最愛 ―ウルトラマンゼロ―   作:湯帝

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第7話スタート!


第7話 真田家の動揺

夜の闇に包まれた薄暗いアジトの一室。

如月透は、掌の上で妖しく光を放つ「黒い結晶」をじっと見つめていた。

結晶の奥底からは、かつてゼロが放った光の残滓が、まるで苦しげに脈動するように明滅している。

 

「……これだけの量の光を奪えたなら……」

 

如月の瞳には、狂気じみた熱が宿っていた。

結晶の黒い輝きは、彼の心に染み込むように甘美な誘惑を放つ。

 

「ベリアル様……あなたの完全復活は、もう間近だ。そして、この力を媒介にすれば……俺自身が、あなたと融合し、新たなベリアル融合獣として生まれ変わることもできる……!」

 

低く震える声で呟く如月。その口元には、不気味な笑みが浮かんでいた。

結晶はまるで応えるかのように脈動を強め、暗闇に脅威的な影を広げていく。

 

「ゼロ……お前から奪った光が、俺の闇をさらに強める。お前のカラータイマーが赤く点滅しているのは……この結晶が、お前の命を少しずつ蝕んでいるからだ……」

 

その時、彼の脳裏に再び、あの日の光景が蘇る。

心の奥に潜む「堕落の原点」――絶望と裏切りの瞬間。

彼がなぜ闇に飲まれ、ベリアルと邂逅することになったのか。

それはまだ、誰も知らぬ真実だった。

 

如月は結晶を胸に抱き、嗤う。

 

「もうすぐだ……世界は闇に沈む。光など、もはや意味を持たない……」

 

――場面は変わる。

 

昼の真田ウェルネス本社。

広報部には、鳴り止まない電話と怒号が飛び交っていた。

 

「どうなってるんですか! ニュースを見たぞ!」

「私たちの投資はどうなるんだ!」

「会社ぐるみで隠蔽していたんじゃないのか!」

 

社員たちは青ざめた顔で対応に追われている。

モニターには、速報テロップが躍っていた。

 

――『真田ウェルネス専務・後藤信介、不正資金流用疑惑』

 

週刊誌の記事が報じたのは、後藤が会社の資金を不正に引き出し、政治家への賄賂として流用していたという衝撃の事実だった。

表沙汰になった瞬間、株価は急落。マスコミが押し寄せ、社員たちは対応に追い込まれる。

 

役員フロア。

真田梨央は蒼白な顔で報道を見つめていた。隣には従兄の政信、そして弁護士の加瀬。

 

「……嘘よ……後藤さんが、そんな……」

梨央は震える声を絞り出す。

 

政信は額に汗を浮かべ、唇を噛みしめた。

「……考えたくはないが……事実だ。警察も収賄の疑いで捜査を始めた」

 

加瀬は冷静に資料を見つめながら言う。

「後藤専務の行動は、会社のためではなく、完全に私利私欲に基づくものです。……政界との癒着を保つことで、真田家の影響力を拡大しようとしていた」

 

「……っ」

梨央は目を伏せる。

会社を支えてくれたはずの重鎮が、裏で真田家の名を汚していた――。

胸を裂かれるような思いが、彼女を襲っていた。

 

政信は深く息を吐き、椅子から立ち上がった。

「後藤に会って、直接話を聞くしかない」

 

加瀬も頷く。

「すでに彼の自宅に連絡を試みましたが……応答はありません」

 

その言葉に、梨央は顔を上げる。

「行きましょう……! 真実を確かめなければ……!」

 

――こうして、三人は後藤の私邸へと向かう。

だがそこに待っていたのは、静まり返った空虚。

人気のない屋敷。応答のないインターホン。

 

警備員が現れ、申し訳なさそうに頭を下げる。

「……実はここ数日、専務は出社もしておりません。姿を見た者もいないのです」

 

梨央の顔から血の気が引く。

「そんな……後藤さんは、一体どこへ……?」

 

――真田家の新たな闇が、再び姿を現そうとしていた。

 

放課後の商店街。

優と香坂美咲は、アイスクリーム片手に歩いていた。

 

