時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~ 作:黒影時空
「たくっちスノー、そろそろボディーガードから選出したほうがいいんじゃないの?」
「ん、それもそうだな」
来たる3戦目、たくっちスノーは試合のことは一旦考えずメイドウィン達の食事問題の方を優先したいので自作マガイモノではなくボディーガードを用意しようと考えていた。
この問題は掘り下げれば掘り下げるほど深刻なので真面目になんとかしなくてはならないが、いかんせん数が多いので……。
ローレンはおにぎりを用意してメイドウィン気分をみんなで味わう、なおローレンだけはどうしても足りなくなるのでおかずをミリィに用意してもらった。
「1から献立設定すると絶対一人や二人ゴネるだろ……? 恵まれてるメニューのやつだっているんだ」
「そもそも全員を納得させるなんて無理があると思いますよ」
「好きなように食わせることを許可するだけで解決する話はあるんだが……何故かメイは認めないな」
黒影にとってメイドウィンの認識はただの喋るバッテリー、たくっちスノーも後々調べてみたが確かにメニュー以外でご飯を食べているが必要だから食べているのではなく仕事だから、趣味だから、周囲の世界へのアピール……つまり仕方なく周りのために食べているという形になっている、周囲に合わせる努力というやつだ。
それを他の面々はやらないのが不思議に思うらしいが、普通に考えてやっちゃダメな範囲と思ってるからだろう。
「だったら断ればいいのに黒影ってやつはわけわからんないね」
「アピールだよアピール、俺はそんなつもりはないけど皆が言うからって他人の善意ってことで言い訳してる、黒影の身近な所を知ると意外とそういうところ多いんだってあいつ」
「局長は以前からから他所に支配者とか英雄っぽく振る舞おうとしてるけどそれが露骨なので……バレバレなのに気付いてないのがたまに面白いところではあるとたくっちスノーさんが」
「え、もしかしてたくっちスノーって昔から黒影があんなんって」
「伊達にアイツと長い付き合いじゃないよ、まっ自分と違って自分から悪いことはしないだけいい方だろ? 献立問題だって自分は気にしてないから必要さが理解してないだけだよ、あいつはただ単に無計画で人の苦労とか理解できなくて……それでいて自分のお助けが必要なくらい自分たちをザコだと思ってる」
「……み、ミーにはそれが自分勝手な独裁者に見える」
黒影が寝てることを良いことにボディーガード達は言いたい放題、そんな黒影でもたくっちスノーは好きなのだ、時空犯罪者としては因縁を作りながらも楽しみ、副局長としては部下として叱咤する、そんな関係である。
だがこの仲も意図的に仕組まれたものであることを知るのはミリィのみ、おにぎりを飲み込みながら事の深刻さを理解してポチにもこっそり情報を送る。
「さて、話を戻すが今回の試合はEXEを出そうと思っている」
たくっちスノーのボディーガードSonic.exe、たくっちスノーにとっての切り札でありはっきり言って自分の次より強いと思っているゼロ・ラグナロクの鍵、腕を振れば大地を壊し、走れば空を裂く……exe自身は己の破壊力をよく思っていないが今回に限りそれが優位に働く。
「なるほど……オレは相性を考えなくてもいい言わば出し得、どんなメイドウィンが相手でも最悪メイが出なければ劣勢になることはない、ティーはそう言いたいんだな?」
「そう、どんな勝負でも勝つ可能性が高いジョーカー枠は必要だろ? 相性無視できるやつが強いかは別として役に立つんだ」
たくっちスノーは意気揚々とexeの戦術を説明する、まずスピードで敵選手を翻弄して一気に殴りかかる、実にシンプルだが自前のパワーとソニックの音速を併せ持つ彼だけが出来る無敵の作戦だった、良くも悪くもexeにしか出来ない。
だがミリィからすればまだ問題が見える。
「でもexeはまだマガイモノ奥義が開発出来てない……」
「ああ、何回試してもダメだった……センスの問題か? 何回もティーに教えてもらったが……」
「まぁこいつくらい強いなら試合中に完成しても問題はないし保険みたいなものだ、だが念の為警戒はしとけよ、これでも警戒しすぎて黒影以外とはメイドウィンと戦わせたことはないんだから」
「じゃあそろそろメイが起きる頃合いだ、行ってくるとしよう」
「うん、自分はこの仕事で忙しいからリモートになるけど大丈夫だよな?」
「いや行けよその仕事俺がやっとくから! 何のための身代わり設定だよ!」
ということでミリィに時空監理局の留守番を任せて、念の為ローレンを見張りにつけて2人でバトルコロシアムに向かうことにした、ただしexeは辺りにも便利すぎてミリィに対する疑りは深くなる一方だった。
