夜の闇に包まれた薄暗いアジトの一室。
如月透は、掌の上で妖しく光を放つ「黒い結晶」をじっと見つめていた。
結晶の奥底からは、かつてゼロが放った光の残滓が、まるで苦しげに脈動するように明滅している。
「……これだけの量の光を奪えたなら……」
如月の瞳には、狂気じみた熱が宿っていた。
結晶の黒い輝きは、彼の心に染み込むように甘美な誘惑を放つ。
「ベリアル様……あなたの完全復活は、もう間近だ。そして、この力を媒介にすれば……俺自身が、あなたと融合し、新たなベリアル融合獣として生まれ変わることもできる……!」
低く震える声で呟く如月。その口元には、不気味な笑みが浮かんでいた。
結晶はまるで応えるかのように脈動を強め、暗闇に脅威的な影を広げていく。
「ゼロ……お前から奪った光が、俺の闇をさらに強める。お前のカラータイマーが赤く点滅しているのは……この結晶が、お前の命を少しずつ蝕んでいるからだ……」
その時、彼の脳裏に再び、あの日の光景が蘇る。
心の奥に潜む「堕落の原点」――絶望と裏切りの瞬間。
彼がなぜ闇に飲まれ、ベリアルと邂逅することになったのか。
それはまだ、誰も知らぬ真実だった。
如月は結晶を胸に抱き、嗤う。
「もうすぐだ……世界は闇に沈む。光など、もはや意味を持たない……」
――場面は変わる。
昼の真田ウェルネス本社。
広報部には、鳴り止まない電話と怒号が飛び交っていた。
「どうなってるんですか! ニュースを見たぞ!」
「私たちの投資はどうなるんだ!」
「会社ぐるみで隠蔽していたんじゃないのか!」
社員たちは青ざめた顔で対応に追われている。
モニターには、速報テロップが躍っていた。
――『真田ウェルネス専務・後藤信介、不正資金流用疑惑』
週刊誌の記事が報じたのは、後藤が会社の資金を不正に引き出し、政治家への賄賂として流用していたという衝撃の事実だった。
表沙汰になった瞬間、株価は急落。マスコミが押し寄せ、社員たちは対応に追い込まれる。
役員フロア。
真田梨央は蒼白な顔で報道を見つめていた。隣には従兄の政信、そして弁護士の加瀬。
「……嘘よ……後藤さんが、そんな……」
梨央は震える声を絞り出す。
政信は額に汗を浮かべ、唇を噛みしめた。
「……考えたくはないが……事実だ。警察も収賄の疑いで捜査を始めた」
加瀬は冷静に資料を見つめながら言う。
「後藤専務の行動は、会社のためではなく、完全に私利私欲に基づくものです。……政界との癒着を保つことで、真田家の影響力を拡大しようとしていた」
「……っ」
梨央は目を伏せる。
会社を支えてくれたはずの重鎮が、裏で真田家の名を汚していた――。
胸を裂かれるような思いが、彼女を襲っていた。
政信は深く息を吐き、椅子から立ち上がった。
「後藤に会って、直接話を聞くしかない」
加瀬も頷く。
「すでに彼の自宅に連絡を試みましたが……応答はありません」
その言葉に、梨央は顔を上げる。
「行きましょう……! 真実を確かめなければ……!」
――こうして、三人は後藤の私邸へと向かう。
だがそこに待っていたのは、静まり返った空虚。
人気のない屋敷。応答のないインターホン。
警備員が現れ、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……実はここ数日、専務は出社もしておりません。姿を見た者もいないのです」
梨央の顔から血の気が引く。
「そんな……後藤さんは、一体どこへ……?」
――真田家の新たな闇が、再び姿を現そうとしていた。
放課後の商店街。
優と香坂美咲は、アイスクリーム片手に歩いていた。