「いやー、やっぱこういうの、学生っぽいな」

優が笑うと、美咲は少し呆れた顔をして言う。

 

「何それ、普段から怪獣災害のことばっか考えてる人の台詞じゃない?」

 

「ち、違うって! ほら、数日前に美咲が言っただろ? “もっと高校生らしいことしよう”って」

 

「……あぁ、そんなこと言ったっけ」

照れたように視線を逸らす美咲。

優はそんな彼女の横顔を見て、心が少しだけ和らぐのを感じていた。

 

怪獣や宇宙人との戦いに明け暮れる日々。

その中で、こうして普通に笑い合える時間は、彼にとってかけがえのないものだった。

 

だが、そのひとときの平穏を破る声が響いた。

 

「……楽しそうだな、二人とも」

 

優と美咲が振り返ると、そこに立っていたのは如月だった。

黒いコートを翻し、薄笑いを浮かべている。

 

「……誰?」

美咲は一瞬で身構える。

彼のまとう不気味なオーラが、言葉にならぬ警鐘を彼女に与えていた。

 

優もまた、息を呑む。

「如月……」

 

「おや、紹介してくれないのか? 君の……大切な友達を」

如月はゆっくりと二人に歩み寄る。

その目には、冷たい闇が宿っていた。

 

美咲は優の袖を引き、小声で囁く。

「ねぇ……あの人、普通じゃない……」

 

優は答えられなかった。

如月が次にとった行動が、全てを物語っていたからだ。

 

如月の身体が黒い光に包まれ、背後に異形の影が浮かび上がる。

「見せてやろう……俺が手に入れた力を!」

 

次の瞬間、街の地面が激しく揺れ、アスファルトを突き破って巨躯が現れる。

――ベリアル融合獣「スカルゴモラ」。

ゴモラの怪力とレッドキングの獰猛さを併せ持つ怪獣が、咆哮とともに街を蹂躙し始めた。

 

「きゃああっ!」

人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。建物が軋み、街路樹がなぎ倒されていく。

 

美咲は震える声で叫ぶ。

「優っ! 逃げよう!」

 

だが、優は首を横に振った。

「まだ……避難していない人たちがいる!」

 

そう言い残し、優は走り出す。

美咲は呆然としたが、すぐに意を決して後を追った。

 

――そして、彼女は見てしまう。

廃ビルの陰に身を隠した優が、懐からウルトラゼロアイを取り出し、強く掲げる姿を。

 

「ウルトラマンゼロ……行くぞ!」

 

光に包まれ、優の姿は巨人へと変貌する。

ビル群を見下ろす青き光の戦士――ウルトラマンゼロが現れた瞬間、美咲は息を呑んだ。

 

「……優……あなただったの……?」

 

信じられない事実。だが、それが目の前で起きている現実だった。

 

スカルゴモラが咆哮を上げ、ゼロに突進する。

地面が砕け、建物が揺れる。

ゼロは構えを取り、戦いが始まった。

 

スカルゴモラの突進をまともに受けたゼロは、大きく後退した。

アスファルトが砕け、建物が揺れる。

怪獣の一撃は、まさに地響きそのものだった。

 

「ぐっ……!」

ゼロは踏みとどまるが、次の瞬間、スカルゴモラの尻尾が薙ぎ払われ、ゼロの身体を直撃した。

巨体が宙を舞い、ビルの壁に叩きつけられる。

 

街の人々は逃げ惑いながらも、その光景をスマートフォンで撮影していた。

SNSには瞬く間に映像が流れ、「またウルトラマンが戦っている!」と拡散されていく。

 

美咲は瓦礫の陰からその様子を見ていた。

「優……負けないで……!」

 

スカルゴモラはさらに猛攻を仕掛ける。

ゴモラ由来の角から放たれる地震波、レッドキング譲りの怪力。

ゼロは受け止めるだけで精一杯だった。

 

如月の嘲笑が響く。

「どうした、ゼロ! お前の光は、俺の闇に喰われるだけだ!」

 

ゼロのカラータイマーが点滅し始める。

(やばい……! エネルギーが……!)

