【コードネーム】 龍門の傭兵
【陣営】 近衛局
【性別】 男性
【戦闘経験】 3週間
【出身】 不明
【誕生日】 不明
【種族】 不明
【身長】 186cm
【鉱石病感染状況】 不明
【個人履歴】
龍門のスラム街に突如現れ、以後しばらくの間”近衛局所属の臨時傭兵”として活動した存在。
出自や本名を示す記録は一切なく、局内外を含めて正体を知る者はいない。
彼の“自分”に関する認識は常に不安定であり、誰でもないと自らを規定していた。
近衛局から与えられた任務は怪人討伐や市街調査であったが、その行動の多くはスラムに暮らす子供達の保護に割かれていたとされる。子供達は口々に”守ってくれる傭兵さん”と呼び、彼を慕った。
姿を眩ませる直前には子供達へ菓子に由来する名を与えていた。
近衛局には彼の経歴や死亡報告は存在せず、ただ“龍門の傭兵”として短期間だけ確かに存在したという証言だけが残っている。
不思議なことに近衛局でさえもその傭兵が実在した噂すら確認できていないらしい。
【能力測定】
物理強度:卓越
戦場機動:卓越
生理的耐性:卓越
戦術立案:普通
戦闘技術:優秀
アーツ適性:欠落
グロンギを一体殺し、隊員の手当も済んだ頃。俺は雇い主とやらに呼び出された。
フミヅキという名らしい。わざわざ黒塗りの車まで用意してな。
しかも運転手は俺のことを知っている風で、手土産に白いクランチチョコを差し出してきた。
ザクザクと歯に弾ける音……変わらない味だ。噛みしめるたび、何かを忘れている気がする。
士の姿も、俺がどこから来たかも。掴もうとすると砂になって崩れる。
「着きましたよ」『俺はいつ釈放される?』「いつから、そんな冗談を言うように?」
『……お前とは知り合いか?』「顔見知りです、こうして何度も送り届けているだけですから」
冗談?俺は真剣に聞いたつもりなんだがな。こいつの顔に見覚えはない。
それなのに顔見知りですと言い切る。知らない世界で俺を知っている奴ばかり。気味が悪い。
『受付に行けって……行ってたか?』「はい、いら……ああ、貴方ですね。彼方へどうぞ」
受付嬢も同じだ。笑顔で俺を通す。エレベーター、押されたボタンの階で降ろされる。
そこに漂っていたのは懐かしいような、でも確かに知らない匂いだった。
ナツミカンに似ているが、違う。
「お疲れ様です、今回も無事お仕事を終えたようで」『……誰だ?』「フミヅキですよ」
これが雇い主。俺に菓子を与えてきた存在らしい。部下も護衛もいない。
ここに、ただひとりで――てかこの世界の人間はみんな角が生えているのか?
『俺を呼んだ理由は?』「いつもと同じです」『それを覚えてない』「ええ、知っています」
『……俺はここで誰なんだ?』「それを探しているのが貴方です、さあこれを」『これは?』
「貴方がここに来る時残す日記です、貴方の今までやったことが書いてあります」
ページをめくる。ぎこちなく震える指先に紙のざらつきがまとわりつく。
[フミヅキに日記を渡された、ここに俺が1日過ごしたことを書いていけばいいらしい]
[スラムで子供共と出会った、構った。飯を食べさせた。ついてくるようになった]
[仕事の時は危ないから大人しくさせている、仕事が終わって帰ると集まってくる]
俺は子供なんて構わない。名前も、過去も曖昧で、俺が誰かも分からない。
なのに紙の上には、まるで俺が日常を持っているかのように記されている。
『何で俺はこんな事を?』「何をですか?私はその中身を見た事ありませんから」
とぼけたような、無関心なような声音。だが確かに分かっているはずだ。
俺がここじゃ“誰でもない存在”だってことを。
『……なんで俺を呼んだ?』「貴方がそれしかお願いを言いませんでしたから」
何も分からない。今までこんな状況があったのか?知らない過去がある……。
俺が知らない人々が俺の存在を知っている、確かに俺は此処で生きていたのか?
