時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~ 作:黒影時空
小説カキコ~メイドウィン小説wiki版まで知ってて見てくれた方はご了承ください。
また、黒影もどき(ポチ)の性格も多少改変が入りました。
「おいテメエ! ネジは食い物じゃねえんだよ吐き出せ!」
「あっこの子何与えればいいんだろ……何食べるの? というか何食?」
「とりあえずビスケットから与えてみるかのう」
ミリィの教育はてんやわんやだった、マガイモノを発展させるというより未知の生命体の実験に近い、不死でよかったがこんな調子では育児なんてとても無理だろう。
ジルトーぐらいしか子育ての経験を持つ者はいなかったので苦労は絶えないが、サヤは意外と乗り気だった。
不安なのはマガイモノは睡眠を必要としないこと、サヤとジルトーはある程度人間をやめたとは言え睡眠と食事は避けられない、人形のくせにメシ必要なのかよと松山はマジにツッコミを入れた。
その為……深夜は松山と魔トリョーシカという自他共に認めるほど扱えるか怪しい二人に任せなくてはならないのだ。
「まつやま、まつやま」
マガイモノは成長がかなり早く既に言語を会得しつつある、サヤはミリィが松山の名前を最初に覚えたことに納得がいってない様子であったが……。
魔トリョーシカはというと成分の研究とちょっとした実験ぐらいでスキンシップは全然してくれない、彼女は人造人間を作るために精神の大事なところを色々と摘出しているため興味のあること以外には取り組まないし罪悪感も覚えない、かと思えばキレる時にはキレる変なやつである、松山によるとマガイモノ成分活性によるハカイモノ化が進行しているとか。
まあ結局どういうことかというお育てているのも話し相手もほぼ松山である。
「こんな奴がアレと同じで全世界の能力を自由に使えるのか……おいお前はな、本当なら一分間だけどんな物にも変身できてどんな能力でも使えるバケモノなんだよ」
「ん?」
「いいか、今のお前はバケモンみたいなもんだ……なにをしでかすか分からねぇ不気味な化け物」
「いや! いや!」
「ほー、化け物がどういう意味かまで分かるようになってきたか、お前は手が付けられない化け物なんだよ現状は」
「や!」
「嫌ならお前は人の為になれ、お前はなんでも出来る、覚えたら空を飛ぶことも街をぶっ壊すことも人を殺すことだって……いや殺人なんて簡単すぎるか、じゃあ世界を滅ぼすことだって出来る」
松山は松山なりに何が悪いのかどうなってはいけないのか、反面教師とは少し違うが夜中に情緒教育を行っていた。
まあ、エージェントなりに怪物の飼育や研究をしていたかもしれないが原作ストーリーの記憶しかない松山には分からないことだ、とりあえずそれっぽいことを言っておけばためになることは分かっている。
「お前はどんなことでも出来る、だが俺たちは違う、サヤも爺さんもあの仕事ばっかしてるくせに見てるだけのバカもお前ほど万能じゃない……何でも出来るお前はどんなふうにも生きられる、俺はノブレス・オブリージュは信じないがどうせ出来るなら人を守るべきだって……まああの爺さんは言うだろうな」
「まつやま……まつやま!」
「爺さん、俺に科学を教えてほしいんだ」
「何!? み、ミリィ……貴様たった一晩でそんなに喋れるようになったのか!?」
「ああ、俺でも今思うとビックリしてるけどな……こいつの成長力どうなってんだよ」
「単純って時に便利だよね〜」
「テメェ他人事だと思いやがって……マジでデータ取りしかしてなかったな! それでも次女か!!」
「ほぼ年近い姉妹だったから育児とかあまり経験ないんだよね」
ジルトー達が目を覚ますと、ミリィの顔つきは別人のように変わり、精神的も松山たちとさほど変わらないくらいにまでなっていた、それでいてたくっちスノーとは雰囲気が違う。
性格も自分はどんなことでも出来るからその分人を守らなくてはいけないという教えにより、真面目で勤勉な性格となりサヤ達が寝ている間にずっと勉強していたという、マガイモノの変身能力は持っていないが成分のコントロールは自在で形を変えること自体は可能という。
「いいんじゃない? ボク達としてはちゃんとした奴に育てるという目的は達成されたし」
「いやでも……こういうのって多少は時間かかるの想定してたけどこんなあっさりといくものなの!?」
「だが成長したといえどまだ思春期みたいなものじゃ……ここで安心せずじっくりと見守ってかなくてはな……」
「お前らマジの子育てみたいになってんじゃねえか……何様だよコイツらドロドロエイリアン相手に」
「一番ミリィと近い人は黙ってて!」
「ケンカかオラ上等だ雌豚!! テメェも徹夜して俺と同じくらい苦労してみろ!!」
ミリィはこんな研究所の中ですくすくと育ち、ジルトーやサヤから実の子供のように可愛がられて出来ることを増やしていった、たくっちスノーと区別をつけるために成分を利用した技『ブラックアタック』『ブラックシールド』などと体を改変する技が多い、体を張ることを覚えた結果だろうか。
そして遂に時は来たと松山からミリィを作った目的と、もう1人のたくっちスノーについて聞かされた。
「……俺はその悪い方の俺を倒せばいいのか? 説得で解決できる?」
「状況によっては殺し合う覚悟しておけ、アイツ現状ふざけてるが強いからな」
時空犯罪者の方のたくっちスノーも教育しながらしっかり監視を入れているが、密かにヒーローを呼び出したり周囲を避難させる装置を送り込んだりと手を出したが、どんなキャラクターにも変身できる彼は簡単に各世界を襲撃してしまう。
