時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~ 作:黒影時空
たくっちスノーはミリィが気に入っているロボアニメ作品に興味あったので設定を得るためにも仕事をしながらぶっ通して視聴していた、更に後でゲームも貸してもらう予定だ。
実はたくっちスノーも長すぎて黒影が飽きてきたことに気づいてきたので誰を選ぼうか考えないように現実逃避していたのもある、これメイドウィンになるならないの話じゃなくなってきた。
ちなみに突然告げられたexeがマガイモノかどうかだが……ミリィを通してジルトーに調べてもらったものの、確かにマガイモノとは似ているようで絶妙に違うが、全く見たことない未知の生態系をしていたという、これはこれでexeっぽいと思いたくっちスノーは受け入れて、
「あの……いつのことだったかあの会食の時、あいつが魚食べたいっていうから色んな奴が持ってきたのに1人で魚肉ソーセージ一本食って満足して帰って、ゴミが増えるだけになって……」
「アイツ知人の誕生日プレゼントに日用品送ったとも聞く……なんというかズレているな、善悪以前に喜びがバグっている」
「まあそれは要するに何そこまでマジになってんの? って向こうから言ってくるわけで、自分らとしては楽で助かるんだけど、自分で決めたこともさっさと切ろうとしてるのは飽きっぽいとかじゃなくて真面目じゃないんだよな」
黒影が計画を切り上げるのはカーレッジの性格ではなく、かつてメイドウィンワールドが存在していた頃に面倒になってすぐ新しい話に移っていたことの完璧なエミュ、カーレッジは自分から観た完璧な友達を見事に模倣しているのだ、それを相手出来るのがカーレッジほどに実面は無関心なことには気づかず。
たくっちスノーとしては、黒影が本気で取り組まないからこそ案だけ出してもらって後はこちらで勝手にやらせてもらい発展するのだから世の中わからないものだ、トップが適当な方が世界は回るのだろうか、それとも時空監理局はそこまで期待されてないのか?
「問題はそれで自分達に謀反起こされても全員なぶり殺しにできるくらい強いところだよなぁ……手がつけられん」
「それで、現実逃避してるところ悪いけど次の試合はどうする気なの?」
「リックウザを出そうと思ってる、バンガイ7とどっちにするか悩んだがスピードならexeからデータも取れている、黒影にとっては勝つことなんてどうでもいいだろうし今はデータ集めに集中したいよ、急ごしらえで特殊な使い方」
「そうか……なんか俺の見てるたくっちスノーって苦労してるところばっかで、なんかフラフラしてる俺が申し訳ないな」
「そりゃ確かに自分も急に副局長に推薦された時はラッキーと思ったよ? 時空犯罪者だったのがここに居座れるようになって……まぁなんだかんだでこの仕事楽しんでるんだけどな自分、黒影もそばにいるし」
「……気になってたけどなんであれだけ文句言ったりやりたい放題してるのに黒影の事を気に入ってるんだ?」
「そうだな……自分にも分かんないや、まぁアイツは確かに迷惑だし威厳が無いけどさ……世界救う時はちゃんとしてるし、そういう性質なのかも」
「まぁ世界を救う時以外がめちゃくちゃカスなんですけどね……」
「そりゃ言えてるわ」
なんだかんだマガイモノ3人組は時空監理局で上手くやっている、黒影を乗っ取って好きにやるつもりもないし黒影も監理局やメイドウィンにさほど興味がない。
このバランス感が時空監理局と時空を維持している、それによって犠牲になるものもいるのは事実なのでたくっちスノーは興味のない黒影に代わって遂行している。
しかし……ミリィとローレンはそれ故に監理局の核心に至っている。
「こいつ神経質だから気になること出来たらほっとけないんですよ」
「おだまり」
リックウザのアプデ内容は既に考えてある、余裕があるので更におすすめのアニメを見ながら新しいマガイモノのネタを考えようとミリィと視聴を続行するが、ミリィにはまだ気になることが一つあった。
「ずっと気になっていたんだが……なんでたくっちスノーは時空犯罪者になったの?」
「そういえばミリィは聞いてなかったか」
たくっちスノーの性格に甚だ疑問がある、ここまで真剣にいい奴になれと言われてここまで振る舞えるのに何故最悪と言われるほどの暴虐さを見せたのか……周囲の人間はたまにそう思う、思わない人はまあそういう年頃とかノリで片付けている、真相はあの時ローレンにも話した……『人間観察』、それが何故時空犯罪者に繋がるかよく分かっていない。
「……どうして、か……失礼な言い方になっちゃうけどさ、自分としてはその時時空犯罪をしているって気分じゃなかった」
「イタズラってこと?」
「それも違う、悪いことをしているというよりは……正しいものを見たかったんだ、そいつらの核心となるものを生で味わいたかった」
生まれたばかりのたくっちスノーが覚えているのは監理局の最奥部で黒影と出会ったことが最初である、しかしそれ以外にもおぼろげだが記憶がある、真っ暗で狭い部屋に閉じ込められていたような気がする、その中には無数の本があった、アニメのビデオやDVDにゲームハードまで山ほどあった、たくっちスノーはそれを観ていたというよりは観せられていた、結果的にそれが数多くの能力コピーに繋がったのだが、その時ですら『真似』に過ぎなかった。
黒影に対しての関心もなく、自分は何をするべきか知りたかったから動いていた。
「自分は自我を持って時空に出てあのテレビの中にあったものが現実にも存在する事を理解していた、でも違っていた……なんて言ったらいいんだろうな、自分はテレビに映る彼奴等と違って何のために生まれて存在しているのか分からなかった、だから知りたかった……そのために、手段を選ばなかった」
「……アニメ見ててそんなこと思う?」
「さあな……自分もアニメ見た時は自然とそういう風に思ってたんだよ、使命感っていうの? ……監理局で身近に黒影のあの有様見てたらそうでもないんだなって感じたけど」