「それで、貴方の記憶は戻りましたか?」『……部分的にな』「ならこれからは何をしますか?」
問いの意味は理解できる。だが、その問いに繋がる根っこが、俺の中で見つからない。
紙の上に書かれている”士を探していた”という文字は、確かな事実のように光る――士。
会っていたはずのあの男の気配だけは、濡れた灯のようにまだ残っている。
でも、そこからどう動いて、何を為すために旅していたのかが掴めない。
目的の輪郭は、指先に当たるはずなのに、砂のように崩れる。
『何を?』「ええ、その記憶の中に貴方が本来為すべきことを示すものはありましたか?」
ある。士を探す――だが、探した後がどうしても思いつかない。
何かを思い出すための旅だったのか、あるいは何かを終わらせるためだったのか。
答えを出すと、また別の空白が口を開ける。問いは連鎖し、終わらない。
「貴方の名前は?そろそろ聞きたい頃です」『わからない、自分が何者なのか』
俺はなんで旅をしていた。どうしてそれが必要だった?
名前――確か名前だけはあった。名前だけは……あったはずなのに、今はそれすら――。
「……もしまだ、ここ龍門にいるのなら頼みを聞いてくれませんか?無論お菓子はあげますよ」
『……なんだ?』「貴方はここに居る間、私が身分を保証します。その代わり――」
――龍門:スラム
昨日までの俺がいつも滞在していたのは龍門のスラム、簡単に感染者が主に集まる場所だ。
日記を書いた俺が何故ここを滞在場所に選んだのか……その理由は分からない。
特に書かれてないんだ、そもそも金はあるからホテルで寝泊まりしてもいい。
俺は感染者という立場ではないから自らここに来る必要もないそ相応の理由もない。
ただ……日記の俺は此処に来ることを日課にしていた。その理由を知りたい。
もしかしたら記憶に繋がる何かがあったのかもしれない。
『……何処に行けばいいんだ、ここは構造物に統一感がなさすぎる。迷路みたいだな』
まず……探すべきなのは子供、特徴もそれぞれ細かく書いてある……やはり何か。
「あ!兄ちゃんだ!今日はどうしたの?仕事は?」『……』「ねえねえ約束覚えてる?」
なんだそれは、そんなこと手帳には書いてなかったぞこいつは誰だ……犬か、狼か?
どっちでもいい、性別男の……ええと、何だこれどれだよ本名。
なんであだ名が50種類も箇条書きで残してるんだ、これじゃ……わかんねえよ。
「……え~もしかして、忘れたぁ?」『いや、覚えてるぞ。うん。えっとな。ガレッド?』
「ガレッド?……いいなぁ!かっこいい名前!ありがとう兄ちゃん!」『……』
あだ名じゃない……これは、全部……こいつの名前だ。名前を付ける約束か。
『それでいいのか?』「うん!」『……そうか、確か他にも約束した奴が居たな』
シフォン、ムース、フィーユ……全部お菓子とかそこら辺の名前か……?