あまりにも自分達に尽くしてくれる、自分にそっくりなやつとはいえ基本を受け入れてくれる、かといって全肯定というわけでもなく時に否定してダメ出しもするのが怪しいところ。
「おいティー、アイツを信用してもいいのか? オレたちも軽く受け入れかけていたがあまりにもオレ達に都合が良すぎないか?」
「そうは言われてもなぁ……少なくともこの仕事は自分達がやったところでって感じだし問題が起きたなら……まあ今回の話がなくなって副局長をクビになるくらいだ、個人的には今までの精算を考えるとそんなダメージじゃない」
「まあ確かにオレも補佐の立場は気にしてないが……」
「ローレン大丈夫かな? 一応護身術は何かしら教えておいたが」
「オレ達とは体の作りが違うからな、もしあいつに何かあれば……それだけは考えておくか」
たくっちスノーは立場を失ってもこれ以上落ちぶれたくはない、過ごしてきたから分かるが時空監理局にも自分の立場をひけらかすような輩は居て、メイドウィンにも当然性格の悪いやつはいる。
他人から善人になれと言われた形とはいえそれはなるべく貫き通したい、そして行く行くはメイドウィンと時空監理局の仲の改善も検討していきたいと考えている、exeは思っているより時空の為に働いていることに驚いたこともある、それを言うと『おだまり』で返すが。
その為に黒影の抜けているところをなんとかしなくてはならないのだが……。
(ティー、こいつがここまでになるとはな……)
「でもあのバカ局長はどうすりゃいいんだろうな! やりたいことだけやって褒められないと気がすまなくて! でも最近はなんかさらにおかしくてさぁ、明らかに迷走してるっていうか」
「しかしティー、メイはもう起きている」
「ファッ!!?」
バトルコロシアムで歩いていたら黒影がすぐ目の前に居たのでたくっちスノーは一瞬で雑巾のようにグチャグチャになる、表現ではなく黒影か実際に手を使わずそんな形に変えたのだから恐ろしい、なんというかやれることだけは壮大なのだから怖い。
「たくっちスノー、メイドウィン達が今度はスマホまで欲しいって言い出したんだよ、ワガママばかりで困るよねー」
「携帯か……確かに通信する手段はいくらでもあるけどスマホってゲームとかSNSしたいだけだろ……これは一旦保留にしておく、でもまあ通信機器くらいは作ってみるか」
「それでこそたくっちスノーだよ!」
「……ティー、オレたちもマガイモノ専用の連絡機器が欲しいぞ」
「そうだな、それは開発中だ……で、世間話はいいんだよ、それは何?」
黒影はいつもと違い見慣れない人物を隣に入れている、彼は普段から1人が好きなので隣に誰かを連れていることは滅多にない……知人にしては見覚えがないし、黒影に友達は居ないぞ。
「彼はデンジャーポール・メイドウィン・ズーパラノシス、新人のメイドウィンでね……今回の対戦相手だ」
「おお、というとあのデンジャーポールか!」
「はじめまして……まだ慣れないところもありますが、メイドウィンとして精一杯貴方達と戦いたいと挨拶に来ました」
「ほう……礼儀正しいな、ようやくマトモなメイドウィンを見れた気がする……何、こいつも監理局としては新人だよ、今回の対戦相手のexeだ」
「親善試合みたいなものです、悔いのないようにしましょう」
ここまでの流れでようやくちゃんとしたメイドウィンに出会えたexeはせっかくの善意を無駄にしないように握手をする、見た目は穏やかだが手は不思議とザラザラしている……触れただけでこの見た目でも油断出来ないと実感させられる、たくっちスノーは既にこの時点で力量が分かる、exeが手を握りしめてもぐちゃぐちゃに潰れないのだから。
「優しいのは結構だが試合では手加減しないからな」
「ええ、そうしていただけるとこちらも助かります」
「EXEいってこーい、お前にはカタパルトは必要ないよな!」
こうしてexeはスピンジャンプで闘技場まで降り、デンジャーポールもそれを追いかけてようやく試合開始、デンジャーポールとEXEが同時に飛び降りてゴングと共に拳の重なり合いスピードを出そうとしたら砂をかけられて足を止められてドロップキックを受け流す技の重ね合い、まさに格闘技の頂上決戦のようだ。
「思ったよりは長引くかもしれんな!」
「僕も簡単にやられるつもりはありませんよ!」
デンジャーポールとEXEの勝負は最初からヒートアップしていく、だがexeは焦る様子もないので直接自分が指示をしなくても問題ないだろうと黒影の動向を伺う、黒影はいつものようにリラックスしているが目線は自分の方に向けている。
「黒影、早速聞きたいけど葉天文寺の姿も見えなくなった、何か知らないな?」