たくっちスノーの中にある記憶の底から生まれた疑問、それが最悪の時空犯罪者を誕生させてしまったのだ。
しかもたくっちスノーは副局長になってからその部屋を探したものの結局見つからなかった為、真相は分からないままである。
あの体験は一体なんだったのか分からない
「……今思うとアレは何だったんだろうなぁ、生まれた場所なのは確かなんだけど」
「…………」
「ティー、そろそろ試合開始時間じゃないのか」
「ああ、今回は自分ひとりで行く……EXEとミリィはいなくなったメイドウィンを探してくれ、特にデンジャーポールは……」
「……言われなくても当然だ、行くぞミリィ」
「え? あっ、うん」
「あの、俺は何をすれば?」
「ローレンはまかない飯作っといて」
「かしこまりました」
たくっちスノー達が行ったあと、ローレンは言われた通りまかない飯としてさっぱりした素麺でも作ろうと準備をしている中、2人きりになり改めて口を開く、ローレンとミリィは監理局の真実を知っている、黒影もたくっちスノーもいないからこそミーム汚染が溶けたかのように正しいものが見えてきた。
いや、あるいはローレンがただの人間だったからこそもある。
「ローレンさん、本当に間違いないんですか?」
「時々話が食い違うこともあるけど、今回留守を任されて確信が持てました……さすがにおかしすぎる、人の気配がないどころじゃない」
「時空監理局は……実際は俺達三人と黒影局長以外に職員と呼べるものは存在しません!!」
ということでコロシアムに来て早々カタパルトを操作してリックウザを発進、まだ4戦目なのにカタパルトの調子が悪いのかガタついた嫌な音がするものの、レックウザの身体に縫い付けられたティガレックスの両足が上手く姿勢を直す、速さを特化したマガイモノに大事なのはバランス感とジルトーに説き伏せられてよかった。
「やっぱ監理局のゴミ箱ともいえる魔のプライベートルームから引っ張り出してきたのがマズかったか……おい黒影! 次のメイドウィンは誰だー? ……って、嘘だろコイツまだ寝てやがる!?」
黒影はいつもより30分長く寝ており、無理やり起こすと半殺しにされるのでリックウザと戯れていた、この様子は犬みたいな奴だった。
しかしこのバトルコロシアムも人気が減った、連続でメイドウィンがとんでもないことになる上に参加するメリットもないのでどんどん観客席のメイドウィンは訪れなくなっている、確かにこんなもの鑑賞するよりは自分の世界の様子を確認したほうが有意義だろう。
「強制参加じゃなくてよかったなー……あいつらも、あ、黒影起きた、散歩はまた今度なリックウザ」
仮にもレックウザを元にしたマガイモノがこんな扱いである、一部の竜の民とかが憤怒しそうな勢いだが黒影は起きてすぐに周囲の少なさに気付いて不思議そうに眺める。
「なんでこんなメイドウィンいなくなったの?」
「そりゃかれこれ4日間も自分達の茶番に付き合ってられるほど神様って暇じゃないだろうし……ってか黒影の魔導界こそ大丈夫なのか!? ここんところお前寝てるとこしか見てないぞ!? 監理局にも帰ってきてないじゃないか!」
「そりゃそこらの世界と魔導界は違うもんめちゃくちゃ発展してるし、はっきり言って俺いらなくない? ってぐらいやっていけるんだよ、結構優れてるよ旅行連れて行こうか?」
「アンタ自身がいらなくても世界を整えるエネルギーとして必要なのメイドウィンは! ……まあいいや対戦相手は?」
「もうそこのマガイモノのそばにいるよ」
「なっ!?」
気がつくと赤色の獣人のようなメイドウィンがリックウザの背後に居た、たくっちスノーが指示を出し下がらせるがすぐに背後を取られてしまう、見えない、スピード系であることはミリィから聞いていたが予想以上に速い。
「こいつは……」
「これが最速のマガイモノか……オレの名はフレアブースト、モンスター☆レーサーのメイドウィンで灼熱の神速『フレア』を作り出した存在ともいえる」
「フレアブーストはフレアを筆頭に自分の世界で百を超える高スピードモンスターを多数誕生させた逸材なんだ」
「中でも俺の名を冠するアイツは逸材……リアルワールドのパッケージにも無理を言って御三家と共に載せてもらっている」
モンスター☆レーサーとはリアルワールドでも人気ジャンルのモンスター収集ゲーム、そこに複数のモンスターのレース要素を合わせた物で言うならばモンスターの競走を楽しむ物である。
フレアは言うならば『伝説の〇〇』に該当するお気に入りということだ、現にフレアブーストもフレアを立たせたようなそっくりな見た目をしている。
「あれ? モンスターレーサーってなんか似たようなゲームなかったけ……?」
「ナンバリング的には前作はあるが基本的に繋がりはないし身内とかでもない、お前が遊んでるドラゴンクエストの1とか3も、厳密にはそれぞれ別のメイドウィンが担当しているぞ」
「えっ!? あれって時系列的には同じ世界なのにか!?」
「はじまりの書が別だからね〜、そーら早く終わるからって時間稼ぎはダメ! 試合試合!」
黒影がその場でゴングを鳴らし試合再開、フレアブーストは先ほどより速くなり残像が残るほど姿が追えなくなる。
「無駄話をした分遅れを取る、悪いが0.67秒の攻撃で終わらせる」
「リックウザ! 10倍破壊光線だ!」
リックウザは口から通常ポケモンの100倍規模の破壊光線が放たれて周囲を消し飛ばそうとするが、フレアブーストは旋回するように回避し炎の翼を広げてリックウザを掴み上げる。
「見誤ったな……破壊光線は威力が高いがその分反動がある、その勢いだと画竜点睛も使用できないようだな」
「げっ……なんかこいつ手強いぞ!」
「オレはモンスター収集系ゲームのメイドウィンとして一通りのそういった作品は目を通してある、無論ポケモンも全作100時間は遊んでいる……抜かりはない!」
「こ、コイツこの見た目でゲームマニアかよ!?」
予想外のゲーム知識にフレアブーストは戦力差を広げていき、得意の速さでリックウザを翻弄していく、スピード勝負ならまだしもこんなところで不利になると思わなかったたくっちスノーはアプデして別の技を与えようとするが、すぐに攻略されてしまうだろう。
