スコープアーカイブ(完結)   作:ハヤモ

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前書き
毎日の様に投稿してきましたが畳まねば。
駆け足展開ですがダラダラ良くないと思い。


恋慕

力で挑み力に屈したアリウス、その代表スバルは、大人しく先生と対話している。

その背後にはラブ達ジャブジャブヘルメット団の主力ATスコープドッグと、重武装のバーグラリードッグにラブが乗り込み歩哨のように立っていて、手に持つ 30ミリヘビィマシンガンをチラつかせて脅すという、威圧的な戦艦交渉ならぬAT交渉の様相を晒していた。

 

それでも内容は表面上至極真っ当で、社会に出る為の教育を受けさせたい、授業して勉強して試験を受けて、銃によらない世界との戦い方、生き方を皆で学ぼうというもの。

 

暴力しか知らず、外の世界を知らないアリウス生は互いに顔を見合わせ困惑したが、興味を抱かせる事には成功、そして勝者の言う事は聞くと言うスタイルで、先生の授業を受けようとした正にその時───。

 

 

「ラブ団長! ATが来ます! 新型です!?」

 

 

モブ団員が叫んだ。

ラブはふーん、と興味なさげに対応。

 

 

「スコープドッグのカスタム機か何かでしょ。 だとして残党よ。 適当に挨拶してやんな」

 

「犬じゃねぇっす! 白く角張った騎士っす!」

 

「なんだって!?」

 

 

慌てるように皆のターレットレンズが回転、望遠レンズにしてズームインすれば、視界に投影される白い機体群。

 

 

「パイルバンカーと一体化した盾持ちの騎士な奴を先頭に、劣化コピーみてぇなのがゾロゾロ来やがる!?」

 

「奇襲? アリウスの隠し玉か?」

 

 

レンズがレールを走り、横目のようにジロリとスバル達を睨むも、本人達は知らぬ存ぜぬと首を振る。

何にせよ先生が危ない。 ヘイローのあるキヴォトス人なら多少の被弾で死にはしないが、外から来た男の先生は流れ弾で致命傷である。

 

 

「先生! 交渉は後よ、新手が来た!」

 

「えっ? うわっ!?」

 

 

ラブはマニピュレーターでむんず、と先生を掴み、コックピットを開けて有無を言わさず突っ込んだ。

機体は変われど、また相乗りの形となる。

 

 

「敵の正体は分かんねーけど、この状況だ。 敵と見て動いた方が良いだろうさ」

 

「白い機体が一瞬見えたけど、あれはX・ATH-11エルドスピーネと、先頭はターボカスタム機のX・ATH-11TCオーデルバックラーだね! 盾と一体化した電磁式パイルバンカーで武装しているみたいだ!」

 

「く、詳しいな。 やっぱ好きなんだな?」

 

「あ、いや、ちょっとアロナとプラナ……じゃなくて、タブレットで調べたんだ」

 

「はぁ……っと、悪いが先生! また撃ち合いになるぜ! 掴まってろよ!」

 

「うおおお!?」

 

 

白の軍勢、騎士ATが撃ち始めた為にラブ達は散開。 ATの機動力を殺さない為、遮蔽物越しに止まって撃つ真似をせず、常に高速高機動戦闘を心掛けて撃ち返す。

 

 

「AT同士、止まったらカモだ!」

 

 

狭い路地裏を縫い走行。 グライディングホイールが火花を散らし、甲高いローラー音を奏で続ける。

ラブのバーグラリードッグは、多武装による火力と継戦能力を活かすように、路地裏を追ってきた奴に腹部横のガトリングガンで掃射、逆側に取り付けた対戦車ミサイルをも撃ちまくり、片っ端から潰し回る。

多少被弾、装甲を抜けてきた閃光が頬を掠めるも、臆せず果敢に銃を撃ちまくる。

 

 

「へっ、中々やるけど上等なのは派手な見た目ばかり! 機動力も操縦もこっちが上! 豪華な装甲と火力は厄介だけど、数が少ないから片付きそう。 でもアリウスじゃないとなると、どこのATなの?」

 

「……今調べたよ。 トリニティが秘密裏に導入、試験的に投入してきたらしい」

 

「そのタブレット、そこまで分かんの!?」

 

 

先生によると、なんとお嬢様学校なトリニティのATらしい。

対ATライフルなどという、トンチンカンな銃火器を導入しているばかりで取るに足らないと思いきや、それは囮情報だったのかも知れない。

 

 

「なんでお嬢様連中がATを!?」

 

「有用性を実証する目的かな。 あとは脆くて安い量産品は買いたくないけど、見た目や性能が校風に少しでも合えば、というのもあったのかも」

 

「アリウスの残党がトリニティの自治区に攻撃をした、それを理由にここを攻撃。 けど本音は実験だって?」

 

「そうなるのかな。 落ち着いたらナギサ達ティーパーティに聞かないとね」

 

 

そんな時、団員から通信。

チーム全体に聞こえるそれは、悲鳴のソレ。

 

 

「おい! 空を見ろ!?」

 

「ッ! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?」

 

