夜渡りinキヴォトス   作:脱力戦士セシタマン

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 年越しは何をしていましたか?私はフルゴールをしばきに行っていました。今年は午年ですからね。

 いつか追跡者が来る前のお話は書きたいと思っています。




逃走

 

 

覆面水着団は覆面を脱ぎ、逃亡していた。

 

「はひー、息苦しい。もう脱いでいいよね?」

「のんびりしてらんないよー。急げ急げ。追手がすぐ来るだろうからさー」

「できるだけ早く離れないと………まもなく道路が封鎖されるはずです……」

「そうなったら、本格的にまずいね」

「何か来ても俺の襲撃の楔で道を開く」

「いえ、ご心配なく〜。万全の準備を整えておきましたから☆」

「こっちだ、急げ」

「あの……シロコ先輩……覆面取らないの?邪魔じゃない?」

 

 セリカ走りながらツッコミを入れる。

 

「天職を感じちゃったっていうか、もう魂の1部みたいなものになっちゃって、脱ぎたくないんじゃなーい?」

「シロコ先輩とレディさんはアビドスに来て正解だわ……他の学校だったら、ものすごい事をやらかしてたかも………」

「そ、そうかな……」

「大丈夫よ。私はバレないから」

「そう言う問題じゃないよ???」

 

 シロコが覆面を取りながらそう答えるが、レディは自信満々でバレないと言い切る。先生はそれを良しとはしたくなかったが、通信が入る。

 

「封鎖地点を突破。この先は安全です」「やった!大成功!」

「本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて……ふう……」

「教官、集金記録の書類は?」

「バックの中だ」

 

 シロコは手に持ったバックを開ける。

 

「……へ?なんじゃこりゃ!?カバンの中に…札束が……!?」

「うえええええええっ!?シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」

 「ち、違う……目当ての書類はちゃんとある。このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで…」

「どれどれ……うへ、軽く1億はあるね。本当に5分で1億稼いじゃったよー」

「…………なん……だと?借金の……およそ一割ではないか……」

「やったあ!!何ぼーっとしてるの!運ぶわよ!」

 

 セリカが喜び、喋る。が……

 

「ちょ、ちょっと待ってください!そのお金、使うつもりですか!?」

 

「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなきゃ!」

「そんなことしたら………本当に犯罪だよ、セリカちゃん!」

「は、犯罪だから何!?このお金はそもそも、私たちが汗水流して稼いだお金なんだよ!それがあの闇銀行に流れていったんだよ!それにそのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない!悪人のお金を盗んで、何が悪いの!?」

「……」

「私はセリカちゃんの意見に賛成です。犯罪者の資金ですし、私達が正しいことに使ったほうがいいと思います」

「ほらね!これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」

 

 セリカの言い分は最もではあった。

 

「だが…………それは法を守らない道理にはならんだろう」

「…………これは返すべきね」

「へ!?」

 

セリカが驚いた声をあげる。

 

追跡者もレディも夜との戦いでは法など意味がない故に拠点からありとあらゆる物を漁って使っていたが、今は法を守らなければならない。なれば如何なる事情があろうとそれは守らなければいけない事だろう(銀行強盗した時点で今更だが)

 

「私たちに必要なのは、書類だけ。お金じゃない。今回のは悪人の犯罪資金だから良いとして。次はどうする?そのまた次は?」

「……」

「こんな方法に慣れちゃうと……ゆくゆくは、きっと平気で同じことするようになるよ」

 

 ホシノが諭す様子追跡者は静かに見ていた。

 

「そしたら、この先またピンチになった時……「仕方ないよね」とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う。うへ〜このおじさんとしては、カワイイ後輩がそうなっちゃうのは嫌だな〜」

「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。こんな方法を使うなら、最初からノノミちゃんが持ってるゴールドカードに頼っていたはずさ」

「……私もそう提案しましたが、ホシノ先輩から反対されて…先輩の気持ち、わかります。いくら頑張ったって、ちゃんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう……」