「コレに関しては俺も本当に知らないよ、お話する予定だったんだけどさ、そういえばアイツって翻訳機ないとワニワニとしか言えないなってさっさと切り上げたんだよねー、その後は本当に見てない、メイドウィンは辞めてないのは確かだよ」
転生ワニの世界に異常はない、本当に何もしていないらしい……信じられないことだか葉天文寺を探すことを優先したいが今はメイドウィンの食事の事で忙しいしミリィに余計なことまでさせるわけにはいかない。
何より最近の黒影は焦っている、自分から首を絞めるような真似だけはしないはずだ。
「黒影、同僚のピンチに助けてこそ主人公じゃないのか? よく言ってたろ?」
「聞くが君は何の報酬も貰えないって分かってるゲームのクエストをやる?」
「ゲームキャラの生存確定はアイテム以上のメリットだね、スパロボじゃ勲章としても扱われる」
「でも葉天文寺は俺のルールに意見を出した、俺の味方になれるか怪しかったよ」
「文句も言われたくないのか黒影は、監理局に来てから思ったけどプライド高すぎてブランドにも拘るよ」
「そういう君は小言が多くなった、主人公って奴は何をしても部下がついていくものしゃないのか? 君が見たヒーロー達だってそうだろ?」
「いいや違うね、僕が生で見てきた英雄たちはアンタよりずっとカッコよかった、多分アンタより強かった」
「俺をあまり下に見るものじゃないよたくっちスノー? 人を見る目が更にゴミになるよ、時空が滅んじゃうかもしれないんだから、もっとよく状況を見て?」
たくっちスノーと黒影の口論に重なるようにEXEとデンジャーポールの拳は激しくなっていく、この話何が主題だったっけ、喧嘩もろくにしていないし黒影には全く効かないのでいつも話が切られると集中できなくなる、話すのは後でも出来るので今はexeの方を観ることにした。
「exeそっちはどうだ! 負けたら許さんぞ!」
「なかなか歯ごたえのある戦いだ! 今回の相手がこいつでよかったと思うくらいはな!」
「こちらこそ、ここまで張り合いのある勝負は初めてですよ」
「お前腕が立つな、メイドウィンになる前は武闘家か?」
「いかにも、あの方に誘われて世界を譲ってもらった形です」
「……メイか、随分と厄介なやつをこの場に引き入れたなっ!」
exeは回転して首筋に蹴りを叩き込もうとするが手応えがない、足並みをそろえてパンチも放つが人間というよりコンクリートを殴るような感触……耳はまるで象のように肥大化して剥がれた服からはゴツゴツとした岩のような皮膚が浮き出ていた。
「それがお前のメイドウィンブラストか……」
「ええ、僕の体に動物の遺伝子を服用させて効果を発揮する……あの人はそう言ってました」
メイドウィンブラストは基本的に後釜にも能力が引き継がれる、一度セカンドになってしまえば誰でも使えるため皆セカンドを覚えたがるのだ、引き継ぎ楽だし。
しかし能力によってはとんでもない落とし穴も……。
「ティー! 奴の管理している世界はどんな作品だ!」
「調べてみたところZoochosisというゲームソフトだ! 動物園で寄生虫が混ざった動物の安全管理・飼育を行うホラーゲーム! その硬化する皮膚もゾウの遺伝子によるものだな!」
「つまり奴はその世界の改造動物全てが使えるという認識でいいんだな!」
EXEはたくっちスノーに言われた通り速攻戦法に頼ろうとする、このガチンコ勝負に卑怯もへったくれもない、能力も純粋な実力なのだ……となれば遺伝子を1つでも解放される前にデンジャーポールをKO勝ちさせるしかない、メイドウィンを相手するということは時にその世界そのものを相手取ることになる、これはゼオノイドや葉天文寺との戦いで深く実感した、目の前にいるのは戦闘僧ではない、恐ろしい移動動物園だ。
「ティー……その寄生生物はどこまで出来る?」
「自分も全部やったわけではないが……ペンギンでも空を飛べるようになったり透明化や分身まで選り取り見取りだ! 気をつけろ!」
「ああ、お前の言う通りホーミングアタックによる速攻で……!?」
exeはブーストをかけて背後を取ろうとするが様子がおかしい、後ろから見たデンジャーポールが何やら苦しんでいる気がする……顔色は悪いし足はおぼつかない。
大丈夫かと言いたいがこんな様子では近づくこともままならない、とても不死身のメイドウィンらしからぬ体調不良だった。
「ティー! 奴のメディカルチェック!」
「オッケーひとまず透視から始める! ビリっとくるから念の為終わるまで近づくなよ!」
たくっちスノーが両腕をスタンガンに作り替えて軽くexeの瞳に電流を流し変化させて視界を共有、中身を透視させると、なんとデンジャーポールの体の中を大きな虫が蠢いている……これは覚えがある、Zoochosisに登場する動物の中にいるパラサイトである、それが生きてメイドウィンの体内に!
