時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~ 作:黒影時空
カーレッジは既に数多の作品の世界に侵入しては主人公を始末していった。
見つからない所から様々な手段で主人公が活躍できないように細工を加える、ある者は無実の罪で投獄され、またある者は暗殺までされた。
カーレッジの毒牙はコメディ作品や恋愛ものなどの平穏な世界にも及んだ、何が何でも自分が何とか出来なければ気が済まない性分のせいで数々の世界が終わりを閉ざされた。
全ては自分がその代わりとして永遠に続く物語を完成させるため、しかしマリオ達からすればどこの誰とも知らない奴によって運命を弄ばれているに他ならない。
「あやつめ……とうとう殺人にも躊躇いがなくなったか」
「これまでの人生でそこまでのライン超えはしてなかったのか?」
「足がつくからのう」
「それただバレるからやってないってだけじゃねえか、元から素質あったんだろそれ!!」
「そう言っとる、自分の才能を評価してほしいということは裏を返せば何が何でも悪く思われたくないということじゃからな」
無論、松山とジルトーも黙って見過ごしているわけではない、前もって様々な世界に出動し主人公に危害を加えられないように救助や支援を行っていた、ただしカーレッジが次にどこに訪れるのかは分からないため救えない物も居るし、数では上回っているはずなのに行動力が良すぎて追いつけずにキリがない。
それでもなんとか間に合ってラボに緊急避難出来た者も集めたり、事情を話して仲間を増やしていきカーレッジが何をしてくるか作戦会議を行いもする。
「おい爺さん、カーレッジは昔からあんな奴だったのはなんとなく察するが、改めてどんな奴だった?」
「凡そお前の想像する通りじゃ、ワシが奴と出会ったのはワシがまだ20代で奴が人間の8歳だった頃……恵まれた環境にいながら貧民を見下した感情で羨ましがり、何もかも自分のおかげで本当は自分が凄いと思われなければ満足できない……」
「大体メイドウィンワールドに居たときのアイツの振る舞い其の物だな、物語の中じゃメイドウィンがなんでもありのすげーやつのようになっていたが、実際は殆どカーレッジの代筆でメイドウィンは本を作ってキャラをグチャグチャにしただけのクソ野郎だ、まあメイドウィンも実質一人二役みたいなものだが」
「そして今となっては時空という完全に自分の為だけの空間を作り、邪魔になるものは処分……独裁者にでもなったつもりというか、実際この空間では奴の振る舞いや言葉こそが正しいものとなる」
ジルトーと松山は止まないカーレッジへの愚痴を広げながら次はどの世界が危ないかを調査している、助けたキャラクター達はひとまず目の届かないところに置いているが、いずれはちゃんとした打開策を考えなくてはならない。
あまり派手な行動を取りすぎて気付かれたら面倒なことになる、今回肝になってくるのはカーレッジがまだ敵意を向ける存在がいると全く思わないほど能天気なことだ。
「助けた所で物語が終わればカーレッジはまた同じ事を繰り返す、こうして生かしたのも無駄になることもありえるぞ」
「いっそのことカーレッジが二度と世界を作れないように出来たらいいんだがな……もう終わった話なんだからそのままにしておけよ、メイドウィンワールドの奴らみたいに……あっ」
ふと松山はジルトーから聞いた黒影剣という奴の事を思い出した、松山達キャラクターやジルトーもだが一番のカーレッジの被害者は剣であり今も尚ありとあらゆる手段で引っ張り出されようとしているではないか、今は時空作りに夢中になっているがメイドウィンワールドの準備が終わったらまた目をつけられることもある。
「爺さん、あの剣とかいう奴は今でこそ作り直されてないが……つーか、あいつ作っちまうことありえるか? あれだけ出来るくらいだ」
「ワシは剣を2番目によく見てきた人間じゃ抜かりはない……おっと、また警報じゃ、日に日に増えていくな……」
主人公の危機が無数に増えていく今、もはやどのように進み誰が悪なのかも分からない時空、アラートは大騒ぎで次々と各作品のキャラクターの消息を語る。
剣に関しての切り上げ、ワープ装置で松山とジルトーは各自でまた他の版権世界へと向かった……。
「ところでお主、『寄生ジョーカー』はいいのか? お前の世界じゃろう?」