「うへ、そう言う事。だから、このバッグは置いていくよ。必要なのはいただく書類だけね。これは委員長としての命令だよー」

「うわああ!もどかしい!意味わかんない!こんな大金を捨ててく!?変なところで真面目なんだから!!」

「うん、委員会としての命令なら」

「私はアビドスの事情をよく知りませんが…このお金を持っていると、何か他のトラブルに巻き込まれるかもしれません。災いの種、みたいなものでしょうから……」

「あは……仕方ないですよね。このバッグは、私が適当に処分します」

「ほい、頼んだよー」

 

 すると瞬時に、追跡者は何かが来る事を予感する。

 追跡者は無言で大剣に手をかける。

 

「どうした?何か来るか?」

「……!!…………待ってください!何者かがそちらに接近しています!」

「……!!追手のマーケットガード!?」

「…………」

 

 追跡者は何か来るのは分かった。そしてそれが、すぐに敵意のないものだと分かり、大剣から手を離す。

 

「……どうやら、マーケットガードではなさそうです」

 

アヤネが喋る。

 

「調べてみますね……あれは……べ、便利屋のアルさん!?」

「…………」

「はあ、ふう……ま、待って待って!」

「……!」

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから…」

 

シロコが銃を構え、アルが宥めるように喋る。

 

 

「あ、あの……大した事じゃないんだけど…銀行の襲撃、見せてもらったわ……ブラックマーケットの銀行をものの5分で攻略して見事に撤収…あなたたち、稀に見るアウトローっぶりだったわ」

「……!?」

 

 追跡者は驚きながらも、鉄の目と仲のいい時点で何かしらネジが外れているから仕方ないとも思った。

 

「正直、すごく衝撃的だったというか、このご時世に、あんな大胆なことをすることができるなんて……感動的というか…………わ、私も頑張るわ!法律や規律に縛られない、本当の意味での自由な魂!そんなアウトローになりたいから!」

「…………こいつ……発狂したか?」

 

 

 復讐者の言う『発狂』の意味は多分状態異常の方も含まれているのだろう。だがその声は配慮してか陸八魔アルには聞こえない程小さいものだった。

 

「そういうことだから……名前を教えて!」

「な、名前……?」

 

 シロコが困惑する。

 

「そ、その、組織っていうか、チーム名とかあるでしょう?正式な名称じゃなくてもいいから……私が今日の雄姿を心に深く刻んでおけるように!」

 

 余りに純粋無垢な瞳で聞かれた質問だった。追跡者は、こういう『お願いお兄ちゃん!』のような純粋な子供からの頼みというのは断るのが苦手だった。

 何故ならば、追跡者は『お兄ちゃん』だからだ。

 

「…………ピタパンマン……そう呼べ。俺と、そこの2人は仲間だが、チーム名は特にない」

「ピタパンマン!?……カッコイイ!!!」

「つ……ピタパンマン!?」

 

 先生は衝撃的過ぎて一瞬追跡者と呼びかける。

 最早アビドスの教官が答えてしまったのだ。それに続き、対策委員会もあることない事を話す。

 

「私達は呼んで覆面水着団!」

「ふ、覆面水着団!?や、やばい、超クール!カッコ良すぎるわ!」

「そうなんです!普段はアイドルとして活動してて、夜は悪人を倒す怪盗に変身するんです!」

「そして私はクリスティーナだお♤」

「だ、だお♤……!?キャラも立ってる……!?」

「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に。我が道の如く魔境を行く。これが私らのモットーだよ!」

「ななな、なんですってーー!?!??」

「私はピタパンマンの仲間、ピタパンナよ。貴方、名前は?」

 

 レディはどうにかこのノリに適応し、名前を聞いてそれっぽく誤魔化す

 

「え……ええ!?わ、私の名前は陸八魔アル!孤高のアウトローを目指してる者よ!」

 

「……何してるの?あの子たち……」

「わー、アルちゃんどハマりしちゃってるじゃん。特撮モノのイベントに連れてってもらった子供みたいな顔してる!」

「………………ふっwww」

 