ここに来て知恵で組まれるとは思わなかった、マガイモノの共通した弱点はメタ知識だが普通知ってるわけないので弱点になるかも怪しいはずだったのだが。
「あ、そうだフレアブースト! せっかく両方とも速いんだからさ、もっとこう勝負内容をレースっぽくしてみない?」
「は? レース? 急になんだよ」
黒影が唐突にゲームルールを変更することは今に始まったことではない、ババ抜きで遊んぶにしても黒影が関わるだけで20個もローカルルールが増えている、大富豪なんて黒影オリジナルルールだけで本を作れる。
黒影はメイドウィン達がいなくなったのを試合内容が代わり映えしない事の飽きと判断したようだ。
「まあいいか……普通のガチンコマッチよりは勝てそうな可能性あるし、よし、レース用にアプデするから待ってくれる?」
「いいだろう、フィールドは草原風でシンクロ率を固定しておこう、言っておくが俺はフレアにも負けないくらいレースが得意だ」
競走も想定していたのでたくっちスノーはすぐにレース用の設定にアップデート、フレアブーストも意外と乗り気だった。
黒影は指を鳴らすだけでコロシアムの仕様が変わり、マリオカートみたいなド派手なコースが敷かれて観客席や装飾まで雰囲気がガラッと変わる。
「ここに俺のメイドウィンの力で少し細工を加えさせてもらう」
そこにフレアブーストが手を加えると、道の途中が草原や雪に変わり複数のエリアに分かれる……彼の世界にもあるモンスターレースでもよくある地帯変化だ、高度なメイドウィンは戦闘の際にはメイドウィンブラストファーストを利用して自分に有利な空間を作ることが出来るとか。
「オレの得意なエリアは少なめにしてある、これでフェアだろう」
「そんなご気遣いは結構! リックウザは直線こそ正義!」
リックウザとフレアブーストは互いの陣地に立ち、たくっちスノーが指を変化して引き金を引くと一斉にスタートして即座に持ち場につく、しかしコロシアムを見た目だけレース場にしたせいであまりにも狭く、彼らでは空砲が鳴り終えるより先に3周もしてしまう、これではどっちが速いのか判断がつかないし黒影やたくっちスノーはスーパースローの類は持ち合わせていない。
「これじゃあ勝負になんないなもう少し広くできないのかな? ソニックのグリーンヒルゾーンくらい」
「あのさぁ一応ここ時空不動産会社から借りてきたメイドウィン不在の世界なんだよ、そんな贅沢言ってられないわけ! そのレンタルした世界を指一つで変化させたり酒びたりにしたのはどこのどいつだって話だけど……」
時空にはメイドウィンじゃない人でも好きな世界を買うことが出来る、ただしメイドウィンがいない為いつでも残しておけるわけでもないレンタル式、基本的にメイドウィン達が集まる時は身バレ防止のためにこのレンタル世界を使っているのだが……最近は黒影が色々弄るせいか妙に質が悪い。
「よし、じゃあルールを変更しよう……ちょっとまってて」
かくして黒影の手によってもう一回ルールが代わり、再度レースの準備が始まるが……
「位置について!!」
「あ──! ちょっと待って!!」
スタートの途中で黒影がルール変更し再開しリックウザもフレアブーストも頭から滑り込む。
「じゃあもう一回!」
「ごめんやっぱあれなかった事にして!!」
そして20回目のスタート、さあスタートしようというところで……。
「あー待って!」
「いい加減にしろ! 何回流れ止めて繰り返してんだ! 発表会の練習じゃねえんだぞ!」
「でもこうした方が面白くなるんだって!」
「もうレースの原型とどめてねえ! 仕様変更しすぎなんだよ! 過労死間近のプログラマーみたいな気分になってきたよ! フレアブーストもリックウザも全然走れてないからね!?」
「そんなにルールを思いつくなら一旦練り直せ、また休憩を挟めばいいだろ」
「それもそうだね! 1時間でルール決めてくるよ!」
ということで黒影のせいもあり、また休憩を挟むことにした。
フレアブーストはその場に座り込んで見た事もない携帯機でまた新しいモンスター収集ゲームを始めている、オタク的な側面も
「それ面白いの?」
「『ロルプレバスターズ』、架空のRPGのモンスターや勇者を集めて戦わせる画期的なゲームだ、とはいっても時空跨げば該当する世界はある、※カルドアンシェル現象というやつだな」
※同名の実在するゲームから、架空作品が実際には時空のどこかに本当の作品として存在することからメイドウィン達の業界で『この世に存在しないものはない』という意味合いを表す。
「へー、世の中色んなゲームあるんだな……この試合終わったら買いに行こう、ミリィの分も必要だな」
「それなら今月号の『モンスターマガジン』も買っておけば限定モンスターが手に入るコードが付いてくる」
フレアブーストに販促されてゲームのネタが出来た、アプデしながら普通にゲームで遊んだりしてこれでまたマガイモノを作れるといい気分でいるとジルトーから電話がかかってくる、何かあったときのために電話番号は貰っていたし、exeに欲しいと言われたので試しにマガイモノ用修復連絡端末『マガフォン』を作ってみたのだ、お腹にしまっていたものを取り出して応対する。
「あーもしもしマガフォンの電波チェック中」
「おおなんじゃお主携帯作ったのか」
「何があっても壊れない携帯をね、ひとまず通話は成功か……おっと、用件はなんだ?」
「いや何、ミリィの様子でも聞こうと思ってな、今どこじゃ?」
「ミリィはここにいないけど大きい仕事を任せてある、博士の教育がよかったのか? ちょっとガキっぽい趣味してるが自分より副局長に向いてる気がするよ、すごいなあいつ」
「ミリィは人の為になりたいとひたすら頑張ってきた奴じゃからな……自分は誰かを助ける責任があるとな、お前さんにもどうかミリィの事を頼む、限界が来るかもしれんからのう」
「当然よ、あんな逸材壊すわけにはいかないって……あ、そうそう自分からも愚痴っていい? 黒影がさぁ……」