何でこんな約束を……家族がいるわけでもないのに、ここに来たのは無駄足だったか。
「……お兄ちゃん元気ないの?」『いや、いつもと同じ顔してるだろ?』「……目が暗いよ?」
わかりやすく落ち込んでいるのか、俺は。この日記に役に立つことはもう書いていない。
……やはり士を探そう、あの男なら何か知ってるはずだ。
――ねえ、ここで何をしてるの?――
『……』「……どうしたの?震えてるよ?寒いの?」
――疲れた?……じゃあ、私もここで休もうかな?――
『……いや、何でもない。』
[時折、子供が見える。誰なのかはわからない。でも知っている、顔も声も匂いも全部知ってる]
[なのに、思い出せずただ子供はそこで俺を見て優しく語りかける。その声が苦しい]
『ちょっと、歩きたい気分だから。1人にしてくれ』
――私は昔ガウちゃんとよく散歩した。ガウちゃんはよくガウガウって鳴くの――
声も姿も匂いもまたそこにある。
輪郭のない声が、耳の奥で遠慮がちに鳴るたび、胸のあたりが締めつけられる。
幻影は笑っているわけでもなく、命じるわけでもなく、ただ淡々と記憶の断片を並べるだけだ。
それだけで、頭が痛む。熱を帯びた匂いが鼻腔に流れ込み、指先の震えを呼び起こす。
何かが焦げたような……肉の匂い?決して良い匂いとは言えない……これは。
――助けてくれるっていったよね――
『……違う、ちがう。おれは――』「おい、貴様……そこで何をしている?……大丈夫か?」
『……』「貴様に用があるんだ、さっきの怪人といい……貴様の正体といい聞きたいことが山程――」
龍門近衛局の隊長、チェン・フェイゼだ。近衛局に雇われている傭兵を探しに来た。
つまり俺を探しに来たってわけだ。
だが表向きの目的とは別に、俺について個人的に調べているふしがある。
どこを探しても俺の記録は出てこない。それも当然だ。俺はこの世界で生まれた者じゃない。
推定で数ヶ月前、別の世界から流れ着いたばかりだ。
いくら調べたところで、ここに俺の名前が出てくるはずがない。
「お前は何者なんだ?」『それを答えられたらここには居ない』「記憶喪失か?」『かもな』
『無駄足だったな、俺を何者なのか。証明できるものなんて何処にもないんだ』「そうでもない」
『は?』「前にスラムの子供達が言っていた、守ってくれる傭兵さんが居ると。お前の事か?」
守る?……俺は――いや、そうか。そういうことか、
[俺の旅はそろそろ終わる気がする。記憶が霞んで来た。直前の記憶すら覚えられない]
[過去が消えていく。忘れたくない。俺は今のままで居たい――短い旅だった]
[今日も仕事を貰った。フミヅキは悲しい目をしていた。でもこれでいい。俺はこれが良い]
[過去が消えていくなら、せめて俺は明日が欲しい。フミヅキはいつも明日を与えてくれた]
[フミヅキは俺にいつも教えてくれた。俺は龍門の傭兵だ、だから名前は必要ない]
[子供達にさよならも言えないまま、明日を迎えることになるだろう]
[明日の俺はどこにいくのだろうか。士を探しに、また旅に出るのかもしれない]
[好きな場所に行くといい。薄れていく過去に捕らわれなくていい]
[でも、もしまだここに居るのなら、子供達に名前を付けてやってくれ。みんな良い子だ]
[フミヅキもいい奴だ。助けてやってくれ。お返しにお菓子をくれるだろう]
[ここで見たもの、交わした約束は、どこかで誰かが覚えていてくれたらそれでいい]
[明日がある限り、俺は傭兵であり続ける――確かに俺は此処にいたんだから]
『その傭兵はもういない、自分の居るべき場所を見つけたそうだ』「そうか、じゃあお前は?」
『言っただろ、誰でもない――通りすがりの傭兵だ。忘れろ』「はぁ?」
あいつが残した最後の仕事を終わらせに行こう。
明日のことはそれが終わってから考えることにする。
