたが、それこそ他の友達より(というよりあんまりいなかった)紅真(こうま)を遊ぶことを優先していたため(尚彼がちょっと無理やり連れ出していた)あまり他に深い話ができる人がいなかった。その為、彼が行方不明になったと知った時の燐子は相当ショックを受けていた。とはいえもう一人の幼馴染にも励ましてもらったり両親など、周りの人たちの協力のおかげである程度メンタルは回復したのだが、それでも傷は深かった。しかも既に法律の7年を過ぎてしまったのもあり、ほぼほぼ諦めていたのだ。

 

「正直……もし生きていて、また再会したら、文句を言おうかと……思っていたけど……今日偶然見つけたら、それが吹き飛んじゃったよ」

「……ごめんね」

「謝らなくていいよ……。ちゃんと、戻ってきてくれて……生きているのがわかったから」

 

そう言って燐子は微笑んだ。そして紅真(こうま)は燐子が自分がいない9年半ずっと忘れずにいたことに驚いた。まあ幼稚園からそれなりに仲良く遊んでいたので覚えているかもとは思っていたが。紅真(こうま)はそれが少し嬉しく感じて少し口角が上がる。

 

そうして燐子の家に向かうまで昔話に花を咲かせた。咲かせている中で、ふと思った。

 

(あれこれ昔何があったか聞かれるよな?いや絶対聞かれるなどうしよう説明どうしよう)

 

だがしかし、そんなことを思った時には既に燐子の家の前にいた。

 

燐子が直接言ったわけではないがおそらく聞きたいと思うだろう。いや、これは話さないといけない義務がある。そうなると彼にとっては少し厄介だ。なので……

 

「りんちゃん、ちょっと連絡しないといけない人がいるから電話してきていい?」

「あ、うん、いいよ……」

 

紅真(こうま)はありがとう、とお礼を言って少し離れてガラケーを開き、蒼輝(そうき)に電話した。

 

『どうした紅真(こうま)。ちゃんと会えたのか?』

「ああ会えたよだから助けろ」

『ずいぶん焦ってるな。緊急事態か?』

「緊急の中の緊急だ。僕の過去、なんて説明すればいい?」

『あ』

 

嘘だろお前……と思いながら頭の中で嘘の設定を素早く考える。

 

なぜ嘘の説明をしないといけないのか。それは紅真(こうま)が体験した出来事が、到底人には言えないしそもそも言っても信じてもらえるようなものではないからだ。

 

『……ま、どうにかなるだろお前なら』

「んなわけあるか!と言いたいところだがなんとかできそうではあるんだよなぁ……」

 

まあ嘘がバレた時の気まずさがやばいがな、と心の中で思う。

 

『とりあえずお前は俺の養子ってことにしよう。一応そういう戸籍で登録してるわけだし』

「……その方がいいか。けどこの9年半の具体的な中身はどうする?」

『俺との出会いとかを参考に適当に考えてくれ。お前ならいけるだろ』

 

紅真(こうま)は少し考え、他に案は思いつかないし何よりどんな修羅場をも乗り越えた人間にできないことはない、そう思った。

 

「じゃあ適当に話しとくわ」

『おう。終わったら報告忘れんなよ』

「わーってる」

 

紅真(こうま)は電話を切り燐子の元へと戻った。

 

 

家に入ると燐子の母である白金優子(ゆうこ)紅真(こうま)を泣きながら抱きしめその流れで騒ぎを聞きつけた父の涼平(りょうへい)も泣きながら抱きしめてそれにもらい泣きした燐子も、といった感じで紅真(こうま)はおしくらまんじゅう状態で潰された。

 

苦しかったが、同時にこんなに心配してくれたのかと嬉しい気持ちと罪悪感を感じた。罪悪感を感じた主な理由は、生きている連絡はもっと早くできたのに連絡しなかったからだ。

 

そして現在、なんとか3人を落ち着かせてリビングに戻り燐子がお茶を淹れてくれている間、紅真(こうま)は白金夫婦と雑談しつつ蒼輝(そうき)と出会った頃の記憶を掘り起こし違和感のないように話を構成していった。マルチタスクである。

 

「お茶、持ってきたよ」

「あ。ありがとう」

 