たくっちスノーはこっそり第4試合までの黒影のあれこれをジルトーに愚痴り、しっかりと聞き入れてくれた。
その上で相談に乗ったり、ついでにフレアブーストのコツやレースのアドバイスまで話してくれる。
「あやつめ相変わらずじゃな……それにレースの件は昔を思い出す」
「昔?」
「ワシがまだ悪の天才科学者を辞めたばかり、つまり相当昔のこと……とある時期に黒影がレース勝負を走り屋に持ちかけられてのう、奴はルールを無理矢理書き換えて勝ったんじゃ」
「えー? 黒影は勝負されたほうだろ? いいのか? そんな勝ち方して」
「無論対戦相手は怒り狂った、じゃが黒影はその頃から圧倒的なパワーを持っていたからすぐぶっ壊した、黒影の中では黒影の思想がルールなんじゃ」
「……黒影にもそんな堂々とめちゃくちゃしてた時期があったんだな、でもそんなことやってたら次第に馬鹿らしくなって誰も黒影と勝負しなくなるんじゃないのか?」
「そう思うじゃろう、しかし暇となれば黒影となれば好き勝手に無理を通す……今の奴もそうじゃろ」
「あー……確かにそうかも、なんか黒影の面白い話あったらまた聞かせてくれよ、そろそろリックウザの調整に入るわ」
「全部ろくでもない話じゃそ」
フレアブーストとたくっちスノーは同じことを考えていた、黒影のことだからどうせレースで戦っても勝負にはならない、別の手を考える必要があるだろう。
(ここから普通にレースしたところでたかだかコンマ0.何秒の競い合い……タイムアタックは嫌いではないがどうにも盛り上がらない、俺が見たいのは視認できた上でテクニックを競うモンスターレースだ)
(ゴールしたところが分かんないんだよな〜あいつら……せめてゴール……あっいい事思いついた)
(どうせゴールしても埒が明かない……従来通り先にリックウザを倒してしまった方が早い……しかし相手は不死身な上にあのレックウザをモデルにしている、攻撃特攻共に高い……あの脚は確か轟竜ティガレックス、つまり弱点は氷あるいは雷、氷上のレースモンスターで強い奴は……)
(ゴールを消してしまえば少なくとも勝つことも負けることも出来ないからリックウザはこれ以上負けることはない! 問題はどうやってゴールを消失させるかだな……空砲は自分の役目だしそれをトリガーにゴールを消す? でも黒影にバレるよなぁ……どうやってゴールをなかったことにしよう)
各々がこれまでの流れでもうレースなんて無意味と判断しており、事実ここまでの茶番で更にメイドウィンが出ていってる、卑怯かもしれないが各自思いついた方法でさっさと倒すしか無い。
互いにレース以外の手段で決着をつけようとしていた。
フレアブーストには悪いが、真剣にやり合うならまた別の機会にレース勝負を申し込めばいいだけだ。
「ねえイティハーサ〜、あいつら全員ワガママなんだって、お前が時空の動かし方ちゃんとしてないんじゃないの?」
「元はすべて貴様が撒いた種ではないか」
「俺のための空間でしょ!? しかもさ、なんか滅びそうになってるんだっね、もうたくっちスノーはダメだよ使えない!」
黒影の方はルールを考えながら呟いていた、時空監理局局長となりたくっちスノーとつるんでいる今でも力を分けているイティハーサとの交流は続いており、一人になれる時は全ての問題をイティハーサに押し付けていた、話できるだけの煙のような存在に対して愚痴を一方的に押し付けてるだけだが。
「うーん、最後くらいは良い感じの試合で締めたほうがいいのかなぁ? シナリオ関係ないから悩むんだよな」
黒影は退屈を持て余してさっさとゼロ・ラグナロクを終わらせようと楽でそれでいて面白いネタを考えようとする。
だが黒影は予想だにしない、この退屈を一気に取っ払うような衝撃的で革新的、黒影の物語をまた一つ大きく変化させるようなとびっきりの出来事がこの後すぐ起きるということを……しかし今はこの試合をなんとかせねば。
「おっと試合再開の時間だ!」
「ねっパパ……もうすぐ会えるよね、だって私達が生まれるのは運命だもの、早くたくっちスノーに会いたいなぁ……ほら、もうしばらくしたら『アレ』も出てくるんだし! そうだよね、にゃんたぬき!」
イティハーサの魂の中で、二つの魂が今か今かと待ちわびているのだった……。
休憩が終わりようやく試合再開、黒影は約束したら過程はともかく守るタイプなので完璧にルールを作り直したがもうすでにレースの面影はない。
道の間にアスレチックは多いしアイテムもあるしお題もある、歌を歌ったり弾け飛んだり余計なことをひたすらやらされる、たくっちスノーは見ただけでこれ真面目なレースにならないなと悟り、真面目に勝つのが馬鹿らしくなってくる。
黒影との真剣勝負ならともかく少しでも遊びが入るとこうなる、ジルトーが言っていたことがなんとなく分かる気がしてきた、いわゆるこりゃあ『マリオカート』でいいですねというやつだ、面白いっちゃ面白いけど求めてる勝負のやり方ではない。
たくっちスノーはゴールを壊し、フレアブーストはリックウザを倒すつもりなので関係ないが……たくっちスノーはどうやって黒影を欺いてゴールを倒すか思いついてなかったが……更に閃いたことがある。
(自分の成分……あの話の通りなら多分使える)
「はい! じゃあ泣いても笑ってもこれが最後! これでゴールしたらさっさと終わりってことで!」
「お前のせいやろがい! つーかお前もう飽きてきてない!? 一応自分とお前の企画でもあるんだぞ!?」
「まあまあ! 本当にこのレースでさっさと終わらせて結果報告するから!」
「10回戦うのを成立させるために自分がどんな苦労したと思ってな……!!」
「もういい、さっさと終わらせて持ち場に戻るぞ」
「ま、まぁメイドウィンにも迷惑かけているからな……」
(フレアブーストは恐らくリックウザを直接狙ってくる……元々不死身で高火力系でもあるからそうそうやられたりはしないと思うが……フレアブーストが名前に反して氷っぽいこと出来たらまずいぞ……いや待て!? 確かレックウザって岩タイプにも弱かったよな!?)
