時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~   作:黒影時空

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ここからは元2作目として書いていた『たくっちスノーZERO~ラグナロク~』の再編集版となります。



たくっちスノーZERO~ラグナロク~
時空規模のラグナロク


 メイドウィンとは世界の動向全てを記されたはじまりの書を与えられ本に従い世界其の物を導いたりイベントを作ったりなどで管理することを生業とする者達。

 シャドー・メイドウィン・黒影によって就任した彼らはメイドウィン同士で定例会議を開いて各々の世界の状況を黒影に報告しなくてはならなかった。

 定例会議といっても殆ど各世界の近況報告なんて黒影に本の真似をしているだけなので語ることなど特にないため雑談会場や飲み会のようなもの、黒影の中ではそんな認識だった……以前までは。

 

「やぁやぁみんな! 飲んでる? メイドウィンは飲み放題だからじゃんじゃん飲み明かしちゃおうね! 俺も飲むー!!」

 

 この場所では黒影でさえも完全にふざけてしまい、日本酒を持ち込んでラッパ飲みして寝て遊ぶの繰り返し。

 当然まとも働いているメイドウィンからすればいいものでもなく、さっさと終わってくれないかと願いながらも強制参加なので仕方ない、当然こんなところで過ごすより知り合いと集まって話し合ったほうがよほど参考になるし気苦労も少ない。

 それかもっと騒ぎでもおこして退屈な会議を潰してくれないかと──。

 

 

「黒影──ッ!!」

 

 そう思ったのも束の間、会議の空間を破って刀を構え飛び出す男の影が、一瞬のうちに空間を切り裂いて宴会席に土足で上がり込みあっという間に周囲の雰囲気を乱していく。

 こんな所に来れるのは、唐突に現れて出来るのは……何より、メイドウィンに喧嘩を売れるのはあいつしかいない。

 

「ゲッ!! あ、あれは……たくっちスノー!!」

 

 たくっちスノー、それは時空犯罪者の中でもトップ級のトップ、悪党の中の悪党、またの名を『最強無敵』。

 そして今では時空監理局副局長、つまり黒影の次に偉くてナンバー2でめちゃくちゃ時空のために頑張っている立ち位置が正直一番よくわからないキャラクターである。

 

「たくっちスノー! 何故この場所に!?」

 

「くそっ! どうせヒマしてるからってメイドウィンの居る所に殴り込みとはな!」

 

 数人のメイドウィン達が臨戦態勢の入るがたくっちスノーは攻めに入ろうとしない。

 

「まあ待ってよ、自分だって今は時空監理局なんだ仕事しに来たに決まってるだろ、exeも連れてきてない! 大体これだけのメイドウィンに喧嘩売る程バカじゃないっての! ってか黒影に呼ばれたんだ!」

 

「ん? ああそうだっけ!」

 

「あっこいつ酒飲んでる! バカ野郎! お前この間の監理局の会議でもゲームしてたよな! 一番上なんだから威厳とか見せろよお前! もしかして普段サボってるやつがいざという時本気出すのがかっこいいと思ってる系!? あれってただのオンオフできない能天気なバカだからな!!」

 

 たくっちスノーは中々酷い罵倒を飛ばしながら黒影から日本酒を取り上げてシャキッとした体勢をさせる、メイドウィン達はたくっちスノーが思っていた以上に真面目に働いていたことに驚くが、この会議場所は黒影が決めているため誰にも漏れることはない、嘘は言ってないのだろう。

 しかしどうにも監理局を連れて行くのは気に入らない、なぜならメイドウィンと時空監理局は対立関係にある、世界を維持する仕事であるメイドウィンと基本黒影が乗り込んで好き放題めちゃくちゃにすると段取りが組めてない為に険悪な雰囲気であり、その上で時空を作ったのは自分達のおかげと向こうは思っている。

 といっても新人のたくっちスノーにまでそんな目を向けるのも大人気ないが……。

 

「どうしたんだ? 彼、前々から変な生命体とは思っていたし、事件の時以外は珍妙なナメクジみたいには思ってたが」

 

