決壊する箱庭   作:獄華

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 日常が非日常に塗り替えられ始める……。


始まり

 

「もう注射とか嫌になるよね〜。なんか今までで受けた注射で一番痛かった気がするよ」

 

 ライブハウスRiNGのカフェルームにて溜め息を吐きながらガールズバンドグループMyGO!!!!!のメンバーの千早愛音(ギター)は自身の美しい桜色の髪をクルクルと指に丸めていた。

 

 

 「ワクチン接種も服薬だけで出来るようにならないかな〜。唯でさえ授業があって憂鬱なのに注射とかガン萎えなんですけど〜」

 

 「……あのちゃん」

 

 「ふ~ん。愛音ちゃんは高校一年生になっても注射が苦手なんだぁ。かーわいい♡」

 

 「そよりん!。今煽るのは本当にやめてよ〜」

 

 愛音に対し心配の眼差しを向ける者もいれば、一方で彼女の弱みを握ったとばかりに攻める者が居る。

 同じMyGOのメンバーと言えど音楽以外では一枚岩とは言えなさそうだ。

 最もミーハーな千早愛音が普段から長崎そよ(ベース)や椎名立希(ドラム)を逆なでするような発言をしているのも大いに関係しているであろうが……。

 

 「なんかここまで弱ってる愛音ちゃん新鮮だなぁ」

 

 「うっわ、そよさんモードでそよりんが攻めて来る……。酷くない?。ともりん」

 

 ボーカルである高松燈が愛音に返事を返す前に、立希が切羽詰まった顔をして三人の前に現れた。

 MyGOのメンバーでありながら立希はRiNGでバイトをしている。

 

 「……どしたのりっきー?。顔色悪いよ?。何かあったの?」

 

 「落ち着いて聞いて皆。楽奈の事何だけど…」

 

 要楽奈。

 愛音と同じくギターを弾くMyGOのメンバーで唯一の中学生でもある。

 愛音はリズムギターを担当し、楽奈はリードギターを担当する。

 その彼女に何があったのか?。

 

 「猫に手を噛まれたらしい」

 

 「え?」

 

 「楽奈ちゃんが猫に噛まれた?」

 

 RiNGでもその自由奔放な様子から野良猫呼ばわりされたり、実際に近所の猫と意思疎通したりなどまるで楽奈自身が人の姿をした猫なのではないか?と勘繰る者もいたが……やはり彼女も人間だったらしい。

 

 「……それで楽奈ちゃんは今どうしてるの?」

 

 「あぁ燈。よっぽどショックだったんだろうね。病院で診てもらった後……家で寝てるって」

 

 「あの楽奈ちゃんが」

 

 「同族に裏切られたような気分だったのかも」

 

 「……大好きだったもんね。楽奈ちゃんは猫の事が」

 

 「うん。楽奈のメンタルが心配だし取り敢えず今日はお開きにしようか。但し明日からは普通に練習。楽奈の回復は楽奈自身に任せよう。私達が焦らす事じゃあないしね。幸い次のライブまでまだ時間もある」

 

 「オッケー。りっきー」

 

 「……楽奈ちゃん。心配」

 

 「燈ちゃん……」

 

 燈の不安そうな顔がそよの心を突き動かす。

 

 ―――何か良い方法はないかな?。

 MyGO!!!!!は私を拾い上げてくれたバンド、皆(凄く癪だけど愛音ちゃんも含めて)にお返ししたい。

 そうだ。

 

 「ねぇ。立希ちゃんもうすぐバイト終わるよね?」

 

 「うん。って何企んでるわけ?」

 

 「なんでもないよ〜。燈ちゃん愛音ちゃん。立希ちゃんがバイト終わるまで待ってようか?」

 

 「分かった!」

 

 「……うん」

 

 何かを察したように元気よく返事する愛音に対して立希も何かを察し、「ハァ」と溜め息をついた。

 

 ―――愛音よりそよのが悪質かも。

 

 程なくしバイトは終わる。

 

 

 

 

 

 ―――――

 

 

 

 

 

 着替えが終わった立希と合流した一同は楽奈の家を訪れていた。

 

 「相変わらず大きな家……」

 

 「ごめんください」

 

 立希が挨拶をすると、楽奈の祖母が出てきた。

 

 「……あんた達かい。楽奈の事だね?」

 

 「はい。あの楽奈ちゃんは無事ですか?」

 

 「身体は大丈夫だがショックが大きいね」

 

 「……そうですか」

 

 返ってきた答えに質問した愛音は落ち込んだ。

 

 「……それよりあんた達も気をつけた方がいい。猫だけじゃない。今日はなんだか攻撃的なカラスが多い。早く家に帰りな」

 

 「分かりました。ご心配してくださりありがとうございました。楽奈ちゃんが元気になるのを願っています」

 

 別れの挨拶はそよが済ませた。

 一同は帰ろうとするが異変に気づく。

 

 「ねぇ……なんかやけにパトカーや救急車が走ってない?」

 

 「私も思った。大事件でも起きたのかな?」

 

 「取り敢えず気をつけて帰ろう。楽奈ちゃんはきっとまた戻ってくるよ。じゃあ私こっちだから。またね皆」

 

 数多のサイレン音が鳴り響く中、四人は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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