「いやー、やっぱこういうの、学生っぽいな」
優が笑うと、美咲は少し呆れた顔をして言う。
「何それ、普段から怪獣災害のことばっか考えてる人の台詞じゃない?」
「ち、違うって! ほら、数日前に美咲が言っただろ? “もっと高校生らしいことしよう”って」
「……あぁ、そんなこと言ったっけ」
照れたように視線を逸らす美咲。
優はそんな彼女の横顔を見て、心が少しだけ和らぐのを感じていた。
怪獣や宇宙人との戦いに明け暮れる日々。
その中で、こうして普通に笑い合える時間は、彼にとってかけがえのないものだった。
だが、そのひとときの平穏を破る声が響いた。
「……楽しそうだな、二人とも」
優と美咲が振り返ると、そこに立っていたのは如月だった。
黒いコートを翻し、薄笑いを浮かべている。
「……誰?」
美咲は一瞬で身構える。
彼のまとう不気味なオーラが、言葉にならぬ警鐘を彼女に与えていた。
優もまた、息を呑む。
「如月……」
「おや、紹介してくれないのか? 君の……大切な友達を」
如月はゆっくりと二人に歩み寄る。
その目には、冷たい闇が宿っていた。
美咲は優の袖を引き、小声で囁く。
「ねぇ……あの人、普通じゃない……」
優は答えられなかった。
如月が次にとった行動が、全てを物語っていたからだ。
如月の身体が黒い光に包まれ、背後に異形の影が浮かび上がる。
「見せてやろう……俺が手に入れた力を!」
次の瞬間、街の地面が激しく揺れ、アスファルトを突き破って巨躯が現れる。
――ベリアル融合獣「スカルゴモラ」。
ゴモラの怪力とレッドキングの獰猛さを併せ持つ怪獣が、咆哮とともに街を蹂躙し始めた。
「きゃああっ!」
人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。建物が軋み、街路樹がなぎ倒されていく。
美咲は震える声で叫ぶ。
「優っ! 逃げよう!」
だが、優は首を横に振った。
「まだ……避難していない人たちがいる!」
そう言い残し、優は走り出す。
美咲は呆然としたが、すぐに意を決して後を追った。
――そして、彼女は見てしまう。
廃ビルの陰に身を隠した優が、懐からウルトラゼロアイを取り出し、強く掲げる姿を。
「ウルトラマンゼロ……行くぞ!」
光に包まれ、優の姿は巨人へと変貌する。
ビル群を見下ろす青き光の戦士――ウルトラマンゼロが現れた瞬間、美咲は息を呑んだ。
「……優……あなただったの……?」
信じられない事実。だが、それが目の前で起きている現実だった。
スカルゴモラが咆哮を上げ、ゼロに突進する。
地面が砕け、建物が揺れる。
ゼロは構えを取り、戦いが始まった。
スカルゴモラの突進をまともに受けたゼロは、大きく後退した。
アスファルトが砕け、建物が揺れる。
怪獣の一撃は、まさに地響きそのものだった。
「ぐっ……!」
ゼロは踏みとどまるが、次の瞬間、スカルゴモラの尻尾が薙ぎ払われ、ゼロの身体を直撃した。
巨体が宙を舞い、ビルの壁に叩きつけられる。
街の人々は逃げ惑いながらも、その光景をスマートフォンで撮影していた。
SNSには瞬く間に映像が流れ、「またウルトラマンが戦っている!」と拡散されていく。
美咲は瓦礫の陰からその様子を見ていた。
「優……負けないで……!」
スカルゴモラはさらに猛攻を仕掛ける。
ゴモラ由来の角から放たれる地震波、レッドキング譲りの怪力。
ゼロは受け止めるだけで精一杯だった。
如月の嘲笑が響く。
「どうした、ゼロ! お前の光は、俺の闇に喰われるだけだ!」
ゼロのカラータイマーが点滅し始める。
(やばい……! エネルギーが……!)