(たくっちスノーの考えることだ、勝ち負けとは別の三番目の選択肢引き分けを狙うだろう……問題はどうやって引き分けを狙うか、安易にゴールを壊すほど史上最悪の時空犯罪者は愚かじゃない、更に奥の手を考えているはずだ……)
そしてたくっちスノーもフレアブーストもお互いどんな手を使ってくるかはなんとなく察しが付いていた。
その上で奥の手を見せてくるんじゃないかと互いに牽制する、たくっちスノーが空砲を出す前から戦いは始まっているのだ、お互い互角のスピードだからこそ正当手段は通用しない。
「何してるのたくっちスノー! 早く引き金を引けよ」
「なんかのネコ型ロボットみたいなこと言うな! この際だやってやる!! リックウザ避けろ〜〜ッ!!」
「イェアアアア」
「こいつこんな掛け声出すの!?」
変な掛け声と共に空に飛び上がるリックウザ、一応こいつ大部分がひこうタイプのレックウザそのまんまなので飛べるっちゃ飛べるのだ。
浮き上がってフレアブーストの出したモンスターの凍る炎を回避し、そのまま浮き上がるのを確認して指からビームを出してゴールを破壊しようとするが、黒影の頭から伸びたアホ毛によって弾かれる。
「おっと痛いなぁ」
「俺がこういう事想定してないと思った? 小細工なんてよくないね……せっかく決めたんだから従ってくれないと」
黒影のアホ毛は結構伸びるし思ったより鋭利、シュッと奥から無限に伸びてたくっちスノーを輪切りにすることも簡単にできてしまう、そこからギュッと抑えるだけであっという間に再生するたくっちスノーも動じない、あの毛にバラバラにされることも慣れたものだがコロシアム全体にたくっちスノーだったものが飛び散り地面に広がっていく、真っ黒な汚れがコース全体に染み付いて……!
「まさかゴールを狙うなんてね……バレないと思わなかった?」
「……思ったよ! 思ったから別の手を考えたんだ、こうしてお前がペナルティで攻撃してくれることを想定してね……!」
ゼロ・ラグナロク開始前まで時を遡る、たくっちスノーが自身の能力についてジルトーと共に研究していた時のこと、たくっちスノーは自身の特異能力『マガイモノチェンジ』の説明をしていた。
「お前のマガイモノチェンジは好きな存在に変身出来るんじゃな?」
「ああ、個人的制約は5分……といってもクールタイムが無いから実質無限、劣化版にはなるが基本なんてもあり……両手両足とか特定の部位だけ変化させることも出来る、もっとやれば爪だけとか鼻だけとか細かく変身出来る」
「ふぅむ……なるほど、全物語の成分が込められてるだけはある」
ジルトーはたくっちスノーを象徴するマガイモノチェンジの研究をしていた、実はミリィは本物と違い変身能力を持っていない、ミリィも勉強しているが兆しが見えないため何かヒントが欲しかったのだ、たくっちスノー本人の話を聞きながらデータを取り結論つける。
「正確にはそれは変身ではない、成分を自身と異なる遺伝子に変換させそれを表面に出す……マガイモノの取り込まない性質を利用して皮を作り出しているんじゃ」
「爬虫類や着ぐるみみたいなもんか……つまり自分自身が変化してるんじゃなくて、ガワの部分がキャラクターを再現してると?」
「うむ、あくまで理論上はお主の身体から離れてもマガイモノ成分の変身機能は使える……どう使うかはたくっちスノー次第じゃ」
「めちゃくちゃ有用だよ、だってこの体のおかげで自分は何の素材も必要とせずどんなマガイモノでも作ることができる」
「確かに無限に研究できる、ではその技術……もっといい使い道があるぞ」
「マジ? 教えてくれよ」
回想終わり、たくっちスノーはジルトーに言われる前から自身から離れた成分の使い道にアテはあったが使えるかどうかは賭けだった。
だがこの勝負で終わってしまいそうになるなら結果だけでも残しておかないと話にならない、ボルコンV、アウララ、リックウザ、そしてEXEも……試合の中でマガイモノの有益なデータを残していたのだ、自分も進化できなければ……! ジルトーにヒントは教えてもらった、後は実験して結果を出すのみ!