 

一歩、また一歩と押し込まれていくゼロ。

だが、その時――。

 

「ウルトラマン――頑張って!」

美咲の声が届いた。

 

その言葉は、確かにゼロの心を奮い立たせた。

優の胸に宿る思いが光を生み、ゼロの全身を青白い輝きが包み込む。

 

「……そうだ、まだ終わっちゃいない!」

その瞬間、ライザー、ウルトラマンギンガとウルトラマンオーブの力を宿したニュージェネレーションカプセルα、ウルトラマンビクトリーとウルトラマンエックスの力を宿したニュージェネレーションカプセルβが出現した。

 

「優、受け取れ!」

「あぁ!」

そして叫ぶ。

「俺たちに限界はねえ!」

 

「――ゼロビヨンド!」

 

全身が眩い光に包まれ、姿が変わっていく。

複数のウルトラ戦士たちの力を宿した進化形態、ゼロビヨンドが降臨した。

 

圧倒的な力の波動に、スカルゴモラが一瞬ひるむ。

如月は目を細め、しかし笑みを浮かべた。

「……来たか。その姿……だが、それも俺の闇で飲み込んでやる!」

 

スカルゴモラが再び襲いかかる。

だが、今度はゼロビヨンドが優勢だった。

高速の動きでかわし、連続の打撃を叩き込む。

 

最後に、ゼロビヨンドは光のエネルギーを収束させた。

「フィニッシュだ!」

 

放たれた必殺光線バルキーコーラスがスカルゴモラを直撃し、爆発が夜空を染める。

怪獣の咆哮が途切れ、崩れ落ちていった。

 

静寂が訪れる。

だが、勝利の余韻を切り裂くように如月の声が響いた。

 

「……やはり強いな、ゼロ」

闇の中から姿を現した如月は、手に“黒い結晶”を掲げていた。

 

「これはな……お前から奪った光の一部だ」

 

ゼロのカラータイマーが赤く脈打つ。

如月は薄く笑いながら続けた。

「ベリアル様の復活は近い。この結晶に蓄えた光のエネルギーで、俺は闇を拡大させる」

 

ゼロは構えを解かず、言葉を投げかける。

「如月……お前は本当に、それでいいのか? 光を拒み、闇に身を委ねて……」

 

如月の目に、一瞬だけ影が揺らぐ。

だが彼はすぐに表情を引き締め、吐き捨てるように言った。

「光があるから闇が生まれる。ならば、闇こそが真実だ」

 

ゼロは静かに首を振る。

「違う……光と闇は表裏一体だ。どちらも必要なんだ。だから俺は――すべてを受け入れる」

 

その言葉に如月は一瞬沈黙した。

だがやがて、闇の笑みを浮かべる。

「戯言だ……だが、面白い。せいぜい足掻け、ゼロ」

 

そう言い残し、如月は黒い光に包まれて姿を消した。

 

戦闘が終わり、スカルゴモラの残骸が夜風に溶けて消えていく。

ゼロビヨンドの輝きも薄れ、やがて巨人は光の粒子となって消滅した。

 

廃ビルの屋上。

そこに立っていたのは、変身を解き、汗に濡れた息を整える優だった。

如月は既に姿を消し、残されたのは優一人――のはずだった。

 

「……やっぱり、優だったんだ」

 

声が背後から響いた。

振り向くと、そこには香坂美咲がいた。驚きと不安、そして強い決意を秘めた瞳で彼を見つめている。

 

「美咲……見てたのか……」

「隠すつもりだったんでしょ。でも、もう隠せないよ」

 

優は視線を逸らし、黙り込む。

その肩が震えていた。

 

「誰にも言わないでくれ……お願いだ」

 

沈黙のあと、美咲は小さく頷いた。

「言わない。……言えるわけないでしょ、優のことを。だって、あなたは……みんなを守ってるんだから」

 

優は安堵の息を吐くが、その時。

彼の体が淡く光を帯び、ゼロの声が響いた。

 

『……君が優の友人か』

 

美咲は思わず息を呑んだ。

優の声ではない。だが、確かに優の体を通して響いている。

 