――ロドスアイランド号
入居一ヶ月、所在は対象が最近になって手に入れた仮のラボ。記録時点で午前九時。
ストレージから白色の礫を三つ取り出し、咀嚼。サッシが入ったものが旨いらしい
十分後、同じ机上で市販のきなこもちを開封、摂食に伴い掌上に
対象は「肩、頼む」と短く述べ、以後三十分の作業で姿勢疲労の訴えなし。
続いて駄菓子の甘い匂い、掌に現れたゴチゾウが私のペン先を覗き込む。
対象は視線だけ寄越して”記録は好きに”と言わんばかりの顔で回路図へ没入。
質問には要点のみ返し、余分は削ぐ。ブレイズからの作業依頼に即応。
ブレイズ隊の補助作業では、要求性能の説明より先に手を動かす傾向が顕著。
口癖”怠い”は頻出するが、指示の遵守率は高い。
終了後は”怠い”の一言で片づけ——いや、机は既に次の実験に最適化されている。
彼をロドスのオペレーターと記すのは、正確さを欠く。
分類するならば、ペンギン急便のように――我々と協力関係を結ぶ外部戦力。
しかし、実情は肩書に収まり切らない。
研究アドバイザー、基医療支援顧問、直属の傭兵、そしてブレイズ隊の一員。
肩書は増え、役割は混線するばかりだが、その混乱が許容される理由は単純。
彼が、優秀だからである――最初に名を刻んだのは研究アドバイザーとしてだった。
与えられた鉱石病の基礎資料を手に取り、まるで既知の分野であるかのように吸収していく。
ケルシー医師が”物は試し”と口にして与えた研究課題。
わずか数日で自らの言葉と方法論に翻訳していたのを私は覚えている。
記録上、“学習能力に常軌を逸した偏差あり”と書かざるを得なかった。
――記録者:ロドス人事オペレーター/視察ログ抜粋
最も目を引く成果は、彼が作戦部門と接続してからだ。
局地戦における戦術立案、現地での即応改修、実戦下の戦線維持。
どの指標で評価しても高得点。そう記すほかない、と当初は思った。
だが、彼が“オペレーターにならない/なりえない”理由を知る前までの話である。
現地観察にて私は得られた情報では彼は必ず前線に立ち、同時に指揮を執る。
意外、という語は不適切かもしれないが、彼は連携を最優先し、味方全員の位置を常時把持。
呼吸の間隔で間合いを測り、足音の減衰で遮蔽を推定し、自分と味方の相対配置を計算する。
次に、敵の注意をどこへ誘導すべきかを、まるで“癖”のように選び取る。
結果として、作戦終了時、部隊は無傷で帰還する。
彼だけが、血の色を多くまとって休眠に入る——この帰結が繰り返される。
私は多くのオペレーターを見てきたが、彼の行動は“異常”の語で括らざるを得ない。
死を恐れない――違う。彼は自分が死なない範囲を、誰より正確に知っている。
痛みを感じない――違う。彼は痛みへの関心が希薄だ。必要ならそこを無視して踏み続ける。
ここまで記して、私は”怪物”という語を一度入力し、削除した。
定義するには、私は彼をまだ知らなすぎる――ただ、記録上の結語として残すべきは一つ。
彼の優秀は、我々が想定する“人”の運用域から、静かに、しかし確実に逸脱している。
――ロドスアイランド号:ヴァレンの研究室
クランチガルムフォームは確かにヴァレンバスターの性能を跳ね上げる。
だがその分、ヴァレンバスターにかかる負荷が凶暴だ。
銃撃を主戦術とするヴァレンシステムとは、本来相性が悪い。
要するに、肝心の武器――ヴァレンバスターの銃身が壊れる。
自分の手を止めずに考える。強化する、で終わらせるのは簡単だ。
強化となれば新素材の模索に思考錯誤、試験運用から実用まで……手間でだるい。
なら設計を根本から変えればいい。銃身そのものを“交換する”仕組みに改装する。
これなら壊れても取り換えで戦闘を継続できる。壊れることを前提に設計というわけだ。
銃撃を主体としない別形態でなら戦えないわけじゃないが、不便さが手に馴染まない。