 便利屋のメンバーが物陰からこっそり伺っていた。勿論鉄の目も必死に笑いを堪えながら一緒に見ていた。

 

「貴公、アウトローとやらを目指しているのだな?……」

「え、ええ!いつかあなたたちのように立派なアウトローになるわ!」

「なら、こいつをくれてやる」

 

 そう言って復讐者は置いてあった1億の入ったバッグを陸八魔アルにぶん投げる。

 

「え、ええええ!?う、受け取れないわよ!こんな大金!」

「これは私達には不要な物だ」

「ん、そんな端金いらない」

「一億を端金扱い!?し、痺れる!」

「それじゃこの辺で!アディオス〜♤」

「さあ、行こう!夕日に向かって!」

「夕方、まだですけど……」

 

 そう言って覆面水着団は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 陸八魔アルから去った後、アビドスのメンバーと先生とヒフミ&復讐者は全員で書類を確認していた。

 

「なっ、何よこれ!?一体どういうことなの!?」

「……!!」

「現金輸送車の集金記録ではアビドスで788万を集金したと記録されてる。うちに来たあのトラックで間違いない」

「……でも、その後すぐにカタカタヘルメット団に対して『任務補助金500万円提供』って記録がある……」

「ということは……」

「無頼漢の言っていた『奴ら』はカイザーってことみたいね」

「ああ、恐らくそれで合ってるだろう」

「任務だなんて……?カタカタヘルメット団に……?ヘルメット団の背後にいるのは、まさか……カイザーローン?」

「いや、違う。『奴ら』と言う所からしてカイザーコーポレーションそのものだろう」

 

 追跡者はおおよその予想は立っていた。恐らく無頼漢が言っていた『宝探し』の為の算段なのだろうと。

 追跡者の知力は腐ってもCである。追跡者は流石にテレビの原理も理解したし、先生と初めてあった時の四角い板に意思があると思っていたのが間違いだと気付いた。

 当時はまだ、この世界に慣れていなかったから勘違いしていたのだろう。 

 

「ど、どういうことでしょう!?理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……どうしてそのようなことを……?」

「ふーむ……」

「それは、恐らく無頼漢の言っていた『宝探し』の為だろうな」

「はい、そう見るのが妥当ですね」

「ん、とりあえずカイザーが変なことしようとしてるのは分かった」

「……ああ、ムカつく……自分たちが汗水流して稼いだお金が、まさか自分の首を絞めることになってたなんて……」

 

 どうやら相手が大企業だと知っても彼女達の心は折れるどころかやってやろうと言う気概があった。

 その様子を、追跡者は嬉しく思った。自身の教育*1が良い方向で傾いているのが嬉しかったのだろう。

 しかし、そんな事を知らない復讐者が口を開く。

 

「そう言えば……だが…………私達は着替えているから、円卓に戻って服を戻したほうがいいんじゃないのか?」

「確かにそうね」

 

 確かにピタパンマンとして戦ったあとから装備も何も変わっていなかったので、流石にその格好で彷徨けば銀行強盗をしたとバレる可能性がある。

 

(…………確かにそうだな)

 

「そういう事だ、ヒフミ。私は一足先に帰る事になるだろう」

「そうですか……あれ?お土産は?」

「大丈夫だ。もう手に入った」

「そうなんですか?……」

 

(ヒフミが疑問符を浮かべているが、手に入ったのならいいだろう)

 

「それじゃあ、私達は円卓で着替えてからアビドス高等学校に向かうわ」

「先生、生徒達をよろしく頼む」

「うん、分かった」

 

 そう言って、追跡者達は円卓へ消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって便利屋のオフィス、そこで少女が白目を剥いて(Unwelcome Schoolして)いた。

 

「ええ!?なななななななあにいいいいいーーっ!?覆面水着団がアビドスだったですってええ!???ピタパンマンとピタパンナに至っては教師!????」

「あはははー、アルちゃんショック受けてるー!超ウケる!」

「はあ……」

 

 カヨコとムツキはアルに正体を教えてたのであった。

 

