時空序章~カーレッジ・黒影/たくっちスノーZEROラグナロク~   作:黒影時空

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決戦直前

 気がつけば時空を守る人々とハカイモノの戦いは一ヶ月も続いていた。

 カーレッジはハカイモノが絶滅しない程度に戦いを繰り広げて何も知らない人々から感謝されようとしているがキャラたちは彼の姿を見ている所が多いので敵視はしてないものの胡散臭い様子で。

 彼は時空の平和を取り戻すと謳うが、全くそんなつもりなどない。

 二度と物語を終わらせるわけにはいかない、もっと楽しみたい……ようやく作り上げたメイドウィンとの約束の物語なのだから、彼が帰ってくるその時まで残さなくては、もちろん一番面白い段階で。

 そうして戦いを続けているのに事態は一向に進展しない事に違和感を覚える人間は次第に増えていくことは知る由もない。

 

「カーレッジ、また君の話を聞かせてほしいんだ」

 

「もちろんだよ! 今日伝えられるのは14歳の時に体験した海の民の話なんだけど……」

 

 カーレッジの最近の楽しみはマイティ達が自分の昔の武勇伝を聞きたがることだ、カーレッジはハジマリアでどれだけ自分が凄いことをしたのか、どれだけの事件が起きたのかを皆に語り継ぐ、日誌は神になった時に紛失したがそれが却って自分に都合良く捏造した記憶となり、カーレッジ目線としてより解像度が上がっている。

 

 

「……それでその女の子なんだけど間違いなく俺に気があると読んでいるんだ、俺はつるぎちゃん一択だからクールに断ったけどね、俺に惚れてる子はいっぱいいるよ、このチームだとさファリンもそうなのわかってるんだから、それ以外にもたくさん」

 

「ははは」

 

 マイティはすぐ横でファリンの魂を感じないほどの苦笑いを見た、更に糸目なので分かりにくいが本気で蔑む時の目である。

 ここまで空気を読んで吐き捨てるような笑い方をした人を見たことがあるだろうか、カーレッジは全く気付かない、人の目線なんて見てないのだから当然である。

 ちなみに、カーレッジから見た剣以外の女性に関しては本当に恋心とかはない、間違いなく自分のことは好きだがそのまま一方的に愛してくれるままそばに置いておきたいという認識である。

 


 

「今日聞いた話はこんなところですかね……」

 

「気持ち悪いッ」

 

「お前日に日にストレートになっていくな、まあ今回の話は俺も思い上がりすぎてキモいと思ったが」

 

 そしてマイティ達はカーレッジから聞いたこと全てをサヤや松山達に報告していた、最初からカーレッジの冒険に興味はなく行いから弱点を探り出すために聞いていたのだ。

 しかしそれはそれとしてサヤの反応には驚かせるばかりだが……。

 

「信じられない! むしろあの子自分に向ける感情とかすぐに分かるから嫌がってたよ! そっちの子も惚れてると思うとか気持ち悪い! 女の子のことコレクションか何かと思ってる!?」

 

 彼の自慢話の内容は大抵サヤに否定されている、話を盛っているとかではなくやっている事に何も間違いはないという前提があるため全然その人の為になっていないものばかりで自分はそれを『救いになった』と自己解釈しているのみ、そもそもの話ハジマリアの時でも言葉巧みに日誌を公表されて都合のいいことしか書かれてない大間違いであると非難されることになったというのに全く学習しない男である。

 

「でもここまで話を聞いて分かったこともあるよ、俺たちのやってきたことは無駄じゃなかった」

 

 サヤと松山はハジマリアにおけるはじまりの書とハカイモノとの戦いで起こった出来事をまとめたレポート資料を同時に見せる、所々類似した事件が多くカーレッジが(自分の思い出の中で)活躍した思い出が一致している。

 それだけではなくどこで知ったのかカーレッジが旅を辞めた後のハジマリアで起きた大事件やメイドウィンワールドで起きた事まで偶然のように発生しているのだ、これに気付ける人間なんてサヤやジルトーのような全部知っている人間しかいない。

 

「こいつは何から何まで自分が中心じゃないと気に入らねえみたいだな、まるで再試験みたいだ」

 

「でもここまで分かりやすいと一周回って作戦も立てやすいんだよね、最近は何が起きた?」

 

「俺が見た限りだとなんかギャギャの一族の所がそれっぽくないか?」

 