更にたくっちスノーもまたマガイモノを作ることか出来るため、不死身の敵勢力にはどうしても苦戦を強いられる、こうしてたくっちスノーは自然と『史上最悪の時空犯罪者』と呼ばれるようになった、しかし致命的なことはしない、人を殺さないし世界を滅ぼさない、特別何か珍しい事件を起こすだけだが何故か不思議と大損害には至らないのだ。
そこに黒影が現れて一人で撃退する……主人公と悪役、お決まりの流れとして世界各地で物語っぽいことをしている。
「でも実態はそいつは黒影ってやつの操り人形、最初から全部出来レースということでいいんだよな?」
「たくっちスノー自体もそれは知らねえことだろうな……が、何もかも黒影の思惑通りとはいかない」
「なんで?」
松山がたくっちスノーが起こした事件のデータを見せる、その中には規模が大きすぎてせっかく黒影が用意した他の時空犯罪者さえも倒してしまう、というよりは率先してヒーローより先にほかの悪者を倒してしまうことが多い、そのせいで物語に支障が出ているとあった。
せっかく使い回せる悪役を使ったのに他所まで台無しにしたら本末転倒だ。
「それで博士達は黒影の方も作って……えーと、その場合後から生まれるけど俺の親父ってことになるのかな、そっちは順調なの?」
「……結構難航してるぞ、実はよ、お前みたいに設定全部叩き込んだら引きこもってな」
「うっ……俺もなんか手伝えない?」
「生意気なことに俺等に口答えしやがる、犬っころみたいに吠えやがるから『ポチ』それか『黒影もどき』って呼んどけ」
「そ……それはあんまりなネーミングじゃ……」
密かにNEW黒影ことポチの作成に取り掛かった魔トリョーシカ達。
しかしミリィのように上手くいかず、何故かとんでもない性格になってしまったのでミリィの目が行き届かない所に封印されてしまった、これではやってることがたくっちスノーと変わらないが何回作り直してもこの性格になる上に死なないのでどうしようもなかった。
ポチは自室を独自に作ってジルトーのように即座に発明の真似事をしたのはいいがオタクに目覚めてしまい、様々なアニメやゲームの知識をたくっちスノーとは違う形で叩き込んで熱狂的なマニアになってしまった。
悪人ではないし迷惑はかけてないもののこれではとても役に立てないと失敗作の刻印を打ち込まれている、しかしポチとしては邪魔されずにクリエイターとして生き生きと活動している。
かくして研究所の方はまだまだ問題が山積みであったがポチは能天気にパソコンから新しいマンガを購入して脳に入れる。
「面白い……面白すぎる!! リアルワールドで発見されたばかりの新作『来見沢善彦の愚行』! 誰かの人生、誰かの冒険! そして見知らぬ世界! これがフィクションじゃなくて実際に存在するなんて最高だ! なんでも作れそうだ! この世界ならこういう事ができる! こんな奴が覚醒する!」
彼の名はポチ、グリモア研究家にして生粋の時空オタク。
シャドー・メイドウィン・黒影そっくりに作られた男に備わった能力はメイドウィン達が作り出した作品世界にオリジナルのユーベルコードと
小さな自分の砦で少しずつ自分だけの話を記憶していく、ここだけの話、時空では漫画は改変が施されており同じONEPIECEでも世界によって中身が全然違うというようなことがある、発明品によってはじまりの書で作られたオリジナルを読むことが出来るのはポチただ一人だけだ。
そしてこちらは史上最悪の時空犯罪者たくっちスノー、こちらも何かしようとしても黒影にやられっぱなしでは困るので仲間を必要としていた。
今の自分には優秀なボディーガードがあってこそ、武器より先に盾となる存在が必要だ。
たくっちスノーは成分を分離させて各キャラクターのパーツを継ぎ接ぎにしたような形のオモチャのようなマガイモノを作ることは出来るが自分のように知能を持っていないのでとても従者としては役に立たない。
もっと人間臭いマガイモノは他にいないのだろうか……そう思いながら、世界各地を歩いた。
そもそも悪人として知られている自分にわざわざ付き合おうとする奴なんているのだろうか? とも考えるようになった。
最も、真に欲しいのはボディーガードだけではないのだがこういう時はゆっくりと休もうとその辺の公園でゆっくりしていると項垂れている社会人みたいな男が隣に居た。
「今時そんなつまらない顔して落ち込むような人間っているんだな」
「もしかして今言葉のナイフで刺す為だけに話しかけてきました? そういう流派の殺し屋?」
「いや殺すのとかは好きじゃないんで、好きなのは人間観察だよ」
人間観察は時に無趣味扱いされるやつの最低限の楽しみとされることもあるが、たくっちスノーの場合は本当に興味津々に人間というもの興味を持って話しかける。
こうしてこの男と相手をしているのもそういうことだ、ただ少し人の心とか足りないだけで。
「それでなんで落ち込んでるわけ? 金? 女? 人間関係? それとも将来?」
「ある意味では全部ですね……就活してるところなんですが一向に仕事見つからなくて」
「そんなことある? この際聞いておくけど御前さん出来ること何よ?」
「自慢することじゃありませんが資格とかはたくさん取ってきましたよ」
男の持っている手帳はライセンスが一通り載っており、確かにありとあらゆる免許どころか特殊な資格まで一通り揃っていてこれをアピールすれば普通に仕事の一つや2つは見つかってもおかしくないはずだ、つまりこの免許がおかしい。
(ふーん……よく出来てるがこの資格全部偽装されてるやつだな、どんな気持ちで落ち込んでるんだこいつ? あるいは気づいていない?)
