雇った傭兵がチョコの怪物になって戦うんだが?   作:かな餅

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【ロドス内部資料:ゴチゾウ観察№1】

ゴチゾウ――それは、グラニュートと人間の血が交わった稀有な存在、酸賀絆斗が生み出す“小さな眷属”の総称である。誕生の原理はいまだ不明瞭だが、共通しているのは「お菓子を媒介として具現化する」という一点だ。チョコレートやポテトチップスなど、いわゆる“嗜好品”に該当する食材を摂取した際、その味覚や構成要素が直接ゴチゾウの個性へと転写されるらしい。

誕生した個体の中には、きなこ餅から生まれ肩に乗せると疲労を軽減させるもの、知育菓子から生まれる個体は多少の育成から優秀な整備士のような働きを見せるものなど、ロドスにおいても実務的価値を示す例が確認されている。外見は菓子そのものを象った小物であり、しかしながらその動きは感情豊かで、知能もまた人間に劣らない――むしろ一部は、計算や学習の速度において人間を凌駕している節すらある。

特筆すべきは、彼らが“生みの親”の影響を強く受ける点だ。絆斗の持つ倫理観、あるいは優しさが転写されているのか、感染者・非感染者を問わず隔てなく接する姿勢を見せる。ロドス内ではマスコットとして人気を集める一方で、医療部門の調査では、創造時の感情や心理状態がゴチゾウの性質や能力に変化をもたらすことが報告されている。

感情が媒介となる“命の菓子”。それがどこまで意図的に制御できるのか、あるいはどの段階で“命”と呼ぶべき段階に達しているのか――それは今後の研究に委ねられる部分が多い。

ひとつ確かなのは、ゴチゾウがロドスという共同体に穏やかな影響を及ぼしているという事実だ。戦場の緊張を和らげ、誰かの笑顔を引き出す。小さなその存在は、もはや単なる被験体でも、珍しい玩具でもない。我々が見守るべき“新たな仲間”である。


――ロドスアイランド人事部門:ゴチゾウ福利厚生担当者




――追記:CEO

酸賀絆斗――ヴァレンさん、彼の生み出す“ゴチゾウ”に関して私個人の見解を補足しておきます。

彼がこの世界に来てからというもの、ロドスは多くの変化を経験しました。

彼の行動は時に独断的で、時に危うくもありますが、その根底には一貫して「守る」という意志が存在しています。

彼は誰かを救うために戦い、時には自分自身の限界を超えてでも行動してしまう――そんな人です。

彼の出自や、その力の理屈は未だ完全には理解されていませんが、彼が心優しい人間であることだけは疑いようがありません。

ゴチゾウは、彼のその人間性の延長にあります。

お菓子を媒介に生まれるその小さな存在たちは、まるで彼の心の断片が形を得たかのように、優しさと純粋さを持っています。戦闘の中で生み出されるものもあれば、誰かの笑顔を見て生まれるものもある。

それらすべてが、絆斗という個人の内側にある“願い”の表現なのだと、私は感じています。

彼がここに残した影響は少なくありません。

医療部門や人事部門が記録する実験的価値だけでなく、隊員たちの精神面においても、彼とゴチゾウの存在は確かに支えになっています。

それは、彼自身が異世界から来た”外部戦力”であっても、確かに“ロドスの仲間”である証拠だと思います。

彼が再び別の世界へ帰る日が来たとしても、その名と功績、そしてゴチゾウたちは、ロドスの記録から消えることはないでしょう。

彼のような存在が一度でもここにいたという事実は、私たちがこの不安定な世界を歩み続けるための希望そのものです。



……それと、私がたまに寄りかかってしまうのはゴチゾウさん達の感情に影響されているからであって、甘えているわけではないことをここに記しておきます。


episode 5 仮面 Ryder

 意識が飛ぶ直前、何を見て、何を捨てたかだけは覚えている。

 

 

 

 

 

 

 最大出力で相殺した。そこまではいい。問題はその先だ。

 

 

 

 

 

 

 押し負けた。武器も、ゴチゾウの出力も、全部が一段ずつ足りなかった。ただそれだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 俺一人の敗北なら飲み込める。だが、あの状況でそれは最悪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 グラニュートは人質を捨て逃げに転じ、射線上にはまだソラという女がいた。

 

 

 

 

 

 

 俺だけなら躱せた。皮肉なことにどうするかを考えるためのわずかな時間だけは残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 もう一発、撃てば届くか?かき消せるか?――いや間に合わない。

 

 

 

 

 

 

 

 なら、受け止めるか?時間は稼げる。人質は逃げられる。そして俺は、たぶん死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 合理で言えば退くべきだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 保身に回る賢さがあるなら、俺はそもそもこんな世界に来ていない。

 

 

 

 

 

 

 

 選べ、と世界が言われてるみたいだ。間に合わない一手か、間に合わせる犠牲か。

 

 

 

 

 

 

 

 結局、俺に残ったのは一か八かだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

〔いーとちょこ、いーとちょこ……〕大丈夫だ……エクシア、ロドスに連絡は?

