時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~   作:黒影時空

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第1試合 〜超電磁VS銀河まるごと〜

 そして訪れる試合開始の時、ミリィとたくっちスノーはメイドウィン達が集まるバトルコロシアムへと向かい、歩きながらミリィと話す、同じ自分だからこそお互い様子を伺い信用できるかどうか判断する、一度気を許せばチョロいのだがその段階まで辿り着くのは困難なことも多く判断基準は特にない、気分としては気紛れなのがどうにも扱いにくい存在だ。

 良くも悪くも子供っぽい。

 

「お前メイドウィン見るのは初めてか? 混乱されないように準備はしたか?」

 

「顔は君にもある能力で変えてたから怪しまれることもないよ、それよりも舞台となった世界って?」

 

 たくっちスノーが黒影に呼び出された世界は一度も行ったことがない辺境の地、ペンペン草も生えてなさそうな場所に不似合いなローマ風のコロシアムが見事に建っており、これは間違いなく黒影の手を加えたものだと分かった。

 こういう世界が前からあったのではなく頃合いを見て最初からあったかのように勝手に作ったりして監理局の帳尻合わせが大変、たくっちスノーが来る前は一体どうしていたのか気になって仕方ないと思っている。

 

「黒影のやつまたこんな手を使ったな……これなんとかするの誰だと思ってんだ」

 

「局長って普段からこんなんなの?」

 

「仕事の肝心な時だけはちゃんとやるんだけどそれ以外だと適当なのあいつ、こうやって適当に世界作って適当なもの生やしたりとかね、あの人には創作意欲とかこだわりってもんが……」

 

「ティー、メイがもう目の前まで居るぞ」

 

「シェ──ッ!!」

 

 気が付けば黒影が眼前で笑顔で立っていた、それに気づかず愚痴ってたことに大昔のギャグでリアクションする姿……ミリィにとってはどれも新鮮な体験であった、どれもこれもが予想外すぎるし生の黒影まで見れる、ニコニコ笑っているがどうにも感情が読めない、善悪や好き嫌いを通り越した無関心……にしては心臓の鼓動が激しいことがミリィの目にはわかる。

 

「あ……貴方が局長の黒影さんですか? 俺はミリィ、ここにいるたくっちスノーの身代わりとして作られました」

 

「へーなるほど、たくっちスノー自身をもう一人増やすとは考えたね君も……けどね本物! 偽物を増やしても君の三連戦は変わらないからそれは分かってるよね?」

 

「あ……当たり前よ! 自分だってそんなこっすいことはしないもんね! あーびっくりした! ローレン水用意して!」

 

「とりあえずこの規模でいいですか!?」

 

 ローレンは遠慮なくホースをぶっかけて、それでも動じずたくっちスノーはびしょびしょになりながらその状態で顔を洗う、揃いも揃って変な奴らだ、普段どんな風に過ごしていたのだろう……ミリィはそう思った。

 EXEはあんな奴ら気にするなとばかりに無視して黒影に話を詰める。

 

「そんなことよりメイ、そっちこそメイドウィン達は集めてきたんだろうな?」

 

「ああもちろんだとも、よりどりみどりで最強クラスのメイドウィン10人ぐらいね! 結果は見えてるかもしれないけどぴろぴろぴろ」

 

 なんかムカついたのでたくっちスノーはムッとした顔しながらホースの水を指で動かして黒影に放つがそこから更にジェットコースターみたいに軌道を曲げられてミリィにぶっかけられる、たくっちスノーはコロシアムの内部に入りカプセルからマガイモノ4体を用意してカタパルトと合わせていつでも呼び出せるように、exeとローレンを待機用の席に座らせて自分はカッコいい玉座を作ってミリィは普通にパイプ椅子を用意した。

 観客側にいるメイドウィン達はミリィの姿を見てざわついていた、ゼロ・ラグナロク開始前の時点ではまだ研究所から出たばかり、基本的にポチのそばに居たので黒影と2人で遊んでいたと思われていたらしく時空でもミリィの存在自体を知る者はまだ稀だったのである。

 

「それで俺たちは誰からいく? 三連戦のティー以外で……といっても、どういうのが来るのか分からないがな」

 

「それだったら最初はメイドウィンがどれだけやれるか分からないし戦闘技術が豊富で応用力が高いやつがいいんじゃない? 技が多めとか」

 

「となるとまずは様子見でボルコンWからだな、そのボタンを押してくれ」

 

 ミリィがたくっちスノーに頼まれてボタンを押すとボルコンが入っているカプセルが動いてカッコよくカタパルトに運ばれ、いつでも発射して闘技場まで送り込まれるようになる。

 これはジルトーが開発した遊び心である、というよりはあの後調整ついでに二人ともいかにかっこよく選手を呼び出すかを模索していた気もある、こういうところで工夫を入れなくては研究者としてもったいないらしい。

 その後は時間まで各対戦相手について考察していた、自作のマガイモノがあまり流暢にに喋れない為につまらないと感じているたくっちスノーはこういう時におしゃべりになる。

 

「俺もこういうの好きだけどさ……ったく、俺の相手はどんな奴になるのか」

 

「それで言ったら俺はなるべく楽な相手とやらせてください……といっても相手は神、どうすればいいんですか!? 死にますよ俺!? 話つけてます!?」

 

「バカいえ! そのまま出すわけないだろ! それに相手が人間ならメイドウィン共も肝をつぶして本気を出しづらくなる!」

 

「鬼畜すぎますって!!」

 

「更にEXEの場合なら基本は出し得だ基本勝てる、問題は他の3体……特定の要素特化にしたから相性次第ではまだヤバいぞ」

 

「じゃあたくっちスノーの三連戦は?」

 

「そこは最後絶対にあるしその時考えるよ、お前も自分なら何でも出来すぎて考えようがないのは分かるだろ?」

 

「それもそうか」

 

「ギャバギャバ!! 我こそはおしゃべり大国のメイドウィンギャーバ!!!」

 

