スコープアーカイブ(完結)   作:ハヤモ

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前書き
感想評価、いつもありがとうございます
今後の展開も不安定ですが励みになります


襲撃

ミレニアムには毎日のように企業からのスリスリメールが舞い込み、それを処理するセミナーや人員はイライラしていた

 

AT開発部はそれらを無視して好き勝手。

金回りを良くして周囲の生徒を味方につけると、言う事を聞かなくなってしまった

 

開発者なりの復讐だろう。

認めてくれなかったATは、今やこれだけ注目を浴びているのだぞと

 

 

「結局金、そう金よ……実験にも開発にも」

 

 

ユウカは嘆く。

選択をミスったのかと。 ATを酷評したばかりに、そのATに予算面でも人員掌握の面でも蹂躙されている現状に

 

サイキョーイッカクライオンだとか微妙に頭が悪いキャラが登場する某小説投稿サイト風に言えば、この現状は追放モノや都合の良い復讐モノとか「俺なんかヤッちゃいました?w」なパターンに似るかも知れない

このままではセミナーの権限は弱まり、ミレニアムは堕ちていくばかり

 

 

「でもね、こんなのミレニアムじゃないわ」

 

 

許せない。

詐欺営業を平然とやって金儲けをする擬似科学部なんかは喜んでいるが、そもそも学生の領分を大きく離脱している

セミナーのビックシスターことリオ会長も、かつて同じ事を言っていた

 

 

「そんなに私達の力を見たいのね……!?」

 

 

ユウカはAT開発部にメール。

治安悪化への懸念及び学業の不振を鑑みた結果、ATへの関与を規制する事に決定

直ちにATの開発と実験中止、同時に特許含む一切の権限をセミナーに譲渡

 

返信がない場合は同意と見做す

口座も凍結、コユキと仲良く反省部屋行き

 

 

「ふ、ふふふ……これが権力よ! 大いなる力、大いなる責任……!」

 

 

不敵に笑むフトモモなユウカ。

ゲーム開発部がいたら正に魔王だと罵っている

 

 

「許さない、許さないわよ黒崎コユキぃ!」

 

 

間も無く警備部とC&Cが開発部に突入

無視していたメールの件と令状モドキを突きつけられ権限を強引に剥奪、開発中のATや実験データを押収

横暴にも、それらをセミナーの財産として吸収してしまうと、開発者達を反省部屋に放り込んでしまうのだった

 

 

「私までなんでええええ!!!?」

 

 

無関係な邪気共々、閉じ込められた小悪党達

彼女達の運命は如何に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君達、AT乗りだね? いくらだい?」

 

「急になんだよおっさん、売り物じゃねぞ」

 

 

不良JK達ラブに、見知らぬおっさんロボがニコニコで声をかける

警戒し、銃をチラチラさせて威嚇するも、大人達は営業スマイルのまま強引に進める

 

 

「仕事を頼みたい。 金は弾むよ?」

 

「へぇどんな?」

 

「ミレニアム自治区で我が社のAT用装備で暴れて欲しい。 商品アピールという奴だよ」

 

「はぁ? なんでミレニアムなんだよ」

 

「ATの開発が盛んだからだ。 悪く言えば威嚇、よく言えば派手な求人。 学生に大人の企業の力を少し魅せてあげようと思ってね」

 

「そんなの自分達でやれば? 私らお尋ね者になりたくねぇし」

 

「金だけじゃない。 弾代や修理費は此方が持つ。 装備はそのまま君達にあげよう」

 

 

そこまで好条件とは裏がある。

けれど、牢獄で臭い飯を食ってきた分、やりたい欲は膨らんでるし、何より金なしのまま団員を路頭に迷わして腹を空かせるのも問題だ

 

 

「わかった。 けど危なくなったら逃げるから」

 

「理解が早くて助かる。 じゃ、頼むよ」

 

 

ラブ達は再びATに乗り込んでいく

逆関節の降着姿勢がガコンと動き、ヘルメットを被るようにコックピットハッチが閉鎖されて直立姿勢になっていく

 

最新鋭の技術が集う場所にカチ込み紛い

あいやお礼参りも兼ねる。 強ち間違いでも無い

 

 

「行くぞヤロー共。 ATなんて開発しやがったお陰で、私らはこうなったんだからな」

 

 

団員を鼓舞して出撃準備

装備を整え、ラブ達は再び戦場を駆けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ATだ武装してる、襲撃だッ!?」

 

「そこのAT止まりなさい! 止まれぇ!?」

 

「停止命令無視! 止まりません!」

 

「警報鳴らせ! 警備部はどうした!」

 

「開発部を護送中ってとこに間が悪い!」

 

「いや、それが狙いか!?」

 

 

その日、突如として現れたATの群れ。

甲高い駆動音、ターボとローラーによる高速接近で自治区に侵入

 