 

 

 

 

 

「うん……あー、向かってきてくれてるけど〜一旦アジトで手当した方が良くない?」〔いーとぐみ。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもし?聞こえますか?アーミヤです……よく聞いてください、まずはヴァレンさんを――

 

 

 

 

 

 

 

 

――???の拠点

 

 

 

 

 

 

『……死んだか?』「生きてるよー……目覚めの一言がそれなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 正面から抱え込んだ瞬間、肺の奥で空気が裏返った。

 

 

 

 

 

 

 爆ぜたのは起爆性――拡散する衝撃。貫かれなかっただけ、運はいい。

 

 

 

 

 

 

 両手で押さえ込んだせいで、掌は細かく裂けている。

 

 

 

 

 

 

 指の付け根にざらつく感触。白いものがちらっと見えた気がするが、見なかったことにする。

 

 

 

 

 

 

 握るたび、砂利を噛むみたいに骨がこすれる音がしてうるさいな。いてぇ。

 

 

 

 

 

 

 熱は来ていない。焼けてはいない。代わりに、胸の前で破片が弾けた、

 

 

 

 

 

 

 息を吸うと、一本ずつ順番にきしむ。息を吐くと、今度は別の場所が文句を言う。

 

 

 

 

 

 とりあえずそういう会話だと思えば我慢できる。

 

 

 

 

 

 

 威力は相殺しガルムの装甲も重なって……それでもこの重症。死なないだけましか。

 

 

 

 

 

 

 それに両手で受けずにいたら、まっすぐ胸骨を割って心臓まで届いていた。

 

 

 

 

 

 

 厳密に致命傷かどうかは医療班の領分だ。俺は自身はまだ動けるならいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 五体は揃ってる。指は全部ついてる。握力は落ちたが、引き金は引ける。十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前の仲間は?巻き込まれたか?』「そっちはだいじょーび……ハンティも平気そう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ、この程度で済んだなら数日寝れば治る』「のようにはどう見ても見えないけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 ロドスにはもう連絡が入っている。なら――到着しててもおかしくない。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は回収されて現場から退くことになる。確保された人質の奪還は断念せざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事情を説明したところで、どのみちこの件を解決できるのは俺しかいないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

『この場所は?』私達(ペンギン急便)のアジト」『ここからスラムは?』「遠い、車推奨」

 

 

 

 

 

 

 

 

『許容内だ……こっからどの方向に向かえばスラムだ?』「えっ?その状態で行くの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『だるいがグラニュートの手元にある人プレスがいつ消えるか分からないんだ、行くしかない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハンティって意外と他人事には敏感なんだ?」『こういうのは元々俺の仕事でもある』

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっかぁ~……う~ん、でもアーミヤにはなぁ」『世話になったな、危険手当貰って贅沢しとけ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだねぇ、終わったら何食べる?」『ポテトチップとチョコ』「趣向がテキサスだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 他に気がかりなのは、あの白いグラニュートハンターだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あいつには人としての情がまるで感じられない。倒すのではなく、殺すつもりで動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのために何を犠牲にしようと意に介さない――まるで昔の俺を見ているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてあいつはあのグラニュートを殺そうとする?考えても答えは出ない、悩むだけ無駄か。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行こっか」『ああ……ぁあ?――いや、なんでお前も来る?』「ん?仕事だけど(監視役)

 

 

 

 

 

 

 

 

『んなだりぃ事良いだろ……終わったら大人しく帰るだからここで待ってろ』「ん~やだっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ため息で胸骨が軋んで痛い……口を尖らせるその仕草が、戦場に出る奴の態度とは思えんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こいつは確かに戦えて肝も据わってる、ただ相手が悪い。あのグラニュート恐らく強い。

 

 

 

 

 

 

 

 闇菓子に依存しているような形ではなかった、なら売買を目的としたタイプのバイト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その手の奴は理性があって判断力もある、あの白いハンターから逃げてる時点で並みじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 相当な修羅場を潜り抜けてきた個体だ――そして何よりも。

 

 

 

 

 

 

 他のグラニュートが潜んでいない保証なんてどこにもない。連れて行くにはリスクが高すぎる。

 

 

 

 

 

 

『悪いがさっきみたいな技はそうそう連発できないんだ、武器の召喚も安くない』「まじ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ガルムはクランチチョコと大量のお菓子、ゴロゾウは石チョコが前提として必須だ。

 

 

 

 

 

 

 

 ガルムは他のゴチゾウのようにすぐ使えるがゴロゾウは実用まで手間が掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず殻の状態から自壊するのを待って、ヒナとして孵化した個体でやっと扱える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 てか……一回変身して派手にゴチゾウを使ったもんだから腹減ったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!ちょいまちょいまち!さてはお腹空ているねぇ?アーミヤから聞いてるから待ってて!」

 

 

 

 

 

 

 

『……はぁ』起きてたのか、怪我の具合は……見ての通りだな。消毒するか?テキーラがある

 

 

 

 

 

 

 

『スピリタスか、包帯巻く前にぶっかけてねえのか?』痛そうだったから『そうか』

 

 

 

 

 

 

『だったら気休め程度に吹きかけてくれるか?……冗談だ――』……分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本気で吹きかけられたというよりは吐き出された包帯に酒がしみ込んで物凄くいてぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウォッカは手首が千切れた時に試したが流石スピリタス……焼ける痛みで気が冴える。

