現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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「……そんで、増えたと」

「そっすね」

 

疑わしい目と死んだ目と。

後両肩に少しだけ重みと毛触りと。

 

翌日。

ビルに突撃して昨日起こった事を説明していれば、向けられたのはまあ色んな感情が籠もった目だった。

 

そんな事有り得るのか、という疑問視の目。

そういうこともあるのかぁ、と興味の目。

肩の片方から毛玉を奪おうとする手。

 

まあ、そんな感じで各個人の性格が出ていたと思う。

小鳥遊は昨日ほぼ一日奪ってたから現在触れるの禁止。

羨ましそうな目で毛玉Aを見詰めている。

 

「なぁ恵」

「いやぁ、人の特異性までは分かんないよ千弦くん」

 

ふわふわ浮いてもう慣れた感じのミサキ。

初めて見る光景だからか少々怯えが見えるもう一匹。

 

一旦名付けはしたが、これ以上増えたら名前とか無視してAとかBとかになりそう。

管理しきれんわ。

 

「ただ、零くんの考えが合ってるなら私も少しは同意出来るところはあるかなぁ~」

「っつーと?」

「零くんの能力って武具一辺倒っていうより特異性に偏ってる所あるでしょぉ?」

 

ああ、と。

納得されるのは似た例を知っているからだろう。

思い浮かぶのは多分同じ人物。

 

「特異性の外付け強化、ってことか?」

「多分武具の本質には辿り着けてない分、此方を先に強化してるとかじゃないかなぁ~って」

「まー、大抵どっちも強くなるか相乗効果になるもんだしそりゃそうか」

 

俺もなんとか飲み込めたモノをすいすい飲み込んでいくのはやはり経験の差か。

伸ばされていた……というか浮いていた人形にミサキが連れて行かれるのを見送りつつ。

何も対応しない俺にもう一匹から多分疑いの目が向けられた気がする。

大丈夫だ、お前もそのうち慣れる。

 

「なら零、増えたもう一匹で何か変わったか?」

「変わったと言うか……何でしょうね、今まで負担が大きすぎたのが軽くなった影響なんでしょーけど」

 

右肩に乗る、隠れるようにしている小さい方を両手で掴む。

じたばたと暴れるがちょっと大きい子猫とか子犬みたいなもんだし、然程影響はない。

余り他人の目が好きじゃないみたいな感じはあるんだよなぁ、多分。

 

「取り敢えず此奴は『クダ』と名付けました。ミサキよりちょっと小さい管狐っぽいので」

「まんまだな」

「俺に名付けのセンスを求めんで下さい」

 

自分でも分かってるんだよセンスがないのは!

そういうのを鍛える余裕も猶予も無いのでまんま引っ張ってるのは自覚してるんで!

 

「で、何が出来るか……と言うか、これ出来てるのか自分でも良くわかんないんですけど……」

「何だよ」

 

どう言葉にしていいか悩み。

今朝方、朝食時に起きたトラブルで自覚……発覚したっぽい謎の現象。

俺自身もいまいち把握しきれてない部分を含むので、説明するのも違和感があるのだが。

 

()()……じゃなくて、なんかこうもっと別のナニカなんですけど」

「せめて俺達に分かるように言ってくんねーかな?」

「何と言いましょうかねえ……今日の朝の話なんですけど」

 

偶然、と言うか運が悪くと言うか。

一枚の皿を机の端に寄って置いてしまって、机の脚に運悪く小鳥遊がぶつける事故があった。

その時に何となしに思った――――気付いてしまったこと。

 

()()()()()()()()()()()

 

当然警戒も何もしていないのに、目を食事準備に向けていたのに。

何となしにそう感じて、転がり落ちそうな端に手を伸ばしていた。

その直後に掌の中に皿が滑り込んできた、なんてことがあった。

 

今までの俺なら絶対気付かないと確信できる事。

にも関わらずその前段階で対処できてしまったのは、多分その予兆を掴んでいたから。

そうやって追い掛けていくと、最初に思い当たったのがこの事象。

 

より正しく言うなら……管狐が与えるという、宿主への予知・予兆などを知らせる力を落とし込んだモノじゃないか。

そんな仮説が思い当たって、今日走り込んできた節がある。

 

『あぁ、成程?』

 

そんな今朝方のことを一通り説明するのに、妙に時間を要した。

自分でも落とし込めていないことを説明しながらに落とし込んでいく作業、とでも言い換えるべきか。

求めていたのは納得だったのだが、そんな中で最初に口を開いたのは天音ちゃんだった。

 

「天音ちゃん?」

『センパイって多分無意識下でも特異性……と言うか応用の方かな。

 周囲の状態を把握しようと認識を広げてると思うんです』

 

そうなのか、という顔が此方に向いた。

無意識なので全く意識してないけれど……言われると何となく理解は出来る。

万が一何かが起きても良いように警戒、その為に誰が近くにいて何があるのか、大雑把に()()()()()()ことはあるから。

 

「そんで?」

『そんな急がないでよ義兄さん。……多分、って言葉ばっかりになってしまいますけど。

 その、クダちゃん?がいることで脳の処理領域が楽になってるんだとしたら、ですけど』

 

大事なことを言っているはずなのに両手でミサキを抱えているから台無し。

しかも一切否定せずされるがままにされてる辺りどうなんだこの駄狐。

 

『色んな……それこそ、センパイの操れる範囲内のベクトルとかの方向性も感じ取れますよね?』

「あー……あー?」

 

つまり、何だ?

大雑把に知るんじゃなく、もっと細かく……それこそ一つ一つの向きやら風の強度、人の動き。

俺が脳内で今まで処理できていた部分を把握できるから、一秒先に何が起こるのかを()()できる。

 

無論計算式が間違っていれば答えも変わる。

他人の特異性や入力する値が違えば想定からも外れる。

つまり、情報こそが正しい意味での力に出来る――――みたいな感じ?

 

「……予測、になるのかね?」

『一言で言うなら、多分?』

 

此奴が?

 

〚クゥン?〛

「いやお前犬じゃねーんだから」

 

其処で首を傾げられても困る。

お前自体も良く分かってねーのかい。

 

「ま~、一つだけ分かったことはあるかなぁ」

「つーと?」

「ペットが増える。多分これからも」

「嫌な予想するのやめてくれません???」

 

当たりそうで嫌なんですけど!

俺の反論が虚しく響く。

 

どっちかと言うとミサキより大人しく、だからこそ怖がりらしいクダは俺の傍から離れようとせず。

触ろうとする仲間集団に怯えて俺に張り付き、余計に身動きが取れなくなる時間が暫しの間続いた。

 

…………しかし、何で狐なんだろうなぁ。

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