「やばい! あいつゲームと同じ寄生虫が入ってる!」
「何!? 今どこにいる!」
「胃のあたり!」
たくっちスノーの指示を受けてexeはお腹の部分をぶん殴るが、たくっちスノーが見る姿では寄生虫が増えた、はっきり言ってキモくて吐きそう。
それにデンジャーポールも余計に苦しんでいる。
「おい寄生虫が増えたぞ! ダメージを受けるほどアイツは寄生虫を作り出すメイドウィンブラストのようだ!」
「そんな能力が……デンジャーポール何をしている! メイドウィンだからって身体が持たないかもしれないぞ吐き出せ! それか中断するんだ!」
「無理だ聞こえねえよ! こんなもんなったばかりの素人に使いこなせる能力とは到底思えねえ!! 僕だって使用を躊躇う!!」
寄生虫は今も増え続けてデンジャーポールの身体を蝕む、元々人間にも作用する上に実在する様々な動物を恐ろしく強く、食性すら変わるほど歪な見た目に変貌させてしまうほどに強力なパラサイト、メイドウィンにも影響を与えてもおかしくない。
「自分達は命を脅かすほど落ちぶれちゃいない! exe気をつけろ! あまりにも殴ったら口からパラサイトが出てくるかもしれん! ……くっ! これが他のマガイモノならアプデでもなんとかなる! でも今回はexeだ!!」
「……最悪の試合だ、オレが手加減が苦手なことを知っていてメイはこんな物を……!!」
「頑張りなよ、メイドウィンすら本気で壊せるかもしれない君の力に期待してる」
「デンジャーポール……!!」
デンジャーポールの身体はぐにゃりぐにゃりと中から乱れる、パラサイトがどこまで成長するのか分からない……ミリィも現在は留守番と仕事を任せているため彼に頼るわけにもいかない。
……メイドウィンの能力、純然たる元の世界の力……諦めることを知らないexeとたくっちスノーは閃いた。
「ティー! オレの言いたいことは分かるな!?」
「ああ! 寄生虫を取り除く方法だろ!? ゲームが元になっているなら寄生虫を倒す方法も間違いなく存在するってそう考えたんだな! 自分も今思い出したよ!」
たくっちスノーはテレパシーでEXEに攻略法を教える、作中の寄生体と化した動物の対処法は主に二つ……安楽死薬を打ち込んで寄生虫ごと死なせる、これはほぼ現実的ではないとしてもう一つは対応するワクチンを打ち込むことで寄生虫を吐き出させること。
「そのワクチンの作り方は?」
「寄生虫は病気を模倣する、その病気に適応する薬に加えて動物の血液が必要だ!」
「つまり血清か……ティー! 注射器を作ってこっちに渡してくれ!」
「これでいいんだな!?」
たくっちスノーは成分から注射器を作成しexeに投げ渡す、しっかりキャッチするとデンジャーポールに接近してメイドウィンの血液を採取、メイドウィンの血は初めて見たがそれは血液と呼ぶにはあまりにも綺麗すぎる、赤黒さは一切なくまるでワインのような美しい色合い、高貴な吸血鬼がグラスに入れて飲んでいるような血液とはこういうものだろうか、とても寄生虫が入っているとは思えない。
「後はティーを参考にオレの成分を変化させて対応する動物の血清を作成する!」
「そんな事出来るのか!? 自分だってなんでこんなこと出来るのか分かんないくらいなのに! お前一応ハリネズミだぞ!?」
「ミリィも言っていただろう! 今ここでやらなくてはコイツは!!」
EXEは躊躇いなく血液が入っていた注射器を差し込み自身の成分を混ぜ合わせてようやく赤黒い血液のような色合いとなる。
いちかばちかデンジャーポールの右腕に突き刺すと悶え苦しんで胃の部分が変形したかと思えば赤色の大きな寄生虫が口から吐き出されてじたばたと悶える。
「こいつが寄生虫……気持ち悪いな」
exeが寄生虫を踏み潰そうとした時、たくっちスノーから更にドクロ丸とカゴが飛んでくる。
「まだ殺すな! 寄生虫の血から寄生虫の王を殺せる毒を作れるんだ!」
「無駄だよたくっちスノー、デンジャーポール自体がマザーなんだからそんなものは効かない、効いたとしたらそれはメイドウィンの権限を失い君のルール違反負けになる」
「はあ!? ルール違反ってどういうことだよ! これまでのあれこれだってゼオノイド的には!」
「ティー……」
「…………かまわん!! デンジャーポールに何を言われてもいい! 責任は自分にある! 奴がメイドウィンじゃなくなったとしてもアイツを救え! 自分はミリィに連絡を入れる!」
「言われなくともそのつもりだ!」
たくっちスノーとEXEは覚悟を決めた、デンジャーポールとはまだ短い付き合いだが、失うには惜しい存在だ……不老不死とはいえこのままでは……。
「変わってるね、不老不死を助けるんだ」
「死なないなら苦しんでも放置しろなんて結論にはならねえ! 自分は!! メイドウィンに勝ちたいわけでも黒影にいい気をしたいわけでもない!! ちゃんとした勝負がしたいんだ!」
「……」
黒影としては意外だった、たくっちスノーは一度前科もありメイドウィンというものに強い憧れを抱いてると思っていました、たくっちスノーとしても貰えるものなら貰っておく気持ちだったが、優先事項というものを学習している、ここまで言うなら次の試合で4戦目、メイドウィン達も選んだものの乗り気になってくれないので中止にしてもいいだろうと思った。