 

 

 

 

 

 

 

『嬢ちゃんがそんなにノリが良い方とはな』ひょうはんだったもっとひゃやく……ゔぇッ

 

 

 

 

 

 

 

『スピリタスを割もしねえで口に入れる馬鹿がいるとは思わねえよ。水はないがチョコはあるぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

ん。『それであのわんぱく(エクシア)と一緒にお前も来るのか?』当然仕事だからな……うま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仕事で結構だな。所で戦うつもりなら武器はどうするんだ?』ぽて――『出せんぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 さてどうしたもんか、こいつら考えなしでついて来ようしてるみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 役割を与えるなら人プレスの回収だが……隠し場所がイマイチわからんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟を根城にしているとして、スラムからピンポイントでどう探すべきなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一番はゴチゾウの人海戦術なんだが生憎今は数がな。まあチョコゾウとりあえず増や――。                                      

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!手作りアップルパイッ」『……アップルパイ、怪我人にか?』「うん、怪我人に」

 

 

 

 

 

 

 一口齧る……さっきまで血と鉄の匂いしかなかった口の中に、甘ったるい香りが広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 表面はさくっと砕けるのに、中から果汁が熱を残して溶け出してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、血だらけの口に入れるもんじゃない。腹が減ってるとは言え、口の中が違和感しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 けど、噛んでるうちに妙に肩の力が抜けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 甘さと酸っぱさの釣り合いが、頭の奥で鳴ってた痛みや軋み、葛藤を一瞬だけ黙らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一口。シナモンが微かに立って、舌の奥にからっとした風が抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに混じるのは"早く良くなれ"、"笑って欲しい"、"一緒に行く"という、三つ巴のわがまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エクシアらしい味なんだろう……俺には甘すぎるが、身体はこれで十分らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえハンティ、私達って何が出来るかな」『……』「私珍しく怒ってるんだよねー」

 

 

 

 

 

 

 

「ほらうちのソラが連絡つかないと思ったら攫われてたりしてたし?正直黙ってられないって」

 

 

 

 

 

 

 

 

『……菓子はあるか?』足りなかったのか?『ああ、ありたっけ持ってこい興が乗った』

 

 

 

 

 

 

 

 

〔ぱいっ!……ぱい?ぱ〜い?〕「なんか生まれた!」『やっぱりこっちの調子も戻ってきたか』

 

 

 

 

 

 

 

 数日前からゴチゾウがぱたりと出なくなった。原因は分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 似たことは以前にも何度かあったが、今回は一番厄介なパターンを引いてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケルシーの見立てでは精神的な要因らしい。俺の推測では、それは"飽き"だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 毎日のように菓子を摂り続け、その大半の味に舌が慣れきってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 厄介なのはこの状態に陥ると新しい菓子を取り込んでもゴチゾウがなかなか生まれてこない。

 

 

 

 

 

 

 

 今までその打開策は見つけられなかった……が、今なら何となく答えに手が届く気がする。

 

 

 

 

 

 

 

『とりあえず、ゴチゾウを今から増やして人海戦術でグラニュートを探す』?……分かった

 

 

 

 

 

 

 

『ソラがいつ攫われたのかわかるか?』「大体……そうだ!1週間前、ライブしてた時!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうか、一週間前か。グラニュートは大規模な人攫いを一度やらかすと、しばらく姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 そして一週間後――集めた“人プレス”を納品し、また活動を再開するのがパターンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 もし今日がその日だとしたら……別世界に通じる扉が、開く時でもあるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

『お前達にはスラムにある潜伏場所に向いている場所を探してくれ、そこでゴチゾウをばら撒く』

 

 

 

 

 

 

 

グラニュートを見つける方法は大体2つ、足で情報を拾って回るか狩場に奴らを誘き寄せるか。

 

 

 

 

 

 

 

 俺が選んできたのはほとんどが前者だ。実際に歩き、動き、探す。要はゴチゾウの人海戦術。

 

 

 

 

 

 

 

 これまで討伐してきたグラニュートの大半は、こいつらをばら撒くことで発見にこぎつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 特に街中のように入り組んだ場所では、奴らの存在を炙り出す確率が格段に高い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 このスラムに潜伏しているグラニュートを探すなら、結局こいつら以上の手段はない。

 

 

 

 

 

 

 

ロドスがもう到着するようだ、合流するか?『今から帰るって言え、時間稼ぎになる』

 

 

 

 

 

 

 

 

――スラム街:■■■■広場

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨上がりのアスファルトが、油を含んだ匂いで肺を刺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 灯りは抜け、無人になった露店のシャッターは半分だけ降りたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼠の気配と、子どもが消えた路地の冷たさが、まだ残っている。

 

 

 

 

 

 

 

……あと1人「暴れすぎだの、お前さん」暴れたのはあいつらの方だ、お前らは何をしてる

 

 

 

 

 

 

 

「別の問題に対処しておる、しかし今回はやけに梃子摺っておるの?」逃げ足が速い奴でな

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い狼面の裏で呼吸を整える。ヴァナルガンドの喉鳴りが、金属のように乾いている。

 

 

 

 

 