「ゲヘナの飛行船だぁ!?」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ……馬鹿な!?」

 

 

弾かれるように停止、空にスコープを向ければ。

 

いる。 TVでも見た、ゲヘナの飛行船が。

側面から閃光や円筒の黒煙が上がる度、地上でドカンドカンと爆音が鳴り響く。

 

 

「な、なんでこんな所に!?」

 

「トリニティの次はゲヘナだなんて。 しかも生徒会組織の万魔殿の飛行船じゃない。 まさか脱走してきた私達を追ってきたの!?」

 

「他の自治区に行く程なのかは考え難い。 エデン条約の都合に合わせて救援という形でやってきたのかも。 実情はトリニティと同じように何かの実験の可能性も……」

 

 

先生が云々唸っている間も事態は悪化する。

 

 

「団長! 何か降りてきます!」

 

 

団員が叫び、望遠レンズでズームする先、人型兵器が地上にばら撒かれていく。

それらは背中のパラシュートを開き降下、着地の際の衝撃を和らげる為に一瞬降着姿勢を取って関節を折り曲げるも、直ぐに走行を開始、聞き慣れた甲高いローラー音が爆炎の街に響かせ始めた。

遅れて戦車も降下させるという無茶振りだ。

 

 

「AT、また新型だ!? 戦車も来た!」

 

「あのATはATH-P-FX、いや、実際にロールアウト、量産されているならばATH-10-STと呼ぶべきか、その名もグラントリードッグ! 生産コストが高く、実験テスト等の為の輸送中に起きたアクシデントや不鮮明な政治工作で陽の目を見る事は無いと噂されていたけど、まさかスコープドッグの正式後継機が完成していたなんて!」

 

 

ロボ好き先生が置かれた状況を忘れて興奮気味に語り始めるも、ラブは冷静に尋ねていく。

そこはゲヘナ懲罰部隊、酷使されたベテラン、キヴォトス初のAT実戦経験者群、或いは不良特殊部隊だ、面構えが違う。

 

 

「そんな蘊蓄なんか知らんけど、私らの使ってる機体の後継機って事は強いって事か先生?」

 

「うん。 巡航速度は少し劣るかもだけど、最高速度は向こうが上。 ターレットレンズ式じゃないけど、たぶん全ての情報をコンピュータが最適化、パイロットに自動伝達させている。 装甲も幾らか上だろうね。 装備も一新されているなら、基本兵装のヘビィマシンガンは新型。 装弾数、再装填のし易さ、命中率が向上しているかも」

 

 

先生が語っている間も、早速というか、新たな銃声が響き始めた。

同時に飛行船から拡声器での大声量が降り注ぐ。

 

 

「キヒヒッ! エデン条約に準えて、トリニティを攻撃したアリウスの残党討伐に馳せ参じてやったぞ! まあ、そのついでにATの実地試験も兼ねるが、悪いのは先に手を出した方だからなぁ!」

 

「それが目的でしょう。 私も戦車とATが上手く組み合わせられるのかは見ておきたいですけど」

 

 

どうやら圧倒的な火力と立場、正当性を盾に、アリウスを好き勝手に実験場にしたらしい。

これには不良のラブも思う所があり、背負っている折り畳み式の長距離砲、ドロッパーズ・フォールディングガンを展開。

砲口を上にし、ターレットレンズが回転、標準から広角、望遠と変わりながら、その先の飛行船を狙う。

 

 

「わりぃ先生。 アレ、堕とすわ」

 

「ちょっとラブ!?」

 

 

トリガーを引く。 刹那。

 

ドゴォオオンッ!

 

爆音と共に砲弾が天へ放たれた。

その先の飛行船、気球部分を貫くと爆発炎上。

飛行船は火の玉となり、黒煙を撒き散らしながら地上へと墜落、再度大きく爆発した。

 

 

「ゲヘナの飛行船が撃墜されたあああ!?」

 

「うーわ、マジかよやりやがった!?」

 

「ザマァ見ろ! ペッ!」

 

 

三者三様の反応を見せる面々。

権力者の持ち物に矛を向けたどころか滅多刺しな展開に驚愕する者、お返しが来そうで戦々恐々とする者、中指を立て唾棄する者と個性豊かである。

 

 

「私らをこき使った仕返しだ。 まだやり足りねぇくらいよ」

 

「ラブ、これじゃアリウスがやったと思われちゃうんじゃ?」

 

「ここまで乗り込んだ以上、被害の一切合切は、どう転んでも賊軍の所為にする気だよ、私は詳しいんだ。 こうなったら"話せば分かる"よう、向こうのお望み通りAT試験と行こうじゃないか……野郎ども、行くぞ!」

 

「「おう!」」

 

「また、こうなるんだね……」

 

 

相次ぐトラブルに嘆く先生。

家で余所者が好き勝手に暴れられているアリウス生も大迷惑であるが、追い出す力は残されていないので成り行きを見守るしか無い。

 

 

「良い機会だ! ゲヘナの連中に教えてやれ、ここに来たのが運の尽きだってな!」

 

「新型だかなんだか知らんがやってやらぁ!」

 

