時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~   作:黒影時空

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そういえばAIをどうするかということですが投票の結果同票だったので…AIの改訂は無しのまま編集しております。


第2試合〜断頭台VSワニ〜

 ゼロ・ラグナロク2戦目。

 1戦目は偶然のような……というか勝負として成立もしていない形で勝ちを招いたがこんなことが2度起きた方が問題になる……たくっちスノーはボルコンWが得たデータを早速残りのマガイモノに加え入れてさらなるアップデートを施しながら作戦会議を行う。

 

「自分がどうなるかより自作の子供みたいなものが負けるのが癪に障る、絶対に勝たせるぞ」

 

「まあ、あんな勝ち方もう出来ませんからね……」

 

「出来ない? 黒影がもみ消しただけだろあんなもの、勝負にもなっていない」

 

「結果はどうあれ時空監理局はメイがルールだ、機嫌を損ねないようにするしかない」

 

 時間までの間に黒影が寝ているからってかなり言いたい放題、こうなるって分かっているなら時空監理局になろうなんて思わなかったのだろうかと考えるが、副局長としての立場を放棄するのも忍びない。

 その話題で盛り上がっていると思い出すのはスターノイドのメイドウィン問題。

 

「なあなあミリィ君よー、暇してる? メイドウィンに興味あったりしない? 自分と一緒に就活しない?」

 

「俺もSTGゲームは好きだけどあの人の無茶振りに付き合いたくないよ……」

 

「それ言われると自分もメイドウィンになりたくなくなってくるからやめてもらえる?」

 

「あの世界のメイドウィン不在に関してだけど心配ないよ、実は面白いもの見つけちゃってさ」

 

 ミリィが見せたのはある世界でクラウドファンディングを行い大人気アイドルを神にするという企画、もう既に何百万という寄付金が貯まっておりミリィはこの人物を新しいスターノイドのメイドウィンに推薦しようとしているらしい、一見するとお遊びのようだが企画者としては結構大マジらしくメイドウィンになってからのメリットを長々と説明欄に記載している。

 

「クラファン〜? メイドウィンってそんなんでなれるのか?」

 

「実際メイドウィンの引き継ぎは意外と簡単ですけど……こんな形で神にしていいんですか? それもアイドルですよ?」

 

「もう冗談とかで済まない金額になってるぞ、このアイドル……星野アイってアレだろ? 見たことある、あいつは把握してるのか?」

 

「さあ……そういうの判断って時空監理局がやるのかと」

 

「こんなもん勝手にやるわけないだろ、ただでさえ時空監理局とメイドウィンは仲良くないんだから……」

 

「え、そうなの!?」

 

 前にも言ったが時空監理局とメイドウィン達は殆ど喧嘩している関係であり、メイドウィンでありながら時空監理局に所属している存在は現状黒影のみ、というよりは監理局に関わる人間が少ない。

 その理由は仕事関係がややこしくなるから、監理局にこもりきりになる職員と基本世界を見ていなくてはならないメイドウィンでは相性が悪い……ということになっているが、実際は監理局が自分達が時空の全てを作って発展してやっているという上から目線が気に入らないことによる亀裂は広がる一方である。

 

「これで騒ぎになったらまたしわ寄せが自分に行くんだからやってらんねぇよ……黒影が局長室で事務仕事してるところ見たことねえんだけど、本当に1日5分で全部の書類やってるのか?」

 

「こういう時はマンガでも読んでリラックスするぞ」

 

「たくっちスノーさんのお金で何冊か買ってきました」

 

「そこ置いといてくれ、『ジャガーン』と『女子轟生』は先読んでいいよ」

 

「……今更だけど他世界の情報をマンガとかで見れるってネタバレ問題起きないのどういう事なんだ?」

 

 ミリィのようなことを考える事も多いが結論から言うと時空の力で脳に作用されてネタバレ要素が消失してネットミームを擦る程度の記憶力になるので世界には何の影響も及ぼさない、他世界がマンガやゲームとして置かれていてもネタバレ要素が未来に起きる出来事として広まることは決して無い、それにポチが持っているものだけがオリジナル版だったように中身はてんで一致しないのでどれが正しいのか分からないので問題ないというとんでもないゴリ押し

 

「で、長々と話しちゃったけど次は誰を出す気なんですか?」

 

「うーん……まだexeは温存しておきたいな、そうなるとアウララか?」

 

 たくっちスノーはレバーを引いてすぐにアウララをカタパルトから射出できるようにセッティングして試合がいつ始まっても射出できるように準備を済ませる、カプセルの中は空洞でミリィ達にもその全貌が分かるようになっていたんだが……。

 

「名前を聞いた時から思ってたけど……そのマガイモノ、殆ど『断頭台のアウラ』なんだな、パーツ殆ど変えてないように見えるが」

 

「ああ、ボルコンを無数の技術と技で戦うやつとするならアウララは一点特化、アウラの能力を軸にマガイモノ化させた、だから内部に他作品の設定を詰め込んだってところかな」

 

『断頭台のアウラ』

 葬送のフリーレンという作品に登場する魔族の中でも有数、魔王の幹部格の一人。

 彼女は物語の中で主人公に討伐されいずれ死亡してしまう運命にあるが、たくっちスノーはアウラの得意とする『服従させる魔法(アゼリューゼ)』に目をつけた、互いの魂を天秤にかけて魔力の総量を測り上回ればどんな命令でも従わせることが出来る……たくっちスノーはこれを改造してどんな条件でも上回る要素があれば服従させる魔法が発動するように改良したアウララを作り出したのだ、その分出力は落ちたが支障はない。

 

「ミリィ、自分はまだ模索の範囲なんだ……マガイモノを作る上で最強の能力は何か? それを考えていたりもする、キャラクターに憧れてると結構聞くんだよ誰が強いのかとか可愛いとかね」

 

「その内の候補がアゼリューゼってこと?」

 

「ああ、地道にコツコツと能力の研究したんだぜ? 立場を顧みずメイドウィン達の所に乗り込んだり、話聞いてもらったりして……その時の映像何個か残ってるけど見る?」

 

