無名のリンクス 先生になる   作:雨垂れ石

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みんなで掴んだもの


掴み取った功績

 

 

「……」カチャカチャ……

 

「先生?何をしているんですか?」

 

「ん?あぁ、『レクイエム』のメンテだ」

 

「『レクイエム』?」

 

「大口径リボルバー、ネルの額にぶち込んだやつ」

 

「あぁ〜あれですか……」

 

RSh-12『レクイエム』

あのネルが悶絶するほどの威力を持ったリボルバー

アリスはレクイエムを見てなんともいえない顔をしている

 

「ネル先輩がああいう風になる威力………うぅ、絶対に喰らいたくありません……」

 

ちゃんとしている生徒には使わない、それ以外は使うことがある」

 

「……アリス、ちゃんとした子になります」

 

アリスとそう会話をしていると、扉が開きモモイ達が入ってくる

 

「モモイ!……………モモイ…その手に持ってるのはなんですか?」

 

「これ?これはね〜……アリス!」

 

「見てみてアリス!じゃーん、メイド――ドゴォン!!

 

『メイド』っという単語が聞こえた瞬間、メンテナンスが終わったレクイエムをメイド服に向けて引き金を引く

 

レクイエムの弾丸はメイド服の心臓部分を貫通し、モモイの身体スレスレを通り過ぎた

メイド服は大きな風穴が空いた

 

「わあっ!?」

 

「あっ、すまん、メイドの単語が聞こえたから反射的に……」

 

「わあ、メイド服に大きな風穴が空いています」

 

「先生、結構トラウマなんですね……」

 

「トラウマというか、生徒を傷つけようとした人って認識して……」

 

「あ〜……」

 

「……これ、数センチズレてたら私に風穴空いてたよね……ヒェッ……」

 

これはまじでレクイエムの使用は控えた方がいいかもしれない

 

そうして話していると珍しく外出していたユズが帰って来た

 

「あの先生、昨日の件なんですけど……」

 

「あぁ、どうだった?」

 

「C&Cの演習として処理されて、こちら側はお咎め無しって」

 

「そうか……ユズありがとう、手間をかけたな……」

 

彼女はゲーム開発部の代表として、C&Cと俺の戦闘について事情聴取を受けていた

本来は俺が行くべきのだが、ユズが『大丈夫、任せて』っと言って行ってくれた

 

「あ、それから…先生……ネル先輩からの伝言で、『また会おうぜ』って」

 

「それと『今度こそ勝つ』だそうです」

 

「……そうか」

 

「先生……全然怖がってませんね」

 

「…………まぁ」

 

ソルディオス砲とAF、アサルトセルに比べればどうってことない

まぁ、生身では少々怖いがな……

 

伝言を伝えたユズはPCの画面を開き、ケーブルを使って外付けモニターに接続

 

「ミレニアムプライス、始まったね」

 

「もし受賞したらクラッカー鳴らそうか、お祝いにケーキも買ってさ、でも、もしそうじゃなかったら……」

 

「……うん、直ぐに荷造りしないと、私達はさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは……」

 

ミドリの心配そうな声

それに対する言葉を、彼女達は持ち合わせていなかった

 

「大丈夫だ、信じろ、お前達が積み上げてきたことを」

 

「……うん、そうだね、信じる」

 

「はい!アリスも信じます!!」

 

『これより、ミレニアムプライスを始めます! 司会及び進行を担当するのは、ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部所属、豊見コトリです!』

 

「あ、コトリちゃんだ」

 

『今回は、これまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。恐らくは生徒会セミナーの方針変更により、部活動維持のための成果が必要となった影響かと思われます!』

 

「……最多か、当たる可能性が低くなるな」

 

「うぅ、確かに困る……」

 

応募数が多くなるという事は、それだけ倍率が上がるという事。頭の中にもしやと言う顔がモモイ達に現れるが

 

「ここで一位になったら、自慢できるね」

 