 たくっちスノー達が作戦会議中にも関わらずとてつもない大声で叫ぶ声が、すぐ遠くにいるのにまるで耳元でメガホン越しに怒鳴られているような感覚であり近付くだけで音波で人を殺しそうだ。

 いくらなんでも司会者に使うような存在ではない、ミリィは前もってポチからオリジナルの『終末のワルキューレ』を見せてもらったので分かるがここまで露骨にパクってくるとは思わなかった、おまけに結構ズレている。

 

「な、なんだよあのバカうるさいメイドウィンは……」

 

「自分も初めて見た……あんな声でかい奴いるんだな……」

 

「ギャーバ・メイドウィン・コエデケーナ、担当してる世界は『beatmania』でメイドウィンランキング6407位、戦いたくないけど参加しろって実況役やらされてるみたいです」

 

「何? メイドウィンランキングって」

 

「文字通りの神たちの基準となるランキングだよ、その世界がどれだけ環境がいいか人が住みやすいか面白いか……そういう世界を作るメイドウィンをランキング分けしてるのさ、もちろん1位は黒影だし判断してるのもあいつ」

 

「なるほど……高ランクだといいことあるの?」

 

「オレは確か高ランクだと管理している世界の生き物の人生まで好きに決められるとか聞いたことあるな、それでもやっちゃいけないこともあるそうだ自分の世界の生物と結婚とか」

 

 今回のゼロ・ラグナロクの結果ではランキングに変動があるのかもしれない、しかしあくまで世界ではなくそれを作るメイドウィンが凄いという威厳のランキングなのだ、まあ黒影が作るものなんてそういうものだろう。

 実際低ランクだからと言って住みにくかったり治安が悪いということもない、このランキングもそれを生きる人々には関係ないただのランク付けとされていた……このラグナロクが終わるまでは。

 

「……じゃあアイツってめちゃくちゃ低くない? 世界って何個あったっけ?」

 

「これでもびみょ〜に上ではあるんだぞ、だってあそこに居る奴で18974位」

 

「マジかよ……じゃあ出場するやつのランキングも高いのかな?」

 

「それは多分そう、しかし大会始まんね〜なメイドウィン共何してんだ?」

 

 ここまでたくっちスノー達が雑談をしているというのに全くメイドウィン側で動きがないどころか黒影を見ていない、誘ってきたのはそちらだというのに一体何をしているのかと愚痴ろうとすると、ようやく一番目立つ舞台の床が開き特大のスポットライトや紙吹雪と共にゆっくりと黒影が座って現れる。

 

「あいつ結構ド派手な登場するんだね……」

 

「メイはあれで目立ちたがりやだからな」

 

「コラ黒影おせーぞ!! また予算かかるやり方で登場しやがって!!」

 

「さあさあ遂にメイドウィンランキング第1位がご登場でござ」

 

「あっ聞いてみたらこいつうるさいからやっぱりナシで」

 

「アーッ!! まだ話足りない!!」

 

 黒影から見てもギャーバは異様にうるさかったのか持っているボタンで床が開いてギャーバはボッシュートになってしまった。

 そして完全にいなかったものとして黒影は元の顔に戻る、なんて雑な退場かと思うかもしれないが段取りなんて全く考えてないイベントなんてこんなものである、1位だからなんでもしていい。

 そしてギャーバの出番はもう二度とありません。

 

「あいつ黒影局長でも無理なんですね……」

 

「多分台本2行分しか喋ってないのに消えたぞあのメイドウィン……で! そっちの方は誰が来るんだ、自分達の方はいつでも出せるぞ!」

 

「ああたくっちスノー待ってたのごめーん、じゃあこっちから行かせてもらうよ、いけー!! ゼオノイド発進!」

 

 黒影が呼びかけると空から流星のようなものが、あれは鳥か、飛行機か、スーパーマンか、いや違うあれは戦闘機でありメイドウィンだ! かっこいい戦闘機が変形して人になりメイドウィンになって地面にぶっ刺さり変形完了。

 その姿に思わずミリィは感激しそうになる、何人かのメイドウィンも。

 

「か……かっこいい!」

 

「何感激してんだ頭小学生か! くそっこっちもあんなマクロスもどきに負けてられん! いけっボルコンW!!」

 

「ティー! マクロスは戦艦の方で戦闘機はバルキリーだぞ!」

 

「おだまり!」

 

 ツッコミも気にせず全力でもう1回ボタンを押すと、カタパルトが起動してカプセルがコロシアムまで投下、煙とともにゆっくり開きボルコンWが起動してゆっくりと降りていく。

 

「プログラム起動」

 

「おおー! あれもかっこいいぞ!!」

 

「博士が言った通りロボットはカプセルからゆっくり降りてくるような無機質な奴がかっこいいんだ戦闘マシンみたいで!」

 

「とか言って貴方勇者ロボみたいにしたいって子供みたいな喧嘩あのジジイとしたじゃないですか! コン・バトラー式だからグレート合体は無理とかで!」

 

「おだまり! これでも自分が作ったときよりだいぶ賢くなってんだよ! 秘密兵器も沢山付けてもらったしな」

 

 スーパーロボットのマガイモノに戦闘機のメイドウィン、初戦から同じ事を考えてなかなか面白い面子となった、これが呂布VSトールになるのだからプレッシャーは半端ないがマシンだから特に何も気にしていないのが良いところ。

 ただし敵のことは何一つ推測していないどころか黒影がこんな面白いこと漏らすはずもない、というか出場を直前で話してそうなのでゼオノイドの情報を今からインプットしなくてはならない。

 

「ゼオノイドはどんな世界のメイドウィンなんですか?」

 

「たしかアイツはスターノイドってシューティングゲームだな、ゲーセンとかにあるはずだ、聞いたこと無いけど……ところで黒影!」

 

「ん?」

 

「司会者が影空間に消えたから試合開始の合図が来ないんだけどどうしてくれるの?」

 