「なんかこいつさ未来人の陰謀論によって良い奴になりたいんだって言い出してさ、ウケるよなー今更そんな路線変更なんて」

 

「うるさいな時空のためだよ! それよりも用件は何、用件! てか酒飲むのやめろや!!」

 

「え? 用件って……あ、そっか! 今日は真面目な話する気だったんだ忘れてたよははは! 時空の一大事だからさ、酒飲まないとやぅてられないんだよね最近!」

 

 下手したらたくっちスノーが一番この会議で真面目に仕事しているのかもしれないという状況は各自を引き締まらせるには充分だった、酔もとっくに覚めている……黒影以外は、というよりは最近彼は急に酒を飲むようになった、酒に弱い訳では無いが最近は溺れるまで飲んですぐに寝ることが多い、まるで現実逃避でもしたいかのように異常なほど飲んでいる。

 

「ここに呼んだことはお前に関する話なんだけどさたくっちスノー……お前、メイドウィンになってみたくない?」

 

「えっそりゃなりたい! なりたいに決まってるだろ! 黒影なら覚えてるだろ! 自分は昔一度自分好みの世界を作ろうとしたことがあった!」

 

 たくっちスノーがまだ個人の時空犯罪者だった頃、各世界の設定をコピーしてそれらを1つにまとめることで自分だけの世界を作ろうとしたことがあった。

 もちろんそのときも黒影に倒されて未遂に終わった、このときは自分が見ているものに無関係な存在を放置しておきたくないという、たくっちスノーが厄介というより時空を勝手にいじられたくないという考えだったのだがたくっちスノーが引き起こした中で一番規模が大きい事件なので皆しっかり覚えている

 

「メイドウィンになるって……自分だけの世界を1個くれるし何してもいいってことだろ黒影! いいのか!? 自分時空監理局副局長になったばかりなのに追加でこんなのまで!?」

 

「副局長だからこそでしょ、ナンバー2として威厳とか欲しいよね〜、それに忙しくなるからお前は何も計画出来なくなるよ」

 

「なるほど、意外と計算づくってわけね」

 

「ありえない!」

 

「信じられない!」

 

 当然ながらコレを聞いていたメイドウィン達は非難する、自分達はめちゃくちゃ苦労してメイドウィンになったというのにお小遣い感覚ではたくっちスノーもこれは当然の反応だろうと思った為に反論しようとは思わなかったので上がっていたテンションを急激に鎮めて落ち着かせる、感情がプログラムで出来ているので極端に変化してもすぐにリセットさせることが出来るしこの状態でも全部の意見を聞き取ることが出来る。

 

「でもな黒影……個人的な話ならめっちゃ嬉しいよ、しかしメイドウィン全員にこの結果を納得しろってことだろ? この会議の内容、自分でも無理だと思うよ全員の説得なんて」

 

「ボッボッ……私はかまわない」

 

「そうだな、案外住処を与えれば奴も大人しくなるじゃろうて」

 

 中にはたくっちスノーがメイドウィンになることに賛成する神も少数だが存在しているが、ここまで意見が分かれては賛成反対どころではなく話にならない。

 

「あーもううるさい!」

 

 黒影はそれを両腕で炎を出して黙らせる、メイドウィン達を吹っ飛ばして岩石も落としてしまう。

 今ので大半の神が大火傷を負ったり下敷きになって致命傷だが相手は不老不死なので何の問題もなく治癒されて指を鳴らすだけで舞台は元通りに変化して何事も無かったように話を進める。

 

「黒影、時空犯罪者が言っても説得力ないけど暴力で黙らせるのやめなよ」

 

「俺は一番偉いんだし皆も同じこと出来るんだから、そうやって世界に威厳をアピールしないと!」

 

「……こんな余裕ぶっこいた会話できるのもメイドウィンしかいないからだな、ってかこいつどんな管理の仕方してるのか気になるくらいだよ」

 

 事実、黒影にとってはこの場所にいるのは敵対したところで思うがままに権限を操れる何の害となる存在もいない格下しかいない場所、本来恐れるべきたくっちスノーもここでそれっぽいムーブを見せれば自分よりも下の存在である……あの時までは。