「せめて何かしらの仕事でも就けたらいいんだけと、どうにも上手くいかなくて」
「なんでもいいか? 命と金は保証するけど」
「え? まあそこを守ってくれるなら」
「じゃあさ、コンシェルジュって知ってるか? アパートとかの世話係、お前にそれやってもらいたいんだよ、色々資格あるんだろ?」
「え? 仕事を紹介してくれるんですか!? ありがとうございます!」
たくっちスノーが軽く相談に乗って紹介するだけで普通に乗り気になった、よほど追い詰められていたらしい。
そのまま成分で契約書を作成して判子を押して絶対に逃さないとばかりに男の腕をつかみ、時空の渦に案内していく。
「それでどんな家のコンシェルジュをやればいいんですか? それと貴方は?」
「家じゃないよ、一通り尽くしてほしいのは自分に対してだけ」
「!! こ、この人……首が無い!? 人間じゃない!?」
こうして1人脅しみたいな形であっさりと仲間が出来た。
「ところで君名前なんて言うの?」
「ああ……はい、ローレン・漆黒です、ローレンで構いません」
「あれ……どこだよここ、いやこういう時はこのセリフか、えーと『ドコなんだよ……ココは……』これでよし」
ローレンを仲間に引き入れてすぐに2人目を探して各世界を放浪しているところ地図もレーダーも信号バラバラの未知の世界に迷い込んでしまった。
特徴的すぎる一回転の道とヒマワリの形から『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のグリーンヒルゾーンであることはわかるのだが周囲の雰囲気がおかしい、血生臭い上に歩く度に何もないのに嫌な感触がする。
どこを歩いても生き物の気配がないのに動物の死骸がサブリミナルのようにちらついて見える。
「どんなメイドウィンがこんな趣味の悪い世界を作ってるんだ……?」
こんな所に居ても仕方ないのでさっさと帰ろうとすると、目の先に特徴的過ぎる青いハリネズミ……主人公のソニックのような後ろ姿が奥の方に見える。
「ソニック? じゃあここはやっぱりアレの世界なのか……おーいそこの兄ちゃん!」
「近寄るな」
ソニック? は振り向かずこちらに語りかけてくる。
声でソニックとは似ているが絶妙に違うということが分かった、日本語に聞こえるが英語っぽく聞こえるイントネーション、こんな風に本物は喋らないのでつまりは同類。
「……マガイモノ? こんなところにも居るもんだ自分みたいなのが、ここまで知能高いやつは初めて見たぞ」
「やはりな、初めて聞いた声だが今ここで現れたばかりか」
「で? このたくっちスノーに近付くななんて余裕ぶっこいたこと言っていいわけ? ムカついたら一刀両断くらいできるけど?」
癪に触る態度を取られたたくっちスノーは持っていた刀を構えて抜刀、その刹那振り返ったソニックの片腕を振った際の衝撃波が大地を丸ごと削り取り、粉々に消えていく。
ここまで桁外れの力を持ったキャラクターは見たことがない、チートクラスの力を持っているものは居たが極端なくらいだ、何せコントロールできていない。
「……ああ、やっぱりまたこうなるのか……簡単に壊れてしまう、殺したくないのにあのキツネ達が血と肉の塊になって、全部消えたらまた最初から……ずっとこれを繰り返して、繰り返して……もう嫌だ、俺は……!! 壊すことしかできないのか」
振り向いて見えてくるソニックらしき生物の顔は凶悪で歪なものだった、目は真っ黒に染まり涙の代わりに充血して血液が溢れ出し、ライオンのように鋭い牙が生えている、両手両足は血濡れで染まっていた。
「なるほど……とんでもなく強い、あまりにも強すぎて気に入った」
「!?」
ソニックのようなものの目の前で飛び散った成分が集まってたくっちスノーが再生する、あの存在もこのような事例は初めてだったのか驚いている。
しかし黒影に比べてみればまだ甘い、この状態でもしつこく攻撃してくるのが彼だしそれが鬱陶しいので仲間を集めているところだ。
再生速度自体に問題はないため攻撃に特別な力が備わっているわけでもないらしい。
「お前凄いんだな! 時空に出たら負け無しだぞ!」
「大したものじゃないこんなもの、俺はこの狂った空間で何回も何回もこの手で狐や赤い動物たちを殺していた、拒否しようとしても止まらず、話しかけることも出来ず……」
「よく分からないが……とんでもない所に来ちまったようだな、うん、でも座標はなんとか掴めた」
「……待て、お前どこに行くんだ?」
「どこって帰るに決まってるだろ? こんな趣味悪いところ居たら気分がblueになるって、お前の顔みたいになってしまう」
「出られるのか!? お前についていけば……俺をここから出してくれ!! もうこんな所で屍の山を築いていくのは嫌なんだ!!」
「……バーカ!! そのつもりで帰るって言ってるんだよ! 絶対に逃がさん! お前、たくっちスノー様のボディーガードになれ!!」
たくっちスノーは数多くの世界に迷惑をかけた一方で、知らない間に人々を救っていたこともあった、この狂った世界から解放された彼のように……。
「ところでお前……えっと、ティーだったか、これからどうすればいい? 俺には名前がない」
「そうか、じゃあお前は今日から自分に従って
こうしてたくっちスノーのボディーガード『Sonic.EXE』とコンシェルジュ『ローレン・漆黒』はたくっちスノーと共に各地を飛び回ることになった。
といってもEXEは根が善性であるためか、時空犯罪をしている際のたくっちスノーを締め上げることも多いのだが、彼らをクビにしようとはしなかった。
それだけローレンとexeのことを信頼していたのだろうかとされる。
「えっうわぁ!? ま、またバケモノ!?」
「おい失礼だな、自分のボディーガードだぞ?」
「いや……オレはバケモノで間違いないだろう、この人間は?」
「コンシェルジュだ! 要は最強のお手伝いさん、これから仲良くしてよね」
「お、俺……ここに来てすぐにこの人と仕事ですか?」
「気にするな、よく思われてないのは慣れている」
「博士、たくっちスノーのそばにいるあの2人……」
「うむ……ボディーガードと名乗る奴じゃが見たこと無いデータで作られとる、向こうの相方は……ただの人間? 馬鹿な、そんなはずは……」
ミリィ達も従者である2人のことを調べていたが、全く情報が掴めずにいた。
現状ジルトー達とメイドウィン以外に知能のあるマガイモノを作れる者は確認されていない、しかしexeは全くメイドウィンの事を知らなかったので、どこの誰が作ったものなのか……。