 各メンバーが事件の共通点を探りながらカーレッジが次は何をするか考察していく、もう既に段階が反撃に都合のいい出来事が決まれば一気に裏切るつもりだ。

 カーレッジ自身としては自分の過去に類似したものをそれとは明かさず物語の命運を握る存在として『ゴッドイベント』と呼んでいた、どこまでも

 その中でマイティとアクアはハジマリア史を見て同じ事件を同時に指差した。

 

「カーレッジが15歳の時に起きたという【モノノフ事変】……これに似たことが昨日起きてなかったか?」

 

「なんだ? そのモノノフ事変ってのは」

 

「ハジマリアの極東にモノノフ族っていうキツネみたいな人がいてね……和風で静かなところだったんだけど2つの勢力が対立してて……」

 

「その話長くなりそうだからカーレッジが自分がイキる為にどんなメチャクチャやったのかだけ言え」

 

「対立の理由っていうがいわゆる宝玉の主張だったんだけど、カーレッジがそれを魔法で何十個も増やして……『取り合いにならないほど多くあれば喧嘩にならない』って……でも宝玉って不思議な結界を作るために必要なものだから……」

 

 結界はより強固なものになり存在其の物が消失したかのように大陸ごと姿を消して視認どころか触れることも不可、更に結界の範囲が大きくなりすぎてハジマリアの極東にある人や生き物の突然の神隠しも発生、伝承のみが残されたモノノフ事変……。

 実はちょうど時空でも神隠しに関するハカイモノや妖怪、サムライなどと相手をしており、鍵を握る宝玉が発見されるところまで一致、カーレッジはこのままの勢いだと宝玉を増やす作戦によって同じ過ちを繰り返すことだろう。

 しかしマイティは目の付け所が違う。

 

「……これ作戦に使えないか? 封印が強すぎて存在自体が消えて無くなるのだろう、上手くカーレッジを閉じ込めればあるいは」

 

「ただハジマリアとは違うアイツの作った世界だ、破られることも前提に考えておいたほうがいい」

 

「でも隙だらけになることは本当だし、似たような事が起こった際に実行に移すってことにすれば……」

 

 こうしえキャラクター達の間で考えがまとまり、もしカーレッジがモノノフ事変と同じ事を繰り返そうとした時、その時が反撃開始の合図ということで作戦が決まった。

 マイティは皆の方を見て話す。

 

「ファリン、アクアマリン、松山さん、静虎さん、ヒンメル、爆豪くん、沙都子ちゃん、Ai、クランチュラ、賢人、アオイ、闇野、マホロア……まだまだ沢山、気がつけば大事な人がこんなに集まった、これまで僕についてきてくれてありがとう」

 

「シロボンや……皆がいない世界で生きていく生活が辛い、カーレッジを倒しても元に戻ってくることはない、でもこんな思いをする人が増えるのは嫌だ、そして君たちも……だからさ、その……死にたくないなぁ」

 

 マイティはあれからなんとか精神を立て直したが、まだまだシロボンの死から立ち直りきれていない、それなのに誰よりも悲しんで、皆を率先するリーダーとして活動して……素を見せられる存在を失った彼にとって、もう英雄として後戻りが出来なくなってしまった。

 もはや本当の『マイティ』を知っている者は誰一人いない。

 

「マイティ、大丈夫、私がいるから大丈夫だから」

 

「ファリン……」

 

「マイティ……見つけたぞ、マイティ!!」

 

 マイティがゆっくり休んでいると外の通信から聞き覚えのある声がした、耳に入っていくとまだ最近なのに遠い昔の記憶のように感じる、それは声の正体が時空絡みではないからだ。

 すぐにマイティは護衛を付けてもらった上で外に出ると……その姿で鮮明な記憶が甦る。

 

「バーディ?」

 

 バーディ、それはジェッターズ時代の相棒であり苦難を乗り越えてきたマイティの以前の仲間であった。

 

「どういうことだ! こんな所で一体何してやがる!」

 

「その人は昔の仲間?」

 

「うん……ジェッターズだった頃にね、驚いたなどうやって世界を超えたの?」

 

「昔馴染みみたいに言うんじゃねえ! ずっと探していたんだぞ……オレもアイツらもみんなお前のこと!」

 

