性能を見る為、懲罰部隊を編成する流れへ
ゲヘナ万魔殿にATスコープドッグ納品
会長の指示で即座に風紀委員会に譲渡
「キヒヒッ! 最新鋭の兵器ATだ。 購入予算は万魔殿で持ってやった、精々感謝して使うが良い!」
「絶対悪評を聞いて押し付けましたよね!? こんな鉄屑お断りです!」
「そうか我々の好意を断るか。 なら次回の予算はゼロだ。 いらないほど余裕があるんだろうからな」
「〜〜〜ッ! あ!り!が!た!く!受け取ります! お帰りは彼方です!!」
行政官の横乳アコがキレると、会長のマコトはキヒヒッと独特な笑いをあげながら去って行く
残されたはまとめ買いされ、降着姿勢を取って並べられたATだ。
手には標準火器となる巨大な30mmヘビィマシンガンが握られており、無駄に兵器だぞとアピールしている
逆関節で足が折り曲がり拳を地面につけて前傾姿勢、コックピットの頭部が後ろにパカリと開いており、中のクッソ狭苦しい空間が露わになっている。
体育座りに近い姿勢で座らないといけない簡素な椅子と操縦桿、粗末な計器に3つ目のターレットレンズと連動するゴーグルがかけられていた
最低でも1個小隊分はありそうだ。
場所はとるし、運用のノウハウもなければ、そもそも悪評を聞いて使う気もなかった
「全くあのタヌキ……! こんなにどうするんですか! こんな安物がウチにあったら、ヒナ委員長の格を下げてしまいます!」
「私が、どうしたの?」
「ヒナ委員長!?」
そこに組織の長であるヒナが尋ねる。
小柄ながら大きな威厳。 白髪ロング、悪魔の種族らしく翼が生えていて、手に持つ機関銃と眼光が鋭く光る。
「万魔殿のタヌ……マコト会長が嫌がらせをしてきたんです」
「……またなの。 となると、このロボットは良いものではなさそうね」
「はい。 最近悪い意味で話題のAT、スコープドッグというパワードスーツです。 ミレニアムで作られたとは思えないほど、ご覧の通り安物の粗雑品で見窄らしく、我が風紀委員会に相応しくありません。 どう破棄しようか検討中です」
「はぁ本当に使い物にならないなら良いけど」
疲れた溜息を出すヒナ。 ハッとするアコ
実務も書類仕事も熟すヒナだが、徹夜連勤に近い生活で、くたびれたOLと化しているではないか
淹れている普段のコーヒーを普段は無表情に飲んでいるのに、疲れ過ぎて唐突に美味いとか称賛し始める奴だコォレハ……
基本的には弱音を吐かず完璧バリキャリウーマンの彼女だが、僅かでも「使えるなら」と期待しているような言動をしたという事は、もうそれだけ助けがいる状況を示している
アコは決意した。
行政官として、秘書として、彼女を溺愛する身として、ペットとして
「……分かりました委員長」
「アコ?」
「委員長の負担を減らせる要素がこの棺桶にあるならば、試してみましょう」
「別にそこまでしなくても。 それに乗る余裕のある人なんてウチにいたかしら」
「ご安心ください。 最近逮捕した軽度の風紀違反者に罰則として搭乗して貰います」
「……懲罰部隊はやめて」
「社会奉仕ですから。 "あくま"でも」
忠犬アコは主人の為に迅速に動いた
牢屋にぶち込んでいたジャブジャブヘルメット団の頭をフルフェイスヘルメットごと鷲掴みにし、次々と棺桶にぶち込んだのである
「牢屋でタダ飯を食わしておくのは脳がない話でした。 社会奉仕活動で建造物侵入罪や恐喝容疑の罪を償ってください。 具体的にはこの棺桶、じゃなくてATの実戦データ収集で」
「なんでよ!? テイの良い生贄じゃない! それに、ちょっと雨風凌げる空き家を借りたかっただけなのに、なんでここまでしなきゃいけないのよ!」
「そうだそうだー!」
団長の河駒風ラブやモブ団員は抗議したが、犯罪者に耳を貸すアコではない。
何より敬愛するヒナがピンチなのだから
「ピーピー煩いですね。 ヒナ委員長のオシオキが足りないようで。 特に貴女の部下たち。 代わりに躾が必要ですか?」
「ひ、ひぃ!?」
「やめろ! 脅すとか卑怯だぞ!」
「ならお返事はYESかはい、でしょう?」
「ビッチ! 悪魔! 未来永劫呪われろ!」
「はい。 悪魔ですが、何か?」
汚く罵倒するが、アコの加虐心を刺激するだけ
ここはゲヘナ学園。 悪魔の巣窟
彼女もまた、悪魔の1人なのだった
《次回予告風》
ヒナ地獄から解放された不良を待っていたのは、また地獄だった
破壊の後に住み着いた欲望と暴力。無秩序が生み出した悪魔の街
悪徳と野心、自由と混沌とをパンケーキにかけてブチ撒けた、ここはキヴォトス3大校のゲヘナ
次回「実戦」
暫し悪魔と地獄に付き合って貰う
……ヒナの飲むアコのコーヒーは苦い