現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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目を擦る。

手元の尻尾を振る銀白色の狐と目が合う。

 

もう一度目を擦る。

視線の先、小鳥遊に抱かれたミサキが目が合う。

 

うん。

 

「なんで増えてんだ???」

 

ただでさえ良く分かってない誕生経緯。

それに加えてなんか増殖しとる。

 

「あれぇ?」

「お前の目も狂ってないよな?」

「はい、確かに此処にいます」

 

犬科であって犬じゃないんだが、と思わざるを得ないくらいにダラケているミサキ。

手元、ちょうど首の辺りを吊るすような形で掴んでいるミサキ2(仮称)と見比べてみる。

なんというか、一回りほど小さい。

 

大凡全長百センチ程の長さ、大きさを持つミサキに比べて七十センチほど。

少しだけ小柄で、差異があるとすればその顔つきくらいか。

間抜けとまでは言わないが、なんというか気が抜けたような顔付きをしてる。

狐で其処まで違いがあるのかって言われると何とも言えない、その程度の違い。

 

〚コンコン〛

〚ケェン?〛

〚ウーッ、コン!〛

〚コォン〛

 

何言ってるか全く分からんが、意思疎通は出来ているらしい。

狐同士で目が合ったと思えば急に鳴き出し、ぶらんとされたミサキ2(仮称)は文字通りに身動ぎを取り止める。

暴れても無駄だ、とか何とか言ったのかもしれんがその場合は上位下位の差があるってことだよな。

 

「まさかなぁ……いや、でもなぁ……」

 

()()()()()()、って言葉がある。

少しだけ感じた嫌な予感に洗い物に水だけぶっ掛けた上で自室に戻る。

当たり前のように付いてくる一人と一匹はそのまま。

片手は埋まったままだが、ちょっと調べ物の文字入力に手間取るくらいだし大差はない筈。

 

「どうしたんです?」

「いや、ひょっとすると俺のせいかもしれんと思ってな」

 

或いは此奴自体の特性による影響かもしれない。

どっちかは分からんが、案外どっちも影響してたりするかもしれない。

この辺の詳細がまるで分からんが、俺等の目がどっちも狂ったとかで無いなら実在するのは確か。

名前の元ネタ、一通りの知識を記録した保存媒体を起動しながら手元の狐の位置を変える。

 

〚?〛

「何と言うか、お前はのんびりしてんなぁ……」

 

本体というか最初に出てきたやつは好奇心旺盛だし甘えたがり。

それに対してされるがままというか、余り動かない家犬というかのんびり屋と言うか。

立っていた時はそうするしかなかったのでぶら下げていたが、一度腰を下ろした以上は膝上に移動させる。

ミサキの定位置は余り決まってないが、此奴は膝上のスペースが気に入ったのか小さく鳴くのが分かった。

 

「えーと、確か……」

 

このファイルの更に奥に一通り読み込んだデータがあったはず。

ぽちぽちと弄っていれば、横から画面を覗き込んでくる一人と一匹。

妙に近いから少し離れろ、と手で追いやっていれば目的のデータが少し遅れて開く。

目を通し、一番最後まで読み終えて。

 

「ああ……」

 

やっぱりそうか、と思ってしまう反面。

何でだよ、と思わなくもない複雑な感じが言葉に漏れる。

 

「えーっとぉー?」

「多分名前と特性と、どっちもだろうな」

 

俺自身は神の使い、という意味での御先と名付けた。

ただ、この呼び方そのものは別のものに転化出来る。

 

一応妖怪として呼ばれる、俺が最初に武具に感じた狐を生み出す毒石――――殺生石という名前。

この破片から生み出された妖怪は御裂、管狐、或いは犬神と言った一般に知られる使役される妖怪の原型と言われているらしい。

犬神を生み出すという邪法はさておいて、残り二体に重なる条件。

その何方も、()()()という特性を持つこと。

 

前者は人や屋敷に取り付き物体を操って、その家系を繁栄させる。

後者は人に付き従って、最大で七十五体まで増えて他の家に付いて行くとかいう言い伝えさえある。

 

流石にそこまでは増えないんだろうが、多分此奴等は一にして多。

殲滅されても、どれか一匹でも生きてさえいればやがては元に戻る。

多分そういう修繕性を持っている……んだと思う。

 

「……それって良いことなんじゃ?」

「食費とかそういうのを除けばな……」

 

一匹辺り其処まで喰うわけじゃないからまだマシ、とするべきなのか。

ただこいつら、普通に袋で売られてる固形のドッグフード食わないんだよな……。

最低でも缶詰とか、或いは多少なりとも生の成分を含んだ食事を一日二~三回。

存在自体に助かってるのは事実なんだが、食費で圧迫されるなら昔と何も変わらない。

 

多分管としての成分が多いのか、少しだけ小柄な此奴……でも多分存在としては同じ。

何故なら生まれ落ちた大元の武具が同じで、結局のところ欠けたままではあるが一個として存在するから。

剣とかのきちんとした武器のような原型があるなら兎も角、俺の石は正直『石』としての在り方が強い。

創作者としての手を借りずともある程度で元に戻っていたのに、そうならないのは今が正しい形として定まっているからだと思う。

 

「ただなぁ……」

 

本体は後輩が掴んで離さない。

それを嫌がってないミサキは放っとくとして、疑問が一つ更に浮上する。

 

「先輩悩み過ぎですよー?」

「お前がその場その場で動き過ぎなんだよ。……しっかし、何が理由で増えた?」

 

一番疑うべきなのは其処。

此処一月は進行しながら生命体を殴り倒してたくらいで特段変わったことはしてない。

ついでに言えば、増えてほしいなんて一切思ってもないし毒の補給も必要に応じて継ぎ足すくらい。

 

「それこそ単純じゃないですか?」

「と言うと?」

「いっぱい生命体倒してきたじゃないですか。それが理由とか」

 

あー、血肉を喰らって変換した、みたいな。

なるほど、なるほど。

一理はある。

 

「で、そんな例あんの?」

 

意外と急所を突いてそうな一言。

空中にぽん、と産まれたんじゃなく空間内に普通にいたもんな。

急に増えた――――にしては感じないのもまた変な感じあるが。

 

「そういうのの第一人者になればいいんですよ、先輩が~」

「無茶言うな」

 

誰か伝手でもあれば聞くんだがなぁ。

結ちゃんは文字通り何も知らない素人だし、他の……こういうのの愚痴が言える相手なぁ。

 

「まあ、もうちょい調べてみるしか無いか……」

 

何が出来るか、させられるかははっきりしときたい。

 

撫でられるがままにされるクダが、小さく鳴いた。

それでいいんですよー、と慰められてる気がして。

ちょっと、ちょっとだけ泣きそうになった。

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