「ありがとよ、成分出してくれて……一世一代の大博打! とくと見ろ! 自分だって進化していることを! マガイモノチェンジ!」
コロシアムに付いた成分が変化して色合いが変わっていく、床に水気は無くなり岩が生えて形が変化していき……。
「これは……!」
「そうだ! 五条悟との戦いを見て見て思いついたんだ! 自分自身ではなく周囲一帯に成分を撒くことで世界其の物を変質させる……領域展開の真似事!」
マガイモノ成分は掛け声に合わせて一切に変化、まるで迷路のように曲がりくねって行く手を阻む。
「この世界は……!」
「
世界が変化して出来上がったのは複雑な円柱の迷路、どんなに速くても減速せざるを得ない難攻不落の地へ変わり果ててしまった、たくっちスノーの新たな力、それは『呪術廻戦』の領域展開を軸に自身の目に見える周囲一帯を作り替えて擬似的に他世界の性質を再現させることだった。
「これで少しは見られる競争になるんじゃないの?」
「なるほど……上には蓋がある、リックウザに飛ばせて楽をさせるわけでもないと」
「そこはフェアにやらないとね、試合なんだから」
「マガイモノ成分で出来ているなら破壊も不可だろう、迷路をくぐった方が制する……面白い! 黒影が考えた忘年会の余興よりは楽しめる!」
フレアブーストはたくっちスノーの巨大迷路をくぐり抜けて、それをリックウザが追いかける。
実質迷路脱出勝負が始まろうとしていた、スピードをなるべく落とさず直角に迷路を抜けて効率化を図りながら時に敵を蹴落としていく。
「へぇ……たくっちスノー、面白い物見せてくれるね、世界其の物を書き換えたのか……」
「どうよ黒影! 自分は少しは黒影を越えられたんじゃないのか!」
「……俺を越える? 冗談抜かすなよ、俺のやられ役のくせにね」
黒影から冗談が抜けた、キャラクターに自分以上と言われるだけでも屈辱なのに永遠のヤラレ役であるマガイモノにそんな事を言われたくない。
こんな奴にビクビクして時空の安全を守るなんて癪に障る、最後に自分がヒーローになるお話だ、お前が善なんてありえないんだ。
「お前は調子に乗りすぎだ、ちょっと他より一瞬でも優れたところで俺にはどんな奴でも一勝追い越せない、何故なら俺はこの時空で永遠に誰にでも勝てる、時空の主人公! 絶対的に全てを作り赦される立場にある
黒影のプライドが脳を活性化させた、イティハーサから与えられた力がみなぎり黒影は無意識に力を発動させ、両腕から玉を作ったかと思えば花火のように広がり地球儀のように世界が広がる、オブリビオンとして彼は対に『幻の帝』と同じ領域に立ち、たくっちスノーも何をしたのか即座に察しが付く。
「咄嗟に世界創造って黒影もめちゃくちゃな……ん!?」
たくっちスノーは黒影が作った世界の異質さに気がつく、当然ながら作りたての世界にはメイドウィンがいないためすぐ消えてしまったがたくっちスノーの目には鮮明に残っていた。
「おい黒影!! 今の世界……」
「へぇ分かるんだ、なら理解できるだろ? たとえ冗談でも俺を越えるなんてミジンコ風情がティラノサウルスに勝つよりありえないって!」
ジルトーはこんな事を言っていた、黒影という男は上から目線だが自分にとって有益なら他人にとってもそういう気持ちになると人助けをしていたが、その分プライドが高い……簡潔に言うと自分に出来ることは他のやつには出来ないと思いたいと。
自分が超えられそうになると強引に壊す、それでも上手くいかなかったら……進化しようとすると、絶対に自分より格上どころか同等を生みたくないと。
それがイティハーサが能力を少しずつ添えつけていたことは全員知らないが。
これにはメイドウィン達もざわめいてしまう。
「たくっちスノー! 黒影は何をしたんだ! ただの世界創造ではないんだな!?」
「……その通りだ、ただ世界を創ったんじゃない、一瞬だが見えた! マリオとソニックの設定が複合してるのが……二つの世界を融合させて全く新しい世界を作り出した……世界規模のマガイモノだと!!?」
黒影がマガイモノを作れることにも驚いたが、世界を組み合わせて新しい世界を作るなんてスケールが大きすぎて試したこともない、しかも完成度が高い……全く別の要素に変わり果てている。
こんなもの相手では世界を作り変える自分の技術なんてまるでカスである、こんなものを軽はずみに使えば時空は大パニックになるだろう。
「お前、そんな事できたのか!」
「いや、試したのは今日が初めてだ……感謝するよ、俺こんな事出来るんだ、嬉しい……もっと物語の幅が広がるぞ、ということでもう一回! 今度は鬼灯の冷徹とLobotomyCorporationを融合!! 百鬼夜行株式会社!!」
黒影は気分で世界を作り上げる、これはイティハーサの真の能力……第六猟兵に至る猟兵達に見せた既存の力を組み合わせて新しい世界を作り出す骸の海の力、カーレッジとはじまりの書によって何千何万と世界が増えたことによってそのバリエーションは無限大、イティハーサが全エネルギーを黒影に捧げているためメイドウィンが居なけれは維持出来ないが……攻撃には充分だった、まるで地獄のような名状しがたい世界がたくっちスノーの領域展開を一瞬で粉微塵に破壊する。
そしてそれは、黒影を利用してイティハーサが更に強くなったことの証明だった。
「くっ……! まだ練度が甘かったか……! だが自分はこの程度で諦めないぞ!」
「熟練とかそういうレベルじゃないんだよたくっちスノー、俺には絶対に勝てない、いい奴になったところで一生ヤラレ役からは逃れられない! この物語の展開を、俺のお話を受け入れるんだ!!」
成分ごと吹き飛び、創った世界は消失してしまうが成分は一気に宙を舞い黒影の手中に収まる、いつもなら握り潰しているところだが、黒影にもちょっと試したいことがあった。
人体にマガイモノ成分を詰めて変質させる実験……前に魔トリョーシカが咄嗟に発現して以降にも何人か試してみたが成分に耐えきれず溶けて死亡してしまった、その他設定を構築する成分が強いと肉体の設定も食い尽くされて存在を維持できなくなる理屈だ。
だが……これが同じ不死身であるメイドウィンならば?
