決壊する箱庭   作:獄華

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傀儡が蠢く街

 

 「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 「お父さん!お母さん!どこ………!?」

 

 思わず祥子は目を瞑り、睦は耳に手を当てた。

 木霊する人々の悲鳴に、無数に鳴り響く破壊音や爆発音やクラクション。

 そんな非日常の雨嵐が直撃しているこの東京を初音を先頭に、祥子と睦の三人は初音の提示した取っておきの場所を目指し移動している。

 初音の指示により、二人は三角家や道中で武器になりうる物を拝借していた。

 

 祥子は三角家にあった包丁1つと金属バット1つ。

 

 睦は三角家のすぐ近くで亡くなった警官が持っていた拳銃一丁と警棒1つだ。

 

 初音は徒手空拳である。

 

 今のところ三人は襲われていないが初音の話では東京の多数の人間がプラーガを植え付けられていると言う。

 

 「初音……。プラーガを植え付けられるとどうなるのです?」

 

 「原産地の天然の従属種プラーガと改良されたプラーガではそれぞれ支配過程が異なるけど……従属種プラーガ及びタイプ2は寄生先の人間を乗っ取り最終的にその人間は自我を無くすかな」

 

 「つまり……死?」

 

 睦とモーティス(二人の人格)を失ってから日があまり経ってない事などプラーガの支配過程に感じる物があったのか睦は胸に手を当て初音に問いた。

 

 「そうだね。プラーガに乗っ取られれば宿主は死ぬよ。喋ったり生きてるように見えてもプラーガが生前の動きを模倣してるだけだから」

 

 「可哀想。まるで操り人形だね」

 

 「プラーガに寄生された人は哀れな傀儡(くぐつ)とでも呼びましょうか」

 

 「いいんじゃないかな。これまでバイオテロが起きた地域でプラーガ寄生者はガナード、マジニと呼ばれて来たから。日本式でいいかも」

 

 「クス。祥の奴等に対する呼び名のおかげでちょっと元気でた」

 

 「……笑い事ではありませんわよ睦」

 

 「笑いのツボは人それぞれだからね」

 

 「ですわね。そう言えば初音もプラーガを植え付けられたのに会話のキャッチボールも出来ていますし。とてもプラーガに支配されてるようには見えませんが」

 

 初音は足をピタリと止めると少し俯いた。

 

 「さっき従属種って言ったよね?」

 

 「はい」

 

 「プラーガには主に2種類があるの。従属種とそれを操る支配種。私が与えられたのは支配種プラーガ……知能も自我も保たれるし肉体も強化される代物なんだ」

 

 「そうなのですね。初音が初音のままで安心しましたわ」

 

 「……デメリットがないなら私も宿したいかも」

 

 「やめた方がいいよ睦ちゃん。適合するまで咳はするし吐血もするから」

 

 「ならしない」

 

 「全く……睦ったら」

 

 ———そう。支配種プラーガは何もなければ人間の形を保ったまま暮らせる。

 あくまでも何もなければ。

 身体が大ダメージを受ければ…多分私はこの人間の身体を維持出来なくなり、異型になってしまう。

 ……やだなぁ。

 Mujicaの皆やさきちゃんとこの姿で会えなくなったら。

 あ、でも化け物になった私を皆が見限る可能性もあるか。

 とにかく今はさきちゃんと睦ちゃんを護る事だけ考えよう。

 

 「睦ちゃん。生半可な覚悟で支配種だろうがプラーガを宿したいなんて言わない方がいいよ……健康に良くない!からね」

 

 かつてのモーティスの真似をすると二人は笑った。

 

 「初音……元気そうですわね。安心しました」

 

 「当然だよ!二人を護らなきゃ!さ、目的地まですぐだよ」

 

 ———良かった夜で。

 二人に涙が見えなくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

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