 バーディは必死の形相で胸ぐらを掴みながらマイティに向かって怒鳴りかかるが、マイティは何の反応も見せない。

 懐かしさを感じているし反省もしていそうだが、本格的にファリンと同じような感情変化の乏しさとなっていったようだ。

 

「マイティ、何も言わずチームをやめたの?」

 

「そんなことないよ、あの後ちゃんと皆にも伝えたんだ……身勝手なのは分かっているけど、これは僕の問題だからごめんって」

 

「……だからオレ達を頼らないっていいたかったのか? お前の弟の事で辛いことは分かる、犠牲者だって少なくねえ……だがオレ達はジェッターズ、宇宙を守る正義の部隊……そうだろ、オレ達だって無関係じゃない、1人で抱え込むことはねえんだ!」

 

「……バーディ、あの時は本当にすまない、実の所僕はあの時……分からなかったんだ」

 

「分からない?」

 

「バーディの言う通り自分の復讐に皆を巻き込みたくなかったのか、それとも……バーディ達も死んでしまうのが怖かったのか?」

 

 久しぶりに親しい人に会えたこともあってマイティは口数が多くなる、本当はもっと本音も吐き出したかった、もしかしたらこんな事を言えるのもこれで最後かもしれない、悔いを残さないように話し続ける、バーディもマイティの事を知りたいために話を終わらせないように内容を誘導する。

 

「……それで、答えは見つかったのか?」

 

「うん、君のおかげでね……怖かったからだ、カーレッジも怖いけど、本当に怖いのは僕自身なんだ」

 

「どういうことだ?」

 

 マイティは近くにある木の幹に手を触れると、1秒もせず木の内側から大爆発を引き起こす、これまでのボムとはるかに違う技術を見せられたバーディもさすがに動揺を隠せなかった。

 

「おい、なんだ今のボムは……」

 

「ミクロボム、至近距離から小型のボムを作ることで体内から木っ端微塵に吹き飛ばす技さ、カーレッジを倒す為に思いついた技……昔の僕ならこんなもの思いつきもしなかった」

 

「怖いんだ、ここまで変わってしまった僕が……ここまで残虐な気持ちが生まれて、皆が思ってるような優しい僕がどんどん無くなって、君にも恐れられるのが……バーディ、君の知ってるマイティはもういないんだ」

 

 バーディは自ずと理解出来てしまう、ミクロボムの存在もだがその威力。

 彼の世界にはこんな言葉がある、『ボムの力はボムにあらず心に在り』それは正しい心を持てばボムが強くなるというマイティが信条として言っていたのだが、それと同時に負の心にも反応している。

 禍々しいほどの爆炎、それが今のマイティの苦しみで答えなのだ。

 もう……何を言っても無駄なのだろう。

 

「マイティ……もう手遅れだったのか……」

 

「ごめんね、バーディ」

 

 ファリンはマイティ達の話を聞いて自分の昔のことを思い出す、『ダンジョン飯』の世界でいつものように迷宮に潜り仲間と共に冒険していたところにカーレッジが現れた。

 彼女の世界は段階によっては蘇生も可能なので死というものが多少は楽になっているのだが、その上で二度と復活出来ないように兄とそれを庇った親友が死んだ、ファリンは何度も蘇生を試みても無駄だと気付き心が錆び付いて人の形をした獣になった、こんな状態で生きてなんになるのか……そして、直後にファリンの存在を忘れていたカーレッジに拾われて今に至る。

 彼女は一番最初にカーレッジの仲間となった存在だった。

 

「あれ? マイティがこんなところで? 何してるの?」

 

 一仕事終えたような疲れた様子で後ろからカーレッジが話に混ざってくる、いつものように各世界の大物と接待して満足するまで帰りなのだろう。

 物語に関係ないところではかなりだらしなく、ダラダラとした雰囲気が親しみやすいと思っているのか非常に

 

「ああカーレッジか、実は昔からの友人と再会してね」

 

「へぇマイティの友達! じゃあ実質俺の友達にもなれるってことじゃん! 全時空全世界俺の友達が俺の理念!!」

 

 これがカーレッジ・フレイン……! バーディは一目見ただけで思わず恐ろしさを感じてしまう、これがあの大事故の首謀者、無邪気に笑うがいらないと判断すれば早々に切り捨ててしまいそうな……。

 バーディの中でカーレッジの情報は先ほどマイティから聞いたものと情報屋の都市伝説レベルのものしかないが、彼の言葉を聞くだけで現実味を帯びてくる。

 

