夜渡りinキヴォトス   作:脱力戦士セシタマン

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 ゆうや117様、誤字報告ありがとうございます!


 もしかしたら夜は忙しいかもしれないので、お昼の投稿とさせていただきます。


 さて、最近私の心境ですが…………

 おい待てフロム!ストラゲスとハルモニアを深き夜に実装するな!ただでさえ回線不良&ヘマやって深度4の底に落ちたって言うのに!!!

 は!?ハルモニア常世個体!?フロム待て!俺はまだ心の準備がー!!!!

 …………と衝撃の2日です。

 一応ハルモニア(救いの旗手)倒してきましたが…………衝撃的でしたね〜。(ネタバレ回避)

 あと、ハルモニア遺物は強い(掌ドリル)



夜を駆ける二人

 

「…………ホシノか?」

「うへぇ〜……追跡者はどうしてこんな時間にこんな所に?」

 

 ホシノは少し怪しんだ声色で追跡者に質問する。

 

「……夜の勢力の相手をしていた。それよりホシノこそ、どうしてこのような時間に?」

「おじさんは、眠れなかったからちょっと散歩してたんだ〜」

「…………ホシノ、嘘は良くないぞ?」

 

 ホシノの服は明らかに不自然に汚れており、それこそ戦わなければつかないような汚れだった。

 

「バレちゃったか〜」

「……パトロールか?」

「まあ、そんな所かな〜。追跡者さん、折角だし少しお話しない?」

 

 その声には隠しているが、警戒の色があった。

 

「…………分かった」

 

 だが、追跡者はホシノが抱えた何がしかの問題をどうにかしたかった。それは、追跡者に残された時間が短いからなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人は静かな砂に埋もれた街を歩く。人気のない、とても寒い場所だった。

 

「そう言えば、こうやって二人だけで話すのは初めてかもね〜」

「そうかもな……」

(そう言えば、俺はキヴォトスに来てから一度も死んでいないな……)

 

 夜渡りは円卓がある限り死なない。それ故に、死んだら円卓に戻されるだろうと思っていたので夜の勢力とは思う存分戦っていた。

 

(まあ、円卓がなかろうと戦うつもりだったが……)

 

「おじさんね〜、追跡者さんは銃弾一発で命取りになっちゃうし、一人で外を出歩くのはよくないと思うんだよ〜」

「大丈夫だ。俺は夜の王を殺す為ならどんな事だってやるつもりだ」

「それはよくないと思うよ〜?レディさんもそうだし、他の対策委員会の皆や先生も心配すると思うよ?」

「心配、か……」

 

 追跡者にとっては、余計なお世話だった。一族の無念の為に、そして何より唯一の肉親たる(レディ)の為に、追跡者は自身がどうなっても良かった。

 

「俺の事は気にしないで欲しい。俺は()()()()()()を残して一族を滅ぼした夜の王を殺す為だったら、何であろうとやるつもりだ」

「もう一人?」

「あぁ…………」

 

 追跡者は以前掛け替えのない(レディ)の為に夜の王になった事を思い返した。

 

「そのもう一人は、俺の妹だ」

「追跡者さん、妹がいたんだね〜」

「従弟もいたぞ?名はファルハドだったか……」

「!……」

 

 ホシノは自身の名を忘れていながら、従弟の名を覚えている事に驚いた。それと同時に、本当に自身がどうなろうとも夜の王を殺すつもりでいる事が嫌という程理解させられた。

 

「だが、妹の名は思い出せない。幼い時に、離れ離れになった」

「そうだったんだ…………」

「だが、二度と会えないと思っていた妹には再び会えたんだ」

「え?会えたの?」

「あぁ。その時には巫女として、円卓に縛られていた」

「円卓の巫女?…………まさか……!」

 

 ホシノはその事実から察したようだった。

 

「あぁ。その時俺は夜の王が屠られれば、俺は死んでしまうことに薄々気付いていた。だから、ただ一人の肉親の(レディ)をだけでも救われる可能性に賭けた」

「………………その方法って…………?」

 

 ホシノは恐る恐る聞いた。それは薄々聞かないほうが良いことのようにも思えたが、好奇心に負けて質問してしまった。

 