取り付けはワンタッチで行けるようにラッチ機構を簡略化した。
現場での交換が前提なら工具は不要。交換手順は三段階に留める。
どの段階でどのスイッチが切り替わるかを体で覚えさせる。
戦闘中でも手探りで出来るように、動作を身体に覚えさせる。
『だが使い捨てが前提になれば予備を作るコストがかかる、ガルムの常用化はまだ先だな』
「あー!いたいた……探したよー?」『ああ?……なんだ、まただるい任務か』「もう、違うよ!」
ロドスのエリートオペレーター、ブレイズ。
ロドスとは形式上は俺と対等――つまり俺の立場が外部戦力という肩書きに変わりはない。
だが実際に戦線へ駆り出される時、俺には必ず監視役が付けられる。その役がこの女だ。
監視役をつけられること自体には文句はない。俺の立場なら当然だ。
けれど、実際は違う……ブレイズの行動に付き合えるのが俺しかいない。
どちらかといえば補佐役を当てがわれていると言った方が正しい。
高空三百メートルからの自由落下?あいつにとっちゃ軽い準備運動。
それだけなら可愛いもんだ……それ以外にも思うところは色々あるけどな。
まあつまり……俺とブレイズは相性が極端に悪い。性格や価値観の違いなんかじゃない。
物理的に――戦闘技能が根本から噛み合わない。
監視役であり、同時に俺の行動を制限する“天敵”。
そういう存在をぶつけてくるロドスの采配に、理屈としては納得している。
だがもしこれが表向きではなく、本心からの配置ならさすがの俺でも文句の一つは言いたい。
「……前の任務はあんなに怪我したのにもう平気なんだ」『"グラニュート"だからな、お前は?』
「誰かさんのおかげで大きな怪我はしなかったから平気、これから任務だし」『それで任務は?』
「だからちーがーうー!お友達が君のこと探してたからここに来たんだよ?」『……?』
「ペンギン急便の子達になにか依頼してたんじゃなかった?」『……ああ、思い出した。』
ペンギン急便、炎国にある龍門のトランスポーターらしい――所で何の依頼だったか。
そうだ、ヴァナルガンドと名がつくゴチゾウとその主人の捜索を頼んだはずだった。
『探してる、つまりここに来てるんだな?何処にいる』「んー、
依頼は確かにした覚えが薄らあるが、結果を口頭で説明しろと言う風には言っていない。
つまり……何か面倒な事が起きた?それなら依頼をほっぽいて忘れて欲しかったが。
「ん?あー!ハンティ見っけ!」『そのあだ名教えなきゃよかった』「お疲れ様です、ヴァレンさん」
光の輪となんか羽見たいなのが背中に浮かんでる……この世界じゃさんくた?だったか。
そんな見た目をしているのがこのエクシア、出会いはのきっかけはゴチゾウだったな。
産まれたてのゴチゾウに艦内の事を教えていたらいつの間にか着いてきていた。
それで何やかんやあって丁度龍門に訪問しようとしていたことから例の捜索依頼を出した。
「探したよ〜ゴチゾウちゃん達に案内してもらうとしたけど何言ってるのかわかんなくてさぁ?」
『側から見りゃ小物に話しかける幼児だな』「あー……ヴァレンさん?お口が悪くなってますよ」
この小さいウサギの耳が生えたバニーガールはロドスのCEO、アーミヤ。
この世界で言えば種族はコータスと呼ばれているらしい……アーミヤは何と言うか。
年下の上司?という感じで距離感がいまいち掴めん。何処か知り合いに容姿が似てるが――。
「?……どうかしました?」『いや、お前俺には当たりきついなって』「そんなことありません。」
他人の空似で似ても似つかない、というか年下のこいつにはあまり強く出られないのが不服だ。
「まあまあ、所で……例の依頼について報告だよ?まずは……見て見てこのゴチゾウちゃん」
〔ガウ〜……ガウガウ!〕「おっとと……この子すっごい気性荒くてさー……」