黒影は興味本位で溜まっていたマガイモノ成分を矢に変えて正確にフレアブーストに衝突させる。
「うぐっ!?」
「フレアブースト!?」
フレアブーストは声にならない悲鳴と共にうずくまる、身体中がボコボコと歪に変化したり新しい腕が生えては溶けるを繰り返し、最終的に改造生物のように首が伸びた巨大な怪物へと変化していく。
「メイドウィンとマガイモノのハイブリッド……名付けるなら『マガイジン』の誕生だ!!」
「びびびびびびびびび!!!」
「フレアブースト!!」
マガイジンになってしまったフレアブーストは意思疎通も出来るか怪しい生命体に成り果てている、エンバンメイズとモンスターレーサーという性質が全く異なる世界の設定を同時に受けているので適応するために肉体が大きく変化しようとしているのだ。
その姿は本当に改造生物にしか見えない。
「さて、どれだけ出来るのか見せてもらうよ!」
理性を失ったフレアブーストはタテガミからダーツの矢を作り出し、辺り一帯に投げ始める。
たくっちスノーはなんとかそれを切り捨ててフレアブーストの方を見るが目は複数に増えて話が通じるように見えなかったので一旦リックウザを避難させるために探すが見つからない。
「まさか取り込まれて……!? あっいた! リックウザ!」
フレアブーストが危険な状態なのは確かである、デンジャーポールのように救い出すためにも今はリックウザを助けようと手を伸ばすが黒影に払い除けられる。
「ダメだよたくっちスノー、君でもこれは知っているはず……選手を直接助けるのはルール違反だよ」
「ルール違反だぁ……? 元はと言えばお前のせいだ!! 自分は好き勝手にルールどころか選手まで作り変えた癖に都合が悪くなったらルール振りかざすな!! そうやってワガママ通せるのは僕と二人きりの時だけだ!! 僕以外に迷惑をかけず、僕以外の奴に手を出すなよ!!」
「……ワガママ? 誓うね! たくっちスノー達がワガママなのさ! せっかくだからこの試合で分からせてあげるよ」
黒影の投げた包丁がマガイジンのダーツも突き抜けて壁に突き刺さり、そのままワープして壁ドンする。
「ここでは俺のやり方、俺の決めておいたストーリー通りに生きてくれないと困るんだよ」
「…………じゃ、お前にアレなんとか出来るのかよ」
「出来るよ、せっかく創ったマガイジンを無駄にしたくないし、お前がやるよりずっと上手くいく、あっこれは助けるんじゃなくて全員倒すからルール違反にはならないよ」
黒影は意気揚々と準備に乗り出して包丁を引っこ抜きフレアブーストを仕留めようとするが、たくっちスノーはなんとなく嫌な予感がした。
このまま任せたらフレアブーストも彼奴等と一緒にいなくなりそうな……そんな風に思えてきた。
黒影は恐らくこのまま試合を続行させる気だろう、以前までと比べて新しい発展にやる気が湧いてきたように感じる、もうたくっちスノーは勝ち負けに拘っている場合じゃない、自分一人では解決できないと判断してマガフォンを綺麗に割って分裂させて二つに増やし、ミリィとジルトーの両方に電話する。
「あーもしもし! 異常事態だからこっちからかけた!」
「ワシも確認したところだ! マガイジン……また妙なものを作りおって、ミリィも聞こえるか!?」
「どうするんだ、これじゃ試合どころじゃないだろ!?」
「そうさ、だから第4の選択肢……両者不在による試合続行不可を狙う! 手伝ってくれ!」
リックウザとフレアブーストの両方が消えてしまえば何をやっても試合が出来なくなる、その上でフレアブーストを治療するためにジルトーとミリィ両方の知恵を借りようとしているのだが……。
メイドウィンでもありマガイモノでもあるマガイジンは調べてみないことには分からない。
「博士、マガイモノ成分を取り除くことって出来るの!?」
「うーむミリィよ……科学的に直す方法はまだ見つかっとらん、現状は手術で無理矢理バラバラにしてでも取り除くしかない!」
「この際フレアブーストを助けられるならなんでもいい! 自分一人じゃ無理だ、exeにも連絡入れといてくれ!!」
「任せろ!」
ジルトーの掛け声とともに時空の渦が生まれて中から超巨大なバズーカ砲みたいな物が転送される、たくっちスノーが持ち上げてみるとなんとか持てるくらいであった。
「ミリィ! お前は一旦研究所に戻るんじゃ」
「はい!」
「おい爺さん! これなんだよ!」
「別次元転移砲の試作機じゃ! こいつを打ち込むと強制転移! 後はワシがなんとかするというわけじゃ!」
「リックウザは自分でなんとかしろってことね! やってやるよ!」
たくっちスノーは腹部を変身させて肥大化させ、体内に仕込むことで転移砲を隠し、リックウザを助けるために左足を切り落とす。
黒影を探してみるが姿がいないが今しかチャンスはない。
フレアブーストはリックウザを観客席の方を見てメイドウィンさえも襲おうとしていた、お腹周りで標準を合わせ若干のチャージを挟み、切り落とした左足を投げて隙を作りながら転移砲を発射。
「リックウザ! 飛べ!!」