「あっごめん、今始めるね! ところで影空間って何猿空間の亜種?」

 

 黒影は近くに置いていたゴングを蹴り飛ばして破壊しながら張り裂けるような男を鳴らし試合開始の合図、それと共にボルコンWが膝蹴りを浴びせて先制攻撃を決め更にエルボードロップの追撃をお見舞い、ゼオノイド何も出来ずいきなり不利になるがボルコンはそのまま捕まえてロックアップの体制だ、いきなりここまで細かく行動できるのもジルトーの協力あってのもの。

 

「どうだ! 自分のマガイモノは強いだろ!」

 

「凄い! あんなロボットが高度なプロレス技を使えるなんて!」

 

「マガイモノ様々だな」

 

 ボルコンWの多彩な格闘攻撃にゼオノイドは手も足も出ない、力強く掴まれて放り投げられては壁に叩きつけられてパンチの連続、更には持ち上げてパイルドライバーからのフライングニードロップ! 戦闘機の翼をもぎ取ってやりたい勢いだ。

 

「でもたくっちスノー、武装を自慢してるわりにはさっきからパワー系で攻めてないか?」

 

「あいつは今ボルトモードだからな」

 

 ボルコンWには2種類のモードがあり、たくっちスノーの気分次第で2つのロボットに変身できる、1つは電撃やパワーを重視して戦うボルテスV寄りのボルトモード、そしてもう一つは数々の武装を展開して技術力で迫るコン・バトラーV寄りのバトルモード!

 状況に応じて技を使い分けられる他にコン・バトラーVとボルテスVの装備は一通りパワーアップさせた、悪く言えば詰め込みすぎた状態で一通り搭載している。

 ボルコンが攻める中遂にゼオノイドも動き、空に飛び上がって何百発もののミサイルを放ち、空から無数の軌道を描き一直線にボルコンの頭上を狙う。

 

「いけいけー! ぶっ壊せゼオノイド」

 

「あの野郎ミサイルまでマクロスみたいにしやがって!! そういうのは自分の専売特許だろうが!」

 

「おいあんなの避けられるのか!?」

 

「自分とあの爺さんのマガイモノだ、舐めるなよ! ボルコンV! チェンジバトルモード!」

 

「コンバトラーV」

 

 たくっちスノーが掛け声1つ出すだけでひっくり返るように手が足になり足が腕になる、そして腹と腰を細かく閉じたり曲げたりした後に新しい顔が現れて変形完了、昭和ではお馴染みのひっくり返って形が変わる例のやつである、あるいはエックスエンペラー。

 

「超電磁スーパーボールだボルコン!!」

 

 たくっちスノーが指示を入れるだけでボルコンは腕に小粒のスーパーボールのような電磁の球を何個も作り出し空に向かって投げ飛ばす、ボール同士や壁で何回も弾んではミサイルを貫きマシンガンのようにゼオノイドの身体に叩き込まれていく、そこから腹から取り出した自身のミサイルで連鎖爆発、科学力も中々の物である、まあ超電磁ボールってボルテス側の技だけど。

 

「おっと! めちゃくちゃ圧倒してるじゃないかたくっちスノーのメカにしては上出来だね」

 

「自分にしては余計だ!!」

 

「……まさか本当に圧倒していると思っているのか?」

 

「あ、exeさんは気付いてました?」

 

 ミリィとexeは戦ってからずっとゼオノイドの動きを観察していた、メイドウィンとマガイモノの戦いなので自分が本気を出すまでもない……と考えてもいたが何か違う、何か様子がおかしい……ゼオノイドの動きが全く読めないどころか真剣に動いてくる素振りも見せない。

 

「ティー、少しは警戒しろ……何か妙なことをしてくるかもしれないぞ」

 

「んなことは百も承知だよ……メイドウィン相手だし一気に終わらせないとまずいな、ジャグリングランサー!」

 

 メイドウィンとマガイモノの戦いは欠損や死亡では終わらない、どちらも再生するからこそ無理にでも長期戦をしてしまう……それを込みの戦略も考えついてはいたが今からそれを無視して三本の武器で速攻にかかる。

 ボルコンはツインランサーより一本多いランサーをジャグリングのように振り回し目にもとまらぬ曲芸のような斬撃で翼を断つために構えるのだが……突如としてゼオノイドの動きが軽快になり全て避けられる。

 

「かわした!? サーカス仕上げの剣技だぞ!?」

 

「他に武装はあるんですよね!?」

 

「当たり前だろ! こうなったら超電磁スパイダーヨーヨーだ!!」

 

「了解」

 

 ボルコンはジャグリングランサーを全て捨てて電磁の糸で引っ張る四つの大きなヨーヨーで拘束しようとするが、ヨーヨーをそのまま受け止められて引っ張り返される。

 とりあえずたくっちスノーは数が多ければオリジナルを上回ると思っているらしい、キングギドラを作らせたら首が6つになっていたこともある。

 

「パワーもさっきより全然違う!」

 

「やはりそうか」

 

「何か知ってるのか雷電」

 

「誰が雷電だ! 簡単なことだ……奴はボルコンの戦闘力データを測っていたんだ、それが終わって奴を倒せるまでのスペックに立て直したんだ」

 

「データを取られていたってことね……」

 

 

 やはりマガイモノではメイドウィンに敵わないのか……誰がそんなことを決めた、このまま無様を晒して黒影にいい格好をしてたまるか、こんな結果など認めない……普段のたくっちスノーならそう言うだろう。

 だが今日の彼は特段大人しい、exeがいよいよ頭でもイカれたのかと泣き所に鋭く小足を叩き込むと音速のハリセンで返してきたので正常らしい。

 

「バカめ、自分は黒影や時空のことちゃーんとわかってるんだぞ? これくらい想定内だ、こっちだって出力を80%まで抑えていたんだ」

 

「でもそれじゃあ元に戻したらそれもすぐ対応されるんじゃないの?」

 

「う……その間に倒しちまえばいいだろ! お前細かいんだよ!」

 

