ラブちゃんの話にもなってますね……
歴史的な展開を望む方にはノイズかも
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アームパンチ。
ATの固定武装であり、液体火薬で腕を瞬間的に伸縮、その勢いに乗った拳で殴るという近接格闘用兵装だ
薬莢式であり、使用後は空薬莢が腕側面の穴から飛び出して廃莢される渋さ
装甲の薄いATのコックピットを狙えば、陥没して中身が駄目になり無力化できる
戦車相手には微妙で歩兵相手にはオーバーキル、そもそも接近する前に撃たれて鉄屑にされる機会が多いATが、これのみで戦うのは自殺行為に等しいといえよう
懲罰部隊は、そんなのとっくに知っており、これを使う時は不測の事態、最後の手段とすら見ている
それを今、メインに使っている
銃の弾が切れたから悪足掻きなのもある
だがそれ以上に───
「はっはっはっー! 戦いの基本は格闘だ!」
相手がそれを望んでいる
それもATで
「AT!? テメェらもかよ!?」
「そう不思議じゃない。 販売元は手広くやってるからね。 それに君達が今まで散々に爆発させて放棄してきた機体の残骸を組み合わせて改造したのさ。 揮発性の高いPR液は問題だが、気を付ければ重機としても使えるからね。 温泉開発に役立つか試験的に導入していたのさ」
「なんか脚部が少し大きく見えるのだけど」
「分かるかい? スコープドッグ改だ。 自作のターボカスタムでね、冷却装置やらを積んでるから、少し脚部が大きいのさ。 でも速度は───」
───ギュイーンッ!
脚部の後方が開き、ターボが火を噴いた。
刹那、ローラーとは違う音を立て一瞬で距離を詰めてくるカスミ
驚く間もなく隣にいたAT、その丸出しのコックピットが殴られた。
バコンッ! と腕が刹那的に伸縮、火薬で威力が増したパンチは見事コックピットを潰し、中の団員はヘルメットを粉々にされ気を失う
ATは爆発こそしなかったが、主を失った機体は力無く倒れ伏した
「速いだろ?」
「テメェ!!」
「さあ、君も殴りにくれば良いさ。 当てられるならね。 はっはっはっ!」
「上等だぞクソアマ! 年季の違いを見せてやるよ!」
仲間をやられて激昂したラブは、即殴り返す
だがターンピックで機体を転回、パンチをひょいひょいと躱してしまう
「避けてんじゃねえ!」
「当たったら流石に危ないからねぇ」
「なら、これならどうだ!!」
ラブは相手に体当たりするようにして抱きついて密着する。
自作のターボカスタムは、加速するまで一瞬時間がかかる為、使われる前に拘束した形だ
両腕を使っているから、アームパンチを繰り出せない。 お互いに武装が使えず、果たしてどうするのか
「抱擁とは、温泉より熱いんじゃないか?」
「これからもっと熱くしてやるよッ!!」
ラブ、懐から粘着爆弾を取り出すと。
直接相手の機体胴部に取り付けた!
「……そうくるかい」
「あばよ、クソ悪魔」
ラブは相手を拘束したまま、機体を乗り捨てる
コックピットから飛び降りた刹那、粘着爆弾が起爆。 PR液も巻き込み、爆弾の威力を超える爆風が背中を押し飛ばす
「ATは使い捨てだ。 こういう使い方もあるんだよ覚えとけ!」
汚く罵り、爆炎に向けて中指を立てるラブ
周囲を見る。 ATの残骸と共に敵味方が入り乱れて横たわっている
少し離れたところでは、副部長のメグが皆をトラックに詰めて逃げる準備をしている
戦場に立っていたのはラブだけだ
ラブも彼女のように、たった1人で皆を起こし、連れていかないとならない
「……私だけかよ」
闘志は尽きた。
ATもない。 これ以上の戦闘はいらない
爆発の衝撃で出来た銭湯モドキはある
ラブは足湯をして顔を洗うと、ボンヤリと硝煙の残り香を嗅いだのだった……
「……アコ。 これはどういうつもり?」
「い、いえその、ヒナ委員長。 これには訳が」
その日、珍しくアコ行政官はたじろいだ
敬愛するヒナ委員長がオコなのだ、仕方ない
「懲罰部隊はやめてって、言ったはずよ。 昔の圧政者の真似事かしら」
「……著しい治安の悪化に対処する為です」
「その結果、違反者もATを使い始めたんじゃない? 使用件数が増加、合わせてウチの被害も前より拡大し始めた。 使い始めたころは一時的に良くなったけど、反動の方が大き過ぎた……やらかしたわね天雨アコ行政官」
髪色や服より青くなるアコ。
こんな筈では……と狼狽えるも、ヒナは溜息
「こうなったのは仕方ないわ。 対処するだけよ」
「は、はい。 更にATを追加して……」
「違うわ」
「はい?」
「私が、直接全て始末する」
「今からですか!?」
「早い方が良い。 あとウチ以外はAT禁止令を出して。 それで違反者の持ち物は全て違法物とする」
ヒナ、黒い手袋をギュッとし、目を紫色に妖しく光らせる
そして手に持つは機関銃、終幕デストロイヤー
数多の違反者を葬った(死んでない)恐ろしい悪魔の銃口は、まさにATに向かおうとしていたのだった!
後書き
《次回予告風》
最も危険な悪魔 それは空崎ヒナ
巧まず仕掛けてくるロリな躰で風紀執行
突然に火を噴き偽りの鎧をデストロイ
ゲヘナは巨大な悪の街
そこかしこで最低野郎が涙ながらに遁走開始
次回「脱走」
ATは最低な不発弾。 自爆、誘爆、御用心。