燐子が戻ってきたので思考を中断。そしてお茶を飲む。

 

お茶の間の雰囲気が変わる。そこから感じるのは、好奇心や恐怖。

 

「さて……とりあえず改めて、ただいまです。あといきなりいなくなっててごめんなさい」

 

そう言って頭を下げる。それを見た3人は真剣な顔つきになった。

 

「多分、いや、確実に皆さんはこの9年半僕が何をしていたのかがすごく気になってると思います。それを今から説明します」

 

ただし、と一度間を置く。

 

「今から話すものは一見信じられないような話や少し刺激的な話になります。僕もその辺の表現はなるべくマイルドに話すようにします。それでもよければ、聞いてくれますか?」

「……ああ、聞くよ」

「覚悟の上よ」

「私も……」

「わかりました。では話します」

 

3人は頷いて話を聞く体制なった。それを確認した紅真(こうま)は話し始めた。

 

 

行方不明になった紅真(こうま)の経緯を簡単に表すとはこうだ。

 

・約9年半前、燐子と遊んだ帰り道でとある組織に拉致された

・そしてそこで様々な実験を行われ、最終的に紅真(こうま)は戦争に参加させられた

・そして6年前にゴミ捨て場で食べ物を探している所にとある人に拾われ、現在その人の元でアルバイトをしている

 

ざっとこのような説明を3人にした。

 

それを説明してお茶を一口飲む。

 

「以上が僕が過ごしてきた9年間……9年と6ヶ月の間に起こった出来事です」

「「「……」」」

 

3人の顔から読み取れる感情は驚き、衝撃、あとは同情だろうか、そんな顔をしていた。当たり前だ。多少表現は濁して説明したとはいえ目の前にいる人間は自分達が想像を絶する体験をしているのだから。

 

(まあ当然の反応だな)

 

紅真(こうま)はこうなるだろうなと思っていたので平然としている。おそらく3人は必死に頭の中で整理しているだろうと思いもう一度お茶を飲んだ。

 

「……紅真(こうま)君」

「なんでしょうか」

 

初めに口を開いたのは涼平だった。どんな言葉が来るかと紅真(こうま)は少し身構えたが、それは杞憂だった。

 

「……すまなかった」

「……え?」

 

なぜなら、涼平が頭を下げたからだ。紅真(こうま)は驚いて少し固まってしまった。

 

「……いやいやいや、なんで涼平さんが頭下げてるんですか?」

「君がそんな辛い体験をしていたとは知らずに君の過去を聞いてしまったんだ。申し訳ない」

 

どうやら過去を聞き出してしまったことに罪悪感を感じてるらしい。死んだと思っていた少年が唐突に帰ってきて、何があったのか、今までどうしていたのか等々、気になることはたくさんある。しかし、もしそれがつらいものであったのなら、言葉にはしなくとも聞きたいという雰囲気を出してしまい、気を使って話してくれたと考えたのだろう。

 

紅真(こうま)はふっと笑ってこう言った。

 

「別にいいんですよ、9年半前の出来事だし吹っ切れてるんで。それに、遅かれ早かれ話さないといけないですし、こういう過去の話は早いうちがいいって言うじゃないですか」

 

確かにいきなり拉致られて知らない場所に連れて来させられ、辛い思いをしたのは事実。しかし、これは彼の中で一種の経験として落とし込まれている、言ってしまえば過去のこと。なので話すこと自体は問題ないのだ。

 

「そう、なのか?」

「ええ。お二人には小さい頃からお世話になったからこそ話したがいい……いや、話すべきかなって思ったから今回話したんです」

「……そうか」

 

そう言うと涼平はどこかほっとしたような表情になった。

 

「はいっというわけでこの話は終わり。話題変えましょうよ。僕だって聞きたいこと、話したいことが沢山あるんですから」

 

紅真(こうま)は自身の雰囲気を変え、頭の中に聞きたいことをリストアップしていった。

 

その後、優子が作ってくれた料理を食べながら過去の思い出話に花を咲かせた。初めて出会った時のこと、一緒にピアノを弾いたこと、紅真(こうま)が行方不明になった後の出来事等々、まるで離れていた時間を取り戻すようにたくさん話した。しかし、そんな時間はあっという間に過ぎて時刻は夜8時。泊まっていけという涼平の提案もあったが一度帰らないといけないと言って断った。まだまだ話したいことはあるので泊まってもよかったのだが、蒼輝(そうき)からメールで帰還命令を受け取った。