 

そして再び始まる銃撃戦。

元よりキヴォトスとはそういう場所だが、様々な勢力が一同に介して入り乱れるのは中々に状況が拗れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スコープドッグ! やたら動きが良い!」

 

「脱走した懲罰部隊の連中じゃない!?」

 

「ここであったが100年目ってか!」

 

「こっちは新型機! 数もいる!」

 

「最初の獲物として不足ない! 潰せ!」

 

 

万魔殿側も懲罰部隊の存在と認めつつ、何故ここにいるのかとか疑問に思うより先に引金を引いて弾をばら撒いてくる。

ラブ達がATの有用性を示してしまった事で、こうして自分達も棺桶に乗せられている事、キヴォトスにATが普及した事、それによる治安悪化を恨んでいるのもある。

悪いのは購入したマコト議長であり、実戦に出したアコ行政官なのだが、遅かれ早かれどこかの組織がやっていたであろう。

それは頭で理解はしつつも、感情は身近な者に当たってしまう。 当てるしかない。 ラブ達が不良なのもあって良い的にしているのだ。

 

 

「ATの差が戦力の決定的差じゃないって事、教えてやりなさい!」

 

「でも戦いは数だとも言います!」

 

「最初からへっぴり腰じゃ勝てる戦いも勝てないでしょうが!」

 

 

とはいえ、1つの事実として現れていく。

操縦ではラブ達が上だが、機体性能は向こうが上であり、数もいる。

それなりに撃ち合い、削れはしたが、多勢に無勢。 団員のATスコープドッグは殆どが爆散し、残るはラブと先生が相乗りするバーグラリードッグだけとなってしまう。

 

 

「ちぃ!?」

 

 

背負う長距離砲を爆発ボルトでパージ、機体を軽くして逃げ回りつつ、脇腹のガトリングガンで牽制、逆脇のミサイルを全弾発射、パージする。

死角から接近、アームパンチ連打でコックピットを潰して無力感、新型のマシンガンを奪う。

多少形状が異なるが同じドッグ系列として規格が合うように設計されており、旧式のスコープ系とも互換性がある、拾って使い回せるものだった。

 

 

「良い銃じゃん?」

 

 

コンピュータがラブの思惑通り直ぐ構えれば、その先にいるグラントリードッグを蜂の巣にして爆散させるも。

 

 

「やば、戦車が来……ッ!」

 

 

その爆炎の向こうから主砲が突き抜ければ、次の瞬間、閃光を放つ。

回避運動が間に合わず榴弾が直撃、機体が爆散。 先生とラブが機外に放り出されてしまった。

 

 

「うぐ……っ」

 

 

先生はオーパーツのシッテムの箱、そのOSアロナとプラナの張ったバリアで無事であった。

だがラブは……。

 

 

「ラブ!?」

 

 

衣服共々黒焦げになり、地面に横たわるラブ。

ボロボロで、気を失いヘイローが消えている。

 

先生は直ぐに彼女を抱き上げて、少しでも安全な場所を求めて走り出す。

 

炎の中、砲弾が飛び交い、爆炎の海にアリウスの街が沈む中、呑み込まれまい、生徒を、ラブを守らないとと必死に走る。

 

 

「はぁはぁ……ラブ! 大丈夫だ! 守られてばかりじゃないから! 先生がきっと守るから!」

 

 

そんな愛の逃避行。

応援するようにして、新たなATと生徒の声。

 

 

「せ、先生! 援護します!」

 

 

やって来たは、スコープドッグより前に作られたというプロトタイプの現地改修機ATM-08-ST-N スペンディングウルフと、茶色く装甲が少し厚そうなATM-06-STマスカレイドコング。

そして、その真逆の最新鋭機ともいえる蒼き機体X・ATH-02-DTラビドリードッグ。

搭乗員は開発部の子達であった。

 

 

「開発部の皆!? 企業やミレニアムの事はもう大丈夫なのかい!?」

 

「はい! 話はつきました! 今回、その礼をしに来た感じです!」

 

 

そう言いながら、基本兵装のヘビィマシンガンを撃ちまくり、邪魔な敵ATを蹴散らしては先生の進路を確保する。

 

 

「ありがとう!」

 

 

彼女達の援護を受け、ラブを抱えた先生はひた走る。 落とさないよう、しっかりと抱きしめながら。

その途中。 その温かくも力強い腕に反応し、ラブが目を覚ます。

 

 

「せん、せ……?」

 

「ラブ! 良かった……! 目覚めたんだ!」

 

「え……私、今、どうなって……」

 

 

ここで抱かれている事に気がつくラブ。

赤面して殴り飛ばすのに秒と掛からなかった。




後書き
《次回予告風》終劇
なにもかもが、炎に沈んだ
微笑みかけた平和も、 芽生えた愛も、未来も
そして、あらゆる悪徳も同じだ
全てが振り出しに戻った
ATは、神秘と疲れた躰を薄い装甲に包んで、再び泥濘と、硝煙の地を駆ける
終劇「スコープアーカイブ」
棺桶に愛を込めて。
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