「見る」

 

 メイドウィン直々の最強の能力……ミリィもまた自分が成長したいと思っていたので勉強になりそうとたくっちスノーにビデオを見せてもらった、映像には数々の世界のメイドウィンがたくっちスノーの頼みでインタビューを受けている姿が映っている、自分の世界の最強を考えるのは意外と楽しかったしく想定以上に応じてくれたという。

 


 

【呪術廻戦のメイドウィン ムラサキ・メイドウィン・虚発光】

 

「え? 時空最強? そりゃもちろん僕の世界の五条悟でしょ、はじまりの書に書いてあることなんてとっくに追い越してメキメキ成長するし……え? 能力の方? それなら無量空処? あるいは虚式茈かな、実質僕のメイドウィンブラスト真似しやがったんだよアイツ、えっそのレベルの話はしてない? じゃあなんで聞いたの?」

 

【ONEPIECEのメイドウィン ハイレーツ・メイドウィン・プラチナム】

 

「え? それって最強の悪魔の実は何かってことだろ? ……うーんソルソルの実とか? いやグラグラも捨てがたいな……あーウタウタの実! それもあるな……あっそうだ悪魔の実で思い出したんだが、俺の果樹園(デビルバンク)からヒロヒロの実が無くなってたんだけど知らない? アレも中々強いよ」

 

【幻想郷のメイドウィン ???????】

 

「あのさぁそれ私に聞く? 幻想郷のそういう管理は博麗霊夢がやってくれてるし……っていうか私も立場的には危ないのよ、場合によっては霊夢に殺されても何ら不思議じゃないわけ、それだけ『空を飛ぶ程度の能力』と博麗の巫女の相手するの大変ってわけ、頼むから離れて! 私の『存在を隠す程度の能力』が薄れてくるの!」

 

【実況パワフルプロ野球のメイドウィン 灸治・メイドウィン・葉羽浮浪】

 

「最強の能力……彩菊花高校の超能力者とかゲノム大学附属の改造人間とか……そういえばヒーローとかもいたな……俺の管理してる世界って野球をウリにしてるはずなのになんでこんなのいるんだ……?」

 

 他にも数々のメイドウィンの意見が次々と飛んでくる、自身の世界で何が強いとするのか……神とはいえ本に沿って管理しているだけなので好きなように言いたい放題出来るのがいいところだ。

 メイドウィン達も意外と自分の世界で管理しているキャラクター達に特別愛着があるらしく最強は譲れないところがあるようだ。

 

「この手のやつはシンプルなのがいいんだよ! 『1秒』を『10秒』に変える能力!」

 

「……能力が強いってお話として面白くなるって意味? はじまりの書に書いてあったとはいえ何でも即死する能力なんてどうすりゃいいんだよ……」

 

「それって子供が話すスタローンとジャン・クロード・バンダムはどちらが強い? のレベルか? ……だとしたらオレならナパーム・デスかな……何? そんなスタンド知らない? ほらいるだろスターダストクルセイダースの七人目の……」

 


 

 流れてくる数々のメイドウィンの考える最強、行く行くはこれらも応用して最強の能力者を考えるつもりだ。

 

「ちなみにたくっちスノーは誰のどういう能力が強いと思ってるんだ?」

 

「あまり本人には言えないっつーか、認めたくないがハグレ王国の王さまだな」

 

「デーリッチって人? 確かそいつ回復魔法ぐらいしか取り柄ないって聞いたけど……」

 

「いつかお前にも分かる時が来るよ、誰よりも最強無敵の時空犯罪者を追い込んだちびっ子の能力をな……」

 

 ローレンとexeは意外そうにたくっちスノーを見る、デーリッチには2度も計画を邪魔されているのでよく思っていないとばかり考えていたが、黒影以外にライバル視する存在がいるなんて思わなかった。

 敢えてデーリッチを元にしてマガイモノを作ろうともしなかったのもそういうこだわりだろうか、純粋な眼差しでたくっちスノーは口から取り出した彼女の写真を眺めていた。

 

「じゃあ2人は?」

 

「いやぁ俺はそういうのに詳しくないので……」

 

「……何をもってして強いなのか分からないから何とも言えんな、相手によるだろう」

 

「ああそうそう! それ言ったらアウラもそうじゃないか? 魔力が上回ったら逆にアウラが操られるんだしアウララもメイドウィンに負けたらどうするんだ!」

 

「えっそうなのか? うーん……まあマガイモノだし自害はできないだろ? あとは追々アプデするよ」

 

「いやいや敵を知らなきゃ話にならないだろ、俺残りの8人のデータ集めてきたから参考にしなよ……どうしたのそんな顔して」

 

「ちょっと有能すぎて引くわ……なんで監理局のメンバーじゃないんだよお前……」

 

 ミリィは残りの出場するメイドウィン達のデータを全て集めきってしまった、たくっちスノーも出来なくはないがそれをやるにはあまりにも仕事が多すぎるのでキツイところに正にかゆいところに手が届く。

 だがやってくれたことは嬉しいので素直にリストを並べて確認していく。

 葉天文寺、デンジャーポール、フレアブースト、アベル、オディオ、マジンガーZERO、みぃ、そしてナタ……黒影以外は現在このメイドウィンが参戦リストにある、一つ分かったことはこの勝負ほぼ油断ならない相手であるという分かりきったもの。

 

「うげっZERO! どうしようこいつ……とてつもなく強いぞ、ゲッターロボ用意しないと」

 

「だがそれ以外は見慣れないメイドウィンばかりだな」

 

「俺の予想だと次に来そうなのは葉天文寺かフレアブーストかと思うんだ、黒影が見るに派手なもの、あるいは個性を重視してくるとみた、何せエンタメ系だからね」

 

 フレアブーストのデータを見るとモンスター★レーサーというゲームのメイドウィンとあった、モンスターでレースさせることを楽しませる世界のメイドウィンはリックウザをぶつけたいのでたくっちスノーとしてはこのメイドウィンじゃないことを祈りたいところだ、だが葉天文寺の世界は聞いたことがない所だった。