(たくっちスノーがああ言ってるんだし……適当な世界でメイドウィンにさせればまた派手な事件でも起こすと思ったが期待外れだったか……まあ余計なメイドウィンを何人も知れただけでも良しとするか、また暇そうな奴を雇ってはじまりの書を見せるだけでいいし、となると何が原因で時空が滅ぶんだ? たくっちスノーの仕業とばかり思っていたが……)
「黒影……今更ではあるが試合中止とかはないのか! ルールにそういう記載は!!」
「ないね、雨天中止とか無いし病欠も存在しない……『そもそも起こること自体があり得ない』をルールに入れる事もないことくらい分かるだろ?」
「起こること自体があり得ない……なるほど、黒影の事が少し分かってきたよ、じゃあ中止は期待しない……EXE、絶対に助けよう」
「言われなくとも当然だ、何個でも血清を作る!」
薄い意識の中でデンジャーポールはexeの姿を見る、たくっちスノーに何個でも成分を元にして清潔な注射器を作ってもらいアンプルシューターまで用意してもらった、exeは銃は不慣れだが今は贅沢を言ってられない。
「EXEさ……ン……」
「EXE気をつけろ! あいつの身体……ゲームにないものまで取り込んでる! こればっかりは推測でも作りにくいぞ!! ああもうしゃらくさい! 直接引っこ抜いて寄生虫握りしめたりとかできないか!?」
「キルアの心臓じゃあるまいしそんなグロテスクなことオレが出来るか!!」
たくっちスノー達はもう勝負というよりは燃えるレスキュー魂、デンジャーポールにゴーゴーファイブしていたところである、爆裂的に鎮圧せよ。
メイドウィン達も向こうから寄生虫が飛んでこないかヒヤヒヤしたりデンジャーポールを心配して眺めていた。
黒影はというと、何か様子が変なことはたくっちスノーでも分かる、それなのに自然すぎる……自分も危ないというのに呑気に見物している、そもそも彼を連れてきたのは黒影……。
「……なんか狙ってる……もしや!!」
たくっちスノーは気付いたことがある、とはいえローレンに説明したらパニックになるので話にならないので仕方ないがミリィを離して連絡を入れることにした。
「もしもしそっちは順調か? ランチメニューの方は大手デリバリーサイトと契約して数百を超える弁当を注文できるようにしたところだ、時空専用のお金も使えるように手配してある」
「すげぇなお前……exeが怪しむのも分かる気がしてきた、信用していいんだな?」
「……? お前らを裏切るってことは時空監理局を敵に回す事だろ? なんのメリットがあってそんなことするんだ? いやまあ、確かに変なところは、おっとそれはまた後でな」
メイドウィンが裏切ってくるのとは勝手が違う、時空監理局を絡め捕って支配するとしても現状では悪いことではない、もしかしたら彼が何かとんでもないことをしでかすとしても、未来でミリィが時空を滅ぼすように見えないので今は彼を信じてみる事にした。
「変な事聞いて悪かったな、実はちょっとまずい流れになった」
デンジャーポールのこと、メイドウィンブラストの事をミリィに話してローレンと黒影に気づかれないようにこっそりと作戦会議を行う。
「メイドウィンも楽じゃないんだな……それでexeの方は問題ないんだな?」
「ああ、ゲームの性質上寄生虫マザーを潰さないとイタチごっこだが楽にはいかない……問題は黒影の見る目が怪しいんだ」
「怪しい?」
「最初の自分達みたいに不戦勝を狙ってるのかもしれない、仕事を増やしてすまないがEXEの素性を調べてくれないか?」
「任せろ、マルチタスクは得意なんだよ」
ミリィは更に腕を増やし、EXEの情報を集めるためにもう一個パソコンを使い操作する、ジルトーがアップデートした時に一通りの成分は取ってあるので情報を調べることは可能である。
ちなみに食事メニューの方もちゃんと言われた通りに仕事している、ちょっと化け物すぎてたくっちスノーも一周回って仕事ふるのが怖くなってきた、お給料あげるべき。
「exe! そっちはどうだ!」
「注射器が足りなさすぎる! もっとデカいやつはないのか!?」
「お前それメイドウィン相手じゃなかったらまずいからな!? まあいい受け取れ! いけっお注射天使リリー!」
たくっちスノーはまるでマンガみたいな人と同じ長さの巨大注射器を背負ってぶん投げて、EXEは貧血の心配もせず刺すがデカすぎて針が貫通している、たくっちスノーとかで度々見た光景を自分が受けるとは思いもしなかったが、ひとまずこれをデンジャーポールに向かって突き刺す、でっかい穴が出来て血を抜き取り……。
「なぁこれ寄生虫ごと吸い取るんじゃないか」
「細かいことは気にするな! そいつで一気にぶち抜いちまえ!! うろ覚えだがゲームだって寄生虫吸い取るんだし!」
巨大な血清ワクチンが完成したので容赦なくぶち込む、もうデンジャーポールの身体は穴だらけでありこれが不老不死だったりギャグ漫画の住民でなければ危ないところであった、ありったけのワクチンを注がれて体内に抗体が出来たデンジャーポールは全ての寄生虫を口から吐き出してexeが片っ端から回収したくっちスノーに投げ渡す、これでまだ寄生虫生きてるのだからキモい。
「おい! 寄生虫から作れる王を仕留める毒はまだか!」
「そうは言われてもなぁ! これ確かメスじゃないと効かないし選別するのも大変なんだよ!」
「い……いえ……もう大丈夫です、話せます」
