スコープアーカイブ(完結)   作:ハヤモ

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ミレニアムでの開発経緯
けれど直ぐ流行らず。その代わり……


開発経緯

ATの開発は無名のミレニアム生が切掛だが、いざ作るとなると不思議な事が起きた。

その設計図が都合良く頭に浮かび、すらすらと筆が勢いにのったのだ

 

コレはイケるぞひゃっほい

無名の私も遂に陽の目を見る時が近い!

 

が、そこまで都合良くはいかず。

いざATスコープドッグの図面を生徒会相当の組織、セミナーに持ち込むも、会計の冷酷な算術使い、ユウカに却下されてしまったのだ

 

 

「はぁ? なにこれアーマードトルーパー?

劣化パワードスーツの兵器スコープドッグ?

ダメダメ。 却下よ却下。 何言ってるのよ?

1機あたりのコストは低いけど、沢山作らないといけないのよね? 大量生産で多少コストは下がるといっても、トータルは馬鹿にできないわ。 輸送や整備も必要になるのよ?

それらも簡単な構造? 沢山ある機体をパイロットが直接整備するの?

スペックも低い。 下手すれば歩兵の携行火器でやられる装甲厚なんて、あるだけ無駄じゃない。

コンセプトの戦車と歩兵の中間というのは良いと思うけど、これを作るなら既存のドローンを量産すれば充分賄えるわ。 何より無人だしね。 被弾面積も狭い。

二足歩行ロボットを作りたいなんて浪漫だけじゃ予算はおりないのよ。

それに私達は学生。 学業が本分。 歩兵の損耗を抑える為の研究というのは全否定しないけど、他に集中する事があるんじゃないかしら。

分かったら帰って頂戴。 私は忙しいんだから」

 

 

正論パンチで取り合って貰えず、図面を押し返されて門前払い。 扉をバタンと閉められてしまう

 

ミレニアムサイエンススクールは最新の技術や論理を研究、提唱、開発して実証実験をする学校だ。 どこか古臭く非合理的で、今ある技術や研究中の物の方が有利ならば、話す価値なしと雑に扱う者もいる

 

特に予算に関わるとなれば切実で。

有限の金と資源を無駄遣いしたくないのはどこも同じである

 

だが諦めきれない。

こうなれば独自にでも研究開発だ。 だけど、それには相応の設備と資材がいる

 

どうしたものか

 

そこで彼女に電流走る……!

天啓……悪魔的閃き……!

 

ユウカの言葉を思い出した

浪漫だけでは動かない、アレは嘘だ!

 

予算が出ないなら、浪漫大好きで実力もあって実績もある部活に頼めば良いじゃない

 

そう、頭の良い馬鹿ことエンジニア部です

 

思い立ったが吉日。

駆け込み寺の如くガレージに図面を持ち込んだ

 

出迎えた部長のウタハに早速見せると、案の定、嬉々として開発に協力してくれる事となる

 

 

「図面越しに伝わってくるよ。 どことなく古くて油と鉄の充満した匂いが」

 

「説明しましょう! それはここがガレージだからです部長!」

 

「技術は既存のものも使えそうだね。 とても簡素な作りだし……でもエンジンブロックを設けずに、マッスルシリンダーという新技術は面白い。 どこを撃っても引火性があるのは問題だけど。

あと二足歩行だけどローラーで高速移動出来るのも面白いね。 それで倒れない姿勢制御プログラムは優秀だよ。 Bluetooth機能とか自爆機能をつけたらもっと面白そう」

 

「ヒビキ先輩、本人が首を横に振ってます! 勘弁してあげてください!」

 

 

意見の相違や、設計に無い余計な真似もされながらも、なんやかんや開発が始まった

 

そして短時間の内に実機が組み上がり、スペックは想定通りの棺桶で最低野郎な仕上がりとなる

 

 

「できたよ! ミッド級アーマードトルーパー、ATM-09-STスコープドッグだ!