 

「転生したらワニだったという作品のメイドウィンらしいな」

 

「……なんかすげーどっかで聞いたことあるタイプのタイトルだな……スライムとか剣とかで、アウララこいつとやるのか……」

 

「ワニって強いんですか?」

 

「まあワニには気をつけるべきだな」

 

「お前らAIのべりすとか? ってぐらい適当な返答してんじゃねえぞ自分関係ないからって」

 


 

 そして翌日になり迎えた試合の日、ミリィが予想した通り葉天文寺が2戦目の相手として登場したのでアウララをそのままスタンバイ。

 ワニの力をなんても使えるという触れ込みらしいが、ワニがどれだけ強いのか分からないので焦っていた、そもそもワニが何出来るかも分からない。

 アゼリューゼが通用するかも曖昧なので今たくっちスノーにできることは速攻で仕留めさせること、ゴングは黒影がぶっ壊してそこにないのでたくっちスノーが代わりに腹太鼓をぶっ叩く。

 

「発動条件は魔力! 一気に決めろアウララ!!」

 

服従させる魔法(アゼリューゼ)!!」

 

 始まってすぐにアゼリューゼを発動、天秤に掛けて魔力を葉天悶寺から引っ張り出すことに成功し、天秤は緩やかに倒れ込む。

 

「うーんどんな命令を出そうか」

 

「アウラ自害しろ」

 

「まだ勝ってるんだってば! メイドウィンは死なねえし! ……あっそうだ葉天文寺! 歯を全部引っこ抜け」

 

 命令すると自分から抜くのではなく歯がミサイルのように一斉に飛び出した、アウララの魔法はアウラとは細かく異なるのでこういうところでバグがあるらしいが、もうこの手のミサイルは天丼ネタなのでたくっちスノーもツッコむ気にはなれなかった。

 彼が相手をするのがめんどくさい言葉の3番目は『天丼』である。

 

「危ねえ!」

 

 全部飛び散って観客席にまで刺さった後、何故か空っぽになった口からワニの歯が綺麗に生え揃った。

 

「どうやらワニの歯は無限に生えてくるみたいですね」

 

「そりゃサメだろうが!! おいどうすんだよ!」

 

「そんなの知りませんよ!? 歯が生えてくるとか予測できますか!?」

 

 生え揃った後に容赦なく迫りくる葉天文寺のデスロールがアウララに迫りくる! マガイモノなので噛まれても問題ないがワニのデスロールは非常にめんどくさい! 

 

「あ、そうだ! 面倒な尻尾を切り落とせば怯むだろ! アウララ剣を持て!」

 

 たくっちスノーが指示を出すとアウララは剣を構えて葉天文寺の尻尾を綺麗に切り落としてデスロールから脱出するが、尻からズルズルと断面部分から新しいものが生えてくる上に切り落とされた尻尾は生き物みたいに動き出してその動きはまるでヘビ、というか気色悪い。

 

「おい切れた尻尾が生えるのはトカゲだろ! さっきからワニ全然関係ねえじゃねえか!」

 

「知らないの? ワニって龍の親戚なんだよ」

 

「それは絶対嘘だよ……ワニの定義が壊れる!」

 

「でもオレは氷海に住むめちゃくちゃ膨らむワニを知っているぞ」

 

「ザボアザギルは普通にサメだわ!! 手足生えてるけど!!」

 

 ワニの要素と言い張ればなんでもありなこのメイドウィン、もしかしたら彼の元の世界もこんな話なのだろうか、ワニの定義が乱れる! 

 一周回って『転生したらワニだった』がどんな作品なのか気になってくるがリアルワールドでは売ってないラノベなので紹介することは出来ない。

 

「おいお前ら今夜の晩飯はワニの刺身にワニの串焼きな」

 

「やつあたりやめてください、しかもそれ爬虫類のワニじゃないです」

 

「ワニの肉ってうまいのか?」

 

「……なあ皆、今更だけど尻尾や歯が生えてくるのってワニのあれこれじゃなくてメイドウィンの再生能力じゃないのか? というかこれ、アゼリューゼで仕留める手段なくない? 他になんかないの?」

 

 ミリィの一言でマガイモノ陣営が静寂に包まれる、こんな簡単なことにも気付けないとかこの三人は役に立つのかそうでないのか分からなくなってくる。

 これで詰む方にも問題があるが、ともかくこれでアウララの攻撃手段がなくなってしまった。

 

「……そうじゃん!! どうしてくれんだよ勝つ手段が無くなっちまったぞ!」

 

「ボルコンみたいなアップデートは!?」

 

「ボルコンみたいななんでもありならまだしもこいつみたいな一転物に付け加えても焼け石に水だ!」

 

 チャーハンにカツを入れるのとラーメンに天ぷらを入れるのでは全然違うというのがたくっちスノーの理論である、意味わからないが要は相性の違いだろうか、なおこれを言う本人はなかなかに悪食なのでこの組み合わせでも食べるし、普通に地域によっては実在するメニューだ。

 

「昨日の最強の能力の下りはなんだったの!? 結局ゾルトラークが最強ですよねって話!?」

 

「それは能力が強いって話でそれ加えてもアウララは強くならねぇから悩んでたんだよ!! ふしぎなまもりは強くてもヌケニンは雑魚だろ!!」

 

「無駄だよ。そのポケモンは炎・飛・岩・悪・霊タイプの攻撃技と火傷と毒と混乱の自傷と宿木と砂嵐と霰とステロとゴツメと型破りと悪あがきと反動ダメとその他定数ダメージにしか反応しないのだ」

 

「結構弱点多いな……」

 

 たくっちスノーとミリィが口論になっている間にどんどんアウララが劣勢になっていく、葉天文寺は次々とワニの力を開放、鱗が生えて空を飛び口からビームを出すそれだけではなく黒魔術にも手を出している。