「ふふふ……良いものが見れた」

「もしかして、鉄ちゃんはこうなるって知ってたのかな〜?」

「……何の話だろうな。それより、社長の様子がおかしいぞ」

「ああ!アルちゃんが口から何か出してる!」

「あ、まずい。ハルカ、水持ってきて」

「は、はいー!」

 

 今日も便利屋は騒がしく、明るい日常を送っていた。

 そして鉄の目はそれを、微笑ましく見守っていた。

 

(あの嵐の夜、()()()()()守りきれなかった。仕事で次の失敗は許されない。必ず守り抜く)

 

 そう決意を胸に秘めた鉄の目の手には、薔薇と髑髏のマークがある封蝋のついた手紙が握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその日の日が暮れてそう間もない時だった。

 

 

「貴方が…………黒い人が言っていた『ホルス』さん?」

「うへぇ〜…………おばさんは黒服の知り合いかな〜?」

 

 魔女とホシノは、とある場所で相対していた。

 

「待って。私は貴方に危害を加えるつもりで呼び出した訳じゃない」

「本当かな?黒服の知り合いって時点であんまり信用出来ないんだけど?」

「…………大剣の剣士さんが『隠者』の名前を出してなかったかな?」

「!!!」

「私は夜渡りよ」

「偽物って可能性もあるよね~」

「なら、混成魔法を撃ったら信じてくれるかな」

「…………分かった」

 

 

 ホシノは、一通り夜渡り達の特徴を聞いていた。その中で隠者は、混成魔法というものが

 

 そして隠者は、その辺りの者に向けて輝石のつぶてを放つ。そしてそこから何かを回収したように手を動かし、また輝石のつぶてを放つ。

 それを何度か繰り返した後、彼女は魔力×3の混成魔法を撃つ。

 

バァン!……

 

「…………本当だ……」

「私は隠者……本物だよ」

「まあ本物だって言うのは分かったけど、おじさんになんの用があって呼び出したのかな?」

「それは…………頼みがあるの」

 

 それは、ホシノが予想だにしない頼みだった。

 

「貴方も、私達と共に夜の王と戦って欲しい」

「!!!…………それは……どういう事?」

 

 ホシノは驚いた。だがそこにはほんの僅かに喜びが混ざっていた。

 

「私達が夜の王と戦う時、霊樹というものの中で戦う。でも、貴方がいないと霊樹が生成出来ない」

「それは……必要なものなの?」

「必要。ないと夜の雨の中で戦わないといけなくなる」

「………………」

「お願い。貴方も共に戦ってくれるなら、大剣の戦士さんも義賊さんも守れる」

 

 ホシノは、とても悩んでいた。

 ホシノ個人としては承諾したかった。初めて信用していいと思えた追跡者を、時間のない彼を少しでも傷付かずに済むなら自分も手を貸したかった。

 だが、承諾してしまえば追跡者の『対策委員会の皆を夜の王との戦いに巻き込みたくない』という願いを無視してしまうことになる。

 

「本当はもっと早く言うべきだったけど……夜の王の侵攻が予想より早く迫ってる。だからこの場で決めてほしい」

 

「………………」

 

 暫く、沈黙が続く。だが、ホシノがその沈黙を破る。

 

「それ…………受けさせてもらおうかな」

「…………ありがとう。それじゃあ早速ついてきて欲しい。夜の勢力を呼び寄せる場所を作るから」

 

 そう隠者が言うと、ホシノをすぐ近くの建物の中に案内する。

 

(追跡者さん…………ごめんなさい)

 

 ホシノは追跡者の願いを踏み躙る様な真似をしてしまった事を、内心悔やんでいた。

 それでもなお、追跡者を守りたかったのだ。

 

「ここの椅子に座って。円卓に行く」

 

 そしてホシノは言われるがままに椅子に座り、円卓に消えた。

 

 

 

そして次の日、キヴォトスに太陽が昇らなかった。

 

 

 

 

*1
因みにかなりキツイ






 そろそろ夜の王が出現するので次話投稿時にアンケートを締め切ります。


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