「いやだね、どんな状況だろうが藤堂と組むなんざ死んでも御免だ、どうせそいつはカーレッジ関係なく勝手に死んでるだろ」
悪の松山那雄宏と主人公の藤堂晴香は相容れない、これは物語の定石であるとともに唯一残された自分だけの設定、アイデンティティを確立するために維持しておきたいくだらないプライドだった。
どっちにしても松山にとって晴香はただの組織の関係者で死んでもいいやつだ、自分が殺さないと嫌だというライバルじみたプライドを持たなかった事を救いに思っていた。
「はい、任務完了、ただいま帰還します」
そして視点は1つの版権世界へ。
物語は始まったばかりのとある世界、宇宙をまたにかけて悪の組織と戦うドキドキワクワクの大冒険がまだ始まってもいない段階。
ひと仕事を終えて休暇する余裕が出来た1人の青年は宇宙船に乗って休息を取り後少しもすれば母星に里帰り、1時間もすれば到着することを確認した彼は中央部に搭載されている通信機で家族に連絡を入れる。
「兄ちゃん帰ってこれるって本当? いつ!?」
「心配するなって、もう少ししたらちゃんと会いに行くからさ」
「約束だよ! 急いじゃって雪で転ばないようにしてよね!」
「雪? そうか、向こうだともうそんな季節になったのか、時の流れは早いなぁ」
「しっかりしてよね兄ちゃん、ずっと宇宙船に引きこもってると宇宙ボケしちゃうよ」
「ははは、あったかい格好して滑らないようにするんだぞ」
「兄ちゃんも風邪引かないようにしてね!」
弟との会話を終えて母星で発行されている新聞を見る、つい先程の仕事先は暖かい惑星だったので気付かなかったが季節は冬、すっかり冷え込んでくる時期になっていた。
更に今回は特別で早い時期に降り始めてあちこちが山のように積もっているとか。
「へぇ、数年ぶりの大雪か……帰ったら雪だるまでも作るか!」
久しぶりに家族と会える、どんな話をしようか、近所の人たちは元気にしているだろうか……。
胸を膨らませながら遂に大気圏に突入、もう少しすれば着陸地点だろう、弟にどれだけお土産話を聞かせられるだろうか、その前に雪かきを手伝わなくてはならないか、色んなことが頭を駆け巡るが楽しみに待ちながら眠りについた。
しかし、彼の運命はカーレッジの手で歪められる。
「うっ!!?」
しばらくして猛烈な寒さで目を覚まし窓を確認してみると前が見えないほどの猛吹雪、地面に降り立った宇宙船は殆ど雪景色で埋め尽くされており目を反らして吹き飛ばされそうなほどの冷気と突風が出迎えてくる。
一歩ずつ階段を下りて宇宙船から出るのがやっとで、持っていた爆弾で周囲を溶かしながら真っ白な視界に目を凝らすと白い怪物が全てを埋め尽くすかのように故郷が白銀の世界に染まっていた。
「これは一体……さっき聞いたのと全然話が違うぞ!?」
弟の話や新聞に映っていた大雪のニュースではいつもより少し多く積もっていたぐらいの内容だったが、いざ外に出てみると車は動かなくなり扉が凍りついて閉じ込められている所もあると紛れもなく世界の危機。
「まずは仲間に救助を頼もう……それとあいつが心配だ、すぐに向かわないと!」
急いで宇宙船の中に戻り暖かい服装を整えて灯りを用意し、機械を操作して宇宙まで緊急のSOS信号とレスキュー申請を発信。
即座に急発進して徹底的に弟を探すと、生体反応をすぐに確認できる。
「兄ちゃん! ここだよー!!」
自分を呼ぶ声がする、念の為ライトを点けながら近づいているとちゃんと弟がいた、だが隠れていた場所は今にも崩れそうなボロ屋の中であと少し遅ければ雪の中で生き埋めになってゆっくりと……。
「危ないじゃないか、なんでこんなところにいるんだ!」
「だって僕がここに居た時はまだ雪がこんなに酷くなかったんだもん! 突然おかしくなったんだ〜!」
「とにかく乗るんだ! まずお前を安全な所に送り届けた後に街の人々を避難させる、大人しく出来るな?」
「うん、急ごう兄ちゃん」
弟を乗せて安全な場所を探すために雪雲より上を飛ぶ、吹雪は止まないどころか激しさを増す一方でこのままでは惑星は氷河期のように全て凍りついて人の住めない星になってしまう。
他に安全そうな場所を探しても殆ど雪で埋まり、爆弾を使ってもきりがない……気温はどんどん落ちていく中、これはもう別の星に避難させるしかないだろうと判断した。