「新たな夜の王が生まれ、円卓が作り変えられれば助かるかもしれない。その可能性に賭けて、俺は生まれ変わりの力を持つ銀の雫を使い()()()()()()()()()()()

「夜の王に…………」

 

 ホシノは、自身のありとあらゆる物を犠牲にしてまで屠ろうとした存在になった事に、自身であればどうするか考えていた。

 

(…………私もそうするかもね)

 

 それでも、自身の多くを犠牲にしてまで倒そうとした存在になろうとするのは相当な覚悟だった事はホシノは分かっていた。

 

「そうして、俺は夜の王の領域である夜の砂漠をただ歩き続けていた」

「でも……追跡者さんは夜の王を憎んで……」

「そうだった。だが……俺はどちらにしろ死ぬ定めだった。夜の王となり、殺されようとその結末は変わらない筈だった」

「筈?」

「あぁ。だが気付けばアビドス砂漠にいた」

「それで倒れてたんだ」

「そうだ。だから今こうして話せているのは、奇跡なのかもしれんな」

「……そうだったんだね〜」

 

 ホシノは少しだけ、この大人は信じても良いかもしれないと思った。いや、信じると言うより自身と似た人間だからこそ、気を許せるような気がしていた。

 

「だが、奇跡だからこそ……長続きはしないのだろう」

「え?どういう事???」

 

 ホシノは少し聞きたくない事を聞いたような気がして、聞き返した。

 

「円卓にいた頃のように、今の俺は弱っている。先は永くない」

「っ!!!………………なら……アビドスで働かなくても……」

「いや……俺は先が永くないからこそ、出来ることはやっておきたかった。どんなに体を銃弾で穿たれようとも戦うつもりでいたが…………皆許してくれないからな……」

 

 追跡者は気付けば(レディ)や滅ぼされた一族の為だけではなく、アビドスの為にも戦おうとしていた。その事に、追跡者はこの時初めて気付いた。

 

「もしかしたら、対策委員会の皆が楽しそうにしているのが嬉しかったからなのかもな」

「………………」

 

 ホシノは絶句した。自身が気付かぬ内に追跡者は己の存在が削れ死が迫っているのにも関わらずアビドスの為に戦おうとしていた事に、そして何よりその事が喜ばしいと言わんばかりの様子に対し、ホシノは何と言えばいいか分からなかった。

 

「俺は(レディ)の為に戦うつもりで居たはずなのに、気付けば守りたい物が増えてしまったな…………それでも、俺に出来る事はするつもりだ」

「…………そう……なんだ……」

 

 ホシノは目の前にいる大人を失いたくなくなっていた。あれだけ大人は信用出来ないと思っていたのにも関わらず、追跡者だけは信じたかった。

 追跡者は、不器用ながらもホシノ達の為を本気で思ってくれている人だった。

 

「それに付随してだが、(レディ)や他の対策委員会には言わないでくれ」

「それはどうして?」

「俺は夜の王になった。(レディ)はきっと俺に愛想を尽かせている。それに他の対策委員会に言ってしまえば、もっと心配をかけてしまう」

「おじさんも結構心配してるんだけど???」

「ホシノは……何か言えていない事がありそうでな。そう言うのは、自分が言えていないと駄目だろうと思ったのだが…………」

 

 追跡者はかえって逆効果なんじゃないかと思えた。だが、全く無意味ではなかった。

 

「全く……」

 

 ホシノは追跡者の過去を聞き、幾分か心を開いていた。

 

「おじさんはね〜……1年生の時に先輩がいてさ〜」

「先輩か……」

「でも、喧嘩別れしたまま先輩は帰ってこなくてさ……」

「そうだったのか…………余り聞くべきではなかったな。思い出すのは辛いだろう」

「いいよ、追跡者も昔の事を話してくれたんだし」

「そうか……」

 

(…………愛想を尽かして……か………………もしユメ先輩が今の私を見ていたら、愛想を尽かしてるかもね……)

 

 ホシノは心の中でそう自嘲しながら、追跡者と共に寒い夜の砂漠を歩き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれは…………!」

 

 暫く歩いた後に、追跡者が呟いた。追跡者の視線の先には赤橙色の騎士が一人で歩いていた。あれは正しく、坩堝の騎士だった。

 

