夜渡りinキヴォトス   作:脱力戦士セシタマン

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XFA-33様、誤字報告ありがとうございます!

最近魔術レディにハマってます。やっぱ砕け散る結晶の火力はやべえわ。




銀行強盗

 

 

「敵、後退してます!だけどこのままだと……」

「増援、か…………」

「仲間を呼ぶつもり?いくらでも相手してあげる」

 

 シロコが成長したからか調子に乗った発言をしていたが、それを聞いた追跡者は後で鼻をへし折ってやらないと痛い目をみそうと思い、後で教育する(しばく)ことにした。

 

 だが増援は夜渡りとしては喜ぶべきだ。時間の限られるリムベルドでの活動においては移動の時間すら惜しい中、ルーンと潜在する力が向こうからやってくるのである。

 それ故に追跡者はこのまま戦ってしまえばいいと思っていた。

 

「ま、待ってください!それ以上戦っちゃダメです!」

 

 が、ヒフミが声をあげる。

 

「ん?どうして?」

 

 シロコが首を傾げる。

 

「だ、だって……ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理している治安組織に見つかってしまうかもしれません!あうう……そうなったらもう取り返しはつきません。まずはここから離れ……」

「なら急ぐぞ。先生、乗れ」

「え?」

「行くぞ!」「行くわよ!」

「ちょ、ちょっと待っ」

「早くしろ。置いていくぞ」

「わ、分かった」

 

 撤退の判断が先生が困惑するほど早く、ヒフミも少し驚いていた。

 だが夜を渡る上で撤退の判断の早さは重要な事である。これ以上戦っても効率が悪い。そう思った時には既にロスが生じているのだから。

 そして先生は言われるがままに追跡者の背に乗ろうとする。

 

「いや……大剣が邪魔か。なら…………」

 

 そう追跡者が言うと、先生の腹の辺りを掴み、担ぎ上げた。

 

 そしてすぐに足に力を込め、疾走する。

 本当はフックショットを使いたかったが、止むなく担いだ状態で疾走となった。既にレディと復讐者は先を走っている。

 

「こっちよ!」

「いえ、こっちのほうがいいです!」

「分かったわ!」

 

 

 ヒフミはどうやらブラックマーケットに詳しいらしかった。レディに少しづつ差をつけられながらも追いかけて、道を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここまでくれば大丈夫でしょう」

「ありがとう、ヒフミちゃん」

「は………はこ、んでくれて………………うっ……」

 

 

 先生は追跡者に感謝しようとするが、余りの速さに酔ってしまったらしい。

 

「大丈夫か……」

「すまん。次はもう少し揺れない運び方を考える」

「いいよ…………大丈夫……」

「ふむ……ここはかなり危険な場所だって認識してるんだね」

 

 シロコが口を開く。

 

「えっ?当然です。ここは連邦生徒会の管理が及ばない場所ですから…………ブラックマーケットだけでも学校数個分の規模がありますし、決して無視はできないかと…………」

「それにさまざまな企業がここで違法な事柄で利権争いをしてると聞きましたし…………ここだけの専用の金融機関や治安組織もあるほどですから」

「銀行や警察って事……!?そ、それって多分認可されてない違法団体よね!?」

 

 セリカが声をあげる。追跡者には違法という考え方は特段ない方なので、そう言う組織があるのか程度の認識だった。

 

「はい…………そうです」

「スケールが桁違いですね…………」

「中でも治安組織は、とにかく避けるのが一番です…………騒ぎを起こしたら、身を潜めるべきです……」

「成る程……」

 

(確かにそうかも知れない)

 

 追跡者はそう思った。が、しかしだ。

 

「やけに詳しいけれど、常連さんみたいね」

「毎日来ているのか?」

「ええっ!?さ、流石に毎日は来ませんよ……下調べをしっかりおこなったので…………」 

「復讐者の方は?」

「私は…………何度か来たことがあるがこいつと来るのは初めてだな」

「よし、決めたー」

 

 ホシノが突然そう言い、ヒフミの方を向く。

 