『攫ってきたのなら当然だ、身体こそ小さいが人間と変わらない感受性はあるからな』「へぇー」
やっと見つけた……こいつを探すのに1ヶ月、この広い大地では早い方だな。
『牙は鋭いが瓶の中に入れておけば何もできん。アーミヤ、俺の部屋にこいつを保管してくれ』
「はい……?何処かに行かれるんですか?」『龍門へ行く、監視は好きにしろ怪我しても知らんが』
俺がロドスにいる主な目的は一つ、元の世界へ帰ることだ。現時点で実行可能な方法は二つ。
一つ目は、自分で世界を渡る装置を作ることだ。実際に触れたことがある。
見た目はただの板、質感も重さも板そのもの。
条件が揃うとその表面に紋章が浮かび、近くの扉を引き寄せる力を発揮した。
仕組みは皆目見当がつかない。しかし確かにそれは"世界へ通じる道具"だった。
ならば――世界を渡る方程式がここに存在するということになる。
方程式があるなら、俺がそれを再現してやればいい。
二つ目は、この世界で与えられた役割を果たすことだ。ここまでに二度、世界を渡った。
遠回りに見えたが、その遠回りが"世界を渡る者"に課せられた責務の輪郭を教えてくれた。
俺の役目は世界で生じる特異点を探し出し、その世界に降りかかる最悪を取り除くことにある。
そのためにまず必要なのは“存在”を見つけることだ。
探索の手掛かりはある程度絞れる——見知らぬゴチゾウが語るものが、道標になる。
「あーちょい待ち!だったら〜ペンギン急便が監視役も案内役も請け負おうか?」『……あぁ?』
「良いんですか?ではどうかヴァレンさんのことをよろしくお願いします、お代はロドスに」
「OKOK!」『……いや、待て何で勝手に決める』「えー?でも悪い話じゃないでしょ?」
「我儘はダメですよ。エクシアさんは良い人ですから言う事ちゃんと聞いてくださいね?」『だる』
こうなった以上上司に意見できる立場ない俺に発言権は――そうだ、忘れないうちに……。
『ほら、出てこい』〘む〜……んぐぅ〙『頭から出てくるのは相変わらずだな』
腹を叩いて出てくるこいつは……何と言うべきか、従来……いや眷属の一種だ。
ゴチゾウとは違い小さな子供のサイズで、一応独立して戦う力も持っている……が。
〘んー?〙「あー!お餅ちゃんだぁ!元気してた?ほっぺは柔らかいねぇ〜私のこと覚えてる?」
〘んー……んん〙『お前はミヤミヤのもとでお留守番だ』「はい、こっちにきましょうねぇ」
〘みやみやぁ!……んぅ?ん!……んっ!〙『すぐ帰ってくるから待ってろ』〘うー……んー!〙
こいつは未だに謎が多いが腹から出てきては俺を守るような動作を取る――が普段は弱い。
フニフニと柔い身体のせいかよく転んでは涙目に、敵意がない対象には指先一つで転ばされる。
そのくせゴチゾウを食べなければ人の形を維持できないそうで産んでは食われて困りものだ。
正直燃費が悪く腹の中に留めておくのが理想だが……非常時に制御はしたくない。
〘んー……みやみや、みやみや!〙「すぐに帰ってきますからお留守番しましょうねー……では」
『ああ、任せた』「じゃ、車に乗ってぇー……そーだ前に話したテキサスも今回は同行するよ」
『そうか』「テキサスはお菓子に目がないしハンティもよくもぐもぐしてるから良い友達に――って」
モタモタと喋っているエクシアを横目に後部座席へと乗り込む――こいつがテキサスか。
「……?」『エクシアの客だ、後のことはあいつから聞いてくれ』「そう」「2人ともドライだねぇ」
――炎国:龍門
……移動都市、昔SF小説でも映画でも見たな。
終戦争から数百年後、荒廃した世界で地を這う移動型の都市が他の都市を捕食して生活。
のような話だった気がする、詳しくは覚えてないが……実際この世界の都市はそれに似てる。
話に当てはめればウルサスとかが、巨大移動都市みたいな感じか?
