現代ダンジョンに地味異能では厳しい   作:氷桜

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もうちょいのんびりターンが続きます


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約一時間半ほどの『仕事』を済ませ、ビルから出ることにした。

付いてきていた小鳥遊は今日は天音ちゃんの部屋に泊まるとかで此処で解散。

当然、二人に連れ去られていたミサキは回収したのだが。

 

〚ケェン?〛

 

首を傾げながら尾を振るこいつを見て思うことが一つ。

 

「なんかお前この短時間で太ってねえ?」

〚コォン〛

「昼飯と夕飯減らすからな」

〚コォン!?〛

 

やっぱ此奴等俺の言葉理解してるよな。

口元に何かカスみたいなの付いてるし、何かしら無添加の菓子でも食ってたのかもしれない。

普通にしてれば天音ちゃんが見落とす筈無いので、多分分かってて残したなこれ。

ある種のメッセージか。

 

〚ケェン〛

〚クーンクーン〛

「毎度思うがお前犬じゃねえんだからやめろ」

 

何を言っても変える気はないが。

どっちにしろこの後少し遠出しないといけないんだから早く服の内側に入れ、とシャツのボタンを軽く外して内側を示す。

大体ミサキは此処から入るし、クダは何か無理してでも手首のところから入る。

猫じゃねえよなぁ、と疑いたくなる様子で狭いところに入っていくからかなり不思議な生命体だよな此奴等。

 

(こうして内側に収まっちゃえば静かなもんなんだが)

 

一時期は腹部とか首元とかを舐め回してきて大変だった。

言い聞かせ、所々物理で躾け、やって良いことと悪いことを教えてからはしなくなったが。

お陰で使い回しの服が一枚唾液(っぽい、推定体液)で駄目になったのはちょっと思い出したくない。

 

「こら、暴れんな」

 

そんな事を思っていたのを悟ったのか。

或いは少しでも甘えて許して貰おうとしているのか。

服と皮膚の合間に身体を擦り付けてきて妙にむず痒く、軽く叱りつけつつ移動を始める。

 

今日向かうのは他でもない、この商店街で手に入らないペット向けの道具類の調達。

特に缶詰系とブラシとかそういった手入れ道具は需要の関係で全く手に入らない。

デパートまで足を伸ばせば流石に専門店……とまでは行かないがホームセンターの一角に置かれている。

今後の事を考えれば一匹増えてしまったのもあるし、それぞれ専用に用意しておいたほうが無難だと思う。

 

(ついでに石鹸……体毛洗うのにも使うしなぁ)

 

生物的な理由なのか、個体的な理由なのか。

冷たい真水を何故か嫌い、少し温めたお湯なら気持ち良さそうに声を上げる。

身体を洗う事自体を嫌う個体がいる、とは聞いてたが此奴等がそれに該当しなくて良かったと思ってる。

もしそうなら無理矢理にでも湯船に叩き込んで洗う作業が毎日発生しただろうし。

 

少しずつ学校へと近付き、そして離れていく。

一旦人の流れが途切れ、そしてデパートに近付く毎に人の流れが確実に増えていく。

其処を超えれば()()()、色々と遊んだりする場所や出店なんかが広がっている混沌とした領域。

普通にしていれば俺が出向く場所じゃなく、雄二のアホが良く屯してる辺り。

流石にそっちの方にまで踏み込むつもりはないが、途中までは同じなので逆らう事無くそのまま流れていく。

 

「毒消し安いよー!」

「期限ギリギリだから大特価!回復薬売ってるよ!」

 

どうしてもこの時期になれば客引きも増える。

一般人よりも学校関係者が主になる店だからこそ、こんな声掛けが許されている。

何しろ、相手も学生か卒業生……或いは退学者達。

多かれ少なかれ欲しいモノは把握しているからこそ、怪しげな販売や転売だって横行する。

 

(……にしては、今日人数多いな)

 

知らない相手の大声に驚いたのか、服の中……腕の側のクダが小さく揺れる。

大丈夫だとばかりに腕を組むようにして服の上から撫でてやれば、直ぐ様に揺れは収まるけれど。

此処まで臆病だと一周回って不安感が先に出る。

 

つまりは、戦場に連れ出して問題なく戦えるのかどうか。

 

(外でどんだけ出来ても『迷宮』の中で動けなきゃ意味がない、から試すのも中にしたが……)

 

買い物が済んだら少し訓練したほうが良いかもしれない。

ミサキが直感的に動いてくれて、寧ろフォローが要らなかった分無意識に問題ないと判断していたかもしれないと反省。

もしかしたら考えが伝わったのかもしれないが、小さく震えるのが分かったが今度は無視する。

甘えさせるだけじゃ駄目だと判断しつつも、本当に此奴等何なんだろうと改めて思う。

 

(多分、伝承再現型とかいう超絶希少なアレが成功した結果なんだろうが)

 

どっからどう見ても動物が能力を得たようにしか思えない。

前例がまるでないので、本当にこれが普通なのかが把握できない。

小鳥遊に説明しておいてなんだが、操ってる俺自身のほうが混乱してる部分は多いのだ。

それを口にしてしまえば心配がどんどん広がるから、口外出来ないだけで。

 

「今日だけの大特価!()()【剣神】が愛用してるシリーズの武器も入荷してるよ!」

「新しいブランド服入りましたー!」

 

デパートに入る前からこの騒ぎ。

入学してからある程度経つと始まり、そして唐突に終わる乱痴気騒ぎ。

その合間、慣れるまでは学生街で色々と起きているというのだから出来れば行きたくないのは確か。

 

(ノルマを熟せたのか、不安に襲われて遊んで忘れようとしてるのか……ま、顔見りゃ分かるわな)

 

俺はまだクリアできてないが、クリアまでの道は見えてる。

後一回か二回の探索で最低限のノルマは終わらせて十三階に入る準備はできるし、地図も出来上がる筈。

ある程度余裕を持って進みたいところだが、先ずは出来るようになったことを一つ一つ確認しながら、と。

 

デパートの中に入れば騒がしさはある程度静まり返り、代わりに涼しさが肌を撫でる。

流石に乱痴気騒ぎをこんな中で許されない、と誰もが分かっているからだろう。

出歩いているのはある程度余裕がある人間か、一応は自由行動日と言う扱いだからか男女とかの姿がちらほら見える。

 

余り見ていて良い気分がするものでもない。

早めに買い物を済ませて帰ろう、と足を向けようとした……第一歩。

 

柱を正面にし。

顔だけを覗かせるようにした、見知った後ろ姿が目に入って二度程瞬きをする羽目になった。

 

…………いや、何アレ。

 

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