「助けてあげたお礼に、私たちの探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうねー♪」

「え?ええっ?」

「わあ⭐︎いいアイデアですね!」

「なるほど、誘拐だね」

「誘拐じゃなくて案内でしょ!?まあ、もちろんヒフミさんと復讐者さんが嫌ならいいけど……」

「こ、これは…まあ自分たちは何もわからないし、お願いしていいかな?」

 

 なんというか、流れでそのまま案内してもらうことになりそうだ。

 

「はぁ…………まあいい。そこのクソボケ兄妹(馬鹿二人)に免じて案内してやる」

「あ、あうう……私なんかでお役に立てるか分かりませんが…………アビドスの皆さんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます!」

「よーし、それじゃ、ちょっとだけ同行お願いねー」

 

 

 

 

 

 

 …………一方その頃

 

 

 

 

 

 

「アルちゃん、何してんの?電話出ないの?」

「…………ぐう……」

 

 鉄の目は陸八魔アルが苦い顔をしているのを、いつものように壁に寄りかかり、遠くから見ていた。

 

「表情が暗い…もしかしてクライアント?」

「うわ、そりゃそんな顔にもなるわ。失敗したって報告しないとじゃん」

「アル様…」

 

(まだ()()にこちらの動向には勘付かれては居ないようだが……復讐者は鉢合わせているだろうか?……)

「……くっ」

 

 鉄の目がそのような事を考えていると、陸八魔アルが決心した顔で受話器をとる。

 

ガチャ…………

 

「はい……便利屋68です」

 

 そうして陸八魔アルはクライアントに報告を上げていた。

 

(さて……そろそろ隠者に頼まれていた件も終わらせなければな)

「……ふむ、興味深い報告だ。ここまでの練習は拝見したよ。で、実戦はいつだ?」

「…え?いや、あれが……いえ、何でもありません、も、もちろん実戦はすぐにでも…という感じで…」

「いつ頃だと聞いている。」

「あ、えっと…一週間以内には…はい…」「なるほど、了解した。成功を期待する」

「ふふっ、おまかせください」「「!?!!」」

 

ガチャ、という音と同時に電話が切れる。

 

(どうやらまだ大丈夫なようだ)

 

 鉄の目は自身の動きがバレていないことに安心していた。

 対して、陸八魔アルはというと…………

 

(どどど、どうしましょう〜〜〜〜???)

 

 といつも通り白目を剥いていた。

 

「……………はあ……」

「やつれたねえ、アルちゃん」

「社長、一体どういうこと?……まさか、また戦うの?」

「……あのクライアントは、私も詳しくは知らないけど、超大物なのよ。……この依頼、失敗するわけにはいかないわ」

「…………」

 

(もう一度襲撃か…………)

 

 鉄の目は次の襲撃は誤魔化せないと考え、いざとなれば便利屋68から手を引くことを考えていた。

 

「だけどアビドスの連中、思ったより強かったじゃん。それに、あの「シャーレ」の先生が一緒だから、私たちだけじゃ無理だよ。お金も全部使い果たしちゃったしね。どう戦うのさ?」

「わ、私がバイトでもしてきましょうか?」

「その稼ぎで傭兵を雇うなら、全員であと一年は働かないと…………こんな高いオフィス借りてるし、無駄にお金ばかりかかってるし……」

 

 カヨコが呆れたように喋る。鉄の目は全く持ってその通りだと思った。

 

「う、うるさい!ちゃんとした会社なら、事務所は基本でしょ!そのほうが仕事の依頼も増えるんだから!」

「別に、私は前みたいに公園にテントでも構わないけどー?」

「そんな事したら鉄の目さんとの契約が切れちゃうでしょう!?そんなのじゃ駄目よ!」

 

 どうやら陸八魔アルは鉄の目を離したくないらしかった。ムツキは十中八九鉄の目のアウトロー話を聞きたいだけなのだろうと思ったが、そこはツッコまないことにした。

 

「…………融資を受けるわ」

 

 アルがいきなり話した。鉄の目は天地がひっくり返っても無理だと内心思いつつ、会社の方針には口を出さないという契約に基づき耳を傾け続けた。

 

「は?アルちゃんはブラックリスト入りしてるでしょ」

「違うわよ!私は指名手配されて口座が凍結されただけ!」

「そうだっけ?……そうだった。風紀委員会にやられたんだよね」

「くっ………風紀委員会め……ここまで痛めつけられるとは思わなかったわ」

 

