決壊する箱庭   作:獄華

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 とある大財閥の権力者は義息子を招き話し合っていた。


権力者の思惑

 

 「……孫娘の卓越したリーダーシップには私も舌を巻く」

 

 「全くですな」

 

 豊川定治は自宅の自室で電子端末に目を通しながら義息子の豊川清告と話をしていた。

 

 「しかし、お前もよく戻って来たものだ。どうした?血の繋がりもあり運命に抗う自身の娘に感銘を受けたか?清告君」

 

 「はい……。まだ15歳の祥子があれだけ頑張ってるのを見てしまっては私も自分の人生を諦めるわけにはいきません。天にいる瑞穂にも申し訳が立ちませんから」

 

 「……そうか。我々豊川、否、日本の財閥がこれから行う事はこの国家を破滅に齎すやも知れん。それでも君はやるか?。清告君」

 

 「無論です。私は祥子に助けられた身、一度死んだような者です……豊川に尽くします」

 

 「うむ」

 

 定治は画面をタッチした後、清告と共に地下室へと向かった………。

 

 

 

 

 

 ―――――

 

 

 

 

 「キシャアァァァァ!」

 

 「相変わらず……この叫びと異臭は慣れませんな」

 

 「慣れなくて良いかもな。人間としての矜持を失いかねん」

 

 無数の檻が設置された豊川家の地下はまるで監獄のようだが……収監されている者は人ならざる者である。

 脳が露出し四足で這い長い舌と鋭い爪を持つ化け物の他、黒いコートを纏い一見すれば、長身の男性にしか見えない化け物、人間の長身をしている化け物もいる。

 そんな恐怖を感じる面子の中、場にそぐわない一人の少女がいた。

 

 「お義父さん。その娘は?」

 

 清告は比較的新しい服を来て美しい顔立ちでひたすら檻の中にある机で勉強してる少女が気になった。

 

 「……山吹沙綾と言う少女だ。来たる日の為、支配種プラーガの特徴を持つ改良型のプラーガを投入してある。既に脳の中枢部まで支配が及んでおるよ」

 

 「………いやぁ!。いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 定治の言葉を基に堰き止められていたダムが決壊したように自分が人間の姿をしながら人間で無くなった事に絶望したのか沙綾は泣き出しながら、檻の隅で体育座りをし動かなくなった。

 彼女の啜り泣く声だけが聞こえる。

 

 「……全く。支配種プラーガは従属種プラーガに寄生された者を意のままに操れるが……人格と自我は保たれるのが弱点だ。精神は結局高校三年生のままなんだからな」

 

 「……お義父さん。少し彼女と話しても?」

 

 「構わんが」

 

 「山吹沙綾さん。初めまして私は豊川清告だ。君は何故プラーガの被検体に?」

 

 「清告君!私に楯突く気かね?」

 

 「落ち着いてください。お義父さん……彼女に生物兵器としての役割を与えているならば……混乱させるのは得策ではないかと。心の鎮まりも大事かと」

 

 「まぁ、一理あるかもな。駒は扱いやすいほうがいい」

 

 二人のやり取りを見ておどおどした口調で沙綾は口を開いた。

 

 「私は……お金が必要だったんです」

 

 「へぇ、何故?」

 

 「……夜中突然強盗が押し入り両親が射殺されました。私は弟と妹を抱き締め寝室に篭っていたんですが……犯人達は金品を少し奪いそのまま逃げて行きました」

 

 沙綾は涙を拭う。

 

 「両親の葬式が終わり、遺産含め山吹家のお金を計算しても火の車なのは明らかでした。私はまだ高校生、出来る事は限られている。下の子達のお金を稼がなきゃならない時に豊川グループで治験の仕事があるのを見たんです」

 

 「……応募したらプラーガを投入されたわけか」

 

 コクリと彼女は首を振った。

 

 「そのプラーガと言う寄生生物を入れられ暫くして吐血しました……恐らく私の身体と一体化してるんでしょうね。何度話は違う!と訴えても聞いてもらえず一ヶ月程ここに監禁されています……弟や妹に会いたいっ……うぅ……」

 

 「山吹沙綾。君の弟と妹は我々豊川グループの有する孤児院に居るよ」

 

 「本当!?」

 

 「……君の今後の豊川グループへの忠誠の度合如何では二人の社会人後も手厚いサポートを約束する。無論、君が二人に会うことも夢ではないのだ」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「山吹沙綾、君の仕事次第だ。失敗は認めよう。但し豊川を裏切るな。如何に君が一般人より強靭な身体を手に入れたとて我々はいつでも君を殺せる。分かったな?」

 

 「はい……」

 

 定治の言葉に少し恐れを感じてる様子だが沙綾は弟と妹の無事を知り少し表情が柔らかくなっていた。

 上に戻る際、清告が尻目に沙綾をチラリと見ると沙綾は此方に向かい礼をしていた。

 彼女の純粋な気持ちが……清告の罪悪感を増大させる。

 

 

 

 

 ―――――

 

 

 

 

 

 

 「お義父さん……」

 

 いても立ってもいられず定治の部屋に戻った際、思わず清告は彼に話しかけた。

 

 「なんだね?」

 

 「山吹家を襲撃したのですか?」

 

 「彼女には真に不運だが我々が祥子とその周りの中から使えそうな人間を探そうとした時彼女が第一候補に上がった。個人でパン屋をやっていると言う事はそれほど利益が無いだろうし、両親が死ねば当然そのしわ寄せは長女に行く……彼女のあの素直な性格も選定した理由の一つだよ」

 

 「……鬼ですな」

 

 「褒め言葉だ……。特にビジネスの世界ではな」

 

 

 

 

 

 ―――――

 

 

 

 

 

 『プロジェクトRE:■■■■に関する書類

 

 このプロジェクトは元アンブレラ社の役員である■■■■氏が日本の東京に於いて28年前の不慮の事故から起きた生物災害を人為的に再現する目的のプロジェクトである。

 主力協力企業、豊川グループ、弦巻財閥……。

 情報漏洩防止の為メッセージは何段階かに分けトップシークレットは伏字とする』

 

 

 

 

 

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