現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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結局、ミサキは後輩二人に連れ去られた。

 

まあ帰る時には返してくれるから良いか。

もう慣れたのか、感情を失ったような目してたし。

ああ言う顔して同情させたいってのは今までの経験で理解してるのでスルー。

連れて行かれた先でおやつとか食べまくって夕食残したのは忘れねーからな。

 

〚コォン〛

「大丈夫だ、嫌がるようなら連れて行かれたりはしねーから」

 

そんな先輩(というか同類)を見ていたからか、慣れていないクダは小さく怯えたような声を出す。

よくよく考えるとこれも同じような気もするが、まあその本質が見えてるわけじゃないし。

首の辺りから尾の根本まで撫でてやれば、擽ったそうに身体を押し付けてくる。

甘えているのか……うん、甘えているでいいかこれ。

 

「……なんていうか、ミサキくん?ちゃん?とは違うよねぇ」

「雌雄良く分からんので変に敬称要らんと思いますよ」

 

多分増える要因が交配に依るものではない影響なんだとは思うんだが……。

全身見ても雌雄をはっきりさせる特徴が見えなかったんだよな、彼奴(ミサキ)

 

それに対してクダは多分雌。

此方は雌雄が揃って増える、って言い伝えがあるパターンが存在するから多分雌雄で同数になるんだと思う。

 

「まあそれは良いんですけど」

 

一旦話を戻す。

 

ちょっと頼みたいことがあるから、と恵先輩に連れられてやってきた研究室。

部屋に入って最初に思ったのは「また植木鉢増えてる……」ってこと。

視線の奥に踊る花(ダンシングフラワー)がゆらゆら手を振ってる。

絶対アレ勝手に品種改良した物体だろ。()()()()()()

 

「何をすりゃ良いんですか今日は」

「ああ、うん。零くんにしか出来ない調合お任せしたいなぁ、って」

「また随分久々な……」

 

若干気が抜けつつ問い掛ければ、返ってきた答えは随分久々に聞く言葉。

以前……と言っても一年にも満たない昨年の中で、たった二回だけ頼まれた事。

恵先輩の手助けではなく、指示されたレシピ通りに俺が調合して欲しいという特殊な依頼。

ついでに言えば、頼んだこと自体も伏せておいて欲しいと約束されたから思い返すこともなかった記憶。

 

「何かあったんですか?」

 

出来上がったものを何に使うのか、具体的に教えて貰えていない。

だから何かに使ったのは分かっても、今回求める理由を把握出来ていない。

別に作ること自体は全然いいのだが、以前と今とでは立場と知る情報が違う。

だから、聞けるのなら――――そう思って確認してみる。

 

「ん~……何かあった、っていうか何かある、っていうか?」

「また妙なこと言ってますね……」

「何にしろ、一個は絶対使うから準備したいんだよねぇ」

 

それは別段構わないのだが、細かい理由を口にしない。

或いは……するのが嫌なのか、してはいけないのか。

のらりくらりと躱される聞きたいことへの反応を見ているとそう思ってしまう。

 

多分、作ろうとしている物体そのものに対してではなく。

何に使うか、そしてその先までを知ることが()()()()()()()()()から。

 

「……じゃあ、一つだけ教えて下さい」

「いいよぉ、変なことじゃなければだけど」

 

スリーサイズとか聞く、とかなんか言ってるのを遮って一言だけ。

 

「そのうち嫌でも理解することですか?」

 

目が少しだけ真剣になった。

眠たげな瞼に少しだけ力が入った。

多分自然反応、無意識下の行動。

 

でも、それだけで気付いてしまう。

そして、気付かれたことも当然に気付いてしまう。

 

「……やだなぁ、やっぱこれだけで分かっちゃうんだ」

「ああ良いです、今ので確信したので」

 

なので、それ以上は踏み込まない。

言わないでいてくれることこそが多分温情で、導いてくれていることなんだろうと何となしに理解できたので。

 

つまりは、昨年作ったのもその為に消費した。

次いで言えば、何故か作ろうとしている物体は恵先輩には作れない代物。

東雲先輩にも天音ちゃんにも頼まないのは何らかの……当人にだけ理解しうる何かの要因在ってこそなんだとは思うが。

或いは俺が気付いていない『何か』があるのかもしれない。

 

性別、年齢、特性。

気付かないほうが幸せなのかもしれない、何かが。

 

「その代償ってわけじゃないですけどやりますよ、そんな時間掛かりませんよね?」

「そうだねぇ、出来ちゃいさえすれば満月の夜を超えればそれで済むから」

「あー……いつでしたっけ満月」

「暦上は四日後くらいだったかな~」

 

ちらり、と部屋の片隅に掛けられたカレンダーに目をやる。

月齢が描かれている、というただ一点だけで選んだらしい実用品。

まあ薬と月齢の関係性は何となく昔から言われてきたことではあるし、違和感は然程無いけれど。

 

「分かりました、じゃあパパっとやっちゃいますか。クダは少し離れててな」

〚クゥン?〛

「お前の毛とか入ったら成分変わるかもだろ、流石に実験じゃない時は駄目」

 

肩に張り付いていた毛玉をそっと触って少しだけ位置をズラす。

元々空中に漂ってる時点で唯の狐じゃないのは明白だが、それでもまあ見た目上は普通の動物。

小さく首を傾げて問い掛けるようにしてくるのは……うん、心を鬼にするってことで一つ。

 

「甘えん坊?」

「かもしれませんねえ」

「そっか」

 

そんな俺達を見て小さく笑う先輩は、少しだけ自然な感じに戻っている。

やはり深く追求しないほうがこの人らしい、と改めて思いつつ。

腕を捲って事前準備、道具の用意……の前に浄化水で手をきちんと清めてからの作業。

 

「で、今日は何すりゃ良いんですか?」

「先ずはあのマンドラゴラを擦って貰うところからかな~」

「はいはい、マンドラゴ…………えっ?」

 

え、あの踊ってる変な花?

恵先輩が指差した先にあるのはそれしかないけど。

 

「えっと、マンドラゴラって根を引き抜くと叫んでぶっ殺しに来る薬草ですよね?」

「あの踊ってるのはそうしておけば叫ばない……っていうか、歌うから平気」

「何と何混ぜたんですか?????」

 

歌って踊るマンドラゴラって何だ!?

聞いたこともねーぞ!というか対策しなくて良い危険物ってだけで相当利益になる物体じゃねえか!

 

「?」

 

首を傾げてる人。

小さく胸も併せて揺れる。

駄目だこの人の価値観狂ってるんだった!

 

「ええ………………まぁいいか」

〚コォン〛

 

深く突っ込むのやめよう。

多分こっからまだ何度も突っ込み入れる羽目になるし。

何と言うか……疲れる。




今日のデス三分クッキング
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