 

 

 ガレッド。あの子だけ戻ってない。後はどうでもいい。目の前の老人は歩調を変えない。

 

 

 

 

 

 

 

 俺との距離を測る癖がある。俺を追い出す、殺すも面倒だと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 少なくとも敵じゃないそれだけで十分だ。俺は、子どもが救えれば他は要らない。

 

 

 

 

 

 

 

「お前さん、飢えておるな。いつから食べてない?」ガキが消えてからずっと探してる

 

 

 

 

 

 

 

 懐から鈍い包み紙を投げる音。開けば、砂糖の結晶が光る。

 

 

 

 

 

 

 

犬の餌付けのつもりか?「犬ではなく、野生。むしろ“餌”さえあればよう動く。違うか?」

 

 

 

 

 

 

 

 舌にのせる。甘さが神経を走り、面の奥で視界が澄む――やけに甘い。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わしは治安を守る。お前さんは子らだけを守る。そうじゃな?」ああ。お前は街を見ていろ

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心して見れているとも、お前さんが飴ひとつで暴れぬ道だけを選んでくれるからの」

 

 

 

 

 

 

 

 低い笑いが広場にこぼれ、すぐ風にちぎれる。老人の視線は俺の肩越し、暗渠の黒へ。

 

 

 

 

 

 

 

「一週間前だ――奴らは大きく攫い、潜った。今夜、納めに出る」場所は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祝祭のふりをした納屋がある」血と薬と……甘い焦げ。やっぱりあそこか

 

 

 

 

 

 

 

 穿鉄機に指を掛ける。そこにガレットがいる。遅ければ向こう側へ扉。リミットは今夜。

 

 

 

 

 

 

 

「お前さんのフミヅキが、久しぶりに食事でもと、言っておったな」あいつの言うことは聴く

 

 

 

 

 

 

 

「そうしなさい、お前さんは子を救え……その間に、わしはスラムを鎮める」

 

 

 

 

 

 

 

そうだな「わしも子らは守る。違いは“子らのために他を秤にかける”かどうか」

 

 

 

 

 

 

 

 雨樋の滴が、面の縁で割れる音を聞く。この老人は今日俺が何を捨てるか見に来ているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あの子は確かガレッド、だったかの?」そうだ「お前さんはなんて名じゃったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの誘導尋問に耳を背けて踵を返す、休憩は終わりだ。今日は雨だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フミヅキの所へ行く前に暖かいスープでも作ろう、そうして寝かしつけて――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「南の倉庫筋、紅灯の納屋。甘い煙が灯るあそこじゃぞ」お前は来ないのか

 

 

 

 

 

 

 

「言ったじゃろう、別の問題に対処しとると」そうだったな

 

 

 

 

 

 

 また包みが飛ぶ。今度は小さな飴が幾つか。掴まない。足元に落ちる音だけを聞く。

 

 

 

 

 

 

「……お菓子は足りるか?」足りん「なら良い。お前さんは、足りぬときほどよく働く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 老いぼれは背を向ける。足は一歩前へ。ヴァナルガンドが鳴き始めた。終わらせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――スラム街: 南の廃倉庫

 

 

 

 

 

 

 

 

『遅い、持ち逃げか?……いや人プレスの価値はわかんねぇ筈だ。何度も取引はして信頼もある』

 

 

 

 

 

 

 

 逃げ隠れしたマフィアは全て捕らえた、人プレスを持っててくれたお陰で大半は確保出来た。

 

 

 

 

 

 

 

『妙だな……別のグラニュートに横取りされ――いや、グラニュートハンターの仕業か……?』

 

 

 

 

 

 

 スラムにいるグラニュートはこいつ1体、最後の人プレスはあの箱に入ってるはず。

 

 

 

 

 

 

「……あぁっ!居たぁ!」『!?……こいつさっきの野郎と居た……待てこの野郎ッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 単純な策だがわざと見つかって目標物と標的の距離を離す、成功したが離れるだけじゃダメだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぇ〜!このチョコ銃全然効かないじゃん!」『逃げるなこのッ――』「ハンディ今!」ロッシュ

 

 

 

 

 

 

 

――BEYOND BIO LOGY――

 

 

 

 

 

―― ROCHELLEGARD SAKU SAKU ――

 

 

 

 

 

 

 

――PHASE 2 VALEN――

 

 

 

 

 

 

 

よくやったエクシア、あとは任せろ「うん、チョコ銃食べ過ぎて撃てなくなっちゃった」馬鹿野郎が

 

 

 

 

 

 

 

 目標物から距離を離し、動きを止める。エクシアがロシアクッキーを焼いていて助かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現状の最高スペックはカウンター型――ロシュアガルド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 見たところ、こいつは典型的な脳筋型。馬力任せ、軌道は一直線。

 

 

 

 

 

 

 

『どきやがれッ!!!』ロッシュああ、真正面から受けるのは悪手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足場が軋み、圧縮された空気が波のように押し寄せる……圧力が凄いな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あくまでもグラニュートの突進、その質量を正面で止める必要はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 正面で殺さず、盾をわずかに傾け衝突の角度を作る。衝撃は鋭いが、方向を与えれば力は散る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 掌に重さ、腕に圧、肩に響き、背中を抜けて地へ落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流れを止めずに通す。力の出口を探しながら、踏み込みのタイミングを測る。