リックウザは声を聞いて犬の習性のように左足の方に突っ込み咥えようとして逆に包みこまれる、フレアブーストも左足を見て追いかけて掴もうとするが、左足のつま先から転移砲のビームが飛び出す、部位を弄ればたくっちスノーは頭から入れたものを肩から出したりもできる、これで口から刀を引き抜いたり宴会芸も出来るが結果的に役に立った。
「頼む! ちゃんと機能してくれ……!」
転移砲で貫かれたフレアブーストは時空の渦が体内から作られて消失、リックウザが背中から飛び出して逃がす。
マガイジンの騒ぎで殆どメイドウィンもいなかったため、バレずに対処することが出来た。
「…………な、なんとかなった、それにしてもマガイジンってなんなんだ」
黒影に会いたくないのでたくっちスノーも急いでコロシアムから逃げ出して監理局にも戻りにくいのでネカフェでexe達と合流しようとするが……。
「何? そうか……メイドウィンをマガイモノ化……いや、それ以外にもマガイモノの世界とか……状態が多すぎるな」
「黒影がなんでもありなのは今に始まったことじゃないけど、問題はアイツがマガイジンなんてものを作って何を企んでいるのか、だけど……あ、やべ、黒影から電話かかってきうげええっ!!!」
「ティー!? どうしたティー、通信が途切れていくぞ!」
案の定黒影からは逃れられず電話の途中だが受話器から腕が生えてきて引きずり出されて、あっという間に黒影が待機しているまで戻ってしまった。
この日は珍しく次の試合まで眠らずコーヒーまで飲んでアピールしていた。
「君が手を回して試合中止にしたんだよね?」
「アンタのお株は奪っちまったがリックウザがかわいそうなんでな、MIXやAnkerシステムは使ってないが可愛がってるんだよ」
「いやいやいいよ、俺の能力が覚醒したりマガイジンの研究成果が出来ただけでもお釣りが来る、何……ちょっと話さない?」
黒影が居たところはその場で作ったようなコロシアムを一望できる景色のいい場所、恐らくこの話をするためだけに作り出したことから相当機嫌がいいことがたくっちスノーは分かる。
「それで、アレは一体なんだ? 多分最初から使えたわけざゃないよな?」
「そう、遂に俺は組み合わせることで全くオリジナルのはじまりの書を作れるようになったんだ、これで俺の時空は安泰! また一歩平和に近づいたねえ! マガイジンはこれから先革新的なストーリーを生み出す、フレアブーストはもう少ししたら使いこなせるはずだよ」
大真面目にこんな事を語る、本当にあれから変だ。
未来から来たたくっちスノーの発言によって時空が滅ぶと聞いてから黒影は自分を目立たせること、つまり守る事に必死だ。
その上で自分の役割を果たそうとしている上に自分好みの空間も作ろうとしてるんだからよくわからない。
時空がそんなに大事らしい、壊れてもすぐに直せそうなものだと思っているが。
「……なぁ、メイドウィンにする話だけどさ、まさか自分をマガイジンにする気?」
「おお? たくっちスノーをマガイジンに……面白そうじゃん!!」
「あークソ、言わなきゃよかった」
たくっちスノーは自分をメイドウィンにするなんてマガイジンを楽に作れるからと思っていたが違うことにショックする、本当に何の気まぐれでメイドウィンにする気なのだろうか。
「で、用件っていうのは見せたいものがあるわけよ」
「はあ……何?」
黒影はたくっちスノーの前ででっかいプレゼント箱を見せる、トムとジェリーかよってくらいデカすぎるがまあ受け取って悪くないものなので受け取ることにした。
「マガイジンを通してまた研究してみたらなんか凄いの作れちゃったんだ」
「作れたって何を?」
「貴方に近い存在よ」
「うおっ!? 中に入ってんの生き物かよ!?」
プレゼントから声がしたのでドクロ丸で斬ってみる、中には入っていたのは鶏の着ぐるみを着た女の子……? だが同じ、自分と同じものを感じる、初対面のはずなのにまるで生き別れの兄妹と再会したような感覚、黒影は運命に従ってこの子を作ったのだ。
更に直ぐ側にはタヌキのようなネコのようなよく分からないものをペットに従えていた。
「黒影! まさかこいつは……マガイモノ……なのか……?」
「ううん違う、全く新しい生命体だよ、君みたいに特質のメイドウィンが由来だけどね……そこの青い子は『天色鮫』の眷属を元にした甘色、着ぐるみにも自我があって『ぽへ』……いや歩兵か」
「私たちはそれぞれ『ツガイモノ』と『メガイモノ』の王、貴方から見るなら……天色歩兵ってところかな、はじめましてお兄ちゃん、この子、にゃんたぬきもよろしく!」
(……ああ、そうか)
これは、脅しだ。
ゆっくり実況者の『天色鮫(正確にはこの実況者の作った『アマイロちゃん』)』のボディに『ぽへちゃんねる』のきぐるみで天色歩兵。
『たくっちスノーが2020年代に生まれていたら』を元に作ったキャラであり、実はたくっちスノーも2015年代生まれと相当な古参です、ディスペクターより前から継ぎ接ぎしてました。
にゃんたぬきは再編集版初登場で『ぽこにゃん』と『ゆっくりむちゃたぬき』が元ネタです。
実はエルケーも元々の正式名称は『Lattice』と『ゆっくり草餅(K)』でゆっくり実況者の頭文字を合わせたものが由来です。