「なるほど、マイティから聞いた通りだ……こいつからやべぇものを感じるぜ」

 

「それ褒めてるの? 褒めてるってことでいいか、俺の話だし」

 

「それよりどうしてここに?」

 

「いやそれがさ……妖怪の2つの勢力あるじゃん? 元祖だか本家だか……妖怪ウォッチって世界でね、喧嘩してる原因がハカイモノってわかったんだよ」

 

「え、本当に!?」

 

「うん、なんで疑うの? 俺の話だよ?」

 

 モノノフ事変と同じ流れだ、サヤによるとその時も喧嘩の最中に龍の王が現れ壊滅の危機だったらしい、しかしその時はカーレッジは龍の王の発言も無視して宝玉を山程作り出してしまった、アクア達が推測した通りだ、間違いなく完全に同じ流れになって木っ端微塵となる。

 

「ありがとう、直ぐにみんなに伝えておくよ」

 

「頼むよ〜今回は激戦になる予感がするんだ、ハカイモノの王まで出てくるみたいだからね」

 

「そこまで分かるんだ」

 

「神様だからね」

 

 全部自作自演なのに何言ってるんだこいつは、ファリンはそう思ったが遂にマイティ達キャラクターに反撃の機会が訪れた、バーディも何かを察してマイティを引き留めて、何が何でも逃さないように追いかける、たとえそれが茨の道だったとしても。

 

「何をするつもりだ?」

 

「僕達の未来はこの作戦にかかってる」

 

「そう、妖怪達を守るため!」

 

 何も知らないバーディでもカーレッジとマイティの言っていることはかなり食い違っていることはわかる、その上で理解しようとすると大変なので頭は使わないようにした。

 

「オレになにか出来ることはないか?」

 

「え!? バーディまさか……」

 

「ずっと探していたんだ……今更お前を置いて帰れるか! この際だ、俺1人だけでも地獄まで付き合ってやるぜ」

 

「うん、仲間は多い方がいいし」

 

「いいんじゃない?」

 

「ファリンまで……」

 

 こうしてカーレッジの許可もあり、究極バーディも妖怪元祖本家事変に同行することになった。

 仕方ないのでこっそりとマイティがバーディに改めて本当の作戦を気付かれないように資料を見せて報告する、バーディもこの道長いのですぐに把握して移動中の間に肝心なところだけ頭に叩き込む。

 

「そういえばこの件はサヤって奴に気付かれてないよね?」

 

「サヤがいると何かまずいの?」

 

「そりゃもう! いつも俺の冒険や活躍の邪魔ばかりしてくるしさ、何が気に入らないのか俺を差し置いて普通のつまらないやり方で解決するんだもん! 事件ってのはもうちょっとドラマとか、派手なアクションとか、最後に救われた人々の拍手喝采があってこそだと思うんだよね、それでこそ物語の醍醐味というか」

 

 カーレッジから見たサヤは自分の行動を先回りして勝手に盛り上げるために用意した事件を簡潔にそれでいてつまらないやり方で解決してしまう劣化パクリ野郎であり、非常に気に入らない存在である。

 サヤからすればパクリというか何の被害も侵さず、ちゃんとした解決方法を導こうとしているだけで、そもそも他人の不幸の元になる存在を喜ぶべきではないと思っているのだが……。

 ファリンは下手にこの話をすると面倒と思ったので話題を切り替えた。

 

「ところでさっきの話に近いことなんだけど、カーレッジにも昔からの友達っているの?」

 

「ああそういえば……ファリン達にはメイドウィンの話してなかったっけ」

 

 一応マイティ達はサヤや松山達からシャドー・メイドウィン・黒影の話は軽く知っている、だがカーレッジの口から詳しく聞き出すためにあえて深くは聞かないようにしていた。

 ほぼ同一存在のイマジナリーフレンド、すなわちカーレッジの理想であり自分たちに追い求める存在……何故彼がここに現れないのか? までは分からないが。

 

「アイツは本当に凄いやつなんだ……なにせこの時空、ありとあらゆる世界を作り出したのはメイドウィンだ、俺にも出来なかったんだぞ?」

 