「また甲冑…………もしかして……」

「ホシノ、下がっていろ」

「いやだ」

「!……何故だ!……」

「追跡者が傷付く姿をただ見ていたくないから……かな?」

「…………はぁ……分かった。ただし援護だけだぞ」

「分かった」

 

 こうして二人は作戦を擦り合わせるでもなく坩堝の騎士を挟むように別れる。

 

「これが小銃か……実際に使うのは初めてだな……」

 

 追跡者走りながら、無頼漢から貰ったAK-47を取り出す。坩堝の騎士は追跡者の方に先に気付いたからなのか、追跡者の方に盾を構える。

 その後ろで、追跡者から見て坩堝の騎士に被らない位置でホシノが散弾銃を構える。

 追跡者はホシノの様子を見て、右手だけで構え坩堝の騎士に目掛け撃つ。

 

ババババババ!!!

 

キンキンキン!!!

 

 坩堝の騎士はAK-47の弾丸を防ぐ。

 

(俺の記憶が正しければAK-47の用いる7.62x39mm弾は小銃弾の中では高い威力を持つはずだが…………防ぎ切られるとは…………)

 

 

 追跡者が坩堝の騎士のガードの硬さに驚いていると、ホシノが散弾銃を撃つ。

 

 

バン!!!

 

「っ!……」

 

 ホシノの放った散弾は赤橙色の甲冑を容赦なく貫く。

 

「まだまだ行くよ〜」

バンバンバン!!!

「っ!!!…………」

 

 坩堝の騎士は痛みに耐えかね、声を漏らす。だが、散弾の雨は坩堝の騎士の体を抉り続ける。

 このままではまずいと思ったのか、追跡者に向かって走る。

 

(ホシノではなく俺を狙うか!……)

 

 坩堝の騎士はすぐに追跡者に近づき、剣を振り被る。

 だが、追跡者は動かない。

 

「追跡者さん!!!」

 

 ホシノは避けてほしいと言う意を込めて追跡者を呼ぶ。だが、それでも追跡者は動かない。

 

 

 まるで、避ける必要なんてないと言わんばかりに。

 

 そして坩堝の騎士の剣は振り下ろされ……

 

 

ガキーン!!

「!?」

 

 

 左手に持った小さな盾で坩堝の騎士の手元を弾き、体勢を崩させる。

 その隙を逃さず、すぐに片刃がボロボロの大剣に持ち替え首元に目掛け大剣を振り下ろす。

 

バンバンバンバン!!!

 

 その後ろからホシノは内心安堵しながら、坩堝の騎士を撃ち続ける。

 

「!!!!!……………」

 

 追跡者が大剣を抜くと坩堝の騎士は力なく倒れ、立ち上がらなかった。

 そしてすぐに、体が灰になったように崩れ去った。

 

「これは……」

 

 坩堝の騎士は剣を落とした。追跡者としてはありがたく使わせてもらおうと、拾おうとした。

 だが、ホシノは何処か暗い瞳をしていた。何かが向け落ちたような顔だった。

 

(私は…………殺した……)

 

 ホシノは例えそれが大切な仲間を傷付ける相手であったとしても、殺してしまった事実を重く受け止めていた。

 それを追跡者はすぐに見抜き、何時しかの自分に向けるようにホシノに話しかけた。

 

「夜を渡るとはこういう事だ。己の命が奪われる危険に晒されながら命を奪い、殺す」

「………………」

「だから殺す事を躊躇うようなら夜中に出歩く様な真似はよしてくれ」

「っ!……それは…………」

「殺したことを罪だと思える内に、関わる事をやめておいたほうがいい。ホシノはまだ相手を思える優しい子の筈だ」

 

 追跡者は諭すように、そして言い聞かせるようにホシノに言った。

 

「私は…………そんなに優しくないよ。本当はさ、追跡者さん達が来た時は追跡者さんもレディさんも追い出そうって思ってたんだよね」

「そうだったか……」

 

(無理もないだろう。意味不明な単位の借金を背負って尚俺等夜渡りを助けるなど出来ないだろう)

 

「でも、私は追跡者さんやレディさんが私達の為に頑張ってくれてるのを見てたら、追い出すなんて出来なくてさ。寧ろ、うちに来てくれて良かったって思ってるよ」

「………………」

 

 ホシノは少し迷ったような素振りを一瞬見せたが、すぐに決心したのか追跡者の方を見た。

 

