決壊する箱庭   作:獄華

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 就寝中、本能的な何かを感じた楽奈は目を覚ました。


哀別と禍怨に染まる夜

 

 「っ!」

 

 

 身震いと共に要楽奈は自宅のベットで目を覚ました。

 時刻は午後11時30分。

 全身冷や汗でびっしょりだ…汗が酷く冷たく感じる。

 悪夢を見たわけではない……、本能的に何か嫌な予感がしたのだ。

 

 「……喉渇いた」

 

 怖くとも喉は渇く。

 彼女はキッチンへ向かう。

 部屋の電気を付けようとスイッチを押したが電気が着かない。

 

 「…なんで?」

 

 更に彼女は違和感を抱く。

 家から楽奈以外の気配をまるで感じない。

 

 祖母の都築詩船に野良猫に噛まれた後病院に連れてもらって帰宅してから、一緒に家にいた筈なのに…。

 詩船の気配を一切感じないのだ。

 

 「…ばあちゃん?、どこ?」

 

 大好きな祖母の不在に不安になり、暗い中、親猫を探す子猫のように家を探す楽奈。

 目が暗闇に慣れて来るに連れ、彼女の視界に悍ましい光景が入って来る。

 

 「っ!」

 

 廊下に飛び散った血と肉片、天井や壁までもが真っ赤に染まっていた。

 更によく見ると、あちらこちらに引っ掻き跡や、大量の猫の足跡が……いずれも真っ赤だ。

 

 「…なんなのこれ…なんであの子達の匂い(・・・・・・・)がするの……?」

 

 「ミャーゴ」

 

 非情にも楽奈が思い浮かべたあの子達の一匹が彼女を見つけてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 不機嫌そうな鳴き声を放ちながら廊下の奥で浮かぶ2つの赤い光がこちらに近づいてくる。

 

 「…ミ、ケ?」

 

 「フシャアァァァァァ…」

 

 幼い頃から猫に触れて来た楽奈だから分かる。

ミケは完全に自分を殺そうとしていることに……楽奈の身体に鳥肌が立ち悪寒が走った。

 同時にミケからとある匂いが漂う。

 

 「…ねぇミケ、なんであんたからばあちゃんの匂いがするの?」

 

 詩船が猫の集会に自分と同じように顔を出してるなんて楽奈は聞いたことがない。

 だのに、ミケからは殺気と詩船の匂いが漂うのだ。

 

 「…あんた、ばあちゃんを」

 

 「ギニャー!」

 

 最早普通のミケでないことは明白だったが楽奈はいつものように会話出来るのでは、と一縷の望みを持ったが却ってきたのは攻撃だった。

 パカァ!とミケの背中が開き、真っ黒なウネウネとした触手が数本飛び出た。

 

 「キシャアァァァァァッ!」

 

 聞いたことのない唸り声を荒げ、楽奈に飛びかかる。

 涙ぐみながらも楽奈は真横にかわした。

 

 ーーーどうしてミケがこんな…。

 

 「シャア…ギシャア…キシャアァァァァァッ!」

 

 手当たり次第に触手を振るい壁や床に叩きつける。

 

 ーーーミケだけどもうミケはいない(・・・・・・・・)。

 

 言葉に出来ぬ喪失感が襲うが、目の前のミケは待ってはくれない。

 ゆらりと楽奈の方をゆっくり振り返る。

 そこにいるのかと言わんばかりにフーと唸り、こちらにまた駆けた。

 楽奈は猫の運動にいつも触れていた為か少し詳しかった。

 

 ーーーミケは今テンションが高くて興奮状態。

 急静止しての方向転換や小回りの動作が…効かなくなってる可能性がある。

 

 そんな状態の猫が猛ダッシュで走れば壁にぶつかる可能性を彼女は掛けることとした。

 

 「…ミケ、こっちだよ」

 

 「ニャア!」

 

 「…ッ!」

 

 恐怖が思考を支配し友達であるミケを斃さなくてはならぬと言う罪悪感と恐怖が重く伸し掛かる。

 だがやらなくてはならないのだ。

 楽奈が生き残る為に。

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 壁を隔て部屋の中から聞こえた楽奈の声に、思惑通りミケは反応した。

 真っ直ぐ進むミケは壁に激突…。

 あの速さでぶつかっては流石に助からない…と楽奈は思っていた。

 

 「ミャアァァァァァッ!」

 

 「嘘…!?」

 

 鼻が潰れ骨が露出しようがミケは暴れるのをやめない。

 

 ーーー怖い、辛い、悲しい……。

 ミケが化け物(モンスター)になっちゃった。

 苦しそうなのに凄く怒りながら暴れてる…。

 …私どうすればいいの?。

 

 「キシャア……ァァァ…」

 

 唐突にミケの声が弱まる。

 鞭のように振るっていた触手は地べたに静かに落ち、ミケ自身もコテンと真横に倒れた。

 

 「…ミ、ケ」

 

 「ニャア…」

 

 懐かしいいつもの鳴き声。

 だが今度は生命(いのち)の終焉に向かっているのを楽奈は本能的に察した。

 危険だとか怖いだとか言う感情は吹き飛び、楽奈はミケの頭を撫でた。

 間近でよく見て気づいた、ミケの肉体に鋭利な切り傷が大量にあるのだ。

 いくら凶暴化しようと生命として大量の出血からは逃れられなかったのだろうか……。

 

 「ニャア、ニャア」

 

 ミケは嬉しそうに鳴きながら楽奈に頭をスリスリすると動かなくなった。

 血塗れのミケを抱きかかえ楽奈は声を殺し泣いた。

 既に非日常の中で大声で泣けないこととこれほど残酷な仕打ちを発生させた者を呪いながら……。

 

 「絶対許さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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