更にローレン・漆黒も混乱を誘う、たくっちスノーが誘う理由が分からないくらいにただの人間、召使いにしても他に良さそうな生物や能力者がいたはずなのにそこにいたのは本当にただの人間であった。
息が合わないのかと思えば案外この三人が抜群の連携を見せるのも不思議である。
「ぐぬぬ……だがたくっちスノー以外にも問題は山積みじゃ、蔓延る時空犯罪者、別世界に盗まれたお宝、予想外の方向へ巡る物語、現在もなお現れる大量のオブリビオン、そして何より……」
「『ハグレ』ですね」
ハグレとは他世界に強制的に送り込まれたまま帰ってこれなくなった世界規模の遭難者の通称である、殆どたくっちスノーと黒影が原因で起きている。
ハグレの数は時空に10万人を超えると言われており、送られた世界で馴染むことも出来ず差別的な目で見られることも多い。
ジルトーとミリィとサヤはそんなハグレ達の為に他世界転送装置を開発しているのだが……世界というものが多すぎてそう簡単に上手くいかないのである。
だがハグレ達もそんな過酷な環境で頑張って1つになり数々の文化を受け入れた街を作り出した、それがハグレ王国である。
このハグレ王国という場所は建国自体は自らの力であるが時空でも何かと繋がりがある。
まず、たくっちスノーは……。
「いて」
「おっと」
「あっぶねーなこのデブ!! 一体どこ見て歩…………」
「え──と……大丈夫ですか?」
「…………」
「もしもし?」
「タイプかも……♡」
「どうしたんだ? ティーのやつは」
「こ……この人のことは相変わらずよく分からない……俺には着ぐるみみたいにしか見えませんけど……」
ハグレ王国にいるかなづち大明神という女性に一目惚れしていた。
そして黒影もまた時空規模のイベントをハグレ王国に持ち込んで運動祭を開催したり、そこにたくっちスノーも入れ込んで大騒ぎになり、それからはハグレ王国の国民は何かとたくっちスノーと対立している。
そんなこともあり黒影は一方的に『ざくざくアクターズ』世界のことをマブダチと思っている、向こうがどう思っているかは分からないところではあるが。
「元はといえば監理局の責任でもあるのに、なんであの人はあんな呑気に……って結末のない物語だからこそか」
「……それもあるがたくっちスノーの方にも何か変化がないか?」
これまでハグレ王国はたくっちスノーと2度戦った。
運動祭でいつものように暴れたたくっちスノーが王様達に倒されて1回、その後報復の為に『UNDERTALE』の世界に送り込んで返り討ちの2回、その他にも細かいところで喧嘩もした。
なおその時もちゃんと黒影の姿があった。
少し前から黒影以外にもアニメ越しではなく本物のキャラクターとぶつかりあい会話までしてきたたくっちスノーもまた動きが変わっていく
そして自然とたくっちスノーは黒影の手から離れたような行動を取っていくことになるだろう。
時にexeに見張りをさせながらこっそりカプセルホテルでローレンを寝かせつつ近況を語り合う夜もある。
「あの……なんというか貴方って、なんのために時空犯罪者なんてやってるんですか」
「強いて言うなら分からないからだよ、自分が分からないから時空犯罪者をしているといったところかな、僕は生まれてからすぐに模倣しながら育ってきた、この声も身体も能力も全部自分のものじゃない空虚な物さ、そういう意味では何もかもオリジナルの君は羨ましいかもね」
「たくっちスノーさん……つまり、貴方は他でもない何かの貴方になりたいということですか?」
「確かに現状は何かだよな……まあその通りさ、時空犯罪者でも正義のヒーローでも関係ないからさ、僕はテレビで教えられてきた物の真似じゃない、何かしらの『本物』になってみたくて君等を観察してるんだ」
たくっちスノーの行動原理はただ、『キャラクター』に憧れていた。
それだけの単純なことであった。
だが彼の運命は突然大きく変わり始める。
「おい爺さん! ミリィ! とんでもねえことが起きた!」
「見て見て博士!! 大ニュース」
朝起きて松山がパソコンを弄ると時空のニュース番組が映し出されるが、その一面を飾っていたのはとんでもない内容だった。
普段引きこもってるポチですら外に駆け出して話しかけてこようといつもの私室をこじ開けて松山のところに来るレベルだが勢い余って早すぎたので蹴っ飛ばされる、改めてサヤとミリィがニュースの内容を見てみると……。
「たくっちスノーが時空監理局に就任!?」
最低最悪の犯罪者から一転して時空を守る宿敵の部下に転身……傍から見れば一体何を考えているのだろうか分からない、悪役として作られたのがたくっちスノーだったはずだがこれでは捕まえたのと同じように感じてしまう、それにたくっちスノーも抵抗の素振りは見せない、彼に従うなど癪に障るはずなのだが。
だがジルトーは何かに気付いたようだ。
「黒影って奴は何考えているんでしょうか? 博士」
「ふむ教えよう、あやつがカーレッジの時から端から見れば意味不明な行動をする時、行動原理は決まって自己保身じゃ」
「…………なんのつもりだい黒影、自分みたいな危険人物をこんな所に置いて、どんな神経してるんだかね?」
「まあそんなこと言わずに、俺から逃げられると思うなよ……?」
「ふ──んはいはい、自分は黒影のそういうところ嫌いだけど、利用できるものは使わせてもらうタイプだから」
メイドウィンはたくっちスノーから片時も目を離さないように時空監理局に配属させて徹底的に監視する、そんなことはたくっちスノーにも分かりきっていた、だが安定した拠点とボディーガードまでまとめて拾ってくれたのもあり今はのんびり従うつもりでいる。
「まさか俺たちまで雇ってくれるとはな、メイは何を考えている?」
「まあいいじゃないですか、俺一人のために寝床を転々とするのも限界が来てましたしお給料まで出るらしいですよ」
「え、時空監理局ってそんなに儲かるの?」
「あっコレ俺の前金です、凄いですよね……エリート企業の何倍もあるそうですよ、こんな職場入れるか予想なんて出来ませんでしたよ」
ローレンが見せるのは漫画で見るような広がった札束の山、ちょっと下回りをするだけでコレなのだから凄いもの……であるように見えるがそうでもない、exeでもよーく見たら分かるタネがある。
「残念だが……それは特定の世界でしか使えない物だから場所によっては紙屑にしかならないぞ」
「ええッ!?」
「黒影のやつ、金回りを良くするために全時空共通の紙幣を作るとか言ってるけどそんなの完璧に終わるまでいつになるんだよ……世界どれだけあると思ってるんだ、この世から日本円とかドルを一つ残さず消滅させるってか?」
ゴミ同然のお金にがっかりしてポイ捨てしつつ、たくっちスノーは今後について語り合う。