「だからさ……追跡者さんだけを戦わせたくないんだ」

「………………」

 

 追跡者はどういう意図でそう言ったのか分からなかったが、余り首を縦には振りたくなかった。

 だが、ホシノはもう決心していた。

 

(私は()()()から既に人殺しだった……だから……せめて今度は守り抜けるように……)

 

 追跡者の勘は感情に対してはとことん鈍いが、ホシノの瞳を見て説得は出来なさそうだと悟った。

 

「……………………分かった……」

「……ごめんね、我儘言って」

「いい、気にするな。だが怪我だけはするなよ。俺のようにすぐに治せたりはしないのだから」

「あれってどうやって治してるの?」

「この聖杯瓶というやつが……」

 

 こうして冷たく寒々しい夜を二つの影が歩き続ける。

 だが、二人ならきっと幾分かは暖かかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分やってくれたな。巫女様」

「ごめんなさい」

 

 円卓では、鉄の目がいつもの姿勢で珍しくキレていた。

 鉄の目がキレていようと相変わらず空は晴れ晴れとしており、円卓の祝福は明るく輝いていた。

 

「まあその辺にしといてやりな。それより魔女さんから話がある」

「………………分かった。その代わり奢りの件はチャラだ。いいな」

「分かったわ」

 

 鉄の目はまあまあ聞き分けのいい方だったので、すぐに不問とすることにした。

 そもそも鉄の目は自身が勝手に夜を続けた分際なのだから、これぐらいの事は許さないとこちらが許されないと思っていた。

 

「皆揃ってるね」

 

 

 大きな魔法使いの帽子を被った魔女は、大祝福のある円卓に入りながらそう言う。

 

「それで…………話ってのは?」

「夜の王の情報共有」

「ほう?……」

 

 隠者は鉄の目のその言葉を聞きながら近くの椅子に座った。

 

「まず夜の王は以前のように7体いる」

「もう一度やり直し…………か」

 

 そう言いながら鉄の目は近くの椅子に座る。

 

「えぇ」

「分かっていたことだ。続けてくれ」

「……それで、一先ず居場所が掴めているのは『三つ首の獣』。アビドス砂漠の辺りよ」

「アビドス……具体的に何処かしら?」

「そこまでは分からない。でもそこに潜んでいる事だけは確実」

「なら……尚更見過ごせないわね」

「教え子達が気になるのか?」

「勿論よ」

「……でもアビドス砂漠に潜むのはそれだけじゃない」

「!……」「どういう事?……」「なんだと!?……」

「アビドス砂漠には夜の王とは別に『預言者たち(デカグラマトン)』の一人……いや、一体かしら?……それがいるわ」

「それはデカいのかしら?」

 

 レディはキヴォトスでの言葉遣いを定着させるべく円卓でも使うことにしていた。

 

「えぇ、デカいわ」

()()グラマトンだけにか?」

「フッw………」

「っ!…………魔女さま、続けてくれ」

 

 無頼漢が最近の言葉を知っているのかと珍しく感心したが、ダジャレとして取られていた事に恥ずかしく思いつつ隠者に話の続きを促す。

 

「それで、その『預言者たち(デカグラマトン)』とも多分『安寧者たち』の時みたいに戦わないといけなくなると思う」

「成る程な……こりゃあ腕が鳴るぜ!」

「その『預言者たち(デカグラマトン)』とやら……是非とも戦ってみたいな」

「だから、皆にはその二つの行方を探っておいて欲しい」

「分かった」「分かったぜ」「分かったわ」

 

 こうして夜渡り達はそれぞれの場所に帰るべくそれぞれ縁深い物を手に持っていた。

 

「じゃあ、またな」

「また頼むわ」「またな」

 

 そう言ってまず無頼漢が消えた。

 

「それじゃあ私も戻るわ」

「待て、その前に一つ」

「何かしら?」

「ブラックマーケットに行ってみるといい。俺から伝えられるのはここまでだ」

「…………分かったわ」

 

 

 その意図をレディはすぐに汲み取り、祝福された鉄貨を手に祈りアビドスへ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もそろそろ()()をしないとね…………」

 

 そう呟いた隠者は石のような骨を手に祈り、キヴォトスへ消えた。

 

 

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