どうにかデンジャーポールは正気を取り戻したが薬を打ちすぎたせいかあるいは寄生虫の影響か、それともさっきデカい注射器ぶち込まれたのかでボロボロだった、戦いよりも治療のせいで満身創痍になっている
「黒影、試合中止は認めなくても休憩ぐらいは良いんじゃないのか、コイツらまだ戦う気はあるっぽいし」
「はい……僕はもう少しすればまだ戦えます」
「オレも異論はない、というかちょっとやりすぎた」
「うーん……ま、時間的にもいいか、1時間くらいでいい?」
ということで黒影の許可も貰い一旦休憩してから再試合ということになった、exeはどうにかなったが慣れないことをしたせいかたくっちスノーの所に辿り着いて膝から倒れ込んだ、元々彼は精神的には年相応というか結構脆い方だ。
「お前には随分無理をさせたな……」
「オレはお前のボディーガードだ、これくらいのことで……」
「exeさん! たくっちスノーさん!」
と、仕事を終えたミリィとローレンが駆けつけていた、片手にはカンペ用の台本が握られておりしっかり務めを果たしたことが分かる、仕事の早さでいえばこのコンビに勝るものはない。
ローレンはexeの疲労っぷりを見てかなり驚き、たくっちスノーはハンドサインだけでスポドリを手配させる、コンシェルジュがすっかり染み付いている。
「メイドウィンの食事問題なんとかなったのか!?」
「後は貴方と局長の承認を貰うまでってところかな」
「よしじゃあお前らは休んでてくれ、黒影呼んでメイドウィン達に公表してくるから……ありがとなミリィ、こんなことしか出来ないけど」
ミリィから資料を受け取り報酬として中身が詰め込まれた袋を渡す、黒影の所に向かい資料を見せて局長として黒影に発表してもらおうとする。
黒影はいつものように資料を片手間で確認だけすると印鑑は押しておく。
たくっちスノーがメイドウィン達に説明を入れた。
「えー……時空監理局は新たに超大型弁当販売会社拠点世界『ランチオックス』とメイドウィン名義で契約しました、数百万人が登録しており以降メイドウィン達はここから好きなメニューを注文していくという形で好きなように食事をお楽しみください……ということになりました、今後はここからお願いします」
「すげぇ! メニューが国語辞典みたいに分厚いぞ!」
「これからはサンフーチャン以外も食えるんだ!!」
縛られていた食事からの解放に各メイドウィン達は歓喜する、どうにか神々に受け入れられて上手くいって良かったと安堵するたくっちスノーとミリィ、ただ一人渋い顔をする黒影。
(え〜〜〜……俺この後にこの会社と話するの〜? 俺こういう交渉苦手なんだよなぁ、なんで会話ってあそこまで引き延ばすんだろう、それに食事の手間とか増えるんだよなあ、グルメ祭りも黒影の真似ってだけだし)
が、メイドウィン達が喜んでいる以上自分の功績でもあるはずとなんとか受け入れることにするのだった。
こうしてお昼時、サービス開始して早々次々とランチオックスに注文が殺到しメイドウィン達は念願だった全く別の料理を貪り、味わい尽くす。
まるで低民が極上の料理を味わっているかのような光景、曲がりなりにも神なのになんてお労しい光景。
メイドウィン達は時空の共通の金=ジーカを多く貰っても使う機会はなかった為ゴミ処理にもなり一石二鳥、ミリィのおかげで不満も解決したのだった。
たくっちスノーもまた世界一の唐揚げ弁当を食べて仕事を任せっきりにしてしまったミリィに対する褒美をまた考える。
「今回ミリィには世話になりっぱなしだったな……一旦金は渡したが他にどう礼すればいいんだ……?」
たくっちスノーの部下ではないため仕事の報酬以外でボーナスは与えられない、ミリィも貧乏に困ってるらしいのでお金を与えたいのだが時空監理局のお金は時空監理局から離すことは出来ない、黒影は意外とケチ臭いところもあるとたくっちスノーは思う。
なお実際の理由はジーカでペリカみたいなことをしたかっただけである。
「ミリィ、この試合終わったら経費でなんか好きな物買ってやるよ、なんか欲しいものある?」
「え? 好きな物って言われてもなぁ……なんか買ってくれるにしてもいいの?」
「そりゃ本来は自分か黒影がなんとかしないといけない仕事だからな……あ、店で買えるものにしろよ? 金は余ってるけどヤバいものは買えないから」
「じゃあさ、これ見てよ」
「ん……? おいおい、これオモチャショップのクリスマスチラシじゃんかよ、お前意外とガキっぽい趣味してるんだな」
「うっせー」
ミリィとたくっちスノーは2人してカタログのオモチャを覗き込む、たくっちスノーは本当にお金を手に入れてもローレンに必要な分以外は全然使わなくても問題なく生きていけるのでどんどん溜まっていく。
2人が楽しんでいる中、休息を取っている
「ミリィのことです? 貴方はずっと怪しんでますよね、気持ちは分かりますが……たくっちスノーから聞いたがわざわざ俺達に喧嘩を売るメリットはありません、でも協力する理由もあります?」
「理由なんて……それこそメイがこの時空で最も大きな組織の長だからじゃないのか?」
「それにしてはおかしくないですか? だって……いえ、今はゼロ・ラグナロクの方に集中しましょう、デンジャーポールさんも心配なのでよかったらお見舞い品としてこれをどうぞ」
「いつも気が利くな、ローレン」
もうしばらくしたら再試合、せっかくなのでEXEはデンジャーポールの所に行くことにした。
