終わりが見えてきました。
ラブちゃんの名前、棺桶に準えてイきます。
御伽話風にもなって素敵かなと思い。
原作的にも恋愛要素あったからね……
文才無いなりにも、もっとATとか可愛い女の子達が酷い目に遭うとか、硝煙でむせる戦闘描写を書きたい気持ちはあれど、ダラダラと長引いても良くないと考えて。
……未完作品を積んでいるのもあり。後ろめたさといいますか、モチベがある内にといいますか。人気作品を書ける、文才のある人達が羨ましいです(嫉妬
「私たちは間違っていない! 間違っているのは金だ権利だとばかり叫ぶ世の中だ! 最初はATを認めて欲しかった。 人の役に立ちたかった。 それが今じゃテロリストや金儲けの道具にされている! 大人なんか大嫌いだ!」
哀しみに暮れ物に当たる開発部の部長を、モブ達は何も言わずただ静かに眺めていた。
言ってしまえば、最初から企業の誘いには乗り気では無かった。 ただミレニアムのセミナーに研究成果を剥奪され、口座を凍結され、研究や開発続行が困難になったのが悔しかったのだ。
同時に目の前の少女───部長がどれだけ努力をしてきたのかを知らない部員でもない。
ATの普及、社会貢献。 その夢を叶える為に、ミレニアム生が言うところの凡人でも理解できるように、寝る間も惜しんで必死に噛み砕いた文章を作成していたのも知っている。
仲間が増えて、予算が出て、企業から誘われて、これで漸く夢を叶えられると笑顔を見せてくれた部長を知っている。
セミナーや大人共に使える技術や特許だけを奪われ、計画自体は鼻で笑われて絶望を浮かべた部長を、部員は知っている。
だから間違っていると分かっていながら協力してきた。 彼女も間違っているけど、キヴォトスの皆も間違っていると言い訳をして。
「残念だがキヴォトスはそういう場所だ。 まあ大人は私も大嫌いだがな」
「ッ!?」
開発部以外に誰も居ないはず空間に響く声。
その言葉の意味を認識するよりも早く部長の体は動いていた。
殆ど本能的なものによってAT、次期主力機グラントリードッグをベースとしたX・ATH-P-RSCブラッドサッカーに乗り込むと、左腕のアームパンチが寸分違わず声の方向へ繰り出され。
「反応速度だけは褒めてやる」
「ヘビィ級AT、ATH-14-STスタンディングトータスのカスタム機!?」
そこにいた重装甲AT、スタンディングトータスが拳を受け止める。
傾斜装甲の胴体に持つ大きな機体は見るからに重装甲。 ATの顔とも呼べるカメラは、ドッグ系と同様の光学式カメラとセンサーユニットを固定式装甲カバーで覆い、その部分だけでも見るからに防御力がある。
胴体側面には部隊章なのか狐のマーク。
直視、目視用の小窓はシャッターで閉められており、ウィークポイントをカバーしている。
純正品ではなくカスタム機で、ドッグ系と同様にグライディングホイールを装備。 独自の大型のものを使用、重装備で低下した機動性を賄っている。
重火器による後方支援、拠点制圧を目的とした機体故にオミットされていたターンピックやアームパンチも装備し、急旋回、急接近からの格闘戦もある程度取れるようになっている。 これら装備により攻撃を防いだのだった。
そのまま◯首の位置にある2門の11mm機関銃が火を噴けば、至近距離で被弾したATは火花を散らしぶっ倒れる。
「亀の威を借る狐って!」
次に動いたのは部員だった。
実験用の試作機であるいくつかのATをすぐさま起動し、侵入者を迎え撃つ。
どうやって侵入したのか、どうやってここを突き止めたのか疑問は尽きないが、倒さないときっと良い様に使われるだけと決め付けて。
だがしかし。
「人間不信になるのも分かるが。 私達も道具として、人に利用されてきた身だからな」
ATが左手をあげ、拳を突き出す。
ただそれだけの軽い動作から、液体火薬による瞬発的な鉄拳が繰り出されて試作機を次々とヘコまし、ただの鉄屑の山を築き上げてしまう。
「ATを作って、ATに制圧される。 どんな気分なのかしらね。 ねぇFOX1(ユキノ隊長)?」
