「全く馬鹿な娘を持つと親は苦労する……加えて
忌々しく愚痴を零しながら書斎のブラインドに指を掛け、窓から延々と炎が燃え上がる東京の景色を豊川グループ盟主の定治は眺める。
人為的にこのような地獄絵図が生み出されたわけだが、彼の目には新世界創造の為の悪しき者達を焼き払う神の炎のように見えた。
———おぉ……空が赤く染まっている。
素晴らしい……劫火よ一度劣悪なこの世を焼き払え。
選ばれた人間達だけが新たな世界の市民権を手に入れるのだ。
「ちょっとぉ……いい歳こいた爺が火を見てにやにや笑ってんじゃないわよ気持ち悪い〜」
棘を持ったような声音を響かせその少女はゆっくりと定治に歩み寄る。
祥子とほぼ同じ顔だが、銀髪で長いロングヘアーをしていて、身長も160は超えている。
「ふん。
「あらぁ。お祖父様に言われたくないわねぇ。新世界の創造なんて馬鹿げた理想の為に平気で大量の人を殺し
少女は全く定治に怯むどころか、面と向かい言い返してきた。
オリジナルである祥子からこれほど性格が変わるとは思わなかったが、物は使いようである。
———祥子と似てるのはツリ目と顔のパーツと輪郭のみ……他の
禁忌とされるクローン技術もビジネスとしての将来性があるかもな。
今の世界は実に綺麗事と言う戯れ言の上に成り立っておる。
人間は動物、動物の本質は古今東西弱肉強食なのだ。
勿論、力の種類や方法の選択肢は増えたが強者が弱者を屠る自然の定理は変わらぬ。
神から与えられしこの定理は不変だ。
「強気で冷淡なお前にやはり
「お姉様譲り……。そう悪くはないわね。でも私
「素晴らしい。それでこそ強者で生物兵器たる所以。感情に惑わされる馬鹿な叔母とは違う」
「私達の母親は培養液だもの。培養液に感情があるわけないじゃない……ましてや強制的に15歳程度の肉体に成長させられたわけだしね。本当禁忌の非人道的な技術に創り出されたのね私達は……」
零全の赤い双眸が細まりながら窓の外を見ていた。
「祖父と孫の会話はここまでだ。先程も少し触れたが初音が祥子を誑かし一緒に逃走をはかった。Ave Mujicaの若葉睦も一緒だ……。ガツンと叱らねばならん。祥子と初音を捕え私の前に連れてこい」
「連れてこいって。お姉様と叔母様の位置は分かるの?」
「私は支配種プラーガの最上位種を身体に宿している。私から初音の位置は筒抜けだ。スマホを常に通話状態にしておけ」
「面倒くさい。本気になればお祖父様の力で叔母様を強制的に止められるじゃない。何故しないの?」
「駒は多い方がいいのだよ」
「ふ~ん。まぁ行ってくるわ」
乗り気じゃないようだが零全は軽快にジャンプすると廊下のガラスを破り外へ出た。
「……あやつに玄関の概念を教えねばならんか」
祥子と性格が違い過ぎる孫に早速彼は不安を抱いていた。