「この超合金ロボットがいいの? お前何歳?」
「『廻念鬼神シュテンオー』知らないのかよ面白いんだぞ! ストーリーもいいけどこのロボのデザイン! しかもこれ数量限定の特別アイテム付きで……あっそれとその、お土産もいいか? パートナーの力も借りてさ」
「なんだよそのオカルトかロボットか分からない変なアニメは……わかったわかった、これ終わったら一緒に買いに行こうな?」
精神年齢的には実はちょっとたくっちスノーは大人びている。
ミリィ精神年齢8歳、たくっちスノー精神年齢17才(設定)と生活方針で形成された人格が異なるのだ。
たくっちスノーはアニメキャラの主人公の真似をしているので平均的なキャラの年齢に合わせている、対してミリィは真面目ではあるがまだまだ子供なのでロボットやニンジャといった少年じみた物を好む、研究所内でも教育の3割くらいは松山が適当に流しておいたアニメであったという、というよりは赤子並みの精神から成長が早かっただけでまだまだ子供なので仕方ない。
たくっちスノーは不思議と年の離れた弟が出来たような気分だった、成分的には間違っていないのだが……。
「おや、EXEさん」
「デンジャーポール、体調は問題ないか」
exeが見舞いのためにメイドウィン側の待機室に向かうとデンジャーポールは布団の上で安静にしていた、あんなことがあったので念入りに休もうとしても無理もない、ローレンから預かった栄養剤とワクチン、並びにお粥を置いて隣に座る。
「すみません……僕のメイドウィンブラストがあんなことになるとは……」
「気にすることはない、ティーはアレは素人に扱えるメイドウィンブラストではないと言っていた……そもそもセカンドの継承は1から覚えなくていい分楽ではあるがリスクが伴う、メイがそこを考えず慎重に選ばいのが悪いとアイツも愚痴っていたよ」
デンジャーポールの方には問題がなさそうで安心するEXE、飯問題も解決したので葉天文寺もコレで浮かばれるだろう。
試合に向けて出ていこうとするとデンジャーポールは思い詰めた顔をしながらexeに話す。
「僕、実はまだ未熟でこの試合が終わったらメイドウィンを辞めようと思ってました……でもこの能力を安易に押し付けてしまうって分かって……もう少し頑張ってみることにしました」
「そうか、アイツはどんな結果になってもお前を責めたりはしないよ……良いやつだからな」
「ありがとうございますexeさん」
再試合に向けてデンジャーポールも起き上がり、万全の状態で戦うために一歩ずつ足を踏み出す。
この戦いを通して成長して、いずれはあの能力も使いこなせるように……。
「お、いたいた」
試合再開の時間から1時間が経った、exeはじっくりと待っているがデンジャーポールは姿を現さない。
「……奴は遅刻するようには見えない、あんな様子だし体調が戻らなかったのか?」
「メイドウィンの回復力ってどのくらいなんだ?」
「マガイモノもそうだが皆が思ってるより早くはないぞ? 確かに一瞬で治るときもあるけどそれは快眠かつ栄養満点で体調が万全な時、自分達だって病気になる事もあるし体調が悪くなると再生の質も悪くなる、死ぬことはない分余計に苦しくなるのが欠点だ」
「うへぇ〜……そりゃメイドウィン達も食事メニューとか気にするわな……」
「まあ黒影は病気になってるところ見たことないけどな、バカは風邪引かないとかの理屈なのかな? ……って、その黒影が見えないわけだが」
黒影はあの指示にサイン書いてもらった後にすぐ消えた、厠と言っていたがそもそもメイドウィンは排泄も不要なため絶対嘘である、でもトイレの中でスマホをこそこそするやつはメイドウィンの中にもいる。
黒影相手にexeやローレンを動かすわけにもいかないのでたくっちスノーが自ら探そうと黒影の部屋に向かおうとするとちょっと明るい表情で空から出てくるではないか。
「おい黒影! おっせーぞトップがフラフラしてんじゃねえ!」
「いやー悪いね、気分転換に空の散歩したくなってさ、空をハイキングはいいよね、足で歩くのが一番楽しい」
「それを仕事中にやるんじゃねえよ!! ……それでさ、デンジャーポールの姿が見えないだけど探してくれない? 一応アンタメイドウィンの代表なんだからさ」
「ああ、デンジャーポールのことなら心配ないよ……もう来るから」
黒影が手を差し向けると足取りがふらついているが、デンジャーポールらしき姿が見えてきた……だがそこから見えたのは……まるで化け物のようなものが背中に生えた改造生物のようになった彼の姿だった、まるでパンダのような動物が組み合わさったような……あんな事例はたくっちスノーは見たことない。
「デンジャーポール!?」
「まさかまた能力が悪化したのか!?」
「ほら揃ったことだし試合再開、存分に殴り合ってね」
「うおおおおアアア!!」
「くっ……デンジャーポール!!」
勝手に試合が再開され、EXEとデンジャーポールは取っ組み合いになる、状況を察したミリィはたくっちスノーから話を聞いて用意していた血清を用意するがどんなに刺しても変化することがない。
「血清が効かない……クソッ、まさか使いすぎて向こうにも耐性が出来たのか!」
(……あるいは、あれはメイドウィンブラストによるものではない? まさか自分の世界に乗っ取られるなんて事例が?)