 それが流星群のように降り注ぐ、もうワニって言ったもん勝ちになっている気がするが、どんどんアウララの勝ち筋が絶たれている、逆にアウララはなんでアレぐらい出来ないのかというと、まあたくっちスノーか見たアウラがアレしかやってなかったからだろう。

 

「こうなったらどうにか葉天文寺も失格になんないかな?」

 

「また!? 二度目はないとか言ってたじゃん!」

 

「確かに言ったけどもう勝つ手段がコレしかないんだよ!! プライドは捨てろ時空犯罪者なら!」

 

 ただでは転ばないのが最強無敵たる所以、すぐにミリィに葉天文寺について調べさせるが当然ながら望んだ通りの結果は出てこなかった。

 

「あ~駄目だあいつちゃんとメイドウィンだよ、黒影も試合中だってのにまだ爆睡してるし負け確定のつもりでいる」

 

「マジ? なんでもありすぎて逆に怪しかったよ、てかexe黒影叩き起こしてくれない?」

 

 多分時空のワニはどこでもなんでもありなのかもしれない、サメだってそうだし。

 それにしてもさっきから能力や世界に対して失礼すぎるマガイモノである、これでも全作品リスペクトを心掛けて観察しているがどこかズレている。

 

「じゃあアイツの弱みとか握れないか!?」

 

「弱みって……そんな急に言われても俺はスパイとかじゃないんだけどな、まあやらないと勝てないからやれるだけやってみるよ」

 

 文句を言ってもこの状況を打破する方法は他にないのでミリィはパソコンを出して解析し始める、更にそこから両腕を細かい黒い成分に変え、パソコンも折り畳まれていた画面が開いて何重にも増えてキーボードを叩き解説を始める。

 葉天文寺はまだ未知数なことが多い、ここから何か分かるかもしれないだろう。

 

「あの人もうアウララの事眼中にありませんね」

 

「多分あれ……完全に勢いだけで作ったものを能力特化ってことにして誤魔化したな、場合によってはもっと酷いものが出てきたかもしれん、ムカデ戦車とか」

 

「おだまり」

 

 たくっちスノーが作るマガイモノは大半が深夜テンションみたいな変な産物である、真面目に作ったことは多分そんなにない。

 まあ物作りというものは趣味の場合大抵勢いで作って我に返る頃にはなんでこんなの考えて実行に移したんだとなるものが多数である、たくっちスノーの場合無駄に実行力はあるので時空監理局になるまでガラクタみたいなマガイモノを多数抱えている。

 たまに真面目なものも作るが、そういう奴から先に黒影の手によって始末されてしまう。

 

「お、おい! お前もメイドウィンを辞めたいとか思ってたりしないか!?」

 

「必死すぎぃ!!」

 

 たくっちスノーは葉天文寺を揺さぶってみるが反応はない、というよりゼオノイドもそうだがメイドウィン達は黒影を除いてこちらに話しかけてくることは一度も無かった、せめて目線くらい合わせてほしい、まあ猛獣に自分から迫るようなやつでは神になれないので仕方ない。

 

「くっそなめやがって……メイドウィンの何がそんなにいいんだ! マガイモノの方がメリット同じだし快適だぞ! ただのバッテリー生活でいいのか!」

 

「いやお前もメイドウィンになるために戦ってるやつだからコレ」

 

「あっそうだった……えーとじゃあ、マガイモノのいいところを今考えるか」

 

「お前最悪の時空犯罪者のくせに悪口下手くそか……?」

 

「こいつ基本力だけで成り上がってきたんで」

 

 たくっちスノーが考え事をしている間、揺さぶってみるのも悪くないと思い松山の普段の罵倒を聞き慣れているミリィは少し別方向から葉天文寺を揺さぶってみることにした。

 

「やましいことはないにしても何か目的があるんじゃなくて?」

 

「どういうこと?」

 

 ミリィはこの戦いを通して見落としていたことがあったことに気付く、マガイモノとメイドウィン達の戦いゼロ・ラグナロク、黒影の思いつきで突如開かれて最後に待っているのはたくっちスノーがメイドウィンになれるかどうか、はっきり言ってメイドウィンに参加するメリットなんてない、本気で取り組む必要なんてないのだ、それなのにしっかり9人参加表明している。

 

「黒影に言われたら誰にも逆らえないだろ、最悪『これ』だぞ?」

 

「どれだよ……あの人の意思で選んでいるならもう少しよく出来た面々が選ばれるはずだ、少なくともゼオノイドのようなことを起こすのは相当勇気があると思わないか?」

 

 黒影の圧があったとしてあのバックレを決行できたなら相当な命知らずだ、つまりミリィが言いたいのはわざわざこの試合に出てまでやりたいこと、伝えたいことがあったということだろう、黒影に物申すチャンスを求めて……。

 

「でも黒影は定例会議なら何時でも会えるだろ? その為の会議なんだし、黒影めっちゃ暇してるぞ?」

 

「ティーもう忘れたのか、お前が乗り込んだ時の定例会議の堕落っぷりを……正直あそこでメイドウィン共が真剣に話しているようには見えん」

 

「そうなんだろ葉天文寺!」

 

「そうなの? 俺としてはなんでもいいけど」

 

 ミリィと黒影が彼の方を見ると、葉天文寺は遂にデスロールの時以外は固く閉ざしていた口を大きく開いた。

 一体何を話すのか……このコロシアムにいる全員の息が詰まる。

 

「ワニワニワーニワニワニワニワニワニ」

 

「……は?」

 

 たくっちスノーから漏れる素の声、生まれて初めてここまで困惑した声を出した気がする。

 

「ワニワニワーニワニワニワニ」

 

「おい止まれ! 一旦喋るのをやめろ!!」

 

 葉天文寺が喋ってるのは未知の言語、これには予想外でミリィも焦っている、そりゃそうだ傍から見たらふざけてるようにしか見えないのでたくっちスノーの怒りは有頂天。

 

「ふざけているのか~!」

 

