現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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Chapter3開始です。


Chapter3
103


 

手にした力。

目覚めた力。

 

仮に自身が変わったとしても、その根底は何も変わらない。

武器と、仲間と、後付で付けた力が剥がれた時どうなるのか。

 

それを知るための道が待つ。

己の根底を顕にする場所が先に待つ。

自身の根底を掘り返し、先に進む藁を掴む力を問われる場所は直ぐ先に。

 

選ばれてしまったのだから。

その価値を示せ、と『迷宮』は生命を賭けることを常に求めている。

 

 

『Chapter3-1』

 

 

崩れ落ちる生命体。

その肉体は俺達よりも背が低く、けれど筋肉質でそれぞれに武器を握っていた。

 

鶴嘴、槍、大斧。

どれもが鈍く輝き、けれど手入れされていないのか欠けていたり錆びていたりと目に見えて火力が落ちた刃物達。

 

「相変わらず思うけどさぁ」

「なんですー?」

 

漏れる体液が赤であれば人殺しとでも勘違いされそうな風景。

ただ透明な妙な粘性を帯びた液体であれば勘違いするものでもない。

 

「俺等が一緒に潜ると普通じゃなくなるの何なんだろうな」

 

明確に”別の存在”であることを強調するかのように現れたのは、通称名を『ドワーフ』。

幻想小説に良く現れる、けれど色々余計な予想を取り込んだようにも思える一種のボーナス的な存在でもあった。

 

「良いことじゃないですかー」

「そりゃそうだけどな」

『早く解体しませんか?』

 

足先でつんつん突付く小鳥遊。

ふわふわと白黒に染まった紙人形のような物体を纏わせた天音ちゃんに、餌付けされてるミサキ。

何も変わらない――――いや、慣れてしまった風景。

 

「んじゃあまぁ、いつも通り武器は俺が持って行くわ」

「天音ちゃん、そっちの『魔石』お願いできる?」

『うん』

〚ケェーン〛

 

金稼ぎ、経験稼ぎ、或いは素材回収。

どう呼ぶにしても正しい『迷宮』への侵攻を繰り返すこと……何度だろう、もう忘れた。

ただ、少なからず最低一回の探索に付き一回は此奴等を見るように為ったのは慣れてしまってはいけないことだと思う。

 

(向こうに持っていかれてるしなー……代償、でいいのかこれ)

 

本来俺の武具である筈のミサキは何故か向こうに付き従ってる。

今更なので何も言わず、自分の意志で転がった武器類を回収していく。

手持ち部分は木製できちんとしているのに対し、金属部分は目に見えて使えないように見える。

 

ただ、こいつらが正しく金になるのはこの金属の方。

単純に鉱石などから採取・精製できる鉄などに加えて微量に混じる新材質の素材。

柔らかい金属、という矛盾するような性質の……アルミニウムともまた違う武器向けの素材。

一般的には()()()()()()()と呼ばれるこの金属を掻き集めることで、『魔石』からのエネルギーを抽出する炉の周囲は完成する。

 

そして深く潜れば潜るだけ材質は純粋に、そして量が多くなるとかいうおまけ付き。

最初にこれを見つけた学者が言ったとかいう、「『迷宮』は人間を招いている」と言うのはこの辺からも察するものがある。

 

「この量なら結構な金になるか」

「どれくらいになりますかねぇ」

「三十万は越えるんじゃね?」

 

わ、と言葉に出して驚く辺り未だに金銭感覚が身に付いてないのがよく分かる。

一人頭で分割して十万、生活する上では十分でも探索の為の道具を新調するには全然足りない。

まあ、一般的に生計が立てられるギリギリラインならこんなもんなんだろうと思わなくもない。

 

「ただもう一桁二桁上乗せしたいよなぁ」

『やはりそれくらい必要になりますか?』

「将来的なことを考えれば積み増し出来る部分はしときたい、この辺のから取れる素材は所詮学生レベルだし」

 

一応もう少し高く売る小技はある。

創作者……今回の場合は東雲先輩に頼んで抽出・精製までを終わらせた上で売る、という小技。

ただ、その手段を取るならもう少し効率が上がった場所でやりたいところ。

 

「だからまぁ……今回は評価を上げるくらいしか出来ねーかなぁ」

 

最底辺のゴミからちょっとは使えるゴミに進化。

いやこれ本当に進化でいいのか?

 

「そういえば先輩」

「んー?」

「結構熱心に評価評価って言ってますけど、大事なコトなんですか?」

「大事っつーか……まあ、俺みたいに小賢しく動くなら欲しいところ?」

 

一年の中では最前線を突き進む後輩二人は……多分然程必要にしないだろう。

基本的に比較対象が同学年として扱われる評価は、絶対評価ではなく相対評価に過ぎない。

つまりは同学年の上の奴等に対して劣っている、という見方をされる反面更に下のクズよりはマシに見られる、くらい。

仮に追い抜かしでもすれば途端に態度が変わるだろうことが見えて透けてるところがホント嫌。

 

「と、言いますと」

「それなりに成績を残す相手には()()()態度が甘くなる、っつーことよ」

 

少しだけ口を滑らせてくれたり。

証拠を残さない範囲で便宜を図ってくれたり。

こういうコネ、伝手周りは持ってて損はしない。

まあその分同学年の奴等には敵視されるんで、手分けして対応する必要性は出てくるけれど。

 

「こういうとこでちまちま積み重ねておくと便利だぞ」

「例えば?」

「試験でギリギリ赤点から部分点で回避できる」

「なんですかその分かりやすい利点!!!」

 

そうだな、お前はそうだよな。

こないだ泣きながらテスト勉強してたもんな。

ただこの学校の……というか探索者学校の試験は点数付けがクソヌルいことで有名だからあれで泣く方がおかしいからな。

評価が低い相手には超絶辛口になるから毎年ちょくちょく赤点引いて退学するやついるけど。

 

『岬ちゃん……』

〚なぁう〛

「なんか酷い目で見られてる気がする!?」

「気の所為じゃなくてマジだけどな」

 

さて、回収は一段落した。

もう少し潜ったら帰路へと方向転換しよう。

そう思って、声を投げる。

 

主を倒して約一月。

六月の、梅雨が滲み始めた季節。

もう少しでノルマの足切りが起きる、そんな日。

 

――――未だに、到達した階は十二階までだった。

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