「心配ない、俺の仲間が助けてくれるはずだし……それまでの辛抱だぞ、兄ちゃんがついている」
「……兄ちゃんごめんね、せっかく休みが取れて来てくれたのに」
「何言ってるんだこんな時に、お前が悪いわけじゃないんだ、気にするな」
落ち込む弟を元気づけて緊急地下シェルターに向かい、要請していたレスキュー用の宇宙船に乗せる、既に数百人以上の避難者が中に入っておりいつでも発進できるようになっている、彼はまだやるべきことがあると考えて真っ先に弟だけを逃がすことにした。
「じゃあ俺はもう少し人が残ってないか救助に行ってくる、もう大丈夫だからな、いい子にしてるんだぞ」
「あっ……兄ちゃん! 気をつけてね! ちゃんと帰ってきてよ!」
「……ああ、わかってるさ、約束する!」
弟と別れの挨拶をしてすぐ彼は星を飛び回り、人々を救助して回り、必死に探し回って犠牲を残さないようにした。
これまでの任務を考えたら命の危機なんて山ほどあった、過酷なことも確かにあったが今回は弟にまた会うためと考えればいくらでも歯を食いしばって立ち上がれる、少しずつ体力は奪われていく中残された人々を助けていった。
……戻るように連絡が来たのは、それからまだ1時間もしていない頃だった。
カーレッジの手はすぐそこまで伸びていた、そして……。
あれが兄弟達の最後の言葉となった。
『銀河共通ニュースをお知らせします、本日の夕方頃……ボンバー星が突如として発生した猛吹雪により凍結、地上の8割が生き物の住めない環境になっている状態で、確認出来ただけでも3万人以上が凍死したとされています』
【あっ、ただいま情報が入ってきました、ボンバー星から避難してきた市民を乗せた宇宙船が突如とした爆散したと、原因は未だつかめておらず、更にこれによって亡くなったのは……】
仕事を終えた彼に待ち受けていたのは耳を疑う情報だった。
「嘘だ……あいつの船じゃない、きっとそうだ、何かの間違いだよ」
命からがら帰ってきた中では英雄と言われた彼でもさすがに冷静になれずなんとか取り乱さないようにしながら避難先の星に連絡を入れる、大丈夫だ、ここで弟の声を聞けるはずなんだ。
そう信じたかった、しかし時空の神様は極めて残酷だった。
「婆さん! あいつは……あいつは無事ですよね!? あのニュースは間違いか何かでっ……!!」
『…………』
「どうして何も言わないんですか!!」
『マイティ』
『シロボンは……』
「嘘だ……嘘だ!! うそだあああああ!!!!」
この日、カーレッジ・フレインの手によって『ボンバーマンジェッターズ』の物語は止まった。
マイティの目には、耳には、まだ弟の姿が片隅に残っていたばかりだったのに、まるであの猛吹雪を連想させるように真っ白に消えていった。
「ちっ!! 遅かったか!!」
このように主人公狩りから連鎖して大惨事が起こる世界は複数存在している、マイティのところとは別で松山が確認した世界では事務所が丸ごと大火事で煙もあちこちから噴き出している。
消防車こそ来ているが救助者は一向に現れない。
「この世界は確か……くそったれが!!」
松山は寄生体から鋭い爪を作り這い上がって窓を壊し侵入する、どうせ化け物の体なので火事だろうがバックドラフトが直撃しようが知ったことではない、中は殆ど燃え尽きており黒焦げになっている人間らしきものもある、黒いが形はおおかた予測が出来る。
「ちっ、胸糞悪いことしやがって……よし、いたか」
目的の物を発見した松山は即座に回収して壊した窓から脱出し飛び降りる、状態が酷いのでひとまずジルトーに預ける前に市民の所に預けることを考えてその存在……金髪の赤ん坊を覗き込む。
「おいガキ、火傷はしてるが命助かっただけマシと思うよ、あいつらはもう手遅れだったからな」
「……お前、この声、松山なのか? 何故ここにいる?」
「……は?」
その子供は松山の事を知っていた、メイドウィンワールドのキャラクターは自分を除いて亡くなったはずなのに、身体にその設定が遺伝子のように刻み込まれているように不思議と心当たりがあった。
「アクア……お前、覚えてんのか? メイドウィンワールドのこと」
彼の名は星野
「……凍ってしまった母星の復興支援? ぜひとも俺にも手伝わせてほしいな」
そしてカーレッジはやることをやったあと何食わぬ顔で堂々と姿を現し、物語の中に介入して接触を図る。