ユズが暖かい言葉をかける

 

『前回の優勝作品である生塩ノアさん著の思い出の詩集は、その形而上的な言葉の羅列がミレニアム最高の不眠症に対する治療法として評価されました』

 

ノアの書いた詩集、一度読んだ事があるが

確かに、あれはいいものだった

 

あれは不眠症に対する治療法なのか……

 

『尚、これは本来の意図とは少し違ったようですが……今回も歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れ、ミサイルが搭載された護身用の傘、ネクタイ型モバイルバッテリー、光学迷彩下着セット、ちょうど缶一個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫……』

 

「どれも癖が強いのばかり………光学迷彩下着セット?」

 

「あれやっぱり気になりますよね」

 

「色々大丈夫なのかな…」

 

『そして!今キヴォトスのインターネット上でセンセーショナルを巻き起こしているスマホでマルチプレイが楽しめるレトロ風ゲーム、テイルズサガクロニクル2などなど、今回出品された三桁の応募作品のうち、栄光の座を手にするのはたったの7作品!』

 

「いよいよだ…」

 

「ゴクッ…」

 

『それでは7位から受賞作品を発表します!』

 

そうして、どんどん順位が言われていくが、ゲーム開発部のゲームは未だに発表されていない

 

「なんか、どんどん不安になってきた……」

 

「だ、大丈夫なはず、信じましょう……」

 

『それでは!1位の発表です!』

 

「ゴクリ……」

 

『栄えある第1位は……』

 

『新素材開発部の――バンッ!バンッ!バンッ!

 

発表された瞬間、モモイ自身の銃でテレビをぶち抜いた

 

「きゃあっ! お姉ちゃん!?」

 

「どうせ全部持って行かれちゃうんだし、もう関係ない!」

 

ミレニアムプライスの受賞作品、その7つの内にゲーム開発部の名前は入っていない……つまり

 

「うえぇぇん! 今度こそ終わりだぁぁぁぁ!」

 

「うぅ……結局、こうなっちゃうなんて……」

 

「落ち着いて、お姉ちゃん、ユズちゃんも―」

 

「分かってるよ!」 

 

モモイは腹から声を出し、大きく叫んだ……それも悲しそうに

 

「全部が否定されたわけじゃない、へこたれる必要なんて無いって!……ネットでの評判も悪くなかったし、クソゲーランキング1位のあの時から、私達はちゃんと成長した!これからも、私達は成長していける!もっと面白いゲームを作れる!次はもっと良い結果を出して、今より立派な大きい部室だってもらえるはず!」

 

モモイ自身達成感はあった、ネットでの評判も悪いわけではない

クソゲーランキング一位を取ったあの日からは確実に成長している、努力が無駄だったわけではない……だが……

 

「ユズと、アリスは……ッ!」

 

ゲーム開発部が廃部になる現実は変えられない

 

居場所を失ったユズは寮に帰らなければなくなり、アリスに至っては帰る場所すらない、一応シャーレで預かることはできる……しかしそれで解決にはならない……

ゲーム開発部がバラバラになってしまうのだから

 

「……心配しないで、モモイ、ミドリも……私、寮に戻る」

 

「えっ……」

 

「もう私の事を、クソゲー開発者って呼ぶ人は居ないと思う。ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫……今の私には3人と先生がいるから、もう、怖くないよ」

 

ユズは泣くのを我慢し、笑顔で俺の方を見る

やめてくれ、その笑顔は……

 

「ありがとうございました、先生」

 

「………」

 

そんな事を……言うなよ……

 

「先生がこの部室に来てくれた時から、私達は大きく変わる事が出来ました、ずっと優しく見守ってくれて、信じてくれてありがとうございます、ただ、アリスちゃんは……」

 

アリスの方を見ると、アリスは涙を流していた

 

「……もう、皆とは一緒にいられないんですね」

 