「そっちのたくっちスノーはガサツなだけじゃないのか……?」

 

「それにボルコンの事は自分も見てきたけどこいつ単体の強みが足りない気がするんだよね、ボルテスV要素は薄いしコン・バトラーV要素に関しては武器の質を上げるんじゃなくて数を増やしただけってどうかと」

 

「ええいやめろ!! 自分の嫌いな言葉の3番目はマジレスだ!!」

 

 本当に同じたくっちスノーとは思えないくらい中身に違いがある、見た目は似ていても全く別の生き物なのだろう、一応たくっちスノーが作った身代わりという設定で黒影に出しているのに真似をする気はあるのかというところはお互い様、とはいえここまで息が合わないとは思わなかった……。

 ミリィが冷静な目でネチネチ言ってたくっちスノーがそれをなかったことにしてる間、黒影はゼオノイドとボルコンの試合をダラダラと眺める、事の発端が一番真剣に鑑賞していない。

 

 

「なるほど……たくっちスノー本当に1日であのクオリティのマガイモノ作れたのか、いや……誰かに手伝ってもらったとしてもあれなら時空で味方や敵としても運用出来るよね」

 

 マガイモノを呼び出したのは単に物語に使えそうだったから、急かしたのは特に何も考えてない、黒影がたくっちスノーにやったから大目に見て貰えるがパワハラ紛いのことは珍しくないし、ここまで追い込めば結果を見せてくれるのは彼だ。

 まあゼオノイドもゼオノイドで面白くなると思うくらいには優れているのですぐに終わるだろう……とそんな時、ゼオノイドが急に巨大な戦闘機に変形し旋回の後ボルコンに特攻する。

 

「あら、メイドウィンブラスト使う気なんだ」

 

 

 ……そしてたくっちスノーに頼まれて黒影の声をこっそり盗聴していたローレンは焦る。

「あ、あの早くないです? メイドウィンブラストって確か向こうの必殺技!」

 

「しかもセカンドだ……単にメイドウィンブラストといっても誰でも使える肉体強化のファーストに限られた奴しか使えない独自能力のセカンド……この差はだいぶ違う!」

 

 メイドウィンブラストセカンドに到達した者は現時点ではまだまだ稀、ランキングの高さや本人の強さは関係なくここまで覚醒できるかどうかには運と閃きにかかっている、ゼオノイドを引き入れたのもコレがあるだろう。

 

「で、そんなのどうするんだたくっちスノー! 多分あれ直撃したらアレじゃない」

 

「一旦ボルトモードにチェンジだ! アレならまだデータもそんなに取られてない!!」

 

「ボルテスV」

 

 ボルコンも再びボルトモードになり戦闘機に突っ込まれていた所から跳ね飛ばしてなんとか脱出するが戦闘機は再度旋回、錐揉み回転しながら再度狙ってくる!

 

「また来た! なんて旋回力だ……あれがメイドウィン!」

 

「あれメイドウィン関係あるの?」

 

「こうなったら必殺技だ! 超電磁!! 二・重・タ・ツ・マ・キ────!!!!」

 

「了解」

 

 たくっちスノーのノリに反して無機質に応えるボルコン、コンバトラーVの2倍の出力がある超電磁タツマキを放ち戦闘機の動きを逸らすことに成功する。

 

「よし! そのまま超電磁特大スピンだ!」

 

「さっきから武装のセンスなんとかならないですか」

 

「おだまり、昭和メカなんてこんなもんでいいんだよ!」

 

 今度はボルコンが突っ込み、両腕から刃を出して戦闘機状態のゼオノイドを弾き飛ばす!

 普通に見ていたメイドウィン達もこれはざわめき出す、メイドウィンブラストセカンドが初めてメイドウィン以外に突破されてしまった……当然である、ジルトーは元々黒影を相手取って研究していた存在、ライバル視しているたくっちスノーと合わさって作ったものは黒影を倒すことを想定するとなればそれ以外のメイドウィンも倒せなくては話にならないのだから。

 これにはダメ出ししていたミリィも驚く。

 

 

「博士……たくっちスノーってこんなすごい人だったんてますね」

 

「おいミリィ、何言ってんだ……自分と同じくらい爺さんが凄いんだよ」

 

「えっ、たくっちスノーさんそこまで言うんですか? てっきり自分の少し下かと……」

 

「バカ! いつまでも時空犯罪者の頃のしょっぱいプライド背負うわけにもいかないだろうが!」

 

 まるでガキみたいに騒ぎながらも時に冷静に振る舞い、かつて自分も時空を壊しそうになったからこそ直し方を見極めて……そして誰よりも優秀で最高完璧だが抜けている所もあるという矛盾の黒影を支える、誰よりも強いが負けまくる最強無敵という矛盾。

 それが、時空監理局副局長たくっちスノーなのだ。

 

 

「ふーん、思ったより善戦するつもりなんだねたくっちスノー、でもそうはいかないよ、ここからがメイドウィンとの戦いの面白いところなんだから……それにシナリオを決めるのは俺なんだよ?」

 

 黒影が寄せ集めた残り8人のメイドウィン、たくっちスノーやそのマガイモノと戦うために集めてきた自慢の精鋭、こいつらと戦わせて結果を見せつけ……たくっちスノーに見極めさせるのだ。

 善人になるという道が到底甘くないということを、たくっちスノーが通っている道は蝋燭の如く簡単に付きてしまうほど繊細で儚い、だから壊すことなんてあっという間だ。

 

 

(たくっちスノー……今のままで居てくれよ、そのまま調子乗ってくれれば、間違いなく善人にはなれないのだから、善人にならない上で時空を救う方向性だってあるはずだろ!)