迎撃に出てきた陸空の武装ドローンに、肩部の7連装ミサイルを一斉射、爆炎に沈める

腕につけた副武装のキャノン、ソリッドシューターから威力の高い砲弾が飛び出れば、装甲を纏うアバンギャルド君なる大型ロボも破壊して見せる

脇に備え付けた、射角に制限があるマシンガンも乱射して見せ、とってつけた火力を見せつける

 

 

「当たらなくても良い、撃ちまくれ!」

 

「ATなんてもん、作りやがって!」

 

「因果応報、お礼参りって奴だオラァ!」

 

 

喧しい警報と爆炎が上がる中、合間を縫うようにターンピックで軽やかに動くAT。

ヘビィマシンガンから30ミリが四方八方にばら撒かれ、ビルのガラスが景気良く割れていく

 

刹那、仕上げのように爆炎があがった

 

 

「恨めしいミレニアムタワーにロケランを叩き込んでやりましたぜ!」

 

「団長! 迎撃機が出てきました! 新型っすよ! 話に聞いたAT開発部の、スコープドッグの後継機グラントリードッグじゃないっすか!?」

 

 

ターレットレンズが回転して見やる先。

警備ドローンでは無理と判断した生徒が、ATを出撃させてきた

 

機体番号ATM-10-ST、計画名称ATH-P-FX

開発研究中の試作機の1つであろう

 

見た目はラブ達のスコープドッグと酷似しているが、よく見ると剥き出しのターレットレンズは無く、ゴーグルと一体化しているように見える

 

細部では装甲圧や部品が違うらしく、加速力が少し高いようだ

だが武装は同じ。 後は中身次第か

 

 

「やはりいたわね新型AT!!」

 

「年季の違いを見せてやるよ!」

 

「くたばれえええ!!!」

 

 

怒りのままに、ぎごちない動きのATに弾をばら撒けば、あっさり装甲が抜かれて爆発炎上。

勝ち戦に花を添えるだけとなってしまう

 

 

「けっ! 口ほどにもねぇや!」

 

「中身がもやしなひよっこじゃあな!」

 

「所詮はAT。 棺桶ね」

 

 

自虐気味に笑う頃、やっと警備部が現れて応戦

後方にはC&C所属、チビ不良でミレニアム最強の生徒、ネルが駆けつけている

 

流石にアレにはATでも勝てる自信が無い

となれば、予定通りやる事は1つだ

 

 

「ズラかるわよ! 撤収!」

 

「逃げるんだよぉ!」

 

 

遁走開始。

良くも悪くも慣れたもの。

 

速度ならATの方が上だ。

歩兵は追いつけない

 

更に追跡を免れるようにして、走りながら背負っているドラム缶……爆雷を投下

 

暫く地面を転がり、爆発。 地面が爆ぜた

その爆炎を煙幕代わりにして、無防備な背中を隠し、蛇行して被弾を避けつつ遠くへ逃げて行く

 

 

「チッ! チンピラが。 どこの差金だ?」

 

 

メイド服にダブルサブマシンガンのチビ、ネルが吐き捨てるように独り言

陽炎の向こうで揺らめく鉄騎兵を睨む

 

射程外だ、無駄撃ちはしない

けれど良いようにされて良い気はしない

 

それに応えるは、無線越しのビックシスター

会長のリオだった

 

 

「動きからしてゲヘナの懲罰部隊ね。 つい最近、脱走したらしいけど。 ATへの怨みで、お礼参りといったところかしら。 非生産的で非合理的ね」

 

「感情ってのはな、厄介なんだよ」

 

 

そして悪い事は続く。

無線に飛び込む、慌てふためくモブの声。

 

 

「大変です! AT開発部が騒ぎに乗じて反省部屋を脱走! 行方不明です!」

 

「これが狙いね」

 

「はぁ〜……面倒臭ぇな全く」

 

 

何者かの手引きか、AT開発部は脱走

以後、何故か企業側でAT開発が盛んになる

 

この騒ぎをシャーレの先生は把握

ラブ達が大人の陰謀に巻き込まれていると察し、オーパーツのシッテムの箱、そのOSのアロナ、プラナと協力して事態収拾に努める

 

 

「ラブ達と接触して、こんな事やめさせないと」

 

 

脳裏に浮かぶはラブ達の笑顔

それが壊される事はあってはならない

 

破滅の道から引き上げないと。

ラブがいそうな場所、接触したであろう悪徳企業を探る

 

AT共々、先生もまた、ひた走る───。




後書き
《次回予告風》
ミレニアムは権力に媚を売って明日を得た
トリニティは3人のお茶魔女の予言にのって地獄に落ちた
ラブはATに、己の運命を占う
ここ、ブラックマーケットで明日を買うのに必要なのはキャッシュと少々の危機
次回「取引」
ATの商売には、死の臭い。
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