 事実、始まりの書はカーレッジでも及ばなかった発想で彼なくしてこの物語は作れなかったので、時空に関する事はメイドウィンの功績であるとカーレッジも認めている。

 まあ彼の場合、そんな凄い存在と友達の自分も凄い! が最終的な結論なのだが……メイドウィンの事だけは友人として確かに認めていると珍しいこともある、それだけ良い気分をしたのだろう。

 

「個人としてはどうだったの、友達として」

 

「もちろん凄い素敵な友人だった、俺がやること全部凄いって褒めてくれるし、超強いのに何かあると絶対俺を頼ってくれるからさ、俺がこの世で友と呼べるのはアイツくらいだよ」

 

「じゃあ剣さんは?」

 

「つるぎちゃんは……なんか違うな友達ではない、いや好きなんだけどさ……メイドウィンみたいなことはしなかったし、側にいてくれればそれだけでいいみたいな人、多分これは友達以上かな」

 

「ふーん、そのメイドウィンって奴はお前のことをどう思ってたんだろうな」

 

 話を聞いていたバーディがボソッと呟くが、それに関してしっかり耳に入れていたカーレッジは不思議な顔で姿勢はそのまま首を真後ろに曲げてバーディの方を向く。

 

「意味が分からない」

 

「お前の友人を悪く言うつもりはないが、もしかしたらそいつは都合良くお前を利用して友達となんて思っちゃいねえ……って捉える奴もいるんじゃないかと思っただけだ」

 

「それが分からない、だって皆がこんなに人の為になって役に立つ俺のことを好きなのは当たり前のことだろ? こんなにも色々助けてるしお話だってしてるじゃないか」

 

 バーディは何も言えなくなって話に混ざらないようにする、これだけでカーレッジのことがなんとなく察せられる。

 

(おいマイティ、アイツはバカなのか? それとも俺達をバカにしてるのか?)

 

(多分、後者……)

 

 彼にとって好きいう感情と要求される誠意とはこんなにも歪なものなのだろうか、これはもう神様になる前から何かを拗らせていたとしか思えない。

 一体ハジマリアの旅で実際はどれだけ惨たらしい光景を繰り広げてきたのだろうか、サヤに聞いてもこれは分からないだろう。

 無自覚に剣の思い出が剣じゃなくても成立するくらい改変されているのも頷ける。

 

「その人はどこにいるの?」

 

「いつか俺の方から紹介するよ、間違いなく仲良くなれるからさ、なにせ俺に匹敵するくらい……メイドウィンワールドの英雄だぞ?」

 

 その『いつか』は絶対に訪れない事をマイティ達は知っている、もしメイドウィンが復活するようなことがあれば今度は躊躇なく松山は殺しに行くだろう。

 どちらにしても復活するようなことがあるとすれば、カーレッジが本質を自覚した時……サヤはそう推測している、あるいはもっと恐ろしいことが起きた時? 

 

「おっとみんな、そろそろハカイモノが現れるはずだ、準備してくれ」

 

「それなんだけどカーレッジ、今回の戦いは王とも戦うんだし全員でかかるべきだと思うんだ」

 

「確かにマイティの言うとおりだ」「俺もそう思う」「俺も出撃させてくれ!」

 

「それはいいんだけどだからどうしたの」

 

「ほら、大人数でもすぐに行ける乗り物が欲しいかなって」

 

「ああそういうことね」

 

 カーレッジは神の力で電車のようなモノを作り、それに乗って世界を超えた……。

 いよいよこの時が来た、こんな奴に勝てるのだろうかと改めて不安になる者もいる。

 しかし今更弱音を吐いている場合じゃない、度々カーレッジが言っていたことだ。

『世界と平和の為に……』その言葉を本当の意味で晴らす。

 


 

「この流れは全部アクアの予想した通りじゃ」

 

「ならマイティ達はもう行動に移ってるよね、僕も行ってくる」

 

 その一方松山達もモノノフ事変に似た事が起きた事に気付き、サヤと松山が先回りして援護に向かおうとしていたところだ。

 サヤはマイティ達とは別陣営に回り、松山は初めてカーレッジの前に姿を現すので慎重に作戦指揮を取る。

 

「おい松山……死ぬんじゃないぞ」

 

「へっ、死ぬなよか……昔だったらふざけんなと答える気だったが、今や俺一人の問題じゃねえからな……死にたくても死なねぇよ」

 

 松山那雄宏は死なない、カーレッジ・フレインと刺し違えて全ての物語が二度と進まなくなるその時まで。

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