「怒りのあまりマスクになった! 気持ちは分かるけど落ち着け! Gが無限大になりそうだぜ!」

 

「ティー、アレにキレても仕方ないぞ、まあ気持ちは分かるが正直言うとオレが初めてお前に会った時もあんな感じだった」

 

「なんだよお前らだって何言ってるか分かんないくせに!! 何語だよアレどこで話す機会あんの!?」

 

「ちょっとワニに変身しては? 、なんかカートゥーンにいそうな感じで」

 

「アメリカ人になったからってイングリッシュペラペラになるわけじゃないんだよ馬鹿! 変身能力そこまで万能じゃねえわ!」

 

 たくっちスノーの虚しい叫び、ワニ語なんてどこの世界で通用するのだろうか、もしかして彼の世界の生き物はみんなワニ語なのだろうか、もはや勝負どころじゃない、何故ならこれを目の前で見てるアウララも若干引いてるからだ、ここにワニはいないじゃない。

 

「はっはっは! おもしろコイツ!!」

 

 いつの間にか目覚めていた黒影も笑っている、たくっちスノーはぶっちゃけお前も全然意味分かってないだろと言いたいがもしかしたら分かるかもしれないので口に出せないでいた、ワンチャン分かるかもしれないけどワニワニ言い出したら本当に耐えられなくなるので黙っててほしい。

 このままシュールな流れが続くのかと思えば意外と早く終わる。

 

「あ! 相談してみたら博士がワニ語翻訳できるって!」

 

「すげぇな博士!? なんで出来るのか知らんけど早く翻訳してくれ!」

 

 ミリィがパソコン越しにジルトーと通信して、葉天文寺が話す言葉を代わりに通訳してくれるソフトを即座に入れてくれた。

 すごい技術である、話すだけで機械音声によって日本語に直される、異世界人の黒影が作った時空が何故日本語共通言語なのかは考えてはいけない、ハジマリアがたまたま日本みたいな言語ってだけなのだろう、なおexeは最初めっちゃ英語喋っていた。

 

「ワニワニワニワニワニ」

 

「自分が参加したのは黒影に提案したいことがあるからで間違いないって」

 

「改めてすげぇな翻訳技術、『ワニ』の中にどんだけ意味詰め込まれてるんだよ」

 

 葉天文寺は翻訳されている事も気にせず話を続けていく、たくっちスノーもローレンも干渉しているメイドウィンや黒影でさえもコイツ普段そんなこと言ってるんだ……という目で眺める。

 

「なんで何言ってるかも分からない奴メイドウィンにしたんだよ!!」

 

「だってはじまりの書をとにかく各地にばらまきたかったんだよ、作品ってやつが何個あると思ってるの! 見てよコレ、ドラゴンクエストシリーズのリスト! こんなんばっかなんだよ!」

 

 在庫捌きたかったみたいな理屈でとんでもないことをするやつである、そんな調子では不満の一つや二つ出ても気付かないのも無理はない。

 というか、こうやって数だけ増やしすぎて何も考えていないと苦労するとなぜ学習しないのだろうか。

 

「え!? あ、えーと条件次第では俺がなんとかするよ……ってたくっちスノーが言ってた」

 

「えっ」

 

 突然の無茶振り、多分ジルトーがそう言ったのだろうが今ミリィはたくっちスノーの関係者なのでたくっちスノーに押し付けられてしまった、多分時空で過ごしてきた中で一番不意打ち気味に出てきた素の『えっ』である。

 

「おい! 時空監理局とメイドウィンは互いに深い介入はダメって知らないのか! ケンカの元になるんだから!」

 

「それって時空監理局と話したくないからって意味じゃないですか」

 

「まあクソとクソの憎み合いだな」

 

 たくっちスノーの苦情も無視して葉天文寺とミリィの対話が続く、タイプミスや誤変換もなく正確に翻訳されていく、もはや勝負どこに行ったと思わないように場の流れを支配する。

 葉天文寺が言い出したのは衝撃的すぎる一言だった。

 

「え? 食事制度の撤廃!?」

 

 なんと葉天文寺が飯を食いたくないと言い出したのだ、それに関して深掘りするようにたくっちスノーが器用に成分でサインを送り、ミリィもヤバそうなのでボイレコ機能をこっそりパソコンに付けながら話を続ける。

 

「えーと……献立、献立ってあの食事メニューの方の献立であってる? あっめっちゃ首振ってる」

 

「献立? メイドウィン共の食事ってことか」

 

「ああ〜……」

 

 それを聞いた途端メイドウィン達の心の底から漏れ出したような声が各地に響く、これは色んな人々が納得したようなタイプの声の出方である。

 こんな一斉にハモるようにに出てきた時点でもう既に嫌な予感しかない。

 

「思ったより根深い問題らしいんだが説明お願いできますか局長様」

 

「はぁ……多分アレかな、たくっちスノーは知らなかったっけウチらにも献立あること」

 

「献立? メイドウィンってメシ食うのはともかくメニュー決まってるんだ」

 

 メイドウィン達も不老不死なので食事は必要ないが、かといって必要じゃないということでもない、たくっちスノー達マガイモノも趣味道楽で食べたりするので納得していたがまだ分からないことも多いが、アウララがしびれを切らして動き出そうとしている。

 

「あっアウララ! 話を聞きたいからなるべく耐えてくれ! お前ならそのままやれる……で、献立が嫌ってそんなにメイドウィンのメシってクソまずいの? 誰が作ってるわけ?」

 

「ん? 葉天文寺が先に監理局のメシはどうなのかって聞いてるみたいだけどそっちはどうなの?」

 

「えっウチ? 飯作ってる部署が食堂やってるって聞いたことあるけど忙しすぎて行ったことないな、ちなみに自分は自炊派」

 

 たくっちスノーの場合は副局長室が食堂から遠いのでタイパの為に自ら料理を作っているのだが、ローレンもEXEも文句を言わないので適当に済ませたもので毎日食っている。

 とはいってもこんなマガイモノ作るやつなので料理と言っていいか怪しい代物の為ちゃんとした料理が出るのはローレンにコンシェルジュの仕事を頼んだときである。

 exeはデンジャードッグしか作れない。

 