一歩、また一歩と押し込まれていくゼロ。
だが、その時――。
「ウルトラマン――頑張って!」
美咲の声が届いた。
その言葉は、確かにゼロの心を奮い立たせた。
優の胸に宿る思いが光を生み、ゼロの全身を青白い輝きが包み込む。
「……そうだ、まだ終わっちゃいない!」
その瞬間、ライザー、ウルトラマンギンガとウルトラマンオーブの力を宿したニュージェネレーションカプセルα、ウルトラマンビクトリーとウルトラマンエックスの力を宿したニュージェネレーションカプセルβが出現した。
「優、受け取れ!」
「あぁ!」
そして叫ぶ。
「俺たちに限界はねえ!」
「――ゼロビヨンド!」
全身が眩い光に包まれ、姿が変わっていく。
複数のウルトラ戦士たちの力を宿した進化形態、ゼロビヨンドが降臨した。
圧倒的な力の波動に、スカルゴモラが一瞬ひるむ。
如月は目を細め、しかし笑みを浮かべた。
「……来たか。その姿……だが、それも俺の闇で飲み込んでやる!」
スカルゴモラが再び襲いかかる。
だが、今度はゼロビヨンドが優勢だった。
高速の動きでかわし、連続の打撃を叩き込む。
最後に、ゼロビヨンドは光のエネルギーを収束させた。
「フィニッシュだ!」
放たれた必殺光線バルキーコーラスがスカルゴモラを直撃し、爆発が夜空を染める。
怪獣の咆哮が途切れ、崩れ落ちていった。
静寂が訪れる。
だが、勝利の余韻を切り裂くように如月の声が響いた。
「……やはり強いな、ゼロ」
闇の中から姿を現した如月は、手に“黒い結晶”を掲げていた。
「これはな……お前から奪った光の一部だ」
ゼロのカラータイマーが赤く脈打つ。
如月は薄く笑いながら続けた。
「ベリアル様の復活は近い。この結晶に蓄えた光のエネルギーで、俺は闇を拡大させる」
ゼロは構えを解かず、言葉を投げかける。
「如月……お前は本当に、それでいいのか? 光を拒み、闇に身を委ねて……」
如月の目に、一瞬だけ影が揺らぐ。
だが彼はすぐに表情を引き締め、吐き捨てるように言った。
「光があるから闇が生まれる。ならば、闇こそが真実だ」
ゼロは静かに首を振る。
「違う……光と闇は表裏一体だ。どちらも必要なんだ。だから俺は――すべてを受け入れる」
その言葉に如月は一瞬沈黙した。
だがやがて、闇の笑みを浮かべる。
「戯言だ……だが、面白い。せいぜい足掻け、ゼロ」
そう言い残し、如月は黒い光に包まれて姿を消した。
戦闘が終わり、スカルゴモラの残骸が夜風に溶けて消えていく。
ゼロビヨンドの輝きも薄れ、やがて巨人は光の粒子となって消滅した。
廃ビルの屋上。
そこに立っていたのは、変身を解き、汗に濡れた息を整える優だった。
如月は既に姿を消し、残されたのは優一人――のはずだった。
「……やっぱり、優だったんだ」
声が背後から響いた。
振り向くと、そこには香坂美咲がいた。驚きと不安、そして強い決意を秘めた瞳で彼を見つめている。
「美咲……見てたのか……」
「隠すつもりだったんでしょ。でも、もう隠せないよ」
優は視線を逸らし、黙り込む。
その肩が震えていた。
「誰にも言わないでくれ……お願いだ」
沈黙のあと、美咲は小さく頷いた。
「言わない。……言えるわけないでしょ、優のことを。だって、あなたは……みんなを守ってるんだから」
優は安堵の息を吐くが、その時。
彼の体が淡く光を帯び、ゼロの声が響いた。
『……君が優の友人か』
美咲は思わず息を呑んだ。
優の声ではない。だが、確かに優の体を通して響いている。