今回から自分たちは時空監理局、つまりやることのある程度は合法になったのでより自由な活動ができる。
というかたくっちスノーとしては別に人間観察の為なら時空犯罪者じゃなくてもいい。
「おいお前ら、これからは積極的に時空犯罪者を倒していこう! しかもコレを見ろ、黒影が調べてたオブリビオンとかいう未知の生命体のリストだ! こっそり盗み見てきた!」
たくっちスノーは時空監理局に所属したことを利用してオブリビオンと時空犯罪者のデータを全部頭に入れてきた、以降彼らは悪事もちょっとしながらヒーロー達より時空犯罪者を倒していくことになる、まるで黒影の株を奪うというよりは黒影の真似をしているかのように。
「何故そんな事を?」
「決まってるだろ、黒影は直接倒すよりもこうやって自分以外の悪者を倒される方が嫌がるって分かったからだよ! どんどん悪いやつを倒して困らせてやるんだ〜」
「時空の英雄たるメイが悪人が消えると困るという理屈もよく分からないがな……」
「……もしかしてメイドウィン達にとってこの戦いって全部お遊びなんじゃ?」
「……」
「……」
「なんか死にそうだから今のナシでお願いします」
うっかりローレンが核心に触れてしまいそうになるが、なんとか場の空気を整えた。
何はともかく、ローレンをほっといても良くなったのでexeとたくっちスノーの2人がかりでオブリビオン狩り並びに独断の事件解決を目指して作戦を練り始める。
あれからexeも一方的に虐殺することではなく人を守る為に力を振るえることに喜びを感じており、無力なローレンとの生活で力のコントロールも出来るようになってきた。
「お前やオレが時空犯罪者を倒して世界の平和が守られるのはいい、それがメイの嫌がることなら黙ってるはずないだろ」
「うーんそれは大丈夫、アイツなんか焦ってるのはわかるから」
「焦り?」
「そういえば話してなかったっけ? 実はこの間未来から自分が来たんだよ、見た目は変わってた……えーとね、頭と身体の元ネタが逆? になってたけどたくっちスノー【オルタ】って名乗ってた」
「でも貴方サーヴァントじゃないですよね?」
「おだまり」
その未来人を名乗る謎のたくっちスノーオルタはというと近い内に時空が消滅するほどの危機が訪れる、その為にお前は改心して時空に立ち向かわなくてはならないと言われたことを話す。
突然何を言っているんだとしか思えないどうにも狂った内容、しかしオルタは大真面目に自分にこんなことを言っていたらしい。
改心も何も自分はやりたいようにやってるだけなのだが。
「えーと、よくわからないんですが」
「だろ? それで自分もちょっとしたふざけ感覚で黒影にも喋ったんだよね、本気にしてないし、そしたら……」
「たくっちスノー? なんか……妙に大人しくないか?」
「あー黒影さ、自分もわけわかんねーんだが、なんか未来の自分が突如現れて……お前が良い奴にならないと時空が滅ぶって言われたからさ、仕方ないから自分は良い奴になることにしたんだ!」
「………………」
「はあああああああ!!!?」
未来からの使者……自分よりも先の存在であり、自分以上に先を把握しているネタバレ野郎。
黒影からすればそんな奴が存在したことになる、そういうキャラ設定とかではなく本物の未来人、ありえないと言いたいが100%とは言い切れない、よりによって『未来の』たくっちスノーの言うことだ。
「いやいやいや待ってよ、未来の俺が言ってたの?」
「いや、未来の自分だよ……『僕』って言った方が伝わる?」
「君って素の一人称そんなんなの!? いやそれはいいとして……」
(時空が滅ぶ!? 俺が生きている以上、そんなのあるわけないだろ! 俺が中心の物語だぞ! もしそんなことになれば……)
だが突然時空が滅ぶ……心当たりがありすぎる、このたくっちスノーもだが、松山とサヤは未だ確認されていない……もしかしたらマイティ達がまた現れるのかもしれない、同じくらい強いやつらも。
せっかく作った物語が崩壊してしまう危機はいくらでもある、一度経験したのだから。
壊れる原因が一つでもあってはいけない。
「自分も理屈はよく分かんないんだが……なんか監理局のせいで時空が爆発するんだって」
「監理局は生きてんの!? というか俺はどうした! 俺が生きている限り、時空が滅ぶわけないだろ! 俺が最強で正しいのがこの常識っ……」
「思い上がり甚だしいよ黒影、アンタのことは嫌いじゃないがそういうところがある……死んだってさ、黒影」
「……!」
自分が……死ぬ? つまりここで消えてしまう?
ありえない、ありえない、ありえない。
だって自分にはイティハーサがいる、自分は不死身、どんな事でも出来るしなんでも作れる神の力を持っている。
そんな自分が未来では死ぬ?
いやそれ以上に……。
黒影の頭はまとまらない、たくっちスノーはあの自分をコケにしてきた英雄がこんなくだらないことで取り乱す姿に苛立ちすら覚えてきた。
「まぁ改変すべき未来だ、上手くやればアンタも生きていられるだろうよ、それに……こんなこと言いたくないが、時空犯罪者として負けたかねえってプライドもあるが…………僕は、アンタが死ぬのは嫌だ、なんでだろうな? 付き合いはいい、まだ時空犯罪者として自分が認めたキャラクターはアンタだけなんだ」
「だから……頑張って生きてくれよ! アンタは強いよ! なんでもありだろうよ! 要は時空を救って生き残っちまえばいいんだろ? シャドー・メイドウィン・黒影なら余裕でしょ? だってこの世の全てを作ってきたなんて言うくらいなんだ、なんでもありを言うくらいなら少しは頑張ってみたらどうだ?」
たくっちスノーは冗談半分の気持ちでエールを送る、未来から自分が来て突然この世全てが滅びそうになるなんて突然言われても普通なら馬鹿馬鹿しくて信じないだろう、だから黒影にも話せた。
だが黒影にとってはそんな風に笑って語りかけるたくっちスノーが途端に恐ろしい存在に見えた。
一度失敗した人間は同じことを繰り返さないように極端に失敗につながる行動や事象を恐れるようになり徹底的な完璧を追求したり、絶対に成功する手段しか選ばなくなるのが当然のこと、たとえそれがどんな事でも気紛れにできる神だろうと例外ではない。
そんな中で訪れたのがコレだ、未来ということは知っていることも多い、滅ぶ理由となると自分と戦闘してもおかしくない、つまり。
(…………ま、まさか、まさかこいつ未来のたくっちスノーから俺の事を聞いて……知ってるのか……俺の事……このままじゃ……俺の物語が……)
もしまた時空が滅ぶのが自分のせいなんて言われたら? せっかくまた上手くやってきたのにたくっちスノーが何かを喋るだけで台無しになるとしたら?