「自炊……いいなぁ」

 

「それで結局メイドウィンはなんなんだよ、確か黒影って料理出来たし黒影が全員分作ってんの?」

 

「あー違う違う! メイドウィンはちょっとシステムがあってさ、世界管理するところに自動で料理出てくるようにしてあるの、時空ってすごいよね」

 

「どういう原理? なんでそんなハイテクなん?」

 

「で、メニューがほぼ決まってるのメイドウィンごとに、なんかそうした方がキャラ付けしやすいし区別つくからね」

 

「……メイ、つまりそれはメイドウィンによって毎日ラーメンだったり毎日カレーライスだったりという解釈でいいのか?」

 

「毎日ラーメンやカレーライスだったらどんなにマシか!!」

 

 exeがまだ聞いている最中なのにメイドウィン達から怒号が飛んでくるのでまだたくっちスノーは状況が理解できてなかった、知らないので無理もないが……頭の中はハテナがいっぱいで遂に耳から物理的に溢れてくる。

 

「よくわからんなぁ……毎日ラーメンだけならチャーシュー丼でも持参するけどな、そんで明日はギョウザ作って、天津飯もいいよなローレン」

 

「毎日味変は可能ではありますけど」

 

「あれたくっちスノーなんか勘違いしてない? 毎日ラーメンってのは本当に毎日ラーメンだけしか食べちゃダメなんだよ」

 

「はあ!? そんなのお前が勝手に言ってるだけだろ! 飯くらい好きに食わせろよかわいそうだろ!!」

 

「ノブレス・オブリージュだよ、神様を利点だらけじゃ皆なりたがって神秘性がなくない? 不便なところも付けないと不公平だでって判断したんだよ……もちろんラーメンなら味噌とか塩とかバリエーションは認められてるし、飯を出してるのは俺じゃないもん」

 

「俺……メイドウィンになってからもう三十年経つけど唐揚げしか食べてれない……」

 

 黒影の衝撃的すぎる言葉に釣られてあるメイドウィンがそんな言葉を漏らした、思ってたより深刻すぎる悩みにたくっちスノーは同情したが、思い返すと自分も他人事ではないことに気付き黒影やメイドウィンに質問する。

 神となり世界を管理する代償が唐揚げしか食べられなくなるは重すぎる。

 

「……じゃ、じゃあ黒影の献立は!? お前昔からしょっちゅう色々食べてる姿見てる気がするぞ! 不公平とか言うならお前も従ってるんだよな!?」

 

 実は黒影は自身の世界でグルメ祭りを開いている、これは1000年に1回開催される催し物であり、これまで黒影が食べた料理が全て展示されるというものだが先ほど語ったメイドウィンの献立制度の事と矛盾している。

 これを聞いたメイドウィン達も自分達が苦しんでいるのに黒影だけ例外のようなものがあると聞いたことがあるので葉天文寺含めて非難轟々の野次が飛んでくるが黒影は全く動じない。

 

「あーもう、なんで監理局とメイドウィンの対立を根深くするようなこと言うかなぁ」

 

「お前の振る舞いのせいだろうが! この件に関しては皆で後で追及するとしてだ! 問題は自分だよ自分! もしこのたくっちスノー様がメイドウィンになったら献立は何になるかって聞いてるんだ!」

 

「……それもしかして補佐である俺等にも被害が及ぶんじゃ?」

 

「そこまでは大丈夫だろ、多分……」

 

 黒影はそれを聞き、非難するメイドウィンを炎の魔術で黙らせてじっくりと考えて紙とペンでさらさらとなぞって絵を見せる、それは……三角で海苔を巻いたどこのご家庭にでもある家庭料理

 

「おにぎりじゃねーか!!! なめてんのかてめーそれ料理と言えるか!!!」

 

「いや貴方のこれまでの所業考えると残当としか言いようがないですよたくっちスノーさん」

 

「むしろおにぎり1個食わせてもらえる立場なだけありがたいと思うべきだな」

 

「腹膨れないとかよりカタルシスねーんだわ! 食った実感をく!!」

 

「おにぎりいいじゃねえか!!」

 

 なんと今度はメイドウィン達はおにぎり一つで文句を言うたくっちスノーを非難し始めてこの勢いにはさすがの元時空犯罪者もたしろぐ、食い物の恨みは恐ろしいのである。

 実際おにぎりは腹の満たしに関してはメイドウィンには関係ないので問題ない、具の内容も最近はバリエーション豊かでコンビニとかに行けば炒飯とかハムとか変わった物もあるので最悪食えないような変なものが出てくる可能性は低い、基本的に当たりの部類らしい。

 

「……おにぎりが良い方ってお前ら何食ってるの?」

 

「キムチ単品……」

 

「俺なんてアヒージョとか言うよくわからん料理だぞ!?」

 

「何よン、それで言ったらアタシなんてポテチなのよン」

 

「それで言ったらオラなんて豚汁単品!!」

 

「……おいお前ら、もし仮にシュールストレミングが出てきてる奴が居るなら素直に手を上げ……おいティー! いるぞ!! じゃあもしかしてブートジョロキア、いる!!」

 

 次々と出てくるメイドウィン達の食事の文句、ゼオノイドがバックれてメイドウィンを辞めたくなる気持ちがなんとなく分かる気がしてきた、関係ない可能性もあるが……なんなら星野アイ、これを受け継ぐことになるがクラファン企画した人は考え直したほうがいいかもしれない。

 

「あっ、俺の献立はご飯にメインに味噌汁まで揃った定食系ね!」

 

「何一丁前に自分はバランス良く食ってんだ黒影! 聞いた限りだと完全に数が多すぎて他の奴が適当になってる流れだったよな!? おかず単品ばっかじゃねえか! 色替えで誤魔化すRPGか!」

 

