展開や方向性のブレ、急足を自覚しつつ
評価が下がり色変化の大小どうしてもショック
とりま進行。着地点を模索しなければ。
金より命が大切だ
そんな綺麗事を掲げる武器商人や企業、ましてや殺し屋がいるだろうか。
キヴォトスという銃社会では、そうした商売や業者が山程いる。
そして銃を常備する生徒達もまた、その一部に組み込まれ、金の為に引き金に手を掛け、或いは些細な喧嘩で弾が飛び交い、利権や優位性を主張している。
そして、そんな子達を法律や権力で安全な陰から利用し、金を巻き上げる大人の手口が蔓延している。
キヴォトスでは憎しみや恨みの感情、暴力すら痛みの伴わないビジネスと化しているのだ。
ATもまた、その歯車になってしまった。
今更止められるものでもない。
経済の基盤となるものを壊せる筈もない。
だが、そうした世界の闇を知らぬ純粋な者、教育が行き届いていない者、暴力しか知らない者ほど搾取の対象になり易い。
そうした子達は、とてもじゃないが数知れない。 今日も何処かで、生きる為の暴力を振るい、その行為を利用する者が高らかに笑う。
残酷な現実だ。
この世界を生きる以上、悪意は常に隣り合う。
ある意味、全てのキヴォトス人の宿命なのだ。
そうした悪者に騙されないように、危険を回避したり戦う術を学校で学べなかった子達はどうなるのか?
騙された者達を救済する者はいるのか?
暴力に支配され、暴力しか知らない少女達を養う人は誰なのだ?
答えは誰もいない、だ。
悲しいかな、世界は冷酷だった。 社会を知らぬ子達には仕事が無かった。
かつてのスポーツ選手やアイドルといった有名人が、引退後に大変な事になっているのが偶に話題になるのを見聞きした者もいるだろう。
何故そうなるのか?
それは限定的な分野に特化し過ぎたが故に、社会を知らないからである。
例えばだが。
お嬢様学校のトリニティで、聖園ミカが学園を危険に晒した罪を受け、生徒会組織のティーパーティを半ばクビにされた後の話がある。
様子を見に来た先生と街で買い物をして、カードで支払おうとするも利用出来なかったという描写があるのだが、それが世間を知らず、限定的な世界に生きていた末の、些細ながらも人生の挫折の1つを表しているように思える。
彼女の場合は先生や幼馴染のナギサ、友のセイア、純粋なコハルの支え等もあり、虐めや説教、慣れない屋根裏部屋な生活に耐えながらも、勉強して世界に順応していったかにも思える。
だがそうじゃない子もいる。 年頃の女の子が、皆が知っている筈の知識や常識を知らないどころか、知る機会が無い程、世界と関わらなかった子もいる。
酷い言い方になるが、常識や経験が欠如した者が、社会という荒波に放り出されて生きていける筈がないのは想像に難くない。
その道にいるのが、まさしくアリウスだった。
そんな生徒達を憂いているのが先生である。
何とかしたいと思った。
何とか授業を受けさせたいと思った。
だが悩みもある。 恐れもある。
読み書き算盤も怪しい子達に、銃ではなくペンを持たし、悪意溢れる大人のやり方に対抗する術を教えるにはどうすれば良いか?
暴力に依らない筆と書面の世界で生きていくという進路が、本当に正しいだろうか?
未来に希望と夢を持たせたぶん、絶望してしまう生徒を見たくない───
そんな逡巡が、今日という日を招いたのかも知れない。 先生は己を責めた。
それでも、広い世界の何処かにはそれが良いという業界もいるだろう。 なんなら評価して採用する組織もあるだろう。
誰でも輝けるよ!
夢を叶えられるよ!
希望が溢れているよ!
栄光を浴びれるよ!
君達が必要なんだ!
ここには居場所がある!
等と連中は聞き心地の良い言葉を並べたて、破滅の世界へと誘う。 そして地獄の底へ突き落とし悪徳の養分にされてしまうのだ。
時々、先生は自分が教育者である事が恐ろしく感じてきた。
なんせ、何千何万もいるであろうキヴォトスの生徒達、その一部であっても生き方を決めてしまえる立場にいるのだから。
そこに、生徒を食い物にする悪い大人と違いはありはしないのではないか?