イティハーサは最近何も答えてくれない、本格的に見捨てられたことに気付いていない。
彼の中には恐怖しかない、完全に首元を掴まれていつ切られてもおかしくないようなそんな気分が離れない。
もう他の奴にめちゃくちゃにされたくない……たくっちスノーを一時も目を離さないようにする為に時空監理に入れたどころではない、今まで必要性が分からなくて誰一人として枠を埋めていなかった副局長という枠まで与えてしまった。
つまりたくっちスノーは牛乳この時空で2番目に偉い存在になったことになる。
「で、監理局に入るならまだしも自分って実質組織のナンバー2だぞ? 利根川だぞ? いいのかコレ?」
この出世ぶりは本人ですら困惑している、監理局で黒影以外の誰一人として理解できなかった発想、昔から彼をよく知るジルトーが『自己保身』と見抜くように黒影は物語を進めることすら放棄して自分がひたすら生き残ることを優先するあまりそれ以外がおざなりになっていた。
これでは剣復活どころか冒険やってる場合ではない、彼の脳内は殆どたくっちスノーで埋まりどうやって自分が生き残ってなおかつバレずに時空を維持出来るかにある。
奴は自分のことを知っているか? なんて聞けない、たくっちスノーは黒影から見ればひねくれてるのでマトモに相手するはずがない、隙を見て嫌がらせのように辺りに言いふらすタイプだ。
それもあるが、たくっちスノーが形はともき良い人になろうとしているのが問題である。
(待ってよ、ちょっと待てよ!! たくっちスノーが良い奴になろうとしたら……また代表的な悪役がいなくなるじゃないか!! そしたら俺の物語……俺と戦う存在はどうなる!? また作り直すか!?)
たくっちスノーに並ぶ悪は消えた、クッパがいない環境でずっとマリオの新作を毎日投稿しなくてはならないような状況で今の物語を進めるには嫌われ役が必要になる、念の為にマガイモノではない後釜を開発しているが時間がかかる。
明日も大事だが今日の事まで考えなくてはならないのが辛いことである。
「……無理だ! たくっちスノーが善人になんてなれるわけがない! あの考えまでは絶対に揺るがない! そう教育したんだ、絶対にいいやつになんてなれない! たくっちスノーは少し待てばいい! 時空が助かったと確信するまで生かし続けて最後に落とすんだ! そうすれば結果的に全部穏便に済む……俺も死なないし悪役も残り続ける! そうなるんだ! そういう仕組み!」
メイドウィンは副局長というものを軽率に考えている。
自分のそばから絶対に離れないようにどこからでも見張れるくらい近い位置に置くというのは逆に自分も監視される立場というのを分かっていなかった、それによってマイティに追い込まれたこともあったというのに……焦りから生じる出来事には必ずボロが出る。
先ほどまでの発言をEXEが聞いていたことに気付かなかった。
(あいつが未来で善人にならないと時空が滅ぶ……あの話を信じていたのか、だがそれをある意味では認めていない? ティーが言っていた時空犯罪者がいなくなると困ることになるというのも間違いではないのか? しかし何故そんな事を考える?)
実はEXEも自分達の出世に理解出来ず独断で密かに監視していたのだ、その結果聞いてしまったあの発言。
何故黒影はあんな事を言っていたのか分からなかった、仮にたくっちスノーにそのまま伝えたとしても信じることもないだろう。
「……だが、メイがこれからは打算でティーと付き合っていくと考えると警戒はしておいたほうがいいだろうな」
EXEは今起きた出来事は胸の片隅にしまっておくことにした、自分一人で行動を起こしてもろくなことにならないのは体験している。
今はもっと情報を集めなくてはならない、その為にはこの時空監理局を存分に活用して情報を集めなくてはならない。
「ティー、ここで過ごしていく以上メイには気をつけたほうがいい」
「当たり前の事を急に言って何よ? てかそれをなんとかするのがお前の仕事でしょうが!」
「たくっちスノーさん今日の晩御飯は何にします?」
そして遂にミリィも時空へ飛び出す時が来た。
教育を終えて研究所から飛び出し人の為に世の中の為に尽くしていくことになる、見た目はそっくりでもたくっちスノーがこの立場なら安全に活動できると判断したのだ。
「松山、博士、サヤさん……みんなありがとう、俺は3人のおかげでここまで育った、時空で目一杯活躍してきます!」
「ボクは?」
「お前殆ど何もしてねぇだろうが」
「酷い事を言うね……根本の感情であるプログラムはボクが作成したというのに、データもちゃんと残してあるんだよ?」
「もちろんちゃんと貴方にも感謝してるよ」
最初はほんの計画の前準備のはずだった、ミリィもただのたくっちスノーの『身代わり』、お互いそれが分かっていたのにそれが気が付けばジルトー達はミリィにこんなにも情が湧いていた。
「ちゃんと3度の食事と風呂は欠かすんじゃないぞ、不老不死でも最低限人並みの生活はしないとワシは許さんからな」
