無名のリンクス 先生になる   作:雨垂れ石

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ビジネスパートナーよ!! 先生は『自由』は嫌い?


絆ストーリー アル&カヨコ

 

アル《先生、久しぶり》

 

アル《返事できなくてごめんなさい。ようやく新しい事務所を構えられたの》

 

アビドスの一件が終わってしばらく経ったある日、突然俺の端末にメッセージが入った

陸八魔アルである

姿を眩ました後はてんで噂を聞かなかったが、どうやら新たに事務所を構えたらしく、その報告として俺に連絡をしてきたらしい

律儀だな

 

まぁ連絡が遅れた事についてはなんも言うまい

とりあえずアルに連絡が着いたし良しとしよう

 

リンクス《無事何よりだが、別に律儀に教えなくても》

 

アル《いいえ、先生にはちょっと話をしたくてね》

 

リンクス《……便利屋の仕事はいいのか?》

 

アル《ええ、ここ最近仕事がないから、いつでも大丈夫よ》

 

と、一瞬送信されてから、

 

アル《ええ。最近ようやく仕事が落ち着いたから、いつでも大丈夫よ》

 

というメッセージに変わる

…………まあ、詳しくは聞かないでおこう

 

リンクス《じゃぁ、明日向かうが、時間の指定はあるか?》

 

アル《あ、それなんだけど、長くなりそうな大事な話があるから、午前中に頼めるかしら》

 

大事な話?

現状では内容を想像できないが……

もしも急ぎだとすれば、今日の方が良いだろうか

 

リンクス《急ぎか?》

 

アル《いえ、明日で大丈夫な話。でも直接相談したくって》

 

リンクス《分かった、後で住所を送ってくれ》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

翌日、俺はアルが送信してきた住所に向かった

辿り着いた場所は、前回のオフィスに勝るとも劣らない立派な部屋だった

 

しかし、これを借りるには相当な家賃が必要なはずである……

……仕事がないと言っていた彼女たちに払える金額に収まっているのだろうか

無理をしていなければいいがな……

 

「あっ、先生来てくれたのね」

 

事務所へ入ると、ソファに座っているアルが出迎えてくれた

他の便利屋のメンバーは不在のようだ

 

「それで、話とはなんだ?」

 

「えぇ、先生、少し話を聞いてもらえるかしら」

 

応接用のソファにお互い座り直し、俺たちは向かい合う。

それなりに真面目な表情からして、例の大事な話をしようとしているのだろうと、俺は予想した

 

「ああ、構わない」

 

「じゃあ……その、先生、組織を導くリーダーに一番必要なスキルって何だと思う?」

 

「…………?」

 

大事な話……

俺はここに来るにあたって、様々な想像をしてきたつもりだったが、そのどれとも違う問いを投げ掛けられた…

どこが大事なんだ?

 

「……カリスマ性、だろうか」

 

「この人について行きたいと思わせるような感じか?」

 

「なるほど、よく言われる一般論ね。それもまた正しいわ」

 

「でも、もっと大事なものがあるわよ?」

 

俺の言葉は彼女の求めるものではなかったらしい

否定はしなかったが、軽く受け流された上で、より大事なものがあるとアルは言った

 

「いい、先生? リーダーに何より必要なスキルとは……相手を味方に引き入れられる、『説得の技術』よ!」

 

「…………」

 

「相手を説得できる技術はビジネスにおいて、とても大事なことよ。どんな事業でも、まずは相手を攻略しないと自分に有利な状況は作れないから」

 

「もちろん私は社長だから? 人を説得することにはもう慣れてるけど?」

 

と、自信満々に、胸を張って言うアルだった

 

「だから、今日説得の技術を勉強するのは、私ではなくて先生の方よ」

 

「……ほう」

 

「先生は私の事業パートナーなのだから、社長としてどれぐらいの能力があるのが確認しておかないとね?」

 

「……なるほどな」

 

いつの間にか事業のパートナーになっているんだが……

そうして、何故かアルの面接が始まった

内容とすれば、アルの心を動かせば合格らしい

 

「さぁ!どんな事でもいいわ!私の心を動かしてみなさい!」

 

「……アル」

 

「?」

 

「俺を雇えば、俺みたいなアウトローについて教えよう」

 

「いいわ!採用!!」

 

「……」

 

「はっ、い、今のは……やるわね先生」

 

「ん、ん……確かに、今のは素晴らしい作戦だけど、最初から相手の望むものを知っているとは限らないでしょ? 別の作戦で、もう一度私を説得してみて、先生」

 

他の手か……

なら……

 

「アル、便利屋で不便な事はないか?」

 

「うん? そうね、毎回依頼人のクレームを解決するだけでも大変だもの。数えきれないくらいあるわ」

 

依頼の度、毎回クレームを発生させているという驚くべき事実が発覚したが、一旦無視して話を進めよう……

 

「例えば……そのクレームの解決を手伝う人材がいたら楽になるか」

 

「まあ、確かにそうね?」

 