 端的にメイドウィンというのが世界市民から見てどういう存在なのかよく表してるみたいでイヤという意見も存在するが、まあ事実なのでしょうがない。

 

「よしじゃあわかった、お前が本気で時空の為になるのか俺がテストしよう」

 

 いきなり普通の顔になったメイドウィンはすぐ近くに置きっぱなしにしていたお馴染みのクジラとか切るための巨大包丁をぶん投げてくる、音速の勢いで巨大な鉄塊が頭上を狙う中たくっちスノーはそれを頬越しに滑るように回避し、抜刀はせずに刀の柄でメイドウィンの額を殴ろうと一気に詰め寄って一気に首筋まで狙うが覇気でも使ってるのか刀が黒影の身体に届かない、磁石が反発する時のように押し返されているような感じだ。

 

 

「なんのつもりだ? あんなオモチャ急に使って本当の武器は?」

 

「うん、少なくとも話にならないって戦闘力ではないね」

 

「……10回」

 

「え?」

 

「君が作ったマガイモノその他諸々と俺達メイドウィンから厳選した……それぞれ10人と10体! ……じゃたくっちスノーがマガイモノのスペック的に不利だからたくっちスノーだけ3連戦で一対一のバトルロイヤル! ……この結果でメイドウィンになれるか決めるっていうのはどうだ?」

 

 提案してきたのはマガイモノとメイドウィンのガチンコバトル……これまでたくっちスノーは幾度となくマガイモノを作りメイドウィンと勝負してきたが、それは時空犯罪の範疇であり親善試合なんて一度も組んだことがない。

 たくっちスノーは考えた……結果的にメイドウィンになれるかどうかよりこれはチャンスだ、メイドウィンの戦闘データを得ればマガイモノの技術は格段に引き上がるし応用性も上がる、仕事でも使いやすくなるのではないか? 最悪なれなくても自分にとっては非常に有意義になる……。

 たくっちスノーにとって断る選択肢なんてなかったが、それはあくまでたくっちスノーと黒影だけの都合の為一度冷静になってみる。

 黒影が真面目にその試合をしてくれるだろうか? 

 

「ただよ黒影、お前それ【終末のワルキューレ】のメイドウィンからパクったよな? そのネタ、そこにいなかったけオーディン、しかも向こう大変な状況らしいじゃん」

 

「あれ? バレてた? ゴッドイベントが多くてね〜」

 

「それに自分としてはメリットだらけだから受け入れるが、そんなのメイドウィン達がやってくれるのか? ただの茶番じゃないか」

 

「やってくれるか? じゃないよやらせるんだよ」

 

 黒影は無言の圧力でメイドウィン達の方を見る、巻き込まれたメイドウィンには同情しておくことにしたたくっちスノーなのだったが、とにかくこれで

 

「制限時間はあるから急いでね★こっちも厳選するから」

 


 

「…………急いでね☆じゃ、ね〜〜んだわばかやろ──ー!!!」

 

 特別に与えられたマガイモノ研究室で黒影への怒号を飛ばすたくっちスノー。

 そんな姿をコンシェルジュ・ボディーガードであり副局長補佐となったローレンとEXEは新聞片手に眺めていた。

 ここ最近のたくっちスノーは忙しそうだが、exeとローレンはほぼ倍は忙しく事務業をこなしているのでこの態度も仕方ない、世界の数だけ問題が起きてその後始末を殆ど彼らがしている。

 exeはそろそろ壊れずにボールペンを握れるようになってきた

 

「ティーはマガイモノを何個も作りながら何をうなっているんだ?」

 

「それが局長があの人をメイドウィンにする気らしいんですよ」

 

「何? 副局長の次はメイドウィン? ボンボンの誕生日プレゼントの如く立て続けで凄いことが起きているな、それで?」

 

「でもなんだかその為にマガイモノとメイドウィンで10回試合する必要があるらしくって、その為の選手を作っているとか」

 

「まあそんなに都合良くはいかないか……しかし親善試合とは、お前の立場も良くなってきたんじゃないか?」

 