「つらいことがあったらいつでも私たちに連絡いれるんだよ」
「オメーら親かよ……」
「ほら、松山もなんか言ったらどうなの?」
「ガラじゃねーよバカ野郎、行くならさっさと行っちまいな」
松山はミリィの顔を見ることもなくさっさと研究所の中へ入ろうとする。
ミリィは辛くなかった、彼の中では一番長く深い付き合いなので松山がそういう奴なことは分かっているし、終わってしまえばそんなものだ。
これからは彼らの助けもない、自分一人で全部頑張らなくてはならないからこそ引き離すべきなのだ。
「おい、ミリィ」
「松山?」
「……簡単にくたばるんじゃねえぞ、俺たちがここまで苦労したんだからな」
「……もちろんだよ、親父!」
「親父って言うんじゃねえ!!! 俺はそんなキャラじゃねえつってんだろ!!!」
「え、でもミリィの成分って松山と魔トリョーシカの成分混ぜてなかったっけ?」
「その理屈だと俺がこのサイコと夫婦みたいになっちまうだろうが!!」
「ああそれはボクも嫌だな……本当に嫌」
気が付けば打算や偶然のみで集まったこの四人もすっかり馴染んで仲間のように感じていた。
だがいつまでも楽しく笑ってはいられない、次のことを考えるために会議を行う。
「さて、ミリィに関しては心配いらんじゃろう……問題は奴の動きについて」
「まさか突然たくっちスノーをNo.2にするなんて……しかも彼、善人になろうとしてるよ」
「どういう心代わりだ? まあ俺らとしちゃ仕事が楽になるが、俺から見ればそれにあのバカはビビり散らかしてるように見える」
「たくっちスノーが今の彼には脅威も同然?」
自分達とは無関係なところでズルズルとメイドウィンが追い詰められている、カーレッジだった頃から土壇場には弱いタイプであることは把握してるにしてもあまりにもビビりすぎている。
そんなに嫌だったのだろうか、思い通りならないことが。
「まあアイツらも成長しているしマジバトルになったら前よりは勝てる、問題は爺さんが言っていたカーレッジに手を貸している存在……」
「イティハーサ……だっけ? 忘れてたけどそっちも倒さないといけないんだ」
案や作戦は色々出てくるが、表舞台からいないものになっている自分たちでは派手な行動は起こせない、今はミリィの報告を待ち……出来れば監理局としてのたくっちスノーと合流してもらいたいところだ。
更に一番の問題は……。
「あ……あれ!? ミリィ行っちゃったの!? 置いてかないでよ!! あっお世話になりました!」
泥棒みたいな昔ながらの風呂敷にパンパンに荷物を詰め込んで逆にトラックみたいになっているポチの姿、ミリィが出るならと彼も同じタイミングで研究所から飛び出してくる。
軽く挨拶をした後にミリィに追いついて飛び出していく。
何気にミリィにとってはコレが初対面だが一人旅よりはいいと受け入れてそのまま二人揃って去っていった。
「松山さんから聞いてるよね? 俺はポチだよ」
「ぽ、ポチってそんな名前……嫌じゃないんです?」
「犬で言うところの『太郎』みたいなものでしょ? 別に俺達は犬でも人間ないから気にしてないよ! それにポチという名前に特別感も感じて尊く感じる! それよりどの世界に行く!? 誰に会いに行って何作る!? 何と戦おうか!?」
「か……変わった人なんだなぁ」
「……どうするよ、あの黒影もどき」
「ふむ……まさか奴まで出ていくとは、ミリィに変な影響与えなければいいが」
「そうは言ってもね、彼はとんでもない能力を持ってるし知識は豊富だ、時空においてコレがどう作用するか」
帰ったあとに黒影もどきの居る部屋に乗り込み、少し悪臭がするものをジルトーと松山が火炎放射で焼却処分、ポチは本当に大事な物だけ持っていったらしく燃えても問題なさそうなものだけ消してゴミをまとめ上げていたところ。
「げっ!! 見ろ!」
開きっぱなしのパソコンから強い反応……これは時空が作られた時の物と同じものだ、どうやらメイドウィンは極限までカーレッジに近づいたあまりこんなものを……。
しかもただの時空ではない、性質が『もしも』のように変質する言わばパラレルワールドを多くまとめたものだ。
その中でも8つものの時空のデータが出来ていた。
「あやつ新しく時空を作ろうとしていたのか!?」
「……愛って凄いなぁ」
もう感心しか出来なかったがこんなもの見過ごさないので解析せざるを得なくなった。
それでも問題はある程度解決した、監理局のことはミリィとポチに任せて改めて今後のことを考えるサヤ達だが……。
「博士、ショコラを連れ戻す別次元装置はまだ完成しないかい?」
「うぬぬ……どうしても時間がかかる、ポチの作った他時空の技術を使えば多少は進展するかもしれんが」
「松山はこれからどうする?」
「どうするってそりゃ……うおっあいつマジで来やがった!?」
松山の携帯電話が鳴る、アクアと過去に約束した時のためにサヤが登録しておいたのだ、それが今……!