「ちょっと落ち着いてたくっちスノー! メイドウィン達の食事メニューが酷いのは分かったけど、まだ葉天文寺が何を食わされてるのか分かってないじゃないか! 俺も知らないよ!」

 

「あっそうか」

 

 元はと言えば葉天文寺が言い出したことで彼以外も酷かったことから我慢が爆発するように広がってこんなに話がこじれてしまった、さっきから彼は口を押さえて顔を青くしている……よほど酷いものを食わされているのだろうか。

 

「おいおい……あの顔よっぽど鬱憤溜まってるやつだぞ、まさかワニ料理でも食わされていたりしてな」

 

「これまでの流れからしてワニ料理な方がマシなやつでしょ……というか、さっきも言いましたが単にワニと言っても魚の部位もありますよ」

 

 葉天文寺が何を食べているのか他のメイドウィン達も気になるところであった、遂にその全貌が明らかに……。

 

「■■■■■■■■■■■■■■」

 

 なろうとしたがあまりにもショッキングな内容に規制することしかできない、これが生放映されていたら規制音が止まないことだろう、一つ言えることはコレを聞いたミリィもたくっちスノーも文句を言っていたメイドウィン達も黙ってしまうほどの衝撃。

 

「まさか■■■を■■■して■■■したものだったとは」

 

「やめろミリィ!! なんか可哀想になるから言ってやるな!! ……おい黒影! これは完全にお前の無関心に非がある! メイドウィン達の食事をもう少し楽なものにしろ!」

 

「君どういう立場で言ってるのさ自分がそうなるからって」

 

「時空監理局副局長としての冷静な観点だ!!」

 

(めんどいなぁ……余計な栄養を摂らなくていいし余計な経費もかからないから俺としては便利だったんだよなぁ、別にやらなくてもいい体なんだしさ)

 

「元々食べなくても問題ないものをワガママ言ってるからご飯用意してくれるんだから文句言わないでよ……やるにしてもそれで自分が褒められるわけでもないのに」

 

「……おい黒影、嫌な予感がしてまさかとは思うがメイドウィンに睡眠期間も与えてないな!?」

 

 メイドウィン達が一斉に動揺する、寝ることもせんのか……とたくっちスノーはドン引きする、人間の三大欲求の肝心な部分鷲掴みされているようなものだ。

 ちなみにマガイモノは睡眠は必要ないというか寝ることが出来ない、その為彼ら副局長と補佐の仕事は殆ど深夜に行われている。

 

「睡眠は食事よりいらないでしょ、俺は人間だった頃から24時間のうち10時間も休息に当てないといけないのは無駄だと思ってたから快適だよこの身体」

 

「黒影! お前は寝ることや夢を見ることの楽しさを知らないからそんなこと言えるんだ! 自分達も知らないけど!」

 

「……」

 

「あーわかったよ葉天文寺! 君が勝てたら考えてやる、だから勝て!」

 

「ワニ〜〜〜〜〜ッ!!!」

 

 その瞬間葉天文寺の身体が光り黄金に輝き出す、まるで神の名前が宿ったガンダムの明鏡止水の精神のようだがたくっちスノーはこの光景に覚えがあるので焦っていた、向こうは本気だ。

 

「や、やべぇ……まさかアレはメイドウィンブラストのその先……最上級(サード)!」

 

「サード!? メイドウィンブラストって進化するのか!?」

 

「ああ……だがメイドウィンブラストをそこまで進めたやつはこれまでただ1人……メイのみだ!」

 

「うわぁ……食べ物の恨みだけでこうなるとかもう無理じゃね?」

 

「……っていうかさ、なんか俺あいつが可哀想になったし勝たせてもいんじゃ……」

 

「バカいえ! 確かに可哀想だが今回の勝負とは別だ! アウララの戦いを諦めたわけじゃない! それに……」

 

「それに?」

 

「……そういうのは、時空監理局として解決させる、いくぞアウララ!!」

 

 たくっちスノーはパソコンを操作してアウララにアップデートを施そうとするが何かおかしい、アウララの膝が崩れ落ちて倒れ込んだのだ、彼女の角も天秤も溶け出して異常が発生している。

 UNDERTALEでもこんなのあったような気がするがアマルガムはマガイモノではない。

 

「アウララが!」

 

「……ちっ、やはりマガイモノ成分を短い間に何回も書き換えるのは無理があったか、本来の設定が薄れて自壊しているのだろう、元々アウラの設定を」

 

「そうか……となると迂闊にアプデは出来ない、やるとしてもせいぜい1回が限界だ、この1回で有効打になるものを思いつかかなければ……」

 

 この1回の出力で覚醒した葉天文寺を更に上回らないと勝つことは出来ない、しかし1回で大逆転なんて簡単に出来ることではないし軽はずみなものでは逆に自分の寿命を縮めるのみだ、たくっちスノーは土壇場で行き詰まった。

 

「なあたくっちスノー! 他に技はないのか!」

 

「技なんて言われてもなぁ! あの状況に対抗できるものなんて……!」

 

「あるはずだろ! メイドウィンブラストみたいなマガイモノの必殺技が!!」

 

「……ッ!」

 

 ミリィは時々鋭いことを言う、誰に似たのかとても真面目だ、メイドウィンに対抗するなら確かに相応の技を求められることになる……だが。

 

「マガイモノ奥義というものが……あるにはあるがないといえばない」

 

「それなら奥義を作れば……」

 

「だが! それは未だに自分の脳内にしかない! つまり誰も覚えていないんだ! 自分はこれまで結構な数のマガイモノを作ったがその素質があるものは何一ついなかった! ボルコンですらだ! それどころじゃない……EXEも……自分だってまだ使えないんだ!!」

 

「えっ!?」

 

 この時のマガイモノ奥義はあくまでたくっちスノーの妄想に過ぎず実在化は厳しい状況にあった。

 それも当然のことであり、当時のマガイモノは全て見た目含めて完成度が低くオリジナルの個性を出すに至ったものはいない。

 黒影がたくっちスノーをそういう作風に作り、そのたくっちスノーがキャラクターのガワをつなぎ合わせるだけの言わば劣化の劣化、どうしてもキャラクターにも勝てない、そういう風に作られて一生覆せない。

 マガイモノは悪役として一生劣化版のままなのだ、悪者がヒーローを超える可能性など1%もあってはならないからだ。

 それ故にたくっちスノーは一番キャラクターの個性を追い求めている。

 

(勝てない、絶対にマガイモノは勝てないんだよ……ハカイモノよりも使い勝手のいいやられ役、そうなってくれないとバランスが悪い、その為に作ったんだから!)