「ッ……ごめんね……ごめんね、アリスちゃん! 私、絶対毎日会いに行くから! また一緒にゲーム作ろう!」

 

「ううぅ……! や、やっぱり嫌!こんなに仲良くなれたのに離れ離れになるなんて寂しいよ!」

 

「わ、私も……皆と一緒が良い……!」

 

「……」

 

何も、声をかけれない……

俺が、この部活を守る事に協力したのに……

結果こいつらを悲しませる結果に繋がってしまった

 

……どうにか……できないのか……

懐からレクイエムを取り出す

……セミナーに押しかけて脅してでもゲーム開発部を…………

いや、それは絶対にダメだ……そんな事をしたってあいつらは喜ぶはずもない……

 

そう……考えていた時

 

不意に部室のドアが開き……駆け足で、満面の笑みで部室に上がり込んできたのはユウカだった

 

「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!先生!」

 

「おめでとう!!」

 

この場にいる全員が黙る

『おめでとう』?

今はそんな雰囲気じゃないだろ……

 

「待てユウカ、それってどういう意味なんだ」

 

「……え?結果、見てなかったの?」

 

「……結果?」

 

「……私達、7位以内に入れなくて……」

 

「…どゆこと?」

 

「ちゃんと見てなかったの?」

 

「お、お姉ちゃんがディスプレイを吹っ飛ばしちゃって……」

 

「本当に何してるのよ……ほら、スマホ貸してあげるからちゃんと見てみて」

 

そう言って差し出されたスマホの画面には

 

『ミレニアムプライスはこれまで、生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、実用性を軸に据えて授賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています』

 

『しかし』

 

『今回の作品の中には、新しい角度から実用性を感じさせてくれたものがありました。その作品は懐かしい過去を鮮明に思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです。よって、私達はこの度、異例の選択をする事にしました』

 

「それって……」

 

『特別賞、受賞作品……ゲーム開発部、テイルズ・サガ・クロニクル2です!』

 

「ええっ、嘘ッ!?」

 

「な、何が起きてるの……」

 

2人の疑問を置き去りに、審査員はコメントを綴る

 

『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えていく展開』

 

『一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観。最初は困惑の連続でしたが、新しい世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く……そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います』

 

『プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった幼年期の頃を鮮明に思い出す事ができました。そういった点を評価して、この作品に……今回、ミレニアムプライスの特別賞を授与します』

 

ゲーム開発部はランキングには載らなかった……しかし、特別賞という結果を手に入れ

 

「本当におめでとう!……その、実は私もプレイしてみたの。決して手放しで面白かったとは言えないけど……良い作品に出合えた後の、あの独特な感覚が味わえたわ」

 

プルルルッ…

 

『モモ! ミド! あたしもTSC2やってみたよ! すっごい面白かった! 今ネットでも大騒ぎだよ! ヴェリタスの調べだと、有名アイドルの名前よりTSC2の検索数が多くなってるってさ!』

 

「ほ、ほんとに……?」

 

部室に転がり込んできたユウカから話されても、スマホから連絡が来たマキから話されても、頭が処理できず困惑したまま

 

「確認しました、Webにアップしたテイルズ・サガ・クロニクル2は、先ほどまでダウンロード7705回、計1372個のコメントが付いて」

 

「ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えています」

 

「コメントも約500個追加」

 

「言葉のニュアンスからして否定的・疑惑的なコメントが242件、肯定的・期待のコメントが191件。残りは不明、もしくは評価を保留にしているコメントです」

 

「こ、これってつまり、廃部にはならないんだよね!?」

 

「えぇ、そうよ……あ、でも、あくまで臨時の猶予だから、正式な受賞ではないし、生徒会セミナーとしてはまた来学期まで、ゲーム開発部の部室の没収及び廃部を保留する事にしたの」

 

セミナー側が予期した賞を授与したわけではないが、かといって後出しで特別賞を無効にするのは筋が通らない、これによりゲーム開発部の廃部は保留という形になった

 