「他人事みたいに言うんじゃねえぞバカボディーガード共!! 言っとくが自分3回お前ら2人ではようやく半分なんだからな!?」

 

 その為たくっちスノーは5体もののマガイモノを作らなくてはならない、いや

 完成して調整の段階なのだがこれが難儀しているのだ、あと一つの話はするな。

 

「え!? いやいやいやちょっと待ってください!! お前らって俺もですか!? exeさんはともかく俺はただの人間ですよ!?」

 

「やかましい数が足りないんだ! その他諸々って言ってたしいいんだよ!」

 

「ローレンを頭数に加えるのはオレも反対だ、他に良さそうなものはないか?」

 

「よくぞ聞いてくれた! まずアイツは断頭台のアウララ! アイツの操る魔法が便利でより高度にするべく作った!」

 

「殆ど本人では……?」

 

「バンガイ7はパワーがピカイチ! スーパーロボットバンガイオーを使用しているからミサイルも装填してるし真っ向勝負なら負け無しでしょ! ……問題はスーパーロボットが素材だからめちゃくちゃでかいってことだ」

 

「どうやって動かすんだコレ」

 

「う、うるさい! お次はボルコンW! コンバトラーVとボルテスVの2つを合体させてそれぞれの要素を併せ持つ電撃の勇者を作り出したのだ!」

 

「なんでこいつみたいにバンガイ7小さく出来なかったんだ……」

 

「リックウザ! こいつはレックウザをベースに素早いキャラの成分を加えたから早さはピカイチだ!」

 

「……うーん、なんというか」

 

「個性はあるけどこれでメイドウィン共に勝てるかって言われたら微妙……じゃないですか?」

 

「そーなんだよなぁ──!? 自分もそんな気がしてたんだよ!! 結局コイツらガワ繋ぎ合わせただけで知能ないし!!」

 

 部屋にある4つは戦力外、更に1つは未完成、こんな状況では試合にならないがマガイモノのデータを得るためには何としても参加したいたくっちスノーは頭を抱えていた。

 しかしネタを考えようにもそう簡単に改良の方法など浮かぶはずもなく……。

 次から次へとマガイモノを作り出すが焼け石に水だった、そもそもツギハギにして作る以上クオリティは見た目も中身もちょっとしょうもない、たくっちスノーが特別なだけだ。

 

「これならどうだ!? 最近流行りのメガライチュウにブラキディオスを混ぜたエレキディオス!! ああダメだ弱点増えてるし粘液が突然変異して爆発しねえ! じゃあこれだ! 仮面ライダーアクセルにガンタンクを合わせたパトタンク……アクセルのスピードが全然出ねぇ! ああもうディスペクター共が羨ましいよ! なんでドキンダンテもボルバルエイトもあんな強いんだ!!」

 

「それで試合はいつの予定だ、それに間に合わせなくてはならんのだろ?」

 

「明日にはもう一試合目やりたいって黒影が言うんだよ!!」

 

「明日!? お前上手く行くのか!?」

 

「いくわけねえだろこんなもん! もっとじっくり設定練り込まないと戦闘にもならんわ! ああもうなんでちょっとずつ作っておかなかったんだ」

 

 他にマガイモノは作ってなかったのか? とか過去に時空犯罪として差し向けたものはないのかというとその全てが黒影に撃退済みなのでそんなものを用意したら絶対何か言われる、あいつは常にオリジナリティあふれてマンネリしないものをヒーローのくせに要求してくるんのだからこういう所でめんどくさい、特撮世界の怪人の気苦労を感じさせる。

 だがこんな様子ではメイドウィン達の恥になるだけなのが目に見えている。せっかくここまでの立場になったのに玩具にされて終わるなどプライドが許さないので手が止まらない。

 

「……作るしかない、無理だと諦めるよりは無駄でも足掻いてやるんだ! 自分は最強無敵のたくっちスノー様なんだ! ローレンも覚悟決めろ」

 

「やっぱり俺出るんですか!?」

 


 