 

 

 

 

 

 

 

……ロッシュそこだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 地を踏み鳴らし、流れた衝撃が胸から腕へ、腕から盾へ伝い分散していた力が一点に集束。

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま、相手の推進力を折り返す形で打ち返す。肉が沈み、骨が軋む。

 

 

 

 

 

 

 

 グラニュートの腕が弾かれ押し込めば体ごと軸をずらされて宙へ浮く。衝撃の流れは掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりの戦い方だが盾越しに伝わる反動の震えが心地いい。これぐらいなら許容範囲内だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ!いけぇ!ハンティ!」エクシア、行くぞ「あ、そだったそだった!……じゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで大半は回収出来たはずだ、全てかは分からないが……どの道納品には不十分だろう。

 

 

 

 

 

 

 

『てめぇ……生きて帰れると思うなよ』こっちのセリフだ、よその世界で人様を攫いやがって

 

 

 

 

 

 

 

 

『それがてめえに何の関係がある?てめえだって他所もんだ……なあ、元の世界に帰りたいか?』

 

 

 

 

 

 

 

あぁ?『別世界に通じる扉があってな、ストマック社が元々使ってたんだとよ』

 

 

 

 

 

 

 

 ラキアの話じゃ完全に破壊……いや、作った奴がいたら直されててもおかしくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『後一回の納品で俺はそれを自由に扱う権利が与えられる、お前と俺は同じ世界……分かるな?』

 

 

 

 

 

 

 

それを出汁にバウエルへ取引するつもりか?『もう、あんな場所に用はねえよ』

 

 

 

 

 

 

 

 その扉は何処だ?何をどうしたら開けられる?原理は……呪文か何かが必要か?――権利。

 

 

 

 

 

 

 

 ニエルブは適当な扉に手を翳して世界を行き来していた、あいつ独自の技術。だと思ったが。

 

 

 

 

 

 

『俺はあの世界にはもう関わるつもりはねぇ、でもお前は話が通じる奴だ……チャンスをやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 元の世界へ帰るか ――

 

 

 

 

 

 

 

 

―― こんな世界で余生を迎えるか ――

 

 

 

 

 

 

 

 

……話しててわかるよ。お前は誠実な奴だ……その扉は何処にある?『俺が知る限り一つ』

 

 

 

 

 

 

 

 指を指した方角は最後の人プレスがあった場所の壁に立て掛けてある扉、見た事がある。

 

 

 

 

 

 

 

 1週間ほど前か?……ブレイズ隊に入って戦ってる時に見た壁にかけてある異質な黒い扉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時のグラニュートは率先してそれを庇うように動いていた……つまり、予想は合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『此処で誰が消えようとお前が元の世界に帰ることに何の関係もないだろ?』その通りだ

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら決まりだ、人プレスを――』俺が元の世界に帰る理由に誰かが犠牲になる必要はない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これでこの世界へ繋がる扉の大半は破壊できたはずだ、失踪事件も減らせるはず。

 

 

 

 

 

 

 

『……は?』これで人プレスもお前も向こうへ行けなくなった、どこへ通じるのかは知らんが

 

 

 

 

 

 

 

『正気かお前……こんな世界に残ってまで何がしてぇんだよ!?』残るつもりはない、帰る

 

 

 

 

 

 

 

 

例え魔法でも実際に方法がある。なら自分で再現して自分で帰れば良い。それだけの事だ

 

 

 

 

 

 

 

『だったら人プレスもお前には関係ないだろ……!』ああ、その通りだ

 

 

 

 

 

 

 

 俺は酸賀の息子で、グラニュートハンターで――仮面ライダーになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どの世界にいようとそれは変わらない。俺は変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は自分の力で帰る。自分の手で道を開き、そのついでに人間を守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界はクソッタレだ、人類を発程させた叡智(オリジニウム)が寄生虫のように人類を蝕んでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界は都合良く不安定で、最悪に塗れて、決して立ち寄りたいとは思わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それなのにクソッタレというそんな言葉で片付けるにはこの世界は魅力的な奴らが多すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

かつてお前のように人を攫う愚かな奴がいた……だが過ちを認め引き返した。お前はどうだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

『顧客の為に美味い菓子を仕入れる……それが何の罪になる?』人間の幸福を出汁にしてもか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ、幸福な人間ほど美味いスパイスになる……この前攫ったのは特に良かったなぁ?』

 

 

 

 

 

 

 

あくまでも闇菓子と共にあるか『そうだッ……死んでも手放しはしない』……残念だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――SNACK SECOND DECORATION ZAKUZAKU――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――CHOCO THIRD DECORATION PAKIPAKI――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま闇菓子と共に散れロッシュ〔ザクッ!〕〔ヂュッ!〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも通り啖呵を切ったのは良いが――このグラニュート、とにかく固い。

 

 

 

 

 

 

 初撃を返した時点で嫌な手応えがあった。

 

 

 

 

 

 

 受けた力をそのまま叩き返したのに、潰れも削れもしない。

 

 

 

 

 

 

 