 

 黒影はたくっちスノーをメイドウィンにさせる気自体はある、だがその真意は絶対に逃さないため……クモの巣にかけるのと同じ、頑張らなくても頑張っても同じ、何にしてもメイドウィンランキングのワーストから始まり、どうしようもないダメ世界で自分がやったようにメイドウィン達にこき使われるのは確定しているのだから。

 

「……ま、今はこの祭りを楽しもうか、この時空の主人公は俺なんだ、味方キャラの活躍を頼しむのも主人公の仕事らしいからね」

 

 黒影は初戦から盛り上がってきたマガイモノ対メイドウィンの戦闘の様子をじっくりと鑑賞するのだった。

 

 


 

 

「なるほど、やっとゼオノイドの強さが分かってきたぜ……」

 

「え?」

 

 たくっちスノーはボルコンとゼオノイドの戦闘データを見ながらゼオノイドのスペックを数値化する、ミリィも特別に見せてもらい、一緒に考察しながらゲーム風に各部門をランク付けしたり技のビデオを作成する、ゼオノイドは突飛した要素はやはりスピードと連射力、本気で攻撃すれば宇宙艦隊の大群も蜂の巣になるだろう。

 

「やっぱりシューティングゲームのメイドウィンなだけあって速いな……16連打だっけ有名なの、あのブラスター俺だったらバリアするよ」

 

「それも速いけど機体スピード! 人間がマッハで突っ込んでくるとかマガイモノ相手じゃなかったら死にますよ!」

 

「…………だが俺よりは遅いぞ?」

 

「exe、お前……アニメって倍速で見たことあるか?」

 

「何? どうした急に?」

 

「スピードの話だよ」

 

 たくっちスノーはEXEに対してはあまり質問をしない、こいつは真面目なので変に考えさせると斜め方向な答えを出すこともあるが、それがたくっちスノーにとっては気に入ったものになることもまあたまにある。

 だからこそ肝心な時にだけたくっちスノーはexeに聞く、ローレンに対してはしょうもないことを結構言う、カスの嘘も言う。

 

「無いな、そういう事をやるのは所謂タイムパフォーマンスというやつだろう? それで視聴したとしてもセリフは早くなる分高くなるし聞き取りにくい、絵も細かい所が追えなくなるぞ」

 

「自分も最初はそう思っていた、でも試してみると案外快適に観られるんだよ……なんてことはない、速すぎなければいい、1・5倍くらいのスピードならセリフも聞き取れるしそこまで違和感のある声質にならない、絵も大体追える、脳の処理が追い付かなくなってパンクするとかも聞くけどね」

 

「……ゼオノイドはそれと同じでちょうどいい速さをずっと維持してるってことか? 速すぎるとコントロールが利かないから?」

 

「そういうわけ、exeも頭よくなってきたじゃん……もちろん弱点もある、倍速視聴理論で言えばこれに慣れると普通のスピードじゃ耐えられなくなってくる、あれより遅くなることは絶対にない」

 

 ミリィがそれを聞いてゼオノイドを見てみる、ゼオノイドは常に同じスピードを維持している、倒されて吹っ飛ぶ時も戦闘機になった時も常に時速170キロ。

 まさに神のごとしバランス力、万能型は特に褒める所が無い場合の誤魔化し、あるいは実力が伴わなければただ良い所がないだけの中途半端と松山は過去に言っていた、だが奴は違う……スピードがちょっと優れてるだけで実際は何でも得意……! これがメイドウィン、基本何でもありなのだ。

 少し怖くなったミリィはたくっちスノーに聞いてみる。

 

「……怖いもの見たさなんだが、黒影はどれだけ強かったんだ?」

 

「お前それ今ここで聞く?」

 

「いやだって黒影と散々ケンカしてきたんだろ?」

 

「ケンカなんかしてない……あんなもの、アイツからすればケンカどころか遊びにもならないよ、こっちは大真面目に観察してきたんだけどな」

 

 黒影は強い、時空で一番強い、たくっちスノーはそう思っている、事実たくっちスノーからすれば黒影には9999戦中9999連敗中、どの事件でも黒影が来たら詰み確定……黒影がいるだけで無駄に終わってしまう、最後は絶対に彼が締める。

 そのときは常にひとつの方法。

 

「アイツが持っているデカい包丁あるだろ……? 普段はクジラとか切るやつらしんだが、自分はアイツがアレでクジラ料理を作ってるところなんか一度も見たことない、アレを振り上げるだけでやつは……」

 

「綺麗に一刀両断とか?」

 

 ミリィの質問に対して、たくっちスノーはローレンにテーブルを用意してもらい、たくっちスノーはそれを腕力で引き千切る。

 

「ぶっ壊すんだ、尊厳も、空間も、苦労も、肉体も、兵器も…………あの包丁ひとふりするだけで何もかもパァだ、はっきり言ってこの間もぶん投げてくれなかったら避けられたかどうか怪しい」

 

「俺達もなんとかついてきたころ頃は普通の包丁見るだけであのトラウマ思い出して嫌なものでしたよ、もう怖くて怖くて」

 

「おかげでオレは包丁を必要としないデンジャードッグが主食になったよ」

 

 いつの間にかたくっちスノー達の思い出話に花が咲いていた、それどころではない。ボルコンはこのままでは……

 

「負けちゃう?」

 

「今のままではね、でも勝つさ……俺たちの傑作なんだから!」

 

 ボルコンは絶対に負けない、ジルトーがすぐそばについて用意してくれた秘密兵器がついている。

 たくっちスノーの脳裏にはジルトーが言っていたことが思い浮かんでいた。

 


 

「え!? 負けそうになってもマガイモノをその場でアップデートしろ!?」

 

「そうじゃ、あまりにもめちゃくちゃにならなければちょっと変えたところでバレはせん、それに突然強くなって逆転したほうがかっこいいぞい」

 

 研究室のチェックの最中、たくっちスノーはもしも負けそうになったときにはどんなアフターケアをすればいいかとジルトーに相談していたところ、マガイモノをパワーアップさせるのではなく途中で性質を変えたり学習させろという答えになった。

 今ではAIでも出来ることなのでマガイモノに出来ないわけがないということだが。

 