 そして、この光景を監視していたある人物は、興味深いとばかりにたくっちスノーにコンタクトを取ろうと準備を進める。

 猫の手も借りたいそんな時には悪の天才科学者が力を貸してくれる、最新鋭の黒電話を回しながらすぐ傍の女性に話しかける。

 

「よし、そろそろワシも動く時が来たようじゃな……サヤ、お前も覚悟は決めておけ、あいつにも声をかけるんじゃ」

 

「はい博士!」

 

 そして同じタイミングでたくっちスノーがマガイモノ相手に難儀している頃、作業用のパソコンに一通のメールが届きexeが覗き込んで届いた内容を確認しながらたくっちスノーの様子を眺めている。

 相変わらず器用な生物だ。

 

「ん、ティー、なんか届いてるぞ」

 

「仕事なら後で! 迷惑メールなら消しといて! 返信はbotで!!」

 

「ふむ……お前に協力したいと匿名のメールだ、迷惑メールではないがめちゃくちゃ怪しいな、テンプレ返信でいいか?」

 

「その手のやつじゃなさそうならなんでもいいよ! マジに協力してくれるんなら今すぐにでもやってもらいたいなんだよ!」

 

「よくぞ言った!!」

 

「痛え!!」

 

 ボタンを押してメールに返答する間もなく時空の渦からロケットが飛び出し設計中のたくっちスノーの首がが極道の車のごとく跳ねられてスーパーボールみたいに跳ね返り元の首に戻る、ワシの車じゃない。

 

 

「おおすまんすまん……おっと、お主がたくっちスノーじゃな?」

 

 ロケットから出てきたのは如何にも胡散臭い白髪で大柄の老人、身体の所々には機械が装着されておりあちこち煙も吹き出し、白衣には様々な工具が入って……というか刺さっている。

 

「なんだ……? この爺さん」

 

「ふむ……こうしてまじまじと見ると本当にそっくりじゃのう、顔はアイツのほうが凛としとるがな……おっと自己紹介が遅れた、ワシの名はドクター・ジルトー! 悪の天才科学者じゃ!」

 

 天才科学者を自称するジルトーにたくっちスノーは確かにアクの強い奴が来てしまったと狼狽える、忙しいって時に厄介なものを呼んでしまったのかもしれないが科学者なら一応役に立つかもしれない。

 

「状況は分かっているぞ、黒影と大事な戦いをするそうじゃな」

 

「そうだよ、でもこの4体のマガイモノじゃとてもメイドウィン共相手に勝負にもならない……しかもなんか良い感じのやつが1人足りないんだよ!」

 

「ふむ任せろ、発明コンペは得意なんじゃ……ロケットの中に設備持ってきてよかった」

 

 ジルトーは乗ってきた乗り物から機械仕掛けの腕を伸ばして次々と道具を持ち出しては手元に置き、カプセルの中のマガイモノに目にも止まらぬ速さで手を加えていく。

 

「あ、おい! お前何してんだよ!」

 

「まあ見ておれちょっと性能見直すだけじゃわい」

 

 たくっちスノーの静止も聞かずジルトーは素早い手つきで数多の機械を使っては戻しを繰り返してたった3分で作業を終わらせる。

 そしてロケットまであっさり解体してポケットに収納してしまう。

 

「ふう完成した! おいたくっちスノー、測ってみろ」

 

「ええ……? 何!?? 出力が20倍も上がってる!? 能力のパワーアップもだいぶ進んでるじゃないか!」

 

「時間があればもっと強く出来るぞ、この程度の調整など車にガソリンを入れるようなものじゃ」

 

 この短い期間でたくっちスノーを越えた力のマガイモノのアップデートを済ませてしまった。

 あくまでシミュレーションだがメイドウィンと勝負にならないと思っていたマガイモノ達が勝負が分からないぐらいにまで変貌、1人ではここまで早く出来なかったはず。

 これには見物していた部下2人も少しは驚いた、色んな世界を見てきたがここまで優れた技術を持つマガイモノ作りの科学者は初めて見た、なんならマガイモノを作ったり改造が出来るのはたくっちスノーだけと思っていたがこの老人は明らかにマガイモノを調整することに慣れている手さばき。

 