「FOX3(クルミ)、任務中だ」
「駄目よ、意地悪言っちゃ」
「FOX2(ニコ)もだ」
「こちらFOX4(オトギ)、警備のATは装甲の隙間を狙撃したら簡単に倒せた。 拍子抜けだったね!」
「……矯正局の牢屋から久しぶりに出られて興奮するのは分かる。 だが仮にもSRT。 私語を慎め」
こんな状況でなお、会話を楽しむ余裕を見せる圧倒的存在。 開発部は最早ここまでかと自身の力が抜けていく。
その感覚を何処か他人事のように感じていた。
「私達はシャーレの先生及び、連邦生徒会の防衛室の要請で活動。 君達AT開発部を取り込んだ企業の実態調査と制圧、そして救助が任務だ」
「へ? つまり……」
「君達を騙した企業を潰し"人質"の君達を解放しにきたという事だ。 後者はミレニアムの生徒会組織セミナー、特に会計からの要望が強かったと聞く」
「ッ!」
「色々謝りたいそうだ……帰る場所がある、結構な話じゃないか。 羨ましいよ君達が」
先生とミレニアムが手を回していた。
AT開発部の救済、そして彼女達を騙してATで金儲けをしていた悪徳企業の始末。
シャーレの人徳があってこそ。 そして先生だけではどうにもならない事は生徒がやる。 助け合う。 勿論、政治的な意図、打算があってこそ組織は動く。
正義の反対は正義か無関心、或いは慈悲寛容と述べた者がいたか。
では悪の反対は何か。 それはきっと、別の悪や善意、偽善なのかも知れない。
だが、少なくともこの場においては、政治や組織に左右されない、夢物語で語られる正義により事態収拾へ向かっている。
そう信じよう。
「戦場にATなんか持ち込みやがって!!」
「先生も! よくもマダムを追い出したな!」
「せめてこの土地だけは! やらせない!!」
「ここは家だ! 家族だ! 守るんだッ!!」
モブアリウス生は堅牢に抵抗し続ける。
ATを使い果たしてもなお、訓練されてきた歩兵として歯向かってくる。
中には対ATライフルを抱えて銃剣突撃、特攻紛いまでする子すらいる。
「団長! 奴ら死に物狂いでっせ!?」
「そりゃそうよ。 あの子達にとっちゃ、ここが唯一の居場所なのよ」
「気持ちは分かりますが……」
「じゃあやられたいの?」
「まさか。 やり返しますよ!」
30ミリの機銃掃射を浴びせて残党歩兵を蹴散らし、賞味期限が切れかかったミサイルを景気良くブチ込んでいけば、花火のようにアリウス生が吹き飛んだ。
けれど後先の無い、追い詰められた死兵は何をしでかすか分からない。
やられたフリをしていた瀕死のアリウス生が、側にラブのATが来た時を狙い、仰向けになって撃ちまくる。
無数の弾丸が胴体を通り、コックピットまで貫通、頬の近くを通り抜けていく。
「ちぃっ!?」
ターンピックの旋回でソイツを弾き飛ばし、漸く静寂を勝ち取った。
「はぁはぁ……やるじゃない。 でも惜しかったわね……私達の勝ちよ。 なぁ先生!」
歓喜に包まれ、先生とも分かち合いたいたく反応を尋ねる。 どちらにせよ、後は先生にバトンタッチだし。
「先生?」
返事が無い。
お尻に伝わる熱い───。
「先生!!」
嫌な予感に肝を冷やしながら振り返った先。
「ぶくぶくぶく……」
目を回し気を失う、情け無い大人の姿があった。
「なんだよ、心配して損したじゃん……」
ホッと胸を撫で下ろすラブ。
では下半身の違和感はナニか。
「……ばっ!?」
またも真っ赤になるラブ。
……この事は墓場まで持って行こう。
そう思うラブなのであった……。
後書き
《次回予告風》
降り注ぐ火玉。舞い降りる鉄騎兵
欲望と暴力の中で介入するエデン機構軍
圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躙し尽す
細やかな望み、芽生えた愛、絆、健気な野心
生徒も大人も、男も女も昨日も明日も呑み込んで
走る。炎、炎。
音をたててアリウスが沈む。
次回「恋慕」
棺桶の眠り姫は、愛を受けて蘇る。