「いやアップデートって……急ごしらえで作り替えるなんて出来るのかよ爺さん! マガイモノって結構複雑なんだぞ! 自分だって成長の兆し見えてこないくらいだし!!」

 

「無理でも出来ると言わんかお主も技術者じゃろう! 奴らのことじゃワシらの作戦や技など徹底的に解析してすぐ突破してくるじゃろう、そこから作り変えて小賢しく立ち回るんじゃ」

 

 ジルトーがそう言って持ってきたのは、生きたままマガイモノの成分の様子を確認出来る装置、元々はミリィの健康診断の為に作った発明だがそんな使い方も出来る、これをパソコンに繋いでたくっちスノーが使えば遠隔で自作マガイモノの成分を随時チェックし改造も可能という便利な道具。

 これを用いることでその場でマガイモノ達に学習させて発展させられるという使い捨て型だったたくっちスノーにはない発想。

 

「それも学習されたらどうするんだよ! 小細工が通用する相手じゃねえ!」

 

「そうやって諦め系だからお主は黒影に負け続けていたのではないのか?」

 

「ぐっ……」

 

「お主これまでの経験で何戦負けた?」

 

「9,999敗……」

 

「ではお主次の試合で負ければぴったり1万ではないか!」

 

「やめろ! そればっかりは目を背けていたんだよ!!」

 

「良いかマガイモノの王、お主らはマシンではない! かといって動物でもない、中途半端ではなく両立している!」

 


 

「マシンように好きに改造できるし、動物のように成長出来る……博士がそんな事を?」

 

「改造した上でそこから成長するっていうんだ、中々のポテンシャルの塊だって博士はオレ達をとんでもなく賞賛してくれた、だからあいつも受け入れた」

 

「……俺のこともそうやって成分を良くしてくれたんだな、博士」

 

「ってことでアップデート開始! 上手くいかなかったらあのジジイにスパム送ってやる!!」

 

 たくっちスノーは身体からノートパソコンを作成して即座にプログラムを組み、ボルコンの目が光りゼオノイドの主翼を掴み背負い投げさらにそこからレッグラリアート! さっきからプロレス技のデータが多いのはたくっちスノーのセンスではなくジルトーの趣味である、しかし圧倒してるので文句なし。

 

「お前そんなのありかよ!」

 

「勝手に作り替えるとか卑怯だぞ!」

 

 当然ながらメイドウィン達から野次も飛んでくるが、黒影はたくっちスノーが罵倒されているのと自分達に足掻くために思いついた発想の柔軟さの両方で笑いが止まらない、ここまで成長してくるとは。

 

「あっはっは! やるなたくっちスノー! 確かに俺は成分を勝手に作り変えてはいけないなんてルールは言ってないな! ハンデだ、特別に許してあげるよ」

 

「へっ! 何がハンデだ黒影! 今にお前がそんな余裕ぶっこいていたこと後悔させてやるぜ! というか、マガイモノでも成長くらいいだろ!!」

 

「俺の辞書にやらなければよかったの文字はないんだよたくっちスノー! 叩き潰せゼオノイド!」

 

「ボルコン! お前は最強の超電磁勇者だ、負けるなよ!」

 

「了解」

 

 ボルコンはたくっちスノーの指示が無くてもモードチェンジや武装を自ら行い指示に反した行動も行ってゼオノイドの集めたデータをめちゃくちゃにしていく、もはやたくっちスノーの想定をはるかに超えているがボルコンはしっかりたくっちスノーの命令を聞き受ける。

 

「す、凄い……凄いぜこりゃ、これじゃまるでボルコンが生きてるみたいだ、俺達みたいに!」

 

「あの爺さんはツギハギ人形みたいで話にならなかったマガイモノを俺達みたいにするキッカケを与えたのか……」

 

「そんなまさか! 大革新ですよ!? このボルコンの原理を解明すれば……」

 

 マガイモノの製造、改造技術はより進化する。

 ツギハギだけの存在ではなくより洗練された複数の要素を持つ未知の存在、更に言えば見分けのつかない一種の生命体としてもっと見た目がバリエーション豊かになり、より時空のために便利に働くマガイモノ達の未来が見えてくるようだ、マガイモノがただのパチモノじゃ無くなる時も近い。

 

「これだ! 自分が見たかったのはこういうやつだ! いけいけー!」

 

「超電磁ガトリング! 超電磁人間コマ回し!」

 

 ボルコンのインプットもしていない必殺技でゼオノイドは押される、マガイモノがメイドウィンを圧倒するなんて面白くない、このまま逆転出来なくちゃ話にならないと黒影は無自覚だが苛立っていた。たくっちスノーが勝てばメイドウィンになるとは決めてないのにも関わらずである。

 そして同じ頃ミリィの頭がピーッといい音が鳴る、ジルトーに作られただけはあり変な機能が沢山詰め込まれているようだ。

 

「たくっちスノー! こっちもゼオノイドの戦闘データ解析終わったぞ!」

 

「よし! すぐにボルコンに転送してトドメだ!」

 

「天・空・剣!!」

 

 なんと天空剣二刀流、それを上に構えて両手でVの字斬りを行う……これが天空剣Wの字斬りである!