「その顔、なんか考えてる顔だね?」『大したことじゃない……故郷の映画を思い出してた』
「……映画」「へぇー?なになに?どんな映画?」『まず巨大な移動都市が他の都市を捕食する』
――龍門:スラム街
「とうちゃーく、ロドスで渡したゴチゾウちゃんはここで見つけたんだぁ」『……スラムか?』
「龍門は多彩な人種を受け入れて発展した、その反面……こう言う場所には色んな奴が集まる」
犯罪者にマフィアに感染者。言えば裏社会、ロドスに会わなければ俺もここにいた。
「あの白いゴチゾウちゃん達は普段群れで行動するみたいでさある程度捜索場所を絞ってみた!」
『……随分と用意が周到だな?』「気前がいい会社っしょ?」「……ごちぞう?」
「ハンティはお腹からお菓子の妖精を出せるんだってぇ……ほらこの子!」〔ざく!ざくざく!〕
「お菓子から……?アーツか?」『そう言う体質だ、お前らで言う……
「それでなんかかっちょいい銃で変身もできるだって!映像でしか見てないから楽しみだなぁー」
「……変な奴だ」『狼女に言われちゃお終いだな――ところで、さっきの口ぶりから察するに』
黒ずくめの身なりがいい奴等が出てきたな……こいつらマフィアか?
「うん。なーんか、最近物騒なんだよね……狙いはハンティっぽいし」『規模は』「わかんない」
「……ここで乗り込むのは無策だ」『ああ、目的の為なら馬鹿でも演じよう。依頼は終わりだ』
「えぇ?でも監視……」『報酬が足りなきゃロドスにごねろ』「……うーん、どうする?」
「……依頼人がそう言ってるなら、仕方ない」「えぇ〜……ちょっと待ってよー」
人払いは済んだ。残ったのは黒ずくめの男たち、身なりこそマフィアだが構えは素人のそれ。
術師の気配はなし。差し向けてきたのはナイフ持ちだけ、舐めているとしか言いようがない。
さて、誰の恨みを買った結果だ?考えるのは後だ、まずは数を減らす。
「……ここで死ね。”龍門の傭兵”」『?……ロドスの傭兵だ』
基礎情報
【コードネーム】ヴァレン
【陣営】ロドスアイランド
【性別】男性
【戦闘経験】5年
【出身】地球
【誕生日】6月10日
【種族】不明・グラニュート
【身長】175cm
【鉱石病感染状況】非感染
能力測定
【物理強度】優秀
【戦場機動】優秀
【生理的耐性】優秀
【戦術立案】優秀
【戦闘技術】卓越
【アーツ適正】■■
個人履歴
記録上、彼の経歴は断片的であり、ロドスが掌握している情報は極めて限られている。
彼は異世界に飛ばされてからずっと自分の世界への帰り方を模索しているらしい。そのためか理論上実用可能な異世界の技術体系に優れている。
初めて任務に駆り出された際、戦場における即応力と異常なまでの自己修復力を示し、複数のオペレーターを無傷で任務に帰還させた実績を持つ。
その戦闘行動は「死を恐れない」ものと誤解されやすいが、実際には自らの限界を精確に把握し、損耗を代償に戦術を成立させる冷徹な計算に基づいている。
医療部および技術部の双方が、彼の身体構造と行動原理に強い関心を寄せており、特に「お菓子から小型の眷属を生み出す」現象は確認例がなく、現在も研究対象とされている。
また、ロドス内部では戦闘補佐だけでなく研究顧問としても活動しており、鉱石病関連の基礎資料を短期間で独自に再構築した実績がある。
一方で、組織規律の外に立つ「外部戦力」としての扱いは変わらず、監視役が常に伴うことが条件となっている。
彼がその立場に留まりながらも戦線に投入され続ける理由は単純明快である――“優秀だからだ”。
健康診断
造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。
循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。
以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。
【源石融合率】0%
鉱石病の兆候は見られない。
【血液中源石密度】非公開
医療部の決定により、関連データは非公開とする。