 骨があるというより、芯の密度そのものが違う。

 

 

 

 

 

 

 

 あの魚のグラニュートも厄介だったが、あれは“能力”の強化型。

 

 

 

 

 

 

 

 

 対して、こいつは“構造そのもの”をいじられているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 表層の反応が異常に鈍く、打撃の浸透が浅い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 内部には確かに衝撃が通るが、皮膚を裂くどころか、骨を砕くには足りない。

 

 

 

 

 

 

 

 サンドバックの中に圧縮したサンドバックが何個も入ったみたいな手応えだクソが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 過去に戦ったゾウ型の個体よりも明らかにタフだ。反応速度も鈍くない。

 

 

 

 

 

 

 

 つまり使いっぱしりのバイトじゃなく、本格的な戦闘要員……バウエルの幹部相当だな。

 

 

 

 

 

 

 

 これを正面から削るには、クランチガルムの貫通力に頼るしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、あれを撃ち込むには一瞬でも隙が要る。その“隙”をこいつは許してくれないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 弱らせる手も考えたが、それに必要なスペックが今の俺ではまるで足りていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まともにやり合えば確実に押し負ける――これは俺であればの話だ。

 

 

 

  

 

  

 

……生きてたのか?しぶとい奴だ来ると思ったよクソ野郎『分が悪すぎるッ……!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝ち筋はもうあの白い奴に掛かってる。いや正確には、撃破できるかどうか――それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまで追い詰めておいて逃したら、グラニュートは間違いなく暴れる。とにかく暴れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の経験上、こういう利口なタイプほど足掻き方を知っていて最後まで人間社会へ爪痕を残す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、ここで仕留める。後がだるいのは御免だ……ただ、こいつを倒す手順も相当にだるい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い奴が武器を構えて銃口をこっちに向けた、やる気だな……巻き込まれたくはないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今はこれでいい。利用する。今はこいつを削るには、それが一番早い――はず。

 

 

 

 

 

 

 

まあいい、肝心なのはお前だ……『ッ……待て!人プレスなら別の奴が全部持ってった!』

 

 

 

 

 

 

 

 今こいつをエクシアたちの方へ向かわせるのは不味い……今俺には何ができる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人同時は相手に出来ない――こいつの目的は人プレスなのか?……もしそうなら。

 

 

 

 

 

 

 

あぁ?『嘘じゃねぇッ!こいつの仲間が――』お前は人プレスが欲しいのか?

 

 

 

 

 

 

 

それとも救いたい誰かがその中にいるのか?……答えろ、もしそうなら俺も戦う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ?なんで――どれだけ手を伸ばしても届かなったことが何度だってある

 

 

 

 

 

 

 

何度も手を伸ばし続けて、届かない苦しみは何度だって味わってきた……

 

 

 

 

 

 

 

ごちゃごちゃうっせんだよッ?!まずった。『てめえのせいで俺の計画は――』

 

 

 

 

 

 

 

――■■■■:轟穿撃――

 

 

 

 

 

 

 

 器用にも俺の身体を地面に崩したグラニュートが……轟音と一緒にぶっ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 俺はまだ何もしてなかった、なら――やったのはあいつか?助けた訳ではないだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

……助けたなんて言わないよな?……集めた人プレスをどうするつもりだ?ああ

 

 

 

 

 

 

 

ことが終わったら何事もなかったかのように街へ帰すそれをしてどうなる?

 

 

 

 

 

 

人々の止まった時間また動き出す、多少針はずれるが誤差だから問題はない

 

 

 

 

 

 

 

 

……俺に殺されかけて無残にぶっ飛ばされた癖に強かだなあんな問いかけで揺れる無垢な奴なんだな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁっ?……あぁっ?

 

 

 

 

 

 

 

  終わった後にひと悶着はありそうだが、今はこれが最適解だろう……さて。

 

 

 

 

 

 

 

―― CRUNCH CHOCO GATUGATU ――

 

 

 

 

 

 

 

BREAK LIMITS!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、どうする?今ここで選べお前もか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――二度と闇菓子に関わらないか――――この世界から立ち去るか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここで俺に殺されるか――――俺達に倒されるか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――を……闇菓子を諦められるわけねえだろッ!!!』だろうな〈ハンティ!ロドスと合流した!〉

 

 

 

 

 

 

 人プレスはもう安全圏に移した。ここは無人のスラムだ。灯りも足音もない。

 

 

 

 

 

 

 

 何を砕こうが、巻き込まれる住人はいない。周囲への被害を抑えるための跳弾制御。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれを担うゴロゾウは今はいない。精密動作の手札は落ちた。なら、選択肢は一つだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 壊れるものは壊れる。その責は俺が引き受ける――全力で、叩きのめす。

 

 

 

 

 

 

 

―― CAKE SECOND DECORATION FUWAFUWA ――

 

 

 

 

 

 

 貫通弾+起爆性、思った通りこいつの皮膚は寸での所で弾丸を止めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にめり込んではいるが、浅いな……ゴロゾウがいてもこれじゃ跳弾が意味をなさない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 着弾時の衝撃もそれほど効果は無さそうだ、動作を多少崩せる程度だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今後こいつのような奴を相手にするなら効果的な技の1つでも見つけたいところだな。