「お前何者だ……」

 

「言ったじゃろ? 悪の天才科学者じゃと、悪どいからこそこういう事もリスクなく行えるんじゃ」

 

 更にジルトーは次々と護身用とお近づきの為にたくっちスノー達に発明品の数々をプレゼントする、そのどれもがデザインが古臭いながらもたくっちスノーすら見たことないほど高度な技術が備わっている不思議ガジェットであることが分かり、立場的には今後も使えると恩を売っておいた方が得すると判断した。

 

「お前どこの科学者なんだ聞いたことないぞ、こんな凄い技術持ってるんだから宣伝すりゃいいのに」

 

「そうですよ、黒影局長に頼めば時空監理局技組のやらのトップも握れるんじゃないですかコレ、昔見た漫画のひみつ道具みたいでロマンありますよ」

 

「あ、ああ〜……実はな、ワシ昔からやらかして黒影には嫌われてるんじゃ、だから無理なの」

 

「嫌われてるのは自分だってそうだぞ? なんなら自分のコネで入れてやるからさ」

 

「大丈夫! だからワシやその周辺のことはどうか黒影には秘密にしてほしいんじゃ、な? な?」

 

 こんな科学力を持ちながらも黒影には内密にということは時空で知られたくないということ、科学者というは変人が多いとは聞くがこんな変わり種もいるのだろうか……たくっちスノーはそう思いながら首を傾げたが、ここまで手を貸してくれるのだから彼の意見を尊重することにした、少なくとも自分にとっては利用する価値はある。

 だがボディーガード達は立場上怪しむ。

 

「おい、この胡散臭い老人を信用していいのか? お前以上にメイの敵かもしれんぞ」

 

「で、でもマガイモノの有益なデータもこんなに……」

 

「データは嘘をつかないのか?」

 

「騙されてたら恥をかくのは自分だけだ、その時はその時だよ!」

 

 どうにかゴリ押してジルトーを研究室に置いておくことにしたのだが、また1つ問題が発生する。

 

「あ、そうだ博士……あと一人マガイモノが足りないんだけど博士もマガイモノ作ってたりしない?」

 

「任せろ! とびっきりの最高傑作がある、なにせお前にそっくりじゃからな」

 

「何!? 自分にそっくりのマガイモノ!? ゲームによくあるニセ〇〇とかブラック〇〇みたいなやつか!? アレ好きだよ!」

 

「そもそも貴方がゆっくり実況者とやらのたくっちチャンネルとBLACK-SNOWの偽物じゃないですか」

 

「あっそれもそうか……ちなみにBLACK先輩はもうゆっくり実況者じゃないぞ?」

 

「えっそうなんです?」

 

 たくっちスノーも自分そっくりのマガイモノに超絶乗り気だったので対面させても問題ないことを確認、ジルトーは電波を逆探知されないようにジャミング機能を発動しながらミリィにまた黒電話で通話する。

 

「もしもし博士? どうかしたんですか? 現在はポチと一緒に世界各地の情報を集めているところですが……」

 

「おおミリィ、急に呼び出してすまんのう実は省略してカクカクしかじか」

 

「ああなるほど、例のたくっちスノーと接触出来たわけですか……それで試合の為に残りの1枠を俺が参加してほしいわけですね?」

 

「平たく言うとそうじゃ、メイドウィン級と戦うことになるが死ぬわけでもない、これも勉強と思って……いいか?」

 

「博士の頼みとあっちゃ断れないですよ、それに俺もメイドウィン達と戦ってみたかったし黒影って奴にも会えるんですよね? よろしくお願いします、それとポチの……」

 

「おお! ありがとうミリィ、お前は最高にいい奴でワシ達の最高傑作じゃ、ポチのことはワシに任せておけ」

 

 ジルトーは通信機を切り、名簿にミリィを加え入れる。

 これでなんとかたくっちスノー達は試合をする為にメンバーを揃えられた、試合が成立せず終わるというカッコ悪いオチを避けられた事に安堵する、危うくお話が一本終わってしまうところだった。

 

「よし! これで10枠揃ったぞ!」

 