(風紀委員会………そう言えばアビドスにいるシャーレの先生とやらについて嗅ぎ回っているらしいな…………少し調べておくか)

 

 

「中央銀行も行ったところで門前払いだろうね。」

「うるさいってば!他にもあるんだから!」

「…………」

「見てなさいよ、アビドス、このままじゃ終わらないんだから。!便利屋のミッションはこれからなのよ!」

 

 そして、陸八魔アルはオフィスを出ていった。

 

「……」

「へー、一体どうするつもりなんだろ!」

「わ、私が内臓を売りましょうか……?」

「ハルカ、売らなくて大丈夫よ」

「は、はい……」

 

 そして便利屋のメンバーがそれに続き、鉄の目はその後ろを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴らのデータは正確な物だったはず。計算ミスか?しかし、あの力は……それにあの男も……」

「……お困りのようですね。」「…………」

 

 大柄なオートマタと、黒いスーツを着た異形が話していた。

 

「いや、困ってはない。少々イレギュラーが発生しただけだ。アビドスの連中が異様に強い事。そしてあの古臭い服を着た女と甲冑もどきを着たあの男の事だ」

「成る程…………あのお二人ですか……」

「そうだ」 

 

 大柄なオートマタは、追跡者とレディに対し頭を悩ませているらしい。

 

 

「そうですね……一つ警告しておきます。あのお二人には手出しをしないほうが良いかと」

「どういう事だ?」

「あれは夜のみ降る侵食性の雨…………あれに相対する存在です。その力は貴方には身に余る物です」

「それがどうした」

「あのお二人……特に甲冑もどきを着た方にはお気をつけくださいね?あれは人を軽々殺してしまえる化け物です」

「…………そうか。情報提供、感謝する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……しんど」

「かれこれ数時間は歩きましたね」

「そうか……」

「え?追跡者疲れてないの?」

「?…………」

 

()()()数時間()()歩いていないではないか…………)

 

 追跡者達夜渡りは3日間睡眠も取らずほぼ休みなしで動き続ける。それ故に数時間歩いた程度で疲れるなど夜渡りにはあり得なかった。

 

 

「……私達が出撃する時は3日間ほぼ休みなしで動くから、特に数時間歩いただけでは疲れないのよ」

「「「「「「「!?!?!?」」」」」」」

「まあ……夜の王に挑むというのは相応にキツイということだ」

「そ、そうだったんですか!?」

「え?……睡眠は???」

「取る時間が(勿体)ない」

「駄目だよちゃんと寝ないと!」

 

 ホシノが心配の余り声を大にしてツッコんだ。

 

「それは……ブラック過ぎる…………」

 

 激務であろう先生ですらドン引く状態である。

 

ぐぅぅぅぅ…………

「やだ……恥ずかしい」

 

 そんな中、誰かの腹の音がなった。

 

(方向からして…………レディか?………………だがこんな事もあろうかとポケットにピタパンを用意してある)

 

 追跡者は兜の中でそうドヤ顔しながらピタパンを取り出そうとポケットに手を入れた。

 

「あら!あんなとこにたい焼き屋さんが!」

「あれ、ほんとだー!こんなとこに屋台があるなんてね」

 

 しかし、『ラーメン』につぎまたしても新たな食べ物『たいやき』が出てきた。

 

「あそこでちょっと一休みしましょうか?たい焼き、私がご馳走します!」

「えっ!?ノノミ先輩、またカード使うの!?」

「先生の『大人のカード』もあるよ〜」

 

 セリカが驚きの声をあげ、ホシノが先生に奢らせようと喋るが…………

 

「ううん、私が食べたいからいいんですよ☆みんなで食べましょう、ねっ?」

 

 

 追跡者は『たいやき』を食べることとなった。

 

 

「たい焼き10人前!まいどー!」

 

 追跡者達の前に現れたのは紙に包まれた魚の形をした焼き物だった。

 

(粉物を焼き固めた…………そう言う食べ物らしい)

 

 追跡者は『たいやき』を食べるのは初めてだった。

 

 『たいやき』に齧り付くレディを横目に、追跡者は相変わらず兜の口元だけ出る様にし、まず香りを楽しむ。

 ピタパンと変わらない小麦の香り。砂糖が使われているからか、甘い香りもする。

 

「因みに、追跡者さんってたい焼きは頭から食べる派?尻尾から食べる派?」

「……そんな物があるのか???」

 

 追跡者はこの『たいやき』一つの食べ方で分かれる事があるのかと驚いた。

 

(これは答え方によっては論争が起きかねない…………そう俺の勘が言っている…………!)