だが教育者として仕事を放棄は出来ない。
感情に振り回されて誰かを贔屓にも出来ない。
時に非情になり、立ち向かわねばならない。
開発部は生徒の身でありながら、承認欲求や治安維持組織の負担を軽減したいとATを拡散させたが、周囲との衝突があり、そこを大人につけ込まれて利益を出す道具にされてしまった。
そちらにも手を加えて、修正させたいところ。
色々と仕事が立て込み、感情がぐっちゃになる中、それでもうまい具合に混ぜ込んで、加工して、器用に振る舞う度量を生徒達に魅せていく。
その為の協力者が、アロナやプラナとしたオーパーツでチートなOS及び。
偶然出会えた、いや、運命的に再会出来たボトムズ、不良のラブ達AT乗りであった。
彼女達もまた、大切な生徒達。
所属する学校もなく救ってくれる者も滅多にいないが、アリウスと違うのは、仲間がいて、自由があって、ある程度の常識と世界の側面を知っている。
もしかしたら、そんなボトムズがアリウスの生徒達に良い影響を与えるかも知れない。
少なくとも考える切掛になればと期待する。
そんなアリウスに現地入り。
ラブとATを相乗りし、先に侵入していたアズサの手引きで、何とか自治区内に侵入していく事となる。
「大変です!」
「どうしたのですか、立木マイア」
「侵入者です! トリニティからATが!」
「……粗悪な対ATライフルしか導入していなかった筈ですが。 どうやら第三者の様ですね。 セーフティ解除。 応戦します」
アリウスを救う為。 教え導く為。
その為に必要なのは───。
「ここはアリウス! 己の意見は、己の力で押し通せ!」
「力無き正義は空虚な叫びに過ぎず!!」
「己が人生に責任を持てるのは、己を置いて他にいない!!」
「良いねそれ、気に入ったわ。 アンタがアリウスの纏め役、梯スバルだっけ? 吐いた唾飲まんどけよ!」
「結局、こうなるんだね……」
暴力しか知らない少女達。
分からせるには、納得させるには先ず此方が同じ土俵で叩き潰し、力の優位性を示さねばならない。
そして、それは不良の世界にも通じるもの。
互いにトリガーを引き、30ミリの暴力が吹き荒れ、弾丸が交差。 互いのATが爆発していく。
だが違いは直ぐに現れていく。
「ジャブジャブヘルメット団! ゲヘナでの苦痛を素裾分けしてやれ!」
「おおおお!!」
操縦においてはラブ達が上。
ターンピックが石畳に突き刺さり、ATは素早く方向転換、回避運動、散開を手際良くしていく。
地の利は向こうにあるが、ATの慣れ親しんだ動きがカバーして余りある。
肩を赤く染めた隊長機、ATM-09-RSCが肉薄、腕につけたパイルバンカーで串刺しにしようとするも、難なく避けられ、アームパンチでコックピットを潰されてしまう。
装備も違う。
使い捨ての肩部ミサイルポッドだけでなく、ストックやグレネード射出器、同軸のレーザー距離測定器を外して取り回しを良くしたGAT-22-Cヘビィマシンガン改を振り回し、近接戦での優位性を見せつける。
「慣れた動き、ゲヘナの元懲罰部隊か!?」
「更に増援! 重装備のカスタム機です!」
「情報にあった"夜盗"だ!?」
後方からは改造した重装備機、スコープドッグのバリエーション機ATM-09DDバーグラリードッグが到着。
「来るの遅い! 何してたの!」
「勘弁してくださいよ! 大枚叩いて揃えたパーツを取り付けるのに手間取ってたんスから! あと機体も重くなって操縦性が少し悪いし!」
脚部装備の、設置面積を増やしたソリ状のパーツ、トランプルリガーが石畳の上を滑らかに走行、装備重量増加による機動性の低下を抑えつつ都合の良い場所に陣取る。
すると降着姿勢で重心を下げ、次にはミッションパックに背負っていた折り畳み式の長距離砲なドロッパーズ・フォールディングガンを展開。
ATに取り付けるには無理がある砲身を、少しでも安定させる為、ATならではな降着姿勢を利用するのは、現場の経験からだった。
「照準固定良し。 外しはしねぇっス」
「火力の違いを見せてやれ!」
「巻き込まれるなっスよ!」
ドゴォオオン!!
轟音がアリウスの廃墟街に木霊した刹那、アリウスのATと歩兵隊が纏めて吹き飛んだ。
「一網打尽! あとは頼むっス!」
「よし! あそこに伸びてる親玉を捕まえれば、他も大人しくなる筈! そうすれば先生の言う事も聞くでしょ! ね、先生?」
「う、うん、そうだね……いやしかし、さっきのカスタム機、格好良かった! やり方は褒められないけど」
男の子としての感情を交えつつ、先生として複雑な意見も出して両立させておく。
何にせよ、やっと交渉の席につけそうだ。
……いつかのように撃たれる事もあるまいて。
後書き
《次回予告風》
アリウスと生徒、先生、ラブ、AT、開発部
もつれた糸を縫って、救いの手になる運命の弾丸が飛び交う
キヴォトスの陰で織り成される、金で企んだ紋様はなに
巨大な学園都市の隅に描かれる粗雑なドラマ
そのとき、ラブは叫んだ。先生!!と。
次回「活劇」
いよいよキャスティング完了。