 ボルテスVの必殺技を2つ重ねたこの大技にさすがのゼオノイドもダウンしてしまう……が、何か様子がおかしい。

 肩から火花が散ってショートする音まで出ている、WのWの字斬りで切れた断面から機械のようなものが見える。

 

「あれ機械ですけど……」

 

「まあアレだけの事が出来て機械じゃないほうがおかし……ええーっ!?」

 

 

 ゼオノイドのデータを見ていたたくっちスノーが椅子から転げ落ちながらもパソコンは守る、腕を伸ばして画面を指さしミリィにゼオノイドのデータを見させる。

 

「何かゼオノイドに異常が!?」

 

「異常なんてものじゃねえんだよあれは! いいか今自分が指さしてる所を見るんだ、人造人間キカイダーだとかそのレベルじゃねえ! もっと恐ろしいものの片鱗だぞアレは!」

 

 たくっちスノーはゼオノイドの所々のステータスの所を注目させる、exeも眺めたがとあるエネルギーの目盛りがゼロ、つまり最初からこの部分は機能していないか存在していないということしか分からない。

 

「何かある要素がないということしか分かってないぞティー、説明しろ」

 

「いいか! それはメイドウィン達が血液のように常に流している進化のエネルギーだ! メイドウィン共は身体からそれをゴリゴリ消耗しては不老不死の力で再生して自分達の世界を維持させている! つまりこれがあってこそメイドウィンと言える! それが最初からないということは……」

 

「こいつは……メイドウィンじゃない!?」

 

 

 ミリィの発言は場を騒然とさせた、マガイモノどころかメイドウィンの方が用意していたメイドウィンは偽物だったというのだ、こんな事在り得るのだろうかとざわめきが止まらない、このメイドウィン達を選出した黒影もまた驚いていたが、すぐに冷静そうな素振りでゼオノイドの様子を観察する。

 

「おい黒影! お前チェックの方どうなってんだよ! さすがにこれはルール違反だ! 自分相手なら機械相手でもいいと舐め腐ってたか! チワワですらこの形相です!!」

 

「でも実際、お前のマガイモノはニセモノ相手に苦戦してたでしょ? 本物連れてきてもいいけど結果は見えてるよ?」

 

「どこがだ! めっちゃ頑張ってただろボルコンは! まだ超電磁スーパーボール切りもあるぞ!」

 

「じゃあそれこそ偽物だったからこその展開じゃないの?」

 

「本物偽物以前に! せっかくの大会なのに不備があったらごめんなさいだろうが! 自分でもそれくらいはやるぞ!」

 

 たくっちスノーは副局長になってから妙に口うるさくなった、メイドウィンに対して犯罪者だった時よりも突っかかってくるので時々鬱陶しい時もある、変なところでガサツだが変なところで年相応に真面目なやつである。

 黒影は何が何だかよく分かっていない、本当にそんな言い方でもするかのようによく分からない形で答える。

 

「面白い企画に参加させるっていう俺の善意を無下にして勝手にバックレたゼオノイドとそんな悪事に気付かなかったメイドウィン達の方こそ俺にごめんなさいじゃないの? 俺は観察して判断する立場であって別にメイドウィン連れていくことが仕事なのはそこにいる連れてきたやつじゃないの?」

 

「ええ!?」

 

「ちょっとまってくださいよ! 今は誰が悪いとかそういう汚い押し付け合いの社会の話ししてる場合じゃないでしょ、アレが偽物ってことは本物のゼオノイドはどこですか!?」

 

 ミリィに言われてようやく本題に気付く、黒影の命令に背くということがどんなに重いことなのか無関係なミリィでも分かる、ゼオノイドは今回の件をバックレたということはもう遠くにいるはず……ミリィは頭をレーダーに変えてゼオノイドのデータを元に場所を特定しようとするが、見つからない。

 

「な、なんで見つからないんだ……?」

 

「黒影! そっちも探すんだよメイドウィン陣営の問題だろ!」

 

「わかったよ、じゃあそっちはよろしく俺は待つから」

 

「おい! お前はなにもしないのかよ」

 

「言っても無駄ですよたくっちスノーさん、彼が、動くのは自分がかっこよく活躍出来る時だけですから、むしろ責任追及とかあの手のものは嫌うタイプです」

 

「面倒事とかいつもオレ等に押し付けてきたじゃないか……いつものことだろ」

 

「なんか俺が思ってるより黒影ってわかりやすい人なんですね」

 

「いざっていう時の戦力は半端ないから! マジで! 活躍取られるのが本当に癪に障るけどな!」

 

 

 まあ仕方ないのでボルコンは一旦休ませてたくっちスノーと黒影は待機した、メイドウィン達が必死に自分達の為に動いて本物のゼオノイドが来てくれたり探してくれるのを待ったりもした、たくっちスノーなりに調査もした。

 だが一向に来ないまま試合開始から1時間経過、これにはさすがの善人なりかけたくっちスノーも怒り心頭であるもののexeに締められてクールダウン。

 

「反応まだ!?」

 

「全然だ」

 

「な、舐めた真似しやがって……今回はアイツの世界にちょっと脅しをかけても許されるよなぁ黒影」

 

「俺でも今回は許すよ、何がスターノイドだよリアルワールドでは流行ってないんだよそのシューティングゲーム、グラディウスしか勝たん」

 

「あのーexeさん、メイドウィンって不老不死とあるけど例外とかあるの?」

 

「あるにはあるな、基本的にメイドウィンで死ぬことがあるとするなら自分の作った世界の住民に反逆されたときとかだな、だから自分の世界の調整とか大事だぞ」

 

「へーなんでもありなようでリスキーなんだ……あ、じゃあSTGなぐらいだしスターノイド内で撃墜されたとかは? 一発当たったらアウトとかザラだよな?」

 

「あのねそこのお客さん、確かに自分の世界の奴にならメイドウィンは殺せるけどそもそもそんなやり方になって死ぬような奴はメイドウィンに向いてないんだよ、本当に出来るメイドウィンってのはさぁ……自分の世界の住民を絶対に勝てないと理解させてるんだよ」

 

 たくっちスノーは監理局に入ってから知ったことなのだが黒影が魔導界を管理している際に歴史の中で人間、ドラゴニアン、猫獣人、アルラウネと4回文明が滅亡しては新たな生命が生まれ、結局滅びを繰り返して今はゴーレムが文明を気付いて人間と思い過ごしていることを、イベントを繰り返せばこうこともある。

 何故滅亡したのかは……黒影の趣味じゃなかったから。

 

「…………黒影、もし来なければマガイモノをスターノイドに送るって脅すのはどうだ? 自分アルティメットクソデカバイパーっての思いついたんだよね」

 