「なら、俺を雇えば、クレームを滞りなく処理することができるが?」

 

「そうね、そうしましょうか?」

 

即答だな……

ほぼ嘘なんだが……アルはにこやかに受け入れている

 

「……じゃなくて! な、舐めないでちょうだい! 私は鉄壁だから! そんな簡単に説得されないリーダーなんだから!」

 

ギリギリで戻ってきたか……

だが、これで分かった、アルには経験がない

そして、俺に何かをやって欲しい感じがする

 

「アル、お前はもう少し経験を積んだ方がいい」

 

「……」

 

「1つの聞こう、俺にその様な事を聞いて、何がしたい?」

 

「……」

 

アルは少し考えたあと、口を開く

 

「端的に言うわ、先生……先生を、うちの会社の経営顧問として迎え入れたいって話よ」

 

「……経営顧問、か」

 

「あ、もちろん今すぐ返事をもらおうとは思ってないわ。ふふふっ、これからの私たちには、たくさんの時間があるから。先生の心の中で明確な答えが出るまで、私はいくらでも待つわ」

 

「……分かった

 

「えっ?」

 

「アルの誘いを受けよう」

 

「い、いいの?」

 

「あぁ、ただ単純に、アルの事が心配でな」

 

「このままだとまた何かやらかしそうだし」

 

「ウッ……」

 

「で、でも、感謝するわ、先生」

 

そうしてこの日、俺は便利屋の経営顧問として就任した

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アルと一通り、話してたらすっかり日は落ちていた

まだ色々と話すべきことはあるが、それは今度の時にしよう

 

ネクストをアビドス高校に置いているため、歩いて戻らないといけない

アロナに操縦させこっちに持ってこさせようかと思っていたが

ここは、普通に街として機能しているためネクストが無闇に通れば騒ぎになる

そうなれば、リンの雷が落ちるだろう

それだけは絶対に避けたい

時間はかかるが、仕方の無いことだ

 

それからしばらく歩いていると……

 

「だから、私は何もやってないって……」

 

「嘘つくな! そんな怪しい見た目でこんな場所をうろついて、何か用事でもあるのか?」

 

「それは、だから──」

 

「……だから?」

 

「……いや、何も」

 

「ほら見たことか、何か企んでいるんじゃないのか!?」

 

こちらにまで聞こえる声で、カヨコが大人に問い詰められていた

ただし、その大人は制服を見る限り警官のようで、何らかの疑いを掛けられているらしい

 

よくもまあこのアビドスに警官としているものだ

カヨコと警官の所へ歩み寄る

 

「とりあえず学生証を出しなさい、身元確認をするから」

 

「…………」

 

カヨコは下を向き黙り込んでいる

学生証も出す気はないらしい、カヨコは素性がバレるとやばい立場にいるかもしれない

まぁ指名手配中の便利屋に所属している時点であれだが……

 

「カヨコ、ここで何をしている?」

 

「……ッ!?先生!?」

 

「どなたですかあなたは?」

 

「シャーレのリンクスだ、そいつは今シャーレの仕事をしているが、こんな所で道草を食ってたのか……」

 

完全に嘘である

そもそもカヨコを見つけたのはたまたまだ

だが、彼女も『生徒』だ

生徒なら、助け舟を出すのは『先生』として当たり前の事だ

 

「シャーレかなんなのか知りませんが、警察の邪魔をしないでください」

 

「あなたも捕まりたいんですか?」

 

そう警察は高圧的な態度を取っている

職権乱用だな、とは言ったものの

 

「なら、警察手帳を見せていただきたい」

 

「アビドスの警察署に問い合わせて確認をする」

 

「な、なんだと!?」

 

こいつらは偽の警察だ

そりゃそうだ、だってホシノが毎晩夜警に出ている時点でアビドスの警察は機能しているとは思えない

 

「若造が……調子に乗って!!」

 

「先生!!」

 

偽の警察は拳銃をこちらに向けてきだが……

 

バンッ!!

 

背中に隠していたデザートイーグルを偽の警察の頭部に撃ち込み

 

「なっ、こいつ!!」

 

もうひとりのやつも拳銃を取り出したが……

 

バンッ!!

 

拳銃を持っている手に撃ち込み、拳銃は明後日の方向へ飛んでいく

 

「グアア!!?」

 

怯んだ隙に足を払い、なぎ倒す

 

カチャッ……

 

ディーグルを偽の警察の頭部に推し当て……

 

「失せろ、粗大ゴミになる前にな」

 

「ヒッ、ヒイイイイイ!!!」

 

倒れたもう1人の奴を抱え、走り去っていった

 

「……先生」

 

「気にするな、あいつらは偽物だ」

 

「うん、そうなんだけど……」

 

「先生って、生身でも戦えるの?」

 

「お前たち生徒程ではないが、自衛程度ならな」

 

「……」

 

まぁ、イオリを背負い投げしたり、アコをアームロックしたり、カス(カイザー理事)に片手でノノミのミニガンを押し当て撃ち込むぐらいはやったがな……

 

「それより、カヨコ、ここで何を?」

 

「……はあ、野良猫に、エサをやってたの、

警官が来て、すぐ逃げちゃったけど」

 

「……猫?」

 

「うん、普通の野良猫、アビドスにいる間は世話をしてたんだけど……もうそろそろここを離れるから」

 

「ふむ……」

 

「…………『怖い』んだって、私の顔が」

 

「……?」

 

カヨコはそう言う……

彼女の台詞があまりに唐突だったため理解が出来なかった

……怖い?