 

「だったら今作るしかないだろ!!」

 

 黒影の思想とは裏腹にミリィは悪役、やられ役で終わるとは思ってない、構想があるなら後はやる気さえあれば作れる……ミリィはジルトーからそう教わった、構想さえあれば何でも出来ると。

 ミリィは狂人だった、どんなに苦労しても血反吐を吐いても生きてさえいれば絶対に成功できる、結果は出るが人はついてこれないような努力至上主義者である。

 

「技は思いついてるんだな!? 後は俺に任せろ!!」

 

「任せろったってどうするんだよ! 今まで出来た試しは……」

 

「お前も物作りに携わってるならちょっとの失敗で諦めるなよ!!」

 

「こ、こいつ熱血なところもあるんだな……ああわかったよ!! 時空最悪の犯罪者なめるなよ!!」

 

 たくっちスノーだっていつまでも負け犬のまま居たくない気持ちはある、マガイモノ奥義を現実にしたい、黒影に勝ちたい、このままただのやられ役で終わりたくない……そんな思いがミリィとシンクロして二人の手さばきは加速する。

 絶対に壊れないからこそたくっちスノーはミリィについていくことが出来る、何より結果が気になる。

 その為なら手段は選ばない。

 異常探求者と努力至上主義者、この2つが合わされば強烈な化学反応が起こりどんな事でも成し遂げられる。

 

「あいつら……まさか本当にマガイモノ奥義を? バカだな……マガイモノが強くなっても俺達には敵わないのに……」

 

 黒影はそんな彼らが気に食わない、本当に善人になろうとしているから? 自分が将来死ぬのはあいつのせいかもしれのから? ……どうせ時空を滅ぼすのに無駄なことをしているから? 

 その答えは出てくることはないだろう。

 

「おいティー! マガイモノ奥義はまだか!」

 

「うるせぇなぁ! 今何種類兼用してると思ってんだ!」

 

「なめるなexe! たくっちスノー様ってのはマルチタスクの鬼って聞いたぞ! だって俺と同じこと出来るんだろ!」

 

「お前の基準で話すな!!! こんな奴に余計な知識与えやがってうらあああ!!」

 

 燃え上がる2人のペースはどんどん上がっていく、アウララの腕前が上がるだけではない……何かがおかしい。

 ただマガイモノ奥義を作っているように見えない、気になってしまい目が離せない、すぐ近くで見ているローレンも怖くて話しかけることも出来ない。

 

「お……おい、お前ら何して……!! マガイモノ奥義を作ってるんじゃ」

 

「作ってるよ、作ってる……でもさ、アウララだけじゃつまんないだろ……? だから今自分はこれまで作ったマガイモノのマガイモノ奥義、全部試したかったやつをリモートで実装しているんだ、ミリィもいるしな!」

 

「……は?」

 

「いやぁさすが自分自身が二人いるだけはある、試行錯誤も余裕で出来るし分からなかったり詰まる所も解決する……ボルコンもこれ出来たら変わってたのかな?」

 

「こればっかりは気付けなかった俺のミスだ」

 

「……あ、言っとくけどアウララのマガイモノ奥義はもう完成している、今作っているのは僕のマガイモノ奥義、お前にも見せたかった史上最強の大技だ!」

 

「!!?」

 

 たくっちスノーが技を作ろうとしている、自分だけの大技……パクリだけがアイデンティティだった彼が揺らぎ始めている、マガイモノが雑魚から1つの生物にまた一つ発展しようとしている、成長ジャンキーのたくっちスノーは技を1個覚えるだけでテンションが高まりこれまで以上の戦力となることだろう。

 

「ワニ」

 

 葉天文時もマガイモノを認めつつある、アウララのマガイモノ奥義は完成しているのだろうか、もう発動しているのか……黒影はいてもたってもいられず、いられず、いられず……。

 

 どすりと鈍い音が響いた。

 

「……え?」

 

 人知れず剣が飛んできて、アウララをすり潰した。

 まるで自分が手を出したとは思われないようなスピードで、見る影もなくぐちゃぐちゃに成分だったものしか残っていない。

 

「試合終了!!」

 

「何!?」

 

(メイ……!)

 

「あ、おい黒影! お前の飯の話なんだけど」

 

「あーわかったわかった! 改善する! そんなに言うなら何かしらやっとくから!」

 

 黒影は葉天文寺を連れてどこかへと消え去る、たくっちスノーとしては急に試合が終わったのは残念だが更にまた有意義なデータは取れたし、自身の成長を感じたので良しということにした、今の問題はメイドウィン達の食事問題である。

 

「どうせあの言い方じゃ自分が悪者になりそうだから必死のアピールみたいに見えるぞ?」

 

「ま、そうだろうね……黒影は自分の悪評を焦るタイプだから、自分もあいつが結構言われてるの知ったのは監理局入ってからだけど……食事問題は簡単にはいかないな、自分も今夜はフル残業だな」

 

「いいのかティー、頑張っても功績はまたアイツのものになるぞ」

 

「いいの! 監理局は地位や名誉よりも」

 

 たくっちスノーはこれが終わってもまた一仕事、ミリィは黒影が何をしたいのか知れば知るほど分からなくなっていった、元々監理局や黒影、並びにたくっちスノーのことを知りたくて近付いたのに知れば知るほど常軌を逸する振る舞いしか見えてこない、自分自身もそうであることには気付かないが。

 その後、葉天文寺の姿を見たものはいない。

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