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ……?ちまちま撃ってるだけじゃねえか――』第一打〔ブシュッ!!!〕

 

 

 

 

 

 

 前腕に沈めておいた20発、脈に合わせて遅延、合図は一拍ずつずらす。

 

 

 

 

 

 

 

 総計50のうち、まずは両腕から。硬いのは認めるが丈夫なだけで、痛みは殺せていない。

 

 

 

 

 

 

 

 こいつの皮膚は寸前で弾を止めるが、中で膨らむ圧は神経を真っ直ぐ叩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 表層の反応が鈍くても、内側の刺激は逃げず。1つ起爆するたび神経が波立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ッ??!!?!』ただ客観的にみるとどう見ても激痛っぽいんだがな……今楽にしてやる

 

 

 

 

 

 

 白い奴は歩いていた。無駄な予備動作も、殺気もない。冷静――いや、控えめすぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 相手の動きに合わせて攻撃を叩き込むカウンタースタイル。

 

 

 

 

 

 

 

 身体ごと押し込むように打ちつけていく。打撃のたびに空気がざらつく。

 

 

 

 

 

 

 威力も打撃も正確で申し分ないが、なぜか一瞬遅い。

 

 

 

 

 

 

 躊躇に見えないのに、何かを我慢しているような――そんな遅さだ。

 

 

 

 

 

 

 

 まさか今までずっとあの動きであのグラニュートを仕留めようとしていたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 どうりで2時間寝てても討伐されなかったわけだ、恐らく故意でああやってるな。

 

 

 

 

 

 

 

 考えうる理由としては副作用を恐れての行動の制限――これ以上は帰って調べるか。

 

 

 

 

 

 

 

―― CHOCO THIRD WEAPON PAKIPAKI ――

 

 

 

 

 

 

 

 自由に動けるがイマイチ決定打が与えられない俺とすっとろいが有効打を与えられる白い奴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとなくラキアの気持ちがわかったがする、ラキア場合はもっと悩む立場だっただろうな。

 

 

 

 

 

 

そのすっとろい動作は何とかなんねえのか?激しく動くと理性が飛ぶ、あと今蹴ったろお前

 

 

 

 

 

 

 こいつを身体利用した三角蹴り、追撃の飛び回し蹴り。怯みはするがやはり効いてはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり今の俺が出来る立ち回りは奴の攻撃が直撃しやすいように誘導すること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラキアが単独主義な俺の戦い方を見て、透明化を駆使しながら敵の動きを崩してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 今度は俺がそうする番だ、今はこいつが大技を当てられるだけの隙を作る。

 

 

 

 

 

 

ガウガウ!……後少し留めろ、そろそろこいつを仕留められる

 

 

 

 

 

 

 

ガツ?ガツガツ!!!ああ……?威力はある不便なシステムだな全く……第二打

 

 

 

 

 

 

 

 脚部を起爆、無論大打撃ではないが痛みで一瞬反応を遅らせられる。

 

 

 

 

 

 

 

 隙を見た白い奴の追撃、そこに重ねた銃撃――銃身はまだ切り替えなくていい。

 

 

 

 

 

 

 

 こいつを仕留めるなら胴体を丸ごとぶっ飛ばしたいが、イマイチ隙が――ッ?!

 

 

 

 

 

『ッ?!おッ、俺の腕がッ――』やっと起爆したか、やっとトドメを刺せる危ねぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 こいつこれ(差し込んだ杭の起爆)を待ってたのか、道理で持ってる武器を使わないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 杭を差し込んでいる間だから使えなかった、癖はあるがおかげで奴の身体は致命傷。

 

 

 

 

 

 

 超反射がなかったら危うく俺の腕も消し飛ぶところだったが、まあいいだろう。

 

 

 

 

 

 

―― ビースト アインス ―――― CHOCO SECOND DECORATION PAKIPAKI ――

 

 

 

 

 

 

 

……頭部を狙えああ?

 

 

 

 

 

 

 

―― CHOCO THIRD DECORATION PAKIPAKI ―――― ビースト ツヴァイ ――

 

 

 

 

 

 

2つの急所を同時に狙う、それで倒せないなら――ガウッ……乗ってやる

 

 

 

 

 

 

 

―― ビースト ドライ ――

 

 

 

 

 

 

 

『畜生……チクショウッ!!!わざわざこんな世界に来てまで。お前らの手が届かない場所でッ――』

 

 

 

 

 

 

 

この世界で暮らすだけなら、他の道もあった。お前がただのグラニュートだったら――

 

 

 

 

 

 

 

 

――■■■■:穿烈弾――

 

 

 

 

 

 

 

 

変えてやりたかったよ、お前の人生を

 

 

 

 

 

 

 

―― CRUNCH PAKIPAKI FUDGE BREAKABLE ――

 

 

 

 

 

 

 

 

〔〔〔 FORCE OUT REVOLVE !!! 〕〕〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなッ……所でぇッ……!!!俺はッ――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……(ガヴ)も狙って正解だったな。やはり再生の核があった。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い奴は頭を撃ち抜き、俺はガヴを撃った。ガヴはグラニュートの“口”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 ただの摂食器官で終わらない。個体によっては眷属を生み出し弄れば用途は多様になる。