主人公を数多く消したことで頃合いと感じ複数作品を跨いだ壮大な物語を作ろうと動き始めた。
主人公が死ぬ要因を段々派手にしていったのも、悲劇性がドラマを引き立ててよりカーレッジの行いが自然にありがたく思われるように考えた結果であり、主人公の死すら物語のネタにし始めたのだ。
だが度々言われる考え無しで余計なことをしていたカーレッジの悪い癖。
「……はい、僕達はより多くの支援を必要としています、少しでも役に立てるのであれば」
マイティはカーレッジの仲間になった、しかしこれは計算づく。
……時を少し遡る、弟のシロボンを失ったマイティは心の糸が切れたかのように静かに過ごしていた、そんな中に情報屋の仲間から1枚の写真を見せられる。
「あの宇宙船が爆発する寸前に撮られたものだ、こいつの仕業と見て間違いない」
カーレッジの行動は昔からあまりにも軽率だった、自分の姿が周りに見られるなんて思いもしていないし手抜きではないが近道を行きたがる。
そして彼らは自分がやったことを悪く思うはずがない、自分が作ったのだから。
そんな思い込みこそ、一番軽率。
(……考えすぎだ、まだこの人って決まったわけじゃない、それなのに……)
マイティの心は晴れないままだった、目の前で話しているのは写真に写っている男そっくりだがカーレッジがシロボンを殺ったという革新的な情報がない、それどころか心の中の闇は広がる一方。
「よし、仲間も増えたしそろそろチームでも作ってみるか! 昔はずっと三人旅でやれることも限られたしな!」
そんな思いはつゆ知らず、カーレッジは物語を盛り上げるため数多の世界からキャラクターをスカウトして世界の平和を守る仮のチームを作成し、マイティはそれに所属することにした。
ありとあらゆる世界から集められたチームメンバーは自分とは大きく雰囲気が違うが誰もが重苦しい雰囲気、育ってきた文化が違うのだから当たり前だが宇宙やジェッターズも似たようなものなのでマイティはすぐに順応して馴染んでいった。
マイティは後々から見て早い方の所属だったのだが、本格的に活動を始めたのはこの時期だった。
「や、やぁ……僕の名前はマイティ、皆はどんな世界の生まれでなんて名前なのかな」
「貴方は誰をあの男に殺されたの?」
「えっ」
そして出会って早々にこの発言、マイティは思わずビックリした……話しかけてきたのは長身で細目、一見するとおっとりした雰囲気をしているが口を開くと生気を奪われるように感じて恐ろしい、持っている杖も相まってまるで死を司る魔女のようだった。
「あの男にって……カーレッジ・フレインと名乗った彼かい? 人助けをして回っていると」
「人助けと思っているのはアイツだけだ、実際は私利私欲……俺は昔からカーレッジを観てきたから分かる」
直ぐ側から会話に割り込んできたのは先ほど松山が助けたアクアだった、特ジルトーの発明品で急成長して高校生ぐらいの背丈になって立派な青年になったものの、大事な顔や身体の所々に火傷痕が残っている、特に見るに堪えない片目は役者として致命的である。
「俺は星野愛久愛海、その女の名前はファリン・トーデン、元々変人だが向こうで奴にやられてから口数が少ないんだ」
マイティはファリンという女性の顔を見る……冷たい、とても冷たい眼差し、それはマイティに向けたものじゃない、これは憎悪……物静かで優しく笑顔を浮かべているが、その目だけはあの吹雪で冷え切った母星を思わせるほどの冷酷さを感じ取った。
すぐに分かる、段階が整えば彼女はカーレッジの殺害さえも躊躇うことはないだろう。
「……ここに来るのは、大事な人を失った共通点を持つ」
カーレッジに関わろうとする人間など、カーレッジと何か関係のある者のみだ。
今カーレッジが世界に影響を与えたことは……殺戮と混乱のみ、とはいえどまだ手を出してないようなモノであり混乱は今これからともいえるが……
マイティは嫌でも理解してしまう、疑惑に留めておきたかったがカーレッジが間違いなくシロボンを殺した。
偶然では片付けられない、あまりにも類似した被害者が多すぎる。
しかし何故? 彼はとても人に恨まれるような人物ではない。
「僕は……まだ1週間も経っていない、弟が……」
「私は兄さんと友達がどうしようもならないくらい死んだ、あの時だけは何もかも意味が無くて、何故か私だけが生き残った」