 

 以前追跡者は、対策委員会に『目玉焼きには何をかけるか』と質問した時、大論争が勃発した。

 

(レディがどうにか止めてくれたものの、あのまま放って置いたらどうなっていたことか…………)

 

 それを踏まえ追跡者は、自身のの頭をフル回転させ最も丸い、対策委員会同士で大論争の起きない回答を導き出す。

 追跡者の導き出した答え。それは…………

 

「腹から……だな」

 

 あえて斜め上の回答をする。どちらでもないという中立のスタンスであると主張することで争いを回避出来ると考えた。

 だが、次の一言は追跡者を絶望へと追い詰める。

 

「あ、私も〜」

 

(セリカが……腹から食べる派……だと!!!)

 

「背中から食べるって人もいますよね〜」

 

(派閥は二つだけではなかったとは……盲点だった!……)

 

 追跡者はこの上なく焦っていた。

 

「レディさんそれ何個目???」

「…………二個目よ!」

「明らかに持ってる袋の量がおかしいよ!?」

「相変わらずよく食うな」

「あははは……」

 

 その横で先生がツッコミを入れたり、復讐者が呆れたりしていた。

 その様子を観察しているうちに『たいやきの食べ方』での論争は起きないように感じた。

 

(良かった…………今回は論争に発展しないようだ)

 

 そうと分かると、手に持った『たいやき』を魚の腹の辺りを頬張る。

 外はサクッと、そして中はモチモチして面白い食感を生み出す。

 そして中に詰まった『餡』独特の甘みと濃厚さが口に広がる。

 

(これは美味いな。執行者のいた葦の地には美味い食べ物が多かったようだ)

 

 追跡者は執行者が実は良い物を食べていたのではないかと思い始めていた。会うことがあるのなら、聞いてみたかった。

 

 

「それにしても…変ですね」

 

 たい焼きを食べ終わったヒフミが喋る。

 

「お探しの戦車の情報、必ずどこかにあるはずなのに、全然出てきませんね。販売ルート、記録…………全て誰かが隠してるとしか思えません。いくらここを牛耳ってる企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制するのは不可能なはず………」

「そんなに異常な事なの?」

「異常というより、ここまでやりますか?って感じです。ここに集まってる企業は、開き直って悪さするので、隠したりはしないんですよ。例えばほら、あそこの闇銀行です」

 

 ヒフミはそう言い、近くの建物を指さした。

 

 

「ブラックマーケットで最も大きな銀行の1つです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているようです。横領、強盗、誘拐など、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられて、また他の犯罪に使われる……そんな悪循環が続いているのです」

「ひどい!連邦生徒会はなにやってんのよ!」

「全く…………キヴォトスにはもっとまともな統治をする奴は居ないものなのか」

「ま、理由が色々あるんだろうね〜きっとそれなりの事情があるのよ」

 

(長が急に失踪すれば、こうもなるだろう)

 

 追跡者は怒るセリカと呆れる復讐者に対しそう思いながら、たい焼きを入れていた紙包を折り畳んだ。

 その瞬間、追跡者の内に嫌な予感が生じた。

 

 

「お取り込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中!」

「「「「「!!!」」」」」

 

 アヤネが唐突に襲撃を伝えた。

 

「気づかれた様子はありませんが……まずは身を潜めたほうがいいと思います」

「うわあ!あれはマーケットガードです!」

「ちっ……よりにもよって!……」

「……ヒフミちゃん、知っているのかしら?」

 

 レディがヒフミに尋ねる。

 

「先ほどお話しした、ここの治安機関でも最上位の組織です!急ぎましょう!」

 