 

 

 

 

 

 

 

 ―人の皮を被る装置にも、人を絡め取る罠にも、眷属の力を借りる兵器にも。

 

 

 

 

 

 

 

 こいつは眷属の代わりに“自分の部位”を作り直す機能を手に入れていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 変身に近い理屈だ。ガヴから生体組織が神経と血管を辿って全身に回り、傷んだ箇所を保護。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから装甲が異常に硬く、再生が凄まじく見えた。実際は損傷部位を置き換えていたようだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 半壊した核を覗くとまだ生体組織を吐き続けている。形は崩れてアメーバの塊みたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 脳が消し飛んだ影響でこうなったのか?――使えそうだ、これも持ち帰って研究だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……何処に行くんだ?』お前の言ったことが全てなら俺の仕事は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうか――なあ、お前は誰なんだ?』……スラムの傭兵だ、お前は?

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あ~。通りすがりの仮面ライダーだ、名乗るほどでもない忘れろ』仮面ライダー。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に一ヶ月、解決するべき問題はまだあるがようやく本来の役目が果たせそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍門の傭兵……この世界に選ばれた異世界の仮面ライダー。俺をこの世界に■■■■■存在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 事が起こる前に居所を特定出来て良かった、これで俺もこの世界で動きやすくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あぁ、だりぃ。ガルドの副作用で歩けなくなったか。』終わったのか?

 

 

 

 

 

 

 

『そうだよ、エクシアはどうした?』満面の笑みのアーミヤに捕まってるやべぇぶちぎれてんじゃねぇか……』

 

 

 

 

 

 

 

『……ダル――菓子もねぇ……切らしちまった。』食べるか?『くれ。』

 

 

 

 

 

 口のなかに入ってきたのは細長いスティックチョコ。

 

 

 

 

 

 プレッツェルのパイプの中にチョコが詰められたお菓子だ。

 

 

 

 

 

 噛めばポキッと容易に折れ、中から少し遅れて甘いチョコが舌に触れる。

 

 

 

 

 温度でゆっくり溶けて、喉の奥にまで滑っていく。

 

 

 

 

 

 若干の塩気も相まって、より甘さが引きたっているように感じる。

 

 

 

 

 

 プレッツェルの塩気と、チョコの甘さ噛むほどに混ざって瞼が徐々に重くなる。

 

 

 

 

 

 ほんの一口でも、甘さが身体の奥までしみる――そろそろちゃんと休むか。

 

 

 

 

 

 

 ここのところずっと働き詰めだった。一日72時間の労働とか言われてるしな。

 

 

 

 

 

所で、あのチョコはどこに売ってる?『?……あぁ、あれは自作だ』わざわざ自分で?

 

 

 

 

 

 

 仕事道具の都合上、日常的に菓子を大量に食うのは必須で普通の食事はあまりとらない。

 

 

 

 

 

 

 

 気休め程度でしかないが一応……栄養面を気にして栄養バー的なものを自作した。

 

 

 

 

 

 

 

 それが妙にロドスの中で反響が良く、正式に携帯食料にもなった。

 

 

 

 

 

 

 

『欲しけりゃロドスに貰え』ああ……いつもこんな仕事をしているのか?『そーだ』

 

 

 

 

 

 

 

何のために?『働きゃ美味い菓子が買える、お前はなんで仕事してる?』私も似た感じだ

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうか、まあ……大体みんなそんなもんだろ――今日は助かった』礼は要らない

 

 

 

 

 

 

 

 

『だがお前の同僚を庇った件は貸しだ』……エクシアの言う通りケチだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 スラムの傭兵にぶっ飛ばされて通信機器は壊れたが財布は無事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 その中から今となって紙切れでしかない、酸賀絆斗としての名刺。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に存在しない住所に二重線を轢いて空欄に今の連絡先を記述する。

 

 

 

 

 

 

 

 バランス感覚が死んだ状態で書く文字にもなれたもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

……これは?『便利屋やってんだ、なんかあったら手ぇ貸してやるよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

……エクシアには?『……ロドスのCEO(アーミヤ)にありがたいお叱り貰ってんだからいいだろ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ふっ、確かに。それじゃ私も怒られてくる『ああまて……歩けねぇんだ運んでくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高くつくぞ?『美味い菓子を1カートン』3で乗った『がめつい奴だ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ゴチゾウ図鑑:パイアップルン】

 手作りのアップルパイから生まれる、香ばしく甘い香りをまとうゴチゾウ。

 体はサクサクとしたパイ生地のようで、歩くたびに”ぱりっ”と小さな音がする。

 胸の真ん中には煮詰められたリンゴの宝石が埋まっていて、光に当たるとほんのり赤く透き通る。

 気分屋で、焼き立ての時は元気いっぱいだが、冷めるとおっとり眠たそうになる。

 誰かが落ち込んでいる時周囲に甘い香りを漂わせて仲気持ちを落ち着ける力を持つ。

 誰かが落ち込んでいる時傍にいてくれると不思議と心が温まる。

 ただし――強く揺さぶると中のリンゴがこぼれて、本人も大泣きしてしまうので要注意。
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