「似たようなことはもう前から言って実際にやってみたんだけどねぇ」

 

「オイ待て!? 実際にやっちゃったのかよ? 判断が早いとかそういうレベルじゃねえ!」

 

「メイドウィンにそのレベルの脅しで口だけはないでしょたくっちスノー、そんなんだから足元すくわれるんですー」

 

 既にスターノイドにも被害が出ていることにもビックリだが、ここまでしても名乗り出ようとしないのは世界管理する者としては驚き物でとうとう他のメイドウィンも怪しむようになってきた、確かに怠け者もいるし遅刻する、しかしバッテリーが本題なので中の人間がいかに怠惰でも関係ないが世界に影響が及べばとんでもないことになるだろう、そんな中たくっちスノーはまた一つの道を思いつく。

 

「……あのメイドウィンって一応は仕事なんでだよな? 、黒影、ゼオノイドはメイドウィンを辞めたいと思ってるんじゃないかと思いついたんだが」

 

「なるほど今回の件の責任を取ってスターノイドのメイドウィンを辞めさせてもらいますという計画、時空レベルの退職はこうなるのね、退職代行流行りそ〜」

 

「馬鹿野郎そういうのは引き継ぎ用意してからやれよ! スターナイトの引き継ぎメイドウィン予定者は!?」

 

「いるわけないでしょう進んでやる人なんて! 時空ってまだまだ知名度ないんですから!」

 

「そういうのは代わりにやってくれるメイドウィンが見つかってからやるもんだろーが!! 跡継ぎのこと考えろ!!」

 

 たくっちスノーはあまりにも好き勝手すぎる本物のゼオノイドに監理局としてツッコミが止まない、まだまだ勉強が足りないミリィはexeに聞いてみる、どうやらメイドウィンが存在しない世界はスマホの充電器を無くすような物なので理由は後付けされ? とはいえ1年以内に滅亡してしまうという、しかもこの1年というのはスターノイドから見た1年な上に以内なので感覚としてはあっという間で向こうから見ても1日で滅ぶこともありえる。

 とりあえず分かることはほんのひとときでもメイドウィンが欠けるのはヤバい。

 ……嘘である! もちろん滅ぶわけがなく物語が終わってしまうだけ、そうならないように黒影がそうやって嘘を発信してメイドウィン達が離れないようにしているのが真相である!

 その為メイドウィンを退職するというのは本来とても慎重になって行わなくてはならない重要な仕事なのだ、バックレなんて以ての外である。

 黒影はその可能性を視野に入れて調べてみると、すぐにゼオノイドを発見する。

 

「あっ、そこの身代わり野郎の言う通りだね……ゼオノイドのやつメイドウィン辞めてロストメイドウィン化してるみたいだ」

 

「なんなの? ロストメイドウィンって」

 

「基本的にはアクシデントとかで自分の世界を失ったメイドウィンを指す用語だ、辞めてこうなる奴は稀だろ……無職のメイドウィンってところだな、分類的には全然違う」

 

「無職のメイドウィンってもう意味わかんないな……でそれってメイドウィンとは別だから……」

 

「察しがいいね! ゼオノイドはメイドウィンではないからこの試合は不成立になる……ってのは可哀想だしこいつらが悪いから君等の勝ちということにしてあげるよ」

 

「なんですかその上から目線の態度は! 大体貴方が真面目に進行しなくて強いだけのバカしてるからゼオノイドも貴方を見下して」

 

「よせローレン……ごちゃごちゃ言ってもしょうがない、自分はボルコンのある程度のデータさえ取れれば充分だ」

 

「けど相手がメイドウィンじゃないから通用するかも怪しいですよそのデータ!」

 

「問題ねえよ元々対メイドウィンとして作ったわけじゃないし! 無敵の人である黒影にグチグチ喧嘩しても無駄だ、次の試合のこと考えるぞお前ら! ミリィもちょっと来てくれ」

 

 たくっちスノーは黒影のこういう時に話しても何も堪えないし悪いとも思っていないので無駄だと知っているのでさっさと話を切り上げる、お情けの勝利でも1回は1回、こんな事故が2回も起こるわけでもない、黒影もこんなことを仕込んでいるほど心が広くないしゼオノイドが勝手に辞めた問題をなんとかするほうが大事だろう、監理局として忙しいのはここからだ。

 

「EXE! お前はスターナイトの世界に向かってメイドウィンがいなくなったことを報告、並びに次期メイドウィンに推薦したい者を急いで探し出すんだ、何かあったら自分の名前を使え」

 

「了解だ、お前も時空監理局の仕事が板についてきたな」

 

「お前こそ案外ボディーガードより補佐が向いてるんじゃないか?」

 

 仕事だってちゃんとこなさなくてはならない、たくっちスノーとEXEは研究データをまとめ仕事の為に時空の渦でコロシアムから去っていく。

 

「次の試合は明日だからなー!」

 

 黒影も次の戦いの時を心待ちにするためにその場で眠りに入ろうとする、黒影は寝て起きる時間を自在にコントロールできるのでこうなると明日まで起きることはないだろう、しかし寝る前にメイドウィンの一人が話しかけて眠りを妨げる。

 

「……ゼオノイドはどうして辞めたんでしょうかね?」

 

「さあね、もう辞めた以上俺とは他人だ、苦しんでも助けてくれと言われても俺の管轄じゃないから勝手にすればいい、メイドウィンの立場を捨てるなんてバカなことを……」

 

「私は貴方がメイドウィンという立場が優れてるというからやったけど、いいことなんてなかった」

 

「あ、うんいいよお前もやめたいなら好きにすれば」

 

「……はーはいはい、そんな態度するならあたしも好きにやらせてもらいますわ、アンタから貰ったはじまりの書があればこっちから辞められるんだから」

 

「……あいつ、すぐに態度変えたな、まあいいかあんなやつ代わりはいくらでもいるし、えーと、あいつの世界なんだったっけ? 『この素晴らしい世界に祝福を!』か」

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