型番の意味は分からないが、本人の要望によりナンバリングされた!」

 

「本人の脳内に浮かんだ数列らしいですよ!」

 

「設計が優秀だったから、試作機も無駄にならず、低コストのままだね」

 

 

ATを作ってくれたエンジニア部に感謝した。

だがこれで満足していられない

 

今度はなんとか普及させないといけない。 歩兵の損耗を抑えるのが目的なのだから

 

彼女が次に取った行動は宣伝だった

 

報道機関のクロノス報道部や胡散臭いけど営業トークはできる擬似科学部に資料を送ったり、モモトークのようなSNSに拡散してもらった

 

これで周知、関心を高めて貰い、どこかしらの組織が導入してくれたなら、その有効性が示されて広がりを見せてくれるハズだ

 

だが、ここでも上手くいかない

 

既にゴリアテのような歩行兵器が実在、PMCで運用されていたこと、そうした既存兵器と性能比較されてしまい、棺桶だ貧乏だ低所得者向けだ安全性が無いと馬鹿にされて低評価の嵐を受けてしまったのだ

 

話題にこそ上がったが、それに集り承認欲求や収益を得ようとする者が、動画投稿サイトで小馬鹿に批難。 そのスペックが如何に既存兵器と比較して塵屑かを宣伝する

 

 

「やはり駄目なのか……私の天下が……」

 

 

諦めかけたその時だった。

たった1つの、救いの連絡が入った

 

 

「もしもし、ミレニアムサイエンススクールのAT開発担当者様はいらっしゃいますでしょうか」

 

「私ですが……」

 

「失礼しました。 私、ゲヘナ学園の万魔殿、戦車隊長をしているイロハと申します。 ATの導入を検討していまして───」

 

 

まさかの大手から発注依頼。

 

これは勝った(買った)……!

開発経緯、完!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトス3大学校の1つゲヘナ学園。

自由と混沌を校風にする為に、自治区の治安は悪く、毎日のように不良やテロリストが好き勝手に暴れている

 

それらを取り締まるのがキヴォトス最強格ヒナを長とする風紀委員会。 暴力には暴力をと不良やテロリストを日夜ボコボコしている

 

だが正直、手が足りていないのが実情。

何度ボコボコにして捕まえようと反省して2度としないというお利口さんは中々おらず、広大な自治区の隅々を取り締まるのは困難であった

 

通報があって急行する頃には逃げられているか、反撃を受けて多大な損害を被る。

銃社会のキヴォトスでは悪党も武装している訳だから、反撃も想定の内であるものの、中には重火砲や戦車、ヘリで武装している場合すらある世紀末ヒャッハーだ

 

そうなるとモブ歩兵は蹴散らされ、猛者のヒナや幹部が現着する頃にはもぬけの殻、被害だけ出されて逃げられるなんて悔しい事態もしょっちゅうだ

 

こうした相手に、こちらも戦車などを武装して対抗するが、戦車は高価だし入り組んだ市街地では機動力も劣る。

狭い路地裏に逃げられたら追えやしない

 

予算でも問題がある。

上位組織である生徒会の万魔殿の会長、マコトは風紀委員会のヒナを毛嫌いしているのだ

 

過去に何があったかは知らないが、お陰で予算は雀の涙ほど。

戦車の維持費は勿論、購入なんて厳しかった

 

だがゲヘナの秩序が著しく低下し過ぎては、皆が溺愛する幼子イブキに流れ弾がいかないとも限らない。

部下の被害が拡大するのも度し難く、面倒が増えるのは避けたかった

 

そこでイロハは考えた。

万魔殿において世話役でもあり戦車隊長のゲヘナアカモップことイロハは将来を憂慮し、何か対策は無いかと考えた

 

風紀委員会に提唱するにもゲヘナバカマコトのせいで予算をかけられない為、陣形配置や警邏ルートの新構築など模索したが、中々有効な方法が見つからない

 

そんな時だ。

ミレニアムのATの話を知ったのは。

 

SNSや動画では最低な棺桶だと馬鹿にされていたが、隊長として先見の目で見るイロハ。

スペックは確かに酷かったが、戦車と歩兵を繋ぐ歯車というコンセプトというのは現職として大変魅力的である

 

何より値段が気に入った。

スペックや世間の評価もあって、風紀委員会に善良なフリで棺桶を押し付けるとなれば、馬鹿なマコトも喜んで承認するだろう事も良かった

 

迷いはいらない。

さっさと実行、電話を手に取る

 

 

「もしもし、ミレニアムサイエンススクールのAT開発担当者様はいらっしゃいますでしょうか」

 

 

何より被害に遭うの私じゃないし。

そんな安易な思考で進んだ発注だったが、これが後にキヴォトス全土の戦場を変える、ゲームチェンジャーとなるのであった……。




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