化け物と化したデンジャーポールはとんでもない破壊力を持っているが、exeはまだまだ渡り合える戦闘力の持ち主だがこのままでは彼の身がもたないし面倒なことになる、だが自分に打開策は……。
その時exeが思い起こしたのは、たくっちスノーの真似をして成分を作り変えたこと、そしてたくっちスノーの得意技。
「ティー! オレのメイドウィンブラストは結局未完成のままだがまだ種はある! お前の成分をまるごとオレによこすんだ!!」
「無理だ!! お前は自分が作ったやつじゃないからアプデは出来ない! 何よりお前なら知ってるだろ! マガイモノ成分は共存できない!」
実はマガイモノ成分は同じなようでかなり細かく性質が異なる、他のマガイモノ成分を自分の体に入れようとすると混ざることはなく体内でそのままの形で残り続ける。
たくっちスノーがこの性質を発見し、着ぐるみのように他のマガイモノを収納したり上手く技術を応用することも出来るが、exeだけは例外中の例外、どんな術も通さないブラックボックスである、しかし試さない理由はなかった。
「何に使うかは知らんけど無駄にするなよ!」
今はexeに頼らざるを得ない、たくっちスノーはミリィに右腕を切り落としてもらい、片手でぶん投げるとexeはそれを……。
飲み込んだ。
「はあ!?」
「向こうには当たって砕けろなんて言葉もあるんだ……いっちょ試しに砕けてみるのもいいかもな!!!」
exeに身体に変化が訪れる……ありえない、たくっちスノーどころかどのマガイモノても起きなかった出来事、たくっちスノーは研究者として目を離せずデータを取る手が勝手に動く、ミリィも同様だった。
そもそも『Sonic.EXE』と呼ばれるものが形態変化すること自体当時では珍しい、マガイモノ成分によって黒く染まり腕に重みが増してずっしりとした気分となる。
「なっ……お前それ!!」
「ん……?」
呑み込んでみてから毛並みが濃くなった気がする、鏡でも貰おうと思ったが即座に変化が分かる。両腕の毛並みが濃いどころか肥大化しており青かった肌は黒ずんで頭部の先端は白、今までと全然違う姿になっている。
「ウェアホッグ……!? 嘘だろ、あいつソニックの別形態になりやがった! マガイモノ成分で!!」
「……で? 姿が変わったのはいいが、俺自身の能力はどうなっている?」
「ウェアホッグの通りになっているならスピードは落ちたがその分破壊力が向上しているはずだ! 遠慮なくぶん回してみろ!」
デンジャーポールの振り上げた腕が爪一本で受け止められるようになった、更に腕を振ってみると肘の関節が妙に柔らかい、勢いよく伸び縮みするではないか。
「これもウェアホッグの力か?」
「……マガイモノとは思えないくらいには完璧に再現してるな、今のお前なら止められる!!」
「なるほど、力が増えるのは気に入らんがこの状況でこの腕は使える!」
少し足に力を入れて飛び上がるだけで地面が抉れ、強い衝撃でデンジャーポールは地面に埋まりメイドウィン達も立っていられなくなる、通常のexeでさえ空中浮遊で維持が必要なくらいコントロールが難しいというのに加減が利かない。
exeは両腕を伸ばしてデンジャーポールを拘束し巻き付けて一気に縛る、たくっちスノーも何がしたいのか気付きメイドウィンに呼びかける。
「何してるんだお前ら! が抑え込んでるウチにデンジャーポールを助ける何か手段とか……!」
「はい、もう結構」
黒影が手を叩くと、デンジャーポールは回収されて黒影の手の中にあった。
「黒影! なんのつもりだ!」
「この試合は無効になる……ゼオノイドのと同じだ、メイドウィンじゃなくなったから、試合は成立しない、マガイモノとメイドウィンの戦い……ここは厳守してもらわないと困るからね、そちらも同じルールを通さないとフェアじゃない」
「……どういうことだ?」
「単純な話だ、お前はマガイモノじゃない……だからこの試合は成立しないんだ」
「はあ!? 難癖つけんなよ黒影! 大体そんなデータがどこにあるっていうんだよ!」
「データは今こうしてお前が作ってくれるでしょ? 俺は最初から分かってるけど」
「だからってそんな急に言うな! そんなのまだお前が言ってるだけじゃないか!」
「よせよティー……メイ、オレは試合なんてどうでもいい、それよりもデンジャーポールを何とかしたほうがいい」
「ん、じゃあ試合は終わりってことでバイバイだ、俺はもう寝る」
話を強引に切ると黒影は消え去るように姿が見えなくなり、第3試合はあっけなく終わった。
たくっちスノーもexeも試合より心配していることはデンジャーポールの安否だった、ゼオノイドや葉天文寺の事もあり明日彼の安全な姿を確認しておきたい……そう考えている。
しかしそんな期待は打ち砕かれ、翌日デンジャーポールもまたコロシアムで姿をみることはなかった、ミリィが葉天文寺同様行方を捜索しているがどこにいるかも……。
ウェアホッグ化したEXEだが、戻ろうと思えばすぐ戻ったがたくっちスノーの成分抜きでもう一回ウェアホッグになることは出来なかった。
(なんかもう飽きてきちゃったし、次の試合でさっさとたくっちスノーをメイドウィンにして終わろうかなぁ、でもどう理由つけようか……ん? なんか時空の様子がおかしいような)
最初に書いてた当時はまだ某音ゲーでexeが流行ってなかったのでSonic.exeの変化自体珍しいものでした。
今となってはこのexeもエクセラやロードXみたいな派生キャラ扱いできるので分かりやすいのですが。
もし区別付けるとするならこちらのexeは『executor』と呼称します。