「もしもし? お前なんだな?」
「ああ俺だ、待たせて悪かったな」
「アクア……マジで覚えていたか」
星野愛久愛海は4回目の転生でも尚記憶を保持して松山との約束を果たした、だが電話越しから聞こえる声は非常に幼いし声の出し方が何かを隠しているような形だ、すぐ近くに誰かがいるような感じもしている、隠れて電話しているようだ。
「おい、まさかとは思うがお前まだベイビーなのか?」
「まだ生まれたてだ、今はアイの携帯を使ってる……バレたらまずいことになるから手短に話すぞ、今お前はあの科学者やサヤといるんだな?」
「ああ、真っ先に動くって言ってたが何か考えてあるのか?」
「当たり前だ、というよりはこの段階で動かないとまた手遅れになるかもしれない……手を貸してくれないか?」
「とりあえず用件をまとめるから早く話せ」
松山はアクアから電話越しで聞きながら話をまとめて資料にしてサヤ達に見せた。
「あいつはまずメイドウィンをどうにかするまでに母親であり推しの星野アイをなんとか生かしたいと思っているそうだぞ、面倒なことにな」
「そっか、家族をカーレッジに殺されたもんね……妹さんも含めて」
「が、アイツが言うにはアイは早めに亡くなるから今からやらないと間に合わない……そこで俺たちに助けを求めてきたわけだ」
「助けと言われてもボクらに何しろと?」
「簡単なことだよ、コレだ」
松山は画面を開きジルトーに見せる、それはクラウドファンディングの画面だった。
クラウドファンディングとはインターネットを通じて不特定多数の人々から資金を集める資金調達手法、これによって不慣れな人物でも大規模な企画を支援してもらう事が出来るのだ、アクアが企画したクラウドファンディングは……。
「星野アイを……神にする?」
傍から見ると意味不明な企画だ、だが向こうの世界のアイ人気は凄まじいのかあるいは話半分で出したものなのか既に10万は貯まっていた。
「こんなもんあっちの事務所は知らねえだろ、バレたら大目玉だ……だからさっさと済ませたいってアクアが言ってた」
「でも神にするってどういうことなの?」
「ああなるほど、そのアクアって奴はブランドを利用して自分の母親をメイドウィンにするつもりなんだ」
「メイドウィンにする!? そんな事出来るの!?」
「世界が無くても譲ってもらえばいい、それも人間のやり方的には実にシンプルな手段を使ってきたみたいだ」
星野愛久愛海はクラウドファンディングで得た大金で何かしらのメイドウィンを買収し、新たに星野アイをメイドウィンに変える。
メイドウィンの不老不死の力を持ってすれば物語の通りになったとしても彼女の死亡は不可能となる、メイドウィン達も別にこだわりはないし仕事感覚で暇を持て余しながら世界の動向を伺っているだけなのでアイがメイドウィンになったとしても特に悪影響はない、要は適当にやっても上手くいくとアクアは予想している。
それはそれで推しに対して大分失礼なことを考えてる気もするが、松山はこの発想が面白いと思い200万をつぎ込んねいる。
「面白え……アクアめ、こんな形でメイドウィンに爪痕残す気だったとはな、カーレッジもお前のことはそんなに意識してなかったんだ、計画生かしてやるよ!」
「でもこんなの上手くいくのかな……あっちの世界にもメイドウィンだっているんだし」
「問題ないよ、はじまりの書に従って世界を管理しているだけの連中だ、メイドウィンの中には本に従い続けることに嫌悪感を感じてる奴もいるって聞いたことがあるよ」
「……それに200万で足りるか?」
「もう既に一億くらいにはなってるけど、ボクが神様ならもう1桁欲しいところだね」
「よし分かった、行ってくる」
「行ってくるってまさか稼いでくるつもり!?」
「んなわけねえだろバーロー、金はまだあるからもうあと800万くらい入れておいてくれ、ただし怪しまれないように住所電話番号アカウント名前まで全部ばらばらにして小分けにしておけ」
松山はアクアに再会して新しい目的が出来た、今ではキャラクター、マガイモノ、オブリビオンだけではない……メイドウィンも種族なのだ。
そしてアクアがやるようにメイドウィンを動かせると分かった今なら……。
懐柔できる。
「50人、多くてもそれくらいメイドウィンをこちらの仲間として引き入れる、手始めにアクアのいる【推しの子】のメイドウィン、その次は俺の世界、その後にはマルチ情報のように繋がったメイドウィンと次々とこっちの方に引き込んで支配する、もちろん裏切られるリスクもあるが今更怖気ついても仕方ねえ……」
松山はアクアに電話をかけてそちらの世界に向かうことを話そうとするが……。
「おい松山、これアイの携帯って言ったばかりだろうが、アイドルや赤子がどこの誰とも知らぬオッサンと長話してたら不自然だろ」
「なんだまだその状態だったのか」
「3日やそこらで成長するわけないだろ馬鹿野郎……ってお前、俺の所に来る気か? 自分のビジュアル見直してみろよ」
「こっちはお前のワガママに200万も出してやったんだよしばくぞ、お前に聞きたいことがある」
「……メイドウィン=神様だから神のような扱いだったキャラをメイドウィンに当てはめてる場合もある? それなら俺も心当たりがある、こういう時に転生様々だな」
こうしてカーレッジ・フレインの長い長い序章は終わりを告げる。
そしてここからがようやく本題。
時空を作ったシャドー・メイドウィン・黒影とたくっちスノー、サヤ、ミリィとポチ、そしえ松山。
彼らの残してきた痕跡がこの結末のない物語をどのように進めていくのか、そして本当に時空は滅亡の危機に陥って黒影は死に、たくっちスノーは善人になるのか?
これから黒影は時空を開通し全てのキャラクターが当たり前のように世界を超えられる時代を作り出して、ポチの力によってパラレルワールドさえも魔の手に呑み込まれていくことになる。
果てのないクロスオーバーはどこへ向かうのか。
カーレッジとメイドウィンが追い求めたメイドウィン小説は、ここから始まっていくこととなる。
…………
「たくっちスノーさん、黒影局長がお呼びで至急ある世界に向かえとのことです、あとexeさんこの書類代わりにやってくれないかな」
「ああ任せておけ」
「クソが! 何が監理局のエリートだよ! 誰もやらない書類仕事や後始末を全部自分らに押し付けてるだけじゃねえか!! 自分だって今から行くのはメイドウィンの定例会議だよ、言うならば接待だぞ接待、つまんねーよバカ野郎」
「……それなら書類いじってる方がマシですかね?」
「そうだな、だからこの紙くずの山を2人でさっさと片付けるぞ」
…………
「……このままたくっちスノーを監理局だけに置いといても安心出来ない、どうにかもっと監視できる手段はないのか? ……あ、そういえばもうそろそろメイドウィン達の定例会議か、メイドウィン……それだ!」
「もしもしたくっちスノーに伝えて! 俺今からメイドウィン定例会議に行くんだけど付き合ってくれない? たくっちスノーらしく後から乗り込むような形で!」
…………
「え? 時空を移動する乗り物ってこんなにお金かかるんですか!? どうしよう……もうサヤさんからもらったお金なくなっちゃったよ、アルバイトしないと……」
「ねえそこの君、簡単に稼げる仕事に興味ないかい?」
「いやそのそういう怪しいのはちょっと……」
「大丈夫だよミリィ! 俺時空には詳しいからさ! いい感じに稼いで安全なところ知ってる!」
…………
「あれ? 貴方って……」
「メイドウィンは確かニックネームの苗字と名前にメイドウィンのミドルネームが付くんだったな……じゃあお前の場合はこうか、ツクヨミ・メイドウィン・玄鴉、お前と話したい」
そして、新しい始まりを迎える。
【時空序章カーレッジ・黒影】
【完】
これで『カーレッジ・黒影』の再編集版は終わりですが、この作品ではまだまだ『たくっちスノーZERO 〜ラグナロク〜』へと続きます。