 こうして皆はすぐに隠れた。

 

「誰だ……私の足を踏んでいるのは」

「ごめんなさい、私だわ」

「通りで痛いわけだ。やはり貴様は食い過ぎだ」

「…………」

 

 復讐者の容赦ない発言にレディは言い返したくなるが、今はそれどころではないのでスルーした。

 

「待て……あのトラック……」

「闇銀行に入って行きましたね……」

 

 するとトラックは止まり、運転席から人が出てきた。

 

「今月の集金です」

「ご苦労様、早かったな。では、こちらの集金確認書類にサインを」

「はい」

 

 そう言い、銀行員がサインをする。

 

「いいでしょう」

「では、失礼します」

「さ、開けてくれ、今月分の集金だ」

 

 追跡者は咄嗟に『あれは逃がしてはいけない』と直感し、左手を伸ばしクローショットを放とうとする。

 

ガシッ!…………

 

 だが復讐者がその腕を掴み、首を横に振る。『待て。今それを使うときではない』と言わんばかりに。

 そしてそのまま、トラックは銀行の中に入っていった。

 

「見てください。あの人……」

「あれ……なんで!?あいつは毎月うちに来て利息を受け取ってる銀行員……?」

「あれ、本当だ」

「えっ!ええっ……」

「……そう……なのか???」

「確かにそうよ。左手に擦り傷みたいなのがあるから」

「そこまで見ていたのか……」

 

 追跡者はレディがそこまで観察していた事に驚いた。

 

「今日の午前中に利息を払った車と同じものです!なぜブラックマーケットに…………」

「か、カイザーローンですか!?」

「ヒフミちゃん、知ってるの?」

「カイザーローンは、カイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です……」

「…………どういう事?」

「え、ええと……カイザーグループそのものは犯罪を起こしてはいません……しかし合法と違法の間のグレーゾーンでうまく振る舞っている多角化企業で…………」

 

 ヒフミが淡々と、だが彼らにとって衝撃の事実を伝える。

 

「カイザーは私たちトリニティの区域にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの悪影響を考慮し、『ティーパーティー』でも目を光らせてます」

「『ティーパーティー』、あのトリニティの生徒会が、ね」

「も、もしかしてみなさん、カイザーローンから借金してるんですか…?」

「まあ……借りたのは私たちじゃありませんが……」

「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入って行った現金輸送車の走行ルート、調べれる?」

「少々お待ちください…………」

 

 そう言いアヤネがホログラム越しにカタカタと音を立てる。

 

「だめですね。すべてのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません」

「情報統制は完璧というわけか…………」

「そういえば、いつも返済は現金のみでした。つまり…………」

「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた…?」

 

 シロコが悟ったかのように喋った。

 

「じゃあ何?私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」

「…ああ、恐らく…そうだろう…」

「「「「………」」」」

「ま、まだそうはっきりとは…証拠も足りませんし。あの輸送車の動線を把握するまでは…」

「あ!さっきサインしてた集金確認の書類…それを見れば証拠になりませんか??」

「お、そりゃナイスアイディアだねー。ヒフミちゃん」

 

 追跡者は薄々ヒフミは中々悪なんじゃないかと思い始めていた。

 

「あはは……でも考えてみたら、書類はもう銀行の中ですし…無理ですね」

「ブラックマーケットでも、最も強固なセキュリティーを誇る銀行の中となると…………それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし、それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法は……ううーん……」

「うん、他に方法はないよ」

「えっ?」

 

 ヒフミが疑問の声を上げる。

 

「ホシノ先輩、ここは例の方法しか…」

「なるほど、あれかー、あれなのかあ〜」

「あ!そうですね!あの方法なら!」

「何?どういうこと?まさかあれ私が思っているあの方法じゃないよね?」

「成る程……やるのね……」

 

 追跡者は言葉にしないが、何をするのか察しはついていた。

 

「あ、あの…………全然話が見えないんですけど、あの方法ってなんですか?」

「残された方法はたった1つ」

 

 シロコがスッと何かを被る。

 

「銀行を襲う」

「はいっ!?」

 

 追跡者はやっぱりそうなるかと、半ば諦めた様に心の中で声をあげた。

 

 

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