カヨコの顔が?

 

「だから、私の顔が怖くて、悪そうに見えるから、不審者扱いされるってこと」

 

「…………」

 

「反論しなかった理由は、今まで信じてくれなかったからか……」

 

「まぁ、そうだね……」

 

「……先生は、私の顔は『怖い?』」

 

カヨコにそう聞かれる

そんな俺の胸中を知ってか知らずか、カヨコは顔色を窺うように訊く

だが……

 

「さっきの俺を見てそう言えるか?」

 

そう反射的に言う

前にアロナから言われたのだが……

『先生は怒ると本当に怖い顔をするんですよ!』

って、鬼のようではなく

凍りつく様な感じと言うことらしい……

 

「あっ、いや……」

 

思わない回答にカヨコは戸惑うが、何かを決心したように言う

 

「……らしくないなら、らしくないでいいか」

 

と、一人呟いた……

それが何を意味する呟きかは特に説明することなく、カヨコは俺に向き直ってから、薄く笑みを浮かべる……

微笑んではいるが、どこか緊張しているようにも見えた……

 

「先生、駅まで送ってくれる? 少し話したいことがあるから」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「先生、一つ訊いてもいい?」

 

「まぁ、答えられる範囲なら……」

 

カヨコは、どこか心中穏やかではなさそうに、俺へ問う

 

「先生は、社長を本当にアウトローにするつもり?」

 

「…………」

 

「俺はそのつもりは無い……」

 

「でも、結構アドバイスとかしているけど……」

 

「あくまでも、助言だがな……」

 

「アウトローになるかならないのかはあいつ自身が決めることだ、俺が入る権利も義務もない」

 

カヨコの言い方からするに、アルにはアウトローになって欲しくないのだろう

まぁ、あんな善人がアウトローなんてなぁ……

そうしていると、ぽつりぽつりと雨が降り出した

俺とカヨコは近くの屋根に入り雨宿りをする

 

「はい、これ傘」

 

「……随分と準備がいいな」

 

「周りにそそっかしい人が多いからね。予備を持っておくと便利だから」

 

「ほんと、すごく手のかかる人たちだから……」

 

困ったようにしながら、しかし微笑んで、カヨコは言った。

 

「それに……こういう雨の日に放っておけない子も、路地裏にいる」

 

「……猫か」

 

「正解」

 

先程の路地方向へと目を向けながら、カヨコは言う

どうやら彼女は、猫がかなり好きらしい

初めは動物全般が好きなのかと思ったが、言動を聞く限り猫は中でも特別のようだ

 

「……野良猫か、少々不安だが……自由なのは良いことだ」

 

「……自由か」

 

「先生は、自由な方がいいの?」

 

「……分からない」

 

「俺の元いた所は自由なんてなかった、企業からの依頼が出ればその通りに動く」

 

「誰かに縛られている状態だった……」

 

こうして考えてみると、俺が自由というものを完全に理解していると言えない……

俺よりもステラの方が余程理解していると言えるだろう……

……この世界でも、『シャーレの先生』として動いている俺は、自由と言えるのだろうか

1人の『大人』として、1人の『リンクス』として『何のために戦うのか』

未だに、その考えに縛られている

 

「…………」

 

「……ありがとう、先生、送ってくれて、傘は……貸してあげる、また今度で良いよ」

 

「……そうか」

 

そうして、しばらく

カヨコとしては満足のいく会話だったのか、駅に着く頃には彼女から警戒や緊張は感じられなくなっていた

 

「……ああ、あと……先生」

 

そして最後の別れ際、カヨコは言う

 

「今の私は縛られることも、そんなに嫌いじゃない」

 

それがどういう意味なのか、それはカヨコ自身しか分からない

 

 

「……アロナ」

 

『はい?』

 

「俺は今、『自由』か?」

 

『………』

 

『それは、先生が決めることでは?』

 

『先生が、そう思えるならそれでいいんです』

 

アロナも難しい事を言う……

 

 




今回はアルとカヨコの2人の絆ストーリーをやりました
なんか少し適当な気がしますけど……
まぁいいでしょう
次回はヒナの絆ストーリーです
それが終わったら、ついにパヴァーヌ編ですお楽しみ

リンクス先生の大切な人『ステラ・エリン』をどのような登場させるか

  • 幻覚や幻聴として登場
  • 転生して『生徒』として先生と行動
  • 転生して『人間』として先生と行動
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