「俺は母と妹が目の前で焼かれた、俺のこの灼けた目はな……俺の妹、ルビーのものと同じ色にした」
「みんな大事な家族を……」
ファリンはマイティに近づき、引き込まれるような言い方でささやく。
「したくない? 復讐」
こうしてカーレッジが楽しく物語を進めるために結成されたチームはカーレッジへの復讐の為に1つになった。
カーレッジが主人公狩りをした後に近づき、少しずつ仲間を集める……もちろん復讐者としての仲間を。
壊した数だけ被害者が増える、世界は数え切れないほどに存在するのでどんどん仲間が増えていく。
彼はどんどん同じ過ちを繰り返す、いや……破壊という形で明確に人々を不幸にしているのだから余計に悪化している。
こうしてマイティとファリンはカーレッジの仲間を装いながら復讐の機会を淡々と待ち続けることになる。
「いいのか、ワシの科学力なら元通りの顔になるぞ」
「俺はこのままでいい、どうせ芸能界に出れるような立場じゃないしあんな事があればミヤコさんも立ち直れない……それにこうすれば俺はあいつの事を一生忘れる事はない」
「それにだ爺さん、あいつはアクアがこれで死んだものと思ってる……ただでさえ特殊な名前なのにこの顔ならバレることもねえよ」
アクアを通してカーレッジの仲間達はジルトーや松山と繋がっていた、カーレッジを倒せる情報が得られるならどんな物でも組む……アクアは昔からそういう奴だ。
こうしてアクアがコンタクトを取ったことでマイティ達もカーレッジに隠れて作戦会議や活動ができる、マイティ達は専らジルトーの仲間としていい、ファリンだけは相変わらずどういった立ち位置なのか曖昧ではあるが。
「ただお前、なんでメイドウィンワールドの時のことを覚えてるんだ?」
「俺にも理屈は分からない、多分だが俺の場合はずっと記憶を持ち越しているのかもしれない……メイドウィンワールドで焼けた後目が覚めたら俺は雨宮吾郎の身体になった後にまた死んでアクアに生まれ変わったからな」
「どういうことじゃ?」
「こいつ設定上転生者なんだよ、前世の記憶がめっちゃ残ってる」
「お前にも話してなかったがメイドウィンワールドに居た頃から……いわゆる物語の最初から最後までの記憶を保持していた、吾郎から今の身体へのサイクルを含めるとこれで6回目だな、全部若いうちから死んだから合計年齢で言えばまだそこの爺さんには追い付けないが」
「……世の中未だに科学で解明できないこともあるんじゃのう、この子の世界にもあった能力者とやらもそうじゃが」
松山がアクアを回収した頃にジルトーも1人の女の子を回収していた、生きてはいるが完全に壊れた廃人となっており話すことも出来ない状態だ、ネームタグには『柊ナナ』と書かれている、【無能なナナ】という作品の主人公だが物語の途中、志半ばで心が折れてしまったようでずっと空ばかり見上げている。
「こいつはどうするんだ、ずっと置いておくわけにもいかないだろ」
「科学な力で不幸な人間を根絶させ罪を晴らす、それが剣との約束なんじゃ」
「ああそうだよそれ、思い出したけどよ前に剣の事は特に心配ないみたいに言ってたがどういうことだ」
黒影剣の件に関して抜かりはない、カーレッジでも手出しはできない……ジルトーはそう語った。
「……決して真相を他言しないな?」
「俺たちの知り合いは現状カーレッジに恨みあるやつしかいねぇよ」
ジルトーはそれを聞くと丸いテーブルを回転させる、仕掛けが動き回るテーブルの動きに連動して壁の一部分が回転し階段が出てくる。
昔ながらのからくり扉というやつだ、ジルトーは年を取ってから一周回って古風な仕掛けを好むようになっている、松山はボケたらこういうやつどうするんだよと内心でツッコミを入れた。
その先にあったのはゴシック風の小さくて可愛いお人形、それが小さな籠の中で綺麗に飾られていた。
信じられないような物を見るようにアクアはジルトーの方を見る。
「おい爺さん、一応科学者と聞いているがボケてないだろうな、まさかオカルトじみた話とかするんじゃないだろうな」
「輪廻転生してるくせにオカルト疑うのかよお前、てかお前の出自もわりとそんな感じだろ」
「まあ確かにワシも信じ難いがな……これが今の黒影剣なんじゃ、ワシもやつもこいつも……全く違う形で人間を超越したわけじゃ」
「君……誰?」