 

また必ず来ると約束して帰ろうとしたのだが、それを燐子が必死に止める光景が出来上がった。

 

「こら燐子、紅真(こうま)君困ってるでしょ?」

「で、でも……」

「……じゃあこうしようか」

 

紅真(こうま)はメモ紙を取り出し電話番号とメルアドを書いて燐子に渡す。

 

「何かあったらここに連絡してよ。いつでも連絡していいからさ」

「……わかった」

 

若干不満げではあったが、納得した表情でうなずいてくれた。

 

 

『いやーなんとかなってよかった』

「ほんとだよ。帰ったら作戦会議だクソったれ」

 

帰り道、紅真(こうま)蒼輝(そうき)と話しながら帰路についていた。今は絶賛蒼輝(そうき)に文句を言ってる真っ最中である。

 

『まー、これで無事会うことができてよかったよ』

「そうだな、僕が勝手に気まずさを感じてただけで会えてよかった」

『あるあるだな』

 

蒼輝(そうき)笑って答えた。

 

『なあ、これの後に言うのもアレだが……』

「ん?」

 

真面目な声色になったのでしっかりと聞く体制になる。

 

『今回その幼馴染……りんこちゃん、って言ったっけ。その家族にお前の過去を話したんだよな』

「うん」

『本当の話はするのか?』

「いや、しない予定」

『え、そうなのか?』

 

蒼輝(そうき)は驚く。紅真(こうま)が白金家族に話したあの過去は、説明用にあえて一部話さなかった部分がある。なのでいつか本当のことを話すと言うかと思っていたのだ。

 

「信じられないような話っていうのもあるけど……もし話してそれでフィルターみたいなのがかかって僕を見る目が変わって大事な時にそれが足枷になるのが嫌なんだよ。あとその話の一部は一般人が知らなくてもいいし知っちゃいけない話も含まれてるからさ」

『……』

「それに嘘は言ってないよ?ただ背景や()()が違うってだけで」

 

紅真(こうま)が言おうとしていることがわかってしまった。それゆえに少し黙った。

 

『……それは俺らの、〈鈴音〉の活動の話も含めてか?』

「それもあるけど、僕の中で大きく占めているのは僕の話していない()()()()()。仮に燐子が俺が鈴音に入ってるのを知ったらそれ関連の事件に巻き込まれる可能性があるし、あと僕が過去に行ってきた様々な出来事、それこそ大量虐殺とか言えるわけないじゃん」

 

化け物と言ってくる人々、必死に、その人たちのために戦ったのに、待っていたのは罵詈雑言の嵐。挙句の果てに紅真(こうま)を殺そうとした、紅真(こうま)の能力を奪おうとした。

 

故に殺すしかなかった。殺すしか、道はなかったのだ。

 

実験体にされたのも本当、戦争に参加したのも本当。

 

しかしそこには別の真実が隠されている、話すにはまだ早い真実が。故に真実を一部省いた。

 

「というかさ、信じてもらえないと思うんだよねこの話。だって現実離れしすぎているし」

『一つ、聞いてもいいか?』

「何?」

『……お前が今までしてきたことについて後悔してるか?』

「……。いーやあんまり?でもちょっとだけあるかな。もう少しこう、いいやり方があったんじゃないか、こんな選択ができたんじゃないかって。ま、今更だけどね」

『……そうか』

 

蒼輝(そうき)は安堵した。過去を振り返っていることから紅真(こうま)にはまだ人の心があることがわかったからだ。

 

「ところで、この後僕は休みか?」

『ああ。もし仕事しようとしたら軟きn「わかったから!ちゃんと休むから!」ならよし』

 

電話の向こう側で蒼輝(そうき)が笑った気がした。それを想像してやつをはいつかしばくと心に決めた。

 

「じゃあな後でな』

『おう』

 

そう言って電話を切り夜空を見る。その空には久しぶりに見るオリオン座が輝いて見えた。




りんりんの両親は公式の設定がわからないのでオリキャラとして出しました。
いたら……優しく教えてください(豆腐メンタル)
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