「い、今の声……」

『俺はウルトラマンゼロ。この地球で、優と共に戦っている者だ』

 

美咲は震える唇で問い返した。

「……本当に、優と一緒に?」

 

ゼロは静かに答えた。

『ああ。俺は彼に力を貸し、彼は俺に心を貸す。二人で一人だ。』

 

その言葉に、美咲は強く頷いた。

「なら、私も……その秘密を一緒に背負う。だって、優は……私の大切な友達だから」

 

ゼロの声は少し柔らかくなった。

『……いい仲間を持ったな、優』

 

優は照れくさそうに頭をかき、

「……ありがとな、美咲」とだけ呟いた。

 

一方その頃。

政信、梨央、加瀬は真田グループが所有する山奥の別荘にたどり着いていた。

外から見れば人気はない。だが、わずかに明かりが漏れている。

 

扉を開けると、そこには憔悴した後藤信介の姿があった。

酒瓶と散乱する資料に囲まれ、彼は憔悴した顔で三人を見上げる。

 

「……来たか」

 

梨央が一歩踏み出し、声を震わせた。

「どうしてですか……後藤さん……!」

 

後藤は虚ろな笑みを浮かべる。

「すべては……真田家のためだ。政治家を動かし、会社を守るためには……金が要った」

 

加瀬は冷たい声で返した。

「あなたがしたのは、会社のためじゃない。ただの保身です。権力に取り入り、自分の立場を守ろうとしただけだ」

 

後藤の表情が一瞬揺らぐ。

「ち、違う……私は……」

 

政信が低い声で言い放つ。

「もういい。……これ以上、真田を汚すな」

 

その瞬間、背後から警察が現れ、後藤に手錠をかけた。

「後藤信介、収賄と資金流用の容疑で逮捕する」

 

後藤は抵抗もせず、ただ虚ろな眼で呟いた。

「……私は……会社のために……」

 

その言葉は夜の静寂に吸い込まれ、やがて彼の姿はパトカーの中へ消えていった。

 

梨央はその背中を見送り、涙を堪えながら呟いた。

「これが……真田家の“新たな闇”……なのね」

 

深夜。

誰も知らぬ異空間――黒い星雲に覆われた謎の空間に、如月は立っていた。

 

闇の向こうから、低い笑い声が響く。

 

――フハハハ……よくやった、如月。

 

現れたのは、邪悪なる戦士・ウルトラマンベリアルの幻影。

その背後には、五体の怪人の影が立ち並んでいた。

 

「……あれは……」

 

――ダークネスファイブだ。

メフィラス星人・魔導のスライ。

ヒッポリト星人・地獄のジャタール。

テンペラー星人・極悪のヴィラニアス。

グローザ星系人・氷結のグロッケン。

デスレ星雲人・炎上のデスローグ。

 

ベリアルの声が続く。

 

――奴らはすでに怪獣墓場でギガバトルナイザーを復活させた。

我が力は戻りつつある……!

 

如月の胸が高鳴る。

「ベリアル様……!」

 

その時、大地を揺るがすような地鳴りが響いた。

闇から現れたのは、鋭い眼光を放つ一人の戦士。

 

「ストルム星人……伏井出ケイ」

 

ベリアルが嘲笑する。

 

――こいつもまた闇から蘇った。我が軍勢の切り札だ。

如月、ストルム星人。お前たち二人でゼロを討て。

 

ケイが口元に不敵な笑みを浮かべ、如月を一瞥する。

「フッ……面白くなってきたな」

 

如月は黒い結晶を握りしめ、闇の炎に包まれていく。

「必ず……ゼロを闇に沈めてみせます」

 

――フハハハ……光は滅び、闇が支配する!

 

ベリアルの哄笑が響き渡り、闇の空間は崩れ落ちていった。

 




優と香坂がお互いを名前呼び!
これも良いんじゃないですかね。

そして、ダークネスファイブ&伏井出ケイ復活!
ウルトラマンジード/朝倉リクも登場させた方がいいかもしれませんね。

次回もお楽しみに!
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