「こことは別のもう一人のティーか……そっちも興味深いな」

 

「しかし黒影局長がそんなもの許しますかね……?」

 

「黒影だってその他諸々なんていうくらいだ自分が作ったマガイモノで出ろとは言ってないだろ? それにそんなにそっくりなやつなら万が一の為にコピーを作ったと言っとけば良い!」

 

「そうじゃそうじゃ硬いこと言うな」

 

 いつの間にかたくっちスノーはジルトーにだいぶ気を許している、昔からそうだこのたくっちスノーという人物、面白いと見込んで一度気に入ったものは友のように遠慮もなくなってしまう上にめちゃくちゃ義理堅くなってしまう、こういうところは作りの親である黒影と類似したところだろう。

 まあ、そういう性格のおかげでローレンもexeもこの場に居られるだけに咎められないが……。

 

「ところでそのバトルロイヤルのルールはどんな風になっている?」

 

「ちゃんと黒影にムチ打ってすぐに公開するようにしておいたぞ、こんな感じだ」

 

 バトルロイヤルのルールはこうだ。

 そもそもこの試合が成立するのはマガイモノとメイドウィンそれぞれに別の手段で不死身の能力が存在している、つまりどちらも本気を出しても、どれだけ手段を選ばなくても何も問題がないということ。

 その為勝ち負けの判断は長時間の気絶や戦意喪失、降参などで判断する。

 その競技の内容は『ゼロ・ラグナロク』たくっちスノーはどこまでパクってんだよと突っ込んだ。

 

「なんと! なら長期戦用に調整した方がいいのう」

 

「そういうわけ! 今からぶっ通しで明日に向けて最後の調整よ!」

 

 ジルトーとたくっちスノーが楽しそうにマガイモノの最終調整をしているなか、それを見ているexeとローレンは今でも黒影の狙いを考えていた。

 

「メイドウィンにするという話……本気だろうか?」

 

「真面目じゃないですよ絶対……だってメイドウィンの定例会議ってほぼ局長の酒の席らしいじゃないですか、どうせ終わる頃には忘れてますよ、あの人監理局でも働いてるところ滅多に見たことありませんよ」

 

「だが仮にも局長ともあろう存在がそんな無責任な形でメイドウィンにするとは思えん……」

 

「じゃあどうにかメイドウィンになれたとしても役に立たないような世界与えられるんじゃ……」

 

「まあそれもあり得るな……」

 

 一方その頃、電話先のミリィはホテル内でいつでも時空監理局に行けるように準備を整え荷物をまとめる、すぐそばでついてきてたポチはというとホテルの中にあったゲーム機で他世界を元にしたゲームを堪能していた。

 

「うーん、同じ『ドンキーコング』でも世界が違えば仕様や内容も変わってくるんだなぁ……まぁそれをブログで比較していくのも楽しいんだけどね!」

 

「ねえポチ、博士に頼まれて時空監理局まで行かなくちゃならないんだけど」

 

「監理局か……変な噂が多いっていうあそこ? 博士が言うならそりゃ行ったほうがいいけど」

 

「それなんだけど、ポチは一人で留守番しててほしいんだ、それはほら……黒影そっくりが対面するのはまずいだろ?」

 

「うーん分かった、確かに俺喧嘩とか苦手だしそれまではグッズ作りでもしてようかな、ここしばらくこのホテルに滞在することにするよ」

 

 それから時は進み、決戦の日まで。

 ジルトーはこっそり帰還し、ポチを通してミリィを時空監理局に迎えさせて初めてたくっちスノー二人が対面する。

 本当によく見なくてもミリィはたくっちスノーと瓜二つでexeやローレンでも一緒に並ばれると見分けがつかなくなりそうだと錯覚させられる。

 

「はじめまして……だな? 向こうにも色々あってね、お前の身代わりとして生まれたミリィだ」

 

「へぇ……確かにそっくりですね、おまけに結構真面目そう」

 

「それどころかこっちより利口に見えるな」

 

「おだまり」




〇〇〇〇だったキャラをローレンに差し替えているのでここから先は絶妙に作品が改変されていきます。
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