「えっと、それから……ごめんなさい、先生の言うとうりゲーム機は技術の結晶、楽しく遊んで貰うために考えられて作られたもの、開発者や遊ぶ人の思いが詰まっているのにガラクタって言って……ちょっとキツくいったりもして、あなた達のおかげで思い出したわ、小さい頃に遊んだゲームの事……だから、ありがとう」

 

ユウカは笑顔でゲーム開発部に礼を言う

 

「それじゃ、部室の延長申請とか部費の受付処理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会室に来てね、じゃ、また後で!本当におめでとう!」

 

そうして、ユウカは部屋を出ていき……

 

「……やったな」

 

「やったぁぁぁぁぁ!」

 

「良かった……! 本当に良かった……!」

 

「やった……嬉しい……!」

 

「……? え、えっと……?」

 

状況をいまいち飲み込めていないアリスの手を、ミドリは涙混じりの満面の笑みを浮かべながら握って

 

「アリスちゃん! 私達、特別賞を受賞したんだよ! この場所も、私達の部室のまま!」

 

「えっと、つ、つまり……アリスはこれからも……皆と一緒にいて、良いんですか……?」

 

「うん! 勿論!」

 

「これからも、よろしくね……!」

 

「そして……先生!!」バッ!

 

「うぉ……」

 

モモイ達が、こちらに飛びつくように抱きついてきた

俺は優しく受け止める

 

「ありがとう!!先生が一緒に廃墟に行ってくれて、鏡の時も頑張ってくれて!」

 

「私達に励みの言葉をずっと投げかけてきてくれて」

 

「わ、私たちを…信じてくれた…」

 

「アリスも!先生も!――ありが…とう…」

 

「あ、アリス……アリスも…いきます!!!」

 

「グエッ……」

 

アリスも、モモイ達と同じように抱きついてきた……

俺は少し微笑み、アリス達の頭を撫でる

 

「……お疲れ様だ、よく頑張った」

 

そうモモイ達の頭を撫でて言葉を掛けていると……

 

『良かったね、本当にお疲れ様、頑張ったね!』

 

「ッ!!」

 

目の前に、ステラがいた……

彼女は笑っていた

 

瞬きすると、ステラの姿は消えていた……

 

「……」

 

「あれ?先生泣いてる?」

 

「えっ?」

 

額を触ると、涙が流れていた……

泣くなんて……いつぶりだろうか……

 

「先生も泣くんだ!そこまで嬉しかったの?」

 

「まぁ、そうだな……」

 

この涙は、どういう気持ちで流しているのかな

彼女に会いたい事でなのか、モモイ達が成し遂げた事でなのか……

2つだろうな……

もしもステラがここにいるなら、モモイ達をギュッと抱きしめて一緒泣いていたと思う……

 

 

……このキヴォトスに来てから、感情がよく出るようになった

いいことなのかね……

 

まぁとりあえず、モモイ達の掴み取った功績を祝おう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─データ復旧率、98.00%。

 

 

 

─システム作動……準備完了

 

 

 

─プログラムをセット……Divi:Sion

 

 

 

─AL-1S……いえ……アリス……

 

 

 

─私の、大事な…… @#$%^&*(!@$!!

 

 

 

―カラードランク9

 

 

―ラインアーク WHITE-GLINT

 

 

―リンクス先生

 

―あの機体と彼は………危険すぎる

 

 

 

 

 




ということで、これにてパヴァーヌ編第1章は完結です
このまま第二章に入って行きますのでよろしくお願いします

アンケートにリンクス先生の大切な人、ステラをどうするかの質問があります
ぜひ答えていただけると助かります
ステラについては『絆ストーリー シロコ』を呼んでください

リンクス先生の大切な人『ステラ・エリン』をどのような登場させるか

  • 幻覚や幻聴として登場
  • 転生して『生徒』として先生と行動
  • 転生して『人間』として先生と行動
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