「い、今の声……」
『俺はウルトラマンゼロ。この地球で、優と共に戦っている者だ』
美咲は震える唇で問い返した。
「……本当に、優と一緒に?」
ゼロは静かに答えた。
『ああ。俺は彼に力を貸し、彼は俺に心を貸す。二人で一人だ。』
その言葉に、美咲は強く頷いた。
「なら、私も……その秘密を一緒に背負う。だって、優は……私の大切な友達だから」
ゼロの声は少し柔らかくなった。
『……いい仲間を持ったな、優』
優は照れくさそうに頭をかき、
「……ありがとな、美咲」とだけ呟いた。
一方その頃。
政信、梨央、加瀬は真田グループが所有する山奥の別荘にたどり着いていた。
外から見れば人気はない。だが、わずかに明かりが漏れている。
扉を開けると、そこには憔悴した後藤信介の姿があった。
酒瓶と散乱する資料に囲まれ、彼は憔悴した顔で三人を見上げる。
「……来たか」
梨央が一歩踏み出し、声を震わせた。
「どうしてですか……後藤さん……!」
後藤は虚ろな笑みを浮かべる。
「すべては……真田家のためだ。政治家を動かし、会社を守るためには……金が要った」
加瀬は冷たい声で返した。
「あなたがしたのは、会社のためじゃない。ただの保身です。権力に取り入り、自分の立場を守ろうとしただけだ」
後藤の表情が一瞬揺らぐ。
「ち、違う……私は……」
政信が低い声で言い放つ。
「もういい。……これ以上、真田を汚すな」
その瞬間、背後から警察が現れ、後藤に手錠をかけた。
「後藤信介、収賄と資金流用の容疑で逮捕する」
後藤は抵抗もせず、ただ虚ろな眼で呟いた。
「……私は……会社のために……」
その言葉は夜の静寂に吸い込まれ、やがて彼の姿はパトカーの中へ消えていった。
梨央はその背中を見送り、涙を堪えながら呟いた。
「これが……真田家の“新たな闇”……なのね」
深夜。
誰も知らぬ異空間――黒い星雲に覆われた謎の空間に、如月は立っていた。
闇の向こうから、低い笑い声が響く。
――フハハハ……よくやった、如月。
現れたのは、邪悪なる戦士・ウルトラマンベリアルの幻影。
その背後には、五体の怪人の影が立ち並んでいた。
「……あれは……」
――ダークネスファイブだ。
メフィラス星人・魔導のスライ。
ヒッポリト星人・地獄のジャタール。
テンペラー星人・極悪のヴィラニアス。
グローザ星系人・氷結のグロッケン。
デスレ星雲人・炎上のデスローグ。
ベリアルの声が続く。
――奴らはすでに怪獣墓場でギガバトルナイザーを復活させた。
我が力は戻りつつある……!
如月の胸が高鳴る。
「ベリアル様……!」
その時、大地を揺るがすような地鳴りが響いた。
闇から現れたのは、鋭い眼光を放つ一人の戦士。
「ストルム星人……伏井出ケイ」
ベリアルが嘲笑する。
――こいつもまた闇から蘇った。我が軍勢の切り札だ。
如月、ストルム星人。お前たち二人でゼロを討て。
ケイが口元に不敵な笑みを浮かべ、如月を一瞥する。
「フッ……面白くなってきたな」
如月は黒い結晶を握りしめ、闇の炎に包まれていく。
「必ず……ゼロを闇に沈めてみせます」
――フハハハ……光は滅び、闇が支配する!
ベリアルの哄笑が響き渡り、闇の空間は崩れ落ちていった。
優と香坂がお互いを名前呼び!
これも良いんじゃないですかね。
そして、ダークネスファイブ&伏井出ケイ復活!
ウルトラマンジード/朝